「恵まれた環境」と一言でいってもそれは個人によって千差万別。
お金があるから恵まれていると感じる人もいれば、食べられるだけで恵まれていると思う
人もいる。
さて、そういうことで考えてみると、自分たちの二人の娘たちはどうだったんだろうか?
たんまりとある訳ではないけど、なんとか世間並みの収入があり、特別仲がいいことは
なかったにしても、子供の教育方針に関してはただの一度も意見の相違がなかった
両親。
好きなことばっかりしている父親のそばで、自分の買いたいものは何ひとつ買わずに娘
達の将来のための費用を積み立てていた母親。
先祖が残してくれた世間の平均以上の家。
同居していた父方のじいちゃんばあちゃん、茨木にいる母方のじいちゃんばあちゃんの
あふれんばかりの愛情。
生まれた頃からしょっちゅう家に遊びにきてくれて娘達を可愛がってくれた両親の友達。
それぞれのたくさんの友達。
今ではほとんどいなくなった、地域の親。
途中から家族に参加した犬の優。
そんな環境の中で、彼女達は全く違うキャラクターを持ってはいるものの、ほんとに明る
く素直で気立てのとても優しい人間として育ってくれた。親バカかも知れないが、客観
的に見てくれる人様の話もそういう話が多いのできっとそうなんだと思う。
この先、彼女達の将来に予想される環境はどうか。
長女は、この4月から千葉の成田空港で働き始め、留学の経験が生きて得意な英
語を駆使できる職場に配属された。空港という万全の上にも万全のセキュリティーを
求められる職場のきびしい風に揉まれ、会社から帰っても毎日勉強を続けている日々
らしいけれど、この間の連休に一度帰省した時にはもう少し顔つきがきりりとして、表
情が変わっていた。相変わらずよく笑うけど。
のんきで楽天家、笑顔以外見たことがないような彼女が間違いなく一日毎に人間と
して、社会人として成長している。
そして次女。彼女はこの6月、花嫁になる。
長女とは全く違うキャラのこの次女は、勉強嫌いでロクに勉強なんてしなかった。よく
親を困らせもした。でも高校を卒業してすぐ働き始めてからは、毎月給料から数万円
を食費にと家に入れ、ボーナスが出たといっては俺達家族をどえらく高いステーキ屋さ
んなんかに連れて行ってくれるようになっていた。
不器用で口下手やけどしっかり者で、とにかく気立てが優しく、人が嫌がるような仕事
も文句ひとつ言わずこなす彼女は、結婚後ナースを目指して勉強を始めるという。
やがて子供も生まれ、嫁として、母として、ナースとして、女性として日々成長していく
ことは間違いないやろう。
そう考えるとやっぱり俺達の子供たちはほんとに恵まれた環境にいたんだなぁとつくづく
思う。そしてそんな子供達に恵まれた俺達はもっともっと恵まれた環境にいたんだと。
それもこれも、その最高の環境を作る土壌を苦労してずっと残してくれてきた先祖を
はじめ、両親、祖父母、友達、先輩、後輩、上司、部下、同僚、ご近所、全ての
人のおかげ。もちろん、犬の優も。
嫁にいく次女にはこのことを何度も言ったけど、まだ言いたりないくらい感謝の念は尽
きない。
結婚に際して、その口下手でシャイな次女から、こんな言葉をもらった。
「子供が生まれたら、お父さんお母さんが私を大切に育ててくれたように、自分も自
分の子供を大切に育てるから」
親としてこれ以上に恵まれた環境があるのだろうか。