「車の運転や夫婦げんかの発生にご注意ください」。日本気象協 会北海道支社は四月下旬、気象情報を発表する際、異例の注意 喚起を行った。記憶に新しいことと思います。今一度検証してみ ます。「気象病」への警告で、聞きなれない言葉に波紋は広がっ た。実は気温や気圧の変化は体調や気分、病気にも影響を及ぼ しており、道外では、気候に応じて独自の健康注意報を出してい る医師会もある。気象病の注意報は四月二十日、札幌周辺やオ ホ-ツク海側、十勝地方などを対象に出された。低気圧が翌二十 一日に北海道の北を通り、フェ-ン現象などで気温が急上昇する ことが予想されたためだ。これを受け、一部の報道機関は「気象協 会が夫婦喧嘩注意報!!」と報じた。注意報を出した同支社気象情 報課の半田晋二郎気象予報士は「注意喚起のために出した。北 海道支社として初めての試みだったが、反響の大きさに逆に驚い ている」と話す。気象と病気の関係は古くから研究が行われてきた が、学問として体系化されたのは1955年に国際生気象学会が設 立されてから。国内では日本生気象学会が62年に設立され、医学、 工学、地理学、気象学、生活科学など幅広い分野の研究者が参 加している。これまでの研究で、前線の通過による気圧や気温の 変化でリウマチの痛みが出たり、喘息発作、心筋梗塞、脳出血、 風邪などが起りやすくなることが分かっており、こうした気象に起因 した病気を総称して「気象病」と呼ぶ。
新潟大医学部の安保徹教授が高気圧と虫垂炎の関係を95年に 突き止めた。安保教授は知り合いの外科医から「天気のいい日に は重症の虫垂炎の患者が出て、ゴルフに行けなくなる」という話を 聞き、自らが実験台になって白血球のリンパ球と顆粒球を調べた。 すると低気圧時にリンパ球が増え、高気圧時に顆粒球が増えた。 顆粒球は細菌を処理する能力が強く、細菌を処理した後には膿 (化膿性炎症)をつくる。これが虫垂炎の増加につながるというのだ。 気象と健康の関係に詳しい、北大名誉教授で、天使大の森谷絜 教授(健康行動理論、医学博士)は「気象病は気圧や気温の変化 で自律神経を構成する交感神経と副交感神経のバランスが崩れる ことによって起る」と指摘。「本来、交感神経は昼間に働き、心拍数 を増やす働きがある。逆に副交換神経は夜間にゆっくりさせる働き がある。ところが、急激な環境変化が起ると、体がついていけず、 交感神経が緊張しずぎることで、体調を崩したり、精神状態が不安 定になってイライラする」と説明する。半田気象予報士が夫婦喧嘩 に注意と言ったのも、気温の急激な変化で、交感神経の緊張が高 まるためだ。 気象と健康の関係に着目し、心筋梗塞と心不全・脳卒中の予報を 出しているのは広島県医師会だ。県内の循環器系医師が中心とな って過去十年間に救急車で運ばれた人と気象の関係を調査。平均 気温の差や気圧変化などの数値を基に独自の数式を打ち出し、三 年ほど前から三段階の危険度に分けて病気発生の予報を出してい る。同医師会は「地元の新聞にも掲載されており、特に寒中の十一 月から三月は注目を集めている」と話す。寒冷地の当地札幌もこの 時期の斎場の稼働率の上昇に友引での運営も検討などの記事を 見ました。地球温暖化などもあって低気圧が急激に発達するケ-ス も相次ぐ。森谷教授は「今後、気象病は増える可能性がある。急激な 気象変化があった時は、副交感神経を活発にさせるカモミ-ルティな どのお茶を飲んだり、イライラした際は、ひと呼吸おいてリラックスする ことが大切だ」とアドバイスしている。