【千葉・房総~東海地方・伊豆諸島に自生】
キク科キク属の多年草で、日本固有の野生菊の1種。その名の通り、海岸沿いの日当たりのいい斜面や岩場に生え、10月~12月初めに黄色い小花を密に咲かせる。別名に「イワギク」や「アワギク」。主に千葉県の房総地方から東海地方にかけての太平洋岸や伊豆諸島に自生する。
観賞用に栽培される一般的なイエギクとは違って、舌状花と呼ばれる花びらが外側に並ばず、直径5ミリほどの頭状花をいっぱい付ける。草丈は30センチ前後で、葉には白い縁取りが入る。写真のように頭状花の周囲に白く短い花びらを付けるものもある。これはイソギクとイエギクの交雑種で「ハナイソギク」と呼ばれている。
イソギクとよく似た仲間に、四国の徳島県から高知県にかけて分布する「シオギク」や紀伊半島の和歌山県や三重県の海岸部に分布する「キノクニシオギク(キイシオギク)」がある。シオギクはイソギクに比べ頭状花がやや大型だが、花自体の数は少ない。キノクニシオギクの大きさはイソギクとシオギクの中ぐらい。
イソギクの群落としては千葉県いすみ市にある国指定の天然記念物「太東(たいとう)海浜植物群落」や銚子市の犬吠埼、静岡県下田市の爪木崎などが有名。ただ、このイソギクも自生種が次第に減少してきた。北限といわれる茨城県では県のレッドデータブックに絶滅種として掲載され、愛知県では絶滅危惧Ⅰ類、千葉県でも準絶滅危惧種になっている。「磯菊の咲くや師とある舟溜」(杉山葱子)。