【24羽のうち野外から15羽、アオサギやシラサギも】
国の特別天然記念物で、兵庫県の県鳥でもあるコウノトリ。その雄姿を一度間近で見ておきたいと先日「兵庫県立コウノトリの郷公園」(豊岡市)を訪ねた。ちょうど1日1回の餌やり時間の午後3時を過ぎていたが、それでもまだ20羽近くが屋根のない公開飼育ケージ内に留まっていた。その日集まったのは24羽。うち9羽がケージ内で飼育中のもので、残りのコウノトリ15羽は野外からやって来たという。
コウノトリの郷公園は豊岡市街の東方の田園地帯にある。隣接する「豊岡市立コウノトリ文化館」に実物大の親子や巣の模型があった。その巣の上で記念撮影すると幸せが訪れると評判を呼び来場者に人気という。コウノトリの郷公園が初めて試験放鳥したのは10年前の2005年。その3年後の08年には野外での繁殖・巣立ちに成功した。2012~15年の最近4年間に野外で巣立ったのは合計41羽に上り、毎年10羽前後が巣立ちしている。豊岡近辺を中心に各地の野外で暮らすコウノトリは合計83羽。これとは別に96羽が飼育されている。コウノトリの野生復帰は本格軌道に乗り始めているようだ。
文化館のパネル展示「コウノトリの飛来市町村」によると、北は青森県から南は鹿児島県の奄美大島、徳之島まで39府県258市町村に上る。奈良県ではただ1カ所、安堵町だけだった。国外では昨年3月に韓国東南部の金海市で、今年2月には済州島で目撃されている。足環の標識からそれぞれ2012年と14年に国内で巣立ったものと確認された。係員の話では、大陸から飛来し豊岡に棲み付いている1羽も含め、足環未装着のコウノトリが4羽いるという。当初巣立ち直後に捕獲できず足環を付けることができないケースがあったため、最近では巣立ち前に装着しているそうだ。
餌やりは冷凍アジを解凍して大きなたらいに入れて与えるほか、生き餌として養殖したフナやニジマスを池の中で与える。毎日午後3時の餌やりタイムになると、野外からコウノトリのほかにアオサギ(下の写真㊧の右側)やシラサギ、さらにトンビやカラスまでやって来るそうだ。公開ケージで飼育中のコウノトリ9羽は風切り羽の一部を切っているため飛んでいかないという。野外で暮らすコウノトリの中には食事が終ると、さっさと去っていくものも。田園の中に立つ高い人口巣塔のてっぺんで1羽のコウノトリが羽を休めていた。