【人を描いた土器・土偶など62点、頭蓋骨から復元した縄文~古墳時代の顔も】
奈良県の「歴史に憩う橿原市博物館」で、秋季企画展「顔、カオ、かお~顔面表現の考古学」が開かれている。県内の遺跡から出土した人面墨書土器や土偶、木製人形などをもとに、縄文・弥生時代から中世・近世まで時代を追って人の顔の表現の変遷を辿る。11月29日まで。
縄文時代の顔の表現は単純かつ平面的で、奈良盆地から出土した土偶は耳と口のみを表現したものが多い。弥生時代になると線刻や刺突で描かれた絵画表現が現れ、顔面に入れ墨を刻んだものも登場する。弥生時代の環濠集落、唐古・鍵遺跡(田原本町)からは目と鼻と口が立体的に表現された人形土製品(写真㊥、弥生中期)が出土している。
古墳時代に入ると顔面表現はより写実的に。人物埴輪には鼻や髭、髪型などをリアルに表現したものが現れ、表情を持つものも見られる。ちょうど奈良県立橿原考古学研究所付属博物館(橿原市)でも特別展「人のかたちの埴輪はなぜ創られたのか」(11月23日まで)が開かれているが、そこに出品中の「盾持人埴輪」(写真㊨)は口を大きく開け笑っているようにも見える。国史跡の茅原大墓(ちはらおおはか)古墳(桜井市)から出土したもので、人物埴輪としては国内最古ともいわれる。
飛鳥~奈良時代になると、石神遺跡(明日香村)の石造男女像のような立体物だけでなく、高松塚古墳壁画や法隆寺仏像台座人物画など絵画でも写実的な表現が見られる。この時代には瞳が描かれるようになり、出土品の中にはイラン系など外国人の顔を模した表現も現れる。平安時代以降は人面墨書土器や板絵などに個性豊かな顔の表情が描かれ、絵画では様々な角度から顔が描かれている。江戸時代には浮世絵でデフォルメが進み、顔面表現も定型化していく。会場には県内各地から出土した頭蓋骨をもとに復元した縄文~古墳時代の男女の顔4体も展示中。