言葉のチカラこぶ——『いい言葉塾』

言葉はコミュニケーションの基本。伝えたいことは「言葉のチカラ」できっと伝えられる。もっとうまく伝えられる。

「ある地方商店街の小さな一歩」<その9>

2012-01-04 10:07:28 | 繁盛店物語(創作)
こんにちは。
販促経営コンサルタント、藤田です。
本日は2回目の投稿です。

このカテゴリーは基本的にフィクションです。
販促経営コンサルタントの本田というわたしの分身を登場させて、様々な経営再生の様子を描写していきます。
内容はフィクションですので、モデルそのものはありませんが、実際に自分が経験したことも混じっていますので、これを読むあなたにもずいぶんと参考になることが出てくると思います。
あなたの経営改善のヒントにご自由にお使いください。
(なお配信は原則毎週1回水曜日にと思っていますが、基本的にランダム配信です)


「ある地方商店街の小さな一歩」<その9>



「なるほど、その通りだ。私は今まで、自分の商売をどうすればいいか、そればかりを考えてきた。お客のことはあまり考えなかった。本当だ。本田さん、あなたの言うことは正しい。今初めて目が開いた感じだよ」

後で聞いたが、それが鮮魚店を営む増野だった。

増野は向き直り、参加者に向かって言った。

「どうだろう、みんな。この人にいったんあずけてみては。それでも何にもならないかもしれん。でも何か見つかるかもしれん。何か見つかったらめっけもんじゃないか。そうだろ。私はそう思う」

「賛成」という声が小さくところどころからだが、上がってきた。

「じゃあもう一度本田さんの言うことを最後まで聞いてから、決を採りたいと思います。いいでしょうか?」

理事長の田島が言った。

本田は続けた。

「ありがとうございます。と言いたいところですが、正直まかされるのが怖いというところが本音です。実際、提案はしますが、それを実践するのはあくまでもみなさんだということです。自分でも自信がないのに、みなさんに実践しなさいというのはとても酷だと思いますが、それでも聞くだけは聞いてください」



それから本田の提案に入った。

「まず今からすぐにできることは、先ほども言いましたが、トイレのご案内です。これはまず各店主の皆さんがそれぞれ紙に書いて外に貼り出しましょう。もちろん今まで以上にきれいにしてくださいね」と本田が言うと、初めて会場から小さな笑い声が漏れた。

「そのあとイベントとして、地元の小学生からポスターを募集しましょう。そして通路の真ん中にベンチをおいてください。これも実際に営林局あたりとタイアップして間伐材を提供してもらって、親子で実際にこの商店街の通路で作ってもらいませんか。イベントとしての効果もあります」

親子で作ろう、お年寄りが休めるベンチ!』というようなタイトルで親子を集めます。もちろんそのときはプロの大工さんや家具の職人さんに声をかけて、アドバイザーとしてきてもらいましょう。でき上がったベンチにはそれを実際に作った親子の名前を刻むようにすると、その親子がまず商店街の顧客になり、その親戚もベンチを見に来るという効果も期待できます」

「まずそういった必要なハード面はすぐにでも充実させてほしいんです。その他にみなさんがお客様の立場になって、必要なハードを考えてほしいなと思います。それと商店街のコンシェルジュ、案内人ですね、それも誰かボランティアでやってもらいたいんですね。特にお年寄りのための案内役兼お手伝いです。空き店舗のひとつを案内所にして、そこを市や県、それに商店街の情報発信の拠点にします。最初はなかなか稼働しないでしょうけど、これは根気よくやらないと駄目だと思います。その次に空き店舗を利用して保育所と学童一時預かり所を作ります。ひとつではなく、商店街の拠点、拠点に、できたら5カ所ほど」

「保育園は今どこでも不足していて、深刻な問題になっています。子供手当より保育園を増やすことの方が急がれているという議論まであります。その保育園ではここにやってくるお年寄りとのふれあいを持ってもらいたいんです。お年寄りも子供とふれあうことによって癒され、子供もお年寄りとふれあうことによって命の大事さを知ることができます。今核家族の増加で、こういう年代を超えたふれあいということが少ないのも、問題になっています。保育園を作ることによって、そこにお母さん方がやってきます。そうした人たち向けの店を開くことができますね」

「店だけではなく、洋裁和裁の裁縫やニットなどの家事に役立つ教室などをたくさん誘致しましょう。もしそういった方が現れなければ、商店街で運営するようにしてでも、やってもらいたいんです。そのようにして若いママたちが大勢訪れるようになると、この商店街も華やかな感じになってきませんか。そういうようにした福祉を伴ったソフトが豊富な商店街に生まれ変わることも、ひとつの手だと私は思いました。今までのような、近隣のみなさんへの日常生活に奉仕する商店街の役割は、はっきり言ってもうここでは終わっています。そう思いませんか」

「ですから、これからもここでみなさんが商いを続けていくというのなら、まったく新しいコンセプトを立てて、やっていかないと絶対に残れません」

「改革していかないと。これは痛みを伴いますから、できないという方がたくさん出てくると思いますが、一応聞いてください」

「この満天通り商店街を、先ほど私が言ったお店とそれらに関連のあるお店以外は、飲食と食べ物専門の町にした方がいいと思うんです。ですから現在消費者にとって不要不急で、はっきり言って、特色のない商品を販売しているお店を営んでいらっしゃるところは、できたら、というよりもぜひとも業種を転換してもらわなければなりません。そういった商品をこの商店街で購入するという選択肢は、すでに消費者のみなさんの中にはないんです。ですからここでしか買えないもの、ここで買った方がいいものを揃えるべきだと思いませんか」

ここまで本田が一気に言うと、まだ会場がざわつき始めた。

「今まで家業として守って来たみなさんにはすぐには決断できない重大な問題です」

「おいそれとはできないと思いますが、今変わらなければ、これからはもうこの商店街で生き残っていくことはできません。今みなさんが何とかしようと立ち上がりかけているときだからこそ、逆に言うとチャンスなんです。行政にも掛け合って――あまり行政の援助を受けるのは気が進みませんが、資金的に苦しい場合はしょうがないです。そうした転換資金を支援してもらってもいいんじゃないでしょうか。行政だって、それでうまく成り立っていけば、税金として戻ってくるんですから、援助は惜しまないと思うんですが」
     
                                                                 

                                   つづく



<10>へつづく。
(このストーリーは、リアル体験を元にしたフィクションです)

それでは今日はこれで。
あなたの一日が今日もいい一日でありますように。
藤田販促計画事務所、お客様力(ぢから)プロデューサの藤田でした。

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