く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<BOOK> 「植物はすごい 生き残りをかけたしくみと工夫」

2012年09月21日 | BOOK

※9月7~20日分を新しくライブドアブログに立ち上げた「く~にゃん雑記帳Ⅱ」に掲載しています。

【田中修著、中央公論新社刊】
 植物は野菜や果物など大切な食料の供給源。光合成で二酸化炭素を吸って、酸素を供給してくれる。草花は癒やしにも欠かせない。すごいと言えば、虫をおびき寄せ捕まえる食虫植物は確かにすごい。だが、それ以外植物にはどんなすごさがあるのか。著者は京大農学部卒の農学博士で、現在甲南大学理工学部教授。著書に「ふしぎの植物学」「入門楽しい植物学」「花のふしぎ100」など。ここ数年、NHKラジオの「夏休み子ども科学電話相談」で植物についての質問の回答者として出演しており、本書も事例を多く取り上げながら、植物のすごさを易しく解説している。

  

 7章構成。前半で体を守る植物の知恵と工夫、後半では環境に適応し暑さ・寒さなどの逆境に抗して生きていくため、植物が持つ仕組みのすごさを紹介している。まず成長力のすごさ。キャベツの種の重さは約5mg。それが4カ月後に重さ1200gになる。何と約24万倍。エネルギー源は光合成で自ら作り出すブドウ糖やデンプン。「人間がこの反応を真似できたら、地球上の食糧不足などに悩む必要はない」。植物はアミノ酸や脂肪、ビタミンなども自分で作り出せるからすごい。

 植物が動物から身を守る術としてトゲがある。バラやサボテン、ピラカンサなど。葉にトゲがあるヒイラギ(柊)はトゲが刺さると疼くため「疼木」とも書く。奈良公園の鹿はアシビとともに、トゲのあるイラクサも食べない。イラクサの漢名は「蕁麻」。かゆみや痛みを伴い発疹が出る蕁麻疹はその漢名にちなむ。アフリカには「ライオンゴロシ」と呼ばれるゴマ科植物もあるそうだ。口の中にトゲが刺さり、食べ物を食べられなくなって餓死……。えっ、肉食のライオンが植物を食べて死んだ?

 クリは熟すまで鋭いイガで守る。 カキは種ができる前の若いときには虫や鳥に食べられないように渋く、種が出来上がってくると甘くなり、食べられて種を運んでもらう。ゴーヤも成熟前は苦味で種を守り、完熟すると種の周りが赤いゼリー状になる。トウガラシは昆虫が多い地域ほど、辛み成分のカプサイシンを多く含む。シシトウは温度や水分、日照などいい条件がそろうと辛みが少なく、逆に悪い条件で苦労して育つと辛くなるそうだ。

 タンポポやイチジク、ゴムの木などは白いネバネバの液で昆虫から身を守る。ヒノキなどは「フィトンチッド」と呼ばれる香りでカビや細菌を殺したり、繁殖を抑えたりする。サクラの枯れ葉や落ち葉は親株の根元で、腐葉土になるギリギリまで虫の嫌がる香りを放って親を守る。アジサイやキュチクトウ、ユーカリは有毒物質を含む。アジサイは意外だが「青酸を含んだ物質」を持つ。虫に食べられた跡がほとんどないのもそのためという。

 植物は有害な紫外線から身を守るため、自ら作り出すビタミンCやビタミンEなど抗酸化物質で対抗している。夏の暑さには葉から水を蒸発させることで体を冷やすという冷却能力を持つ。では常緑樹はなぜ厳寒の中でも緑のままなのか。「寒さに耐えるために葉っぱの中に糖分を増やす」仕組みを持つ。冬を越した大根や白菜などの野菜が甘くなるのも、その仕組みが働くことによるという。やっぱり、植物はすごい!

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