【清楚で芳香を放つ花に、バラエティーに富む葉の形・柄・大きさ】
花のつぼみの形が橋の欄干の飾り「擬宝珠」に似ていることから、その名がついた。学名から別名「hosta(ホスタ)」。日本を中心に東アジアの水辺や原野、岸場などに自生する。日本固有種にコバギボウシ、オオバギボウシ、イワギボウシ、ミズギボウシ、ウラジロギボウシ、サガエギボウシ、シコクギボウシ、ヤクシマギボウシ、ハチジョウギボウシ、ヒュウガギボウシ……。
半日陰を好み、和洋いずれの庭園にも似合う。以前はユリ科だったが、最近の「APG植物分類体系」ではクサスギカズラ科に分類されている。交雑や突然変異を起こしやすく、葉の形や大小、模様は様々。巨大種のタマノカンザシから小型のオトメギボウシまで株自体も変化に富む。中国の楊貴妃は大輪の白花で強い芳香を放つ中国種のマルバタマノカンザシを好んだという。写真のギボウシはそのマルバと日本のコバギボウシの交配によって生まれた「ホスタ・ロイヤルスタンダード」。
ギボウシの名前は江戸時代中期の国語辞書「饅頭屋本・節用集」の中に初めて登場したそうだが、日本国内よりむしろ海外で高い人気を集め、交配で次々に新しい園芸品種が生み出されてきた。そのきっかけを作ったのはオランダ医で植物学者だったシーボルト(1796~1866)。19世紀前半、オランダに帰国し紹介すると、その強健さや美しい草姿、栽培が容易なことなどが人気を集めブームが巻き起こった。オオバギボウシの学名はそのシーボルトの名にちなんで「ホスタ・シーボルディアナ」とつけられている。
米国では今もギボウシの栽培が盛んで、「米国ホスタ協会」は16年前から毎年「ホスタ・オブ・ザ・イヤー」を選んでいる。2000年には日本生まれの「サガエギボウシ」がその年を代表するギボウシに選ばれた。サガエは大きな葉の周囲に鮮やかな白い覆輪が入った品種で、ギボウシの王様ともいわれる。その名の由来に成っている山形県寒河江市は2004年「寒河江ギボウシ」を「市の緑」に制定した。埼玉県狭山市はオオバギボウシを「市の花」に指定している。「絶壁に擬宝珠咲きむれ岩襖」(杉田久女)。