【繁殖力旺盛、「在来の水生植物の存在を脅かす」と要注意外来生物に】
熱帯アメリカ原産の非耐寒性水生多年草。日本には明治時代中期に観賞用として持ち込まれた。葉はアオイに似た円形で、基部が大きく膨らみ浮き袋の役目を果たす。その膨らみが七福神の布袋様の太鼓腹にそっくりというわけで、その名が付いた。花は6枚の花びらから成り、その1枚に黄色の斑が入る。「ウォーターヒヤシンス」「ホテイソウ」の別名も持つ。
朝開いて夕方しぼむ一日花だが、8月から10月にかけて次々に開く。金魚鉢に入れる水草として欠かせないが、池や湖沼一面を覆ったホテイアオイの群落は圧巻。関西では奈良県橿原市の休耕田1.4ヘクタールを埋め尽くすホテイアオイがアマチュアカメラマンに大人気。大和三山の一つ畝傍山を背景に、国特別史跡の本薬師寺跡を取り囲むように咲き誇る。地元の農業グループ「城殿町霜月会」が2000年に地域起こしの一環として始めた。4年前からは畝傍北小学校の児童たちが毎年7月、どろんこになって植え付けの手伝いを行っている。
橿原以外にも各地で観光の目玉の一つに育てようという取り組みが行われている。埼玉県行田市の水城公園内の「あおいの池」では毎年7月に小学生の手で親株の〝投げ込み〟が行われる。同じ埼玉の加須市の道の駅「童謡のふる里おおとね」周辺の休耕田もこの時期、毎年薄紫色に染まる。鹿児島県日置市の正円池のホテイアオイは「新かごしま百景」に選ばれた。広島県福山市の丙里池もホテイアオイの名所として知られる。
そのホテイアオイが世界各地で「blue devil(青い悪魔)」として恐れられているといったら、驚く人が多いかもしれない。日本でも環境省が「要注意外来生物」に指定している。繁殖力が旺盛で、「水面を覆い尽くし光を遮ることで在来の水生植物の存在を脅かす」というのがその理由。ホテイアオイは水中の窒素やリンを吸収し、プランクトンの発生も防いで水質を浄化する効果があるともいわれる。その一方で冬に枯れて腐敗し逆に水質を悪化させるという指摘も。琵琶湖でも数年前、守山市の湖岸でホテイアオイが大増殖して腐敗、水質汚濁が懸念されたことがある。