チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

ダム効果

2009年10月20日 13時38分15秒 | 日記
牛首紬という紬をご存知だろうか
一般に出回っている牛首紬ではなく
もう一つの加藤改石さんの牛首紬を
チャコちゃん先生は「本来の牛首紬」
と考えている

もう何十年も前に
読売新聞の仕事で加藤さんを取材したことがある
本当に素敵な織だと思った
近くの養蚕農家が作った繭を糸にし
ひたすら織る
この着物を買いたいと思ったが
全てを買い取ってくれる人がいて
その人から買ってほしいといわれ断念した

その後牛首紬という名の織物をアチコチで見かけるが
どうもあのときのようにチャコちゃん先生の
魂に響かない

ところが
先日やっと銀座「いち利」さんで出会えた
蚕から、糸、そして染めて織る
その作業の全てを仕切っていたのが
「大門屋」という呉服屋さんであった

社長の高橋さんの厳父が
戦争で戦友たちと死に別れ
助かった命を役に立てたいと思い
加藤さんの作る牛首紬を世に出す努力をした
その意志を現社長が引き継いで
牛首紬の灯りを消さないように努力をしている

この牛首紬が世に残ったいきさつは
「ダム建設」であった
50年前牛首町の近くの山底の村が
ダムに沈んだ

賛成、反対で村は二分
そのとき
「上に上がって牛首紬をつくろう」
という皆の心が一致して牛首紬が残ったという

新しい生活に希望を持ってもらうために
高橋さんのお父様が必死にその仕事を支えてきた

個人の力で、日本の手仕事を継承したのだ

きものの産地は
この手のストーリーが山とある
今回の新政権も
この絹の道は素通りのようだ

戸別保障の政府の援助は絹に届くのだろうか
コメント
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