
セカイ。
は
この
掌の中に
在る
あたためるコト
も
にぎりつぶすコト
も
自身
に
委ねられている
見たくないモノ
は
目を覆えばいい
し
聴きたくないコト
は
耳を塞げばいい
セカイ。
を
始めたければ
また
その手
を
外せば
いい
ふたたび
手を
取り合えばいい
あとは
駆け出すだけ
手に手を取って
それが
セカイ。
の
作り方
世界なんかわたしとあなたでやめればいい
川上未映子
二十代の初めごろ
すごく好きで
ちょっとのあいだであっても
どうしても離れられなかった人に
独りきりでいることに
耐えられないふたりなら
一緒に居続けることなんて
できないんだと何度も何度も
言われたけれど
そのときはそうかもしれないと
苦しみながら思ったけれど
あれは本当だったのだろうか?
この二人を見ていると
片時も離れず一緒にいなきゃ
死んでしまうって
ふたりにしかゆけない場所が
確実にあるように
そんな場所があるように
それはとても思ってしまう。
わたしもそこに
ゆけたかもしれなかったその場所を
ふたりは今日も散歩していて
そこにはあたたかな雨が降り
いたわりあうような音楽が流れ
それらを丁寧にかさねてゆく。
世界にふたりだけしかいなくなっても
ほんとに生きてゆけるような
そんなふたり
それは友情でも恋人でも夫婦でも
呼びかたはなんでもかまわない。
大事な人とは離れてはいけないのでは
なかったか。
そうでなくてもわたしたち
いつか必ず離れてしまうときは
やってくるのだったから
たったいま大事に思うのなら
あれこれあぐねて離れてしまうことは
ない
世界なんか
わたしとあなたでやめればいい
そしてもう一度
わたしとあなたでつくればいい。
「発行地帯」 より