北大低温研が確認 冷凍技術開発に期待
氷の結晶が融点の0度より低い温度で解け出す際,2種類の水の層が現れることを、北大低温研究所の佐崎元准教授(結晶成長学)らのグル-プが、世界で初めて確認した。これまで未解明だった仕組みの発見で、滑りやすいスケ-トリンク作りや新たな冷凍技術の開発にもつながると期待されている。研究成果は9日、米科学アカデミ-紀要(電子版)で発表された。
氷の結晶は0度より低い温度でも、表面がごくわずかに解けて「表面液体相」と呼ばれる水が現れていることが知られている。凍結路でタイヤが滑るのも、この液体相の存在のためだが、出現する過程の観察は難しく、実際に確認した例はなかった。佐崎准教授は、水分子一つ分の高さ0・37ナノ㍍(1ナノ㍍100万分の1㍉)まで見ることができる「レ-ザ-共焦点微分干渉顕微鏡」を、オリンパス(東京)と共同開発。この顕微鏡で氷の結晶の表面を観察したところ、氷点下1・5度以下で結晶表面は解けずに成長するが、氷点下1・5~同0・4度では表面が溶け始め、水滴のような形の表面液体相が現れた。さらに温度が高い氷点下1・0~同0・1度では、水滴の下に、さらに薄い層の液体相が生成された。氷が解ける時にできる液体相は、これまで一つの水の層だと考えられてきた。今回初めて見つかった水滴と、その下の薄い層は互いに混じり合わず、二つの水は性質が異なることを示した。佐崎准教授は「一種類だけと思われていた表面液体相が、実は2種類存在しており、通説を覆す結果となった。同じ水の分子でありながら、なぜ性質が異なるのか、さらに解明したい」と話している。