お餅を楽に切りたい 「ダイコンと一緒」には根拠
今月11日は鏡開きでした。鏡開きは本来、お正月に飾っていて硬くなったお餅を、金づちなどでたたくのがしきたりのようです。でも、現在は包丁で切る場合がほとんどだと思います。鏡餅に限らず、硬いお餅を包丁で切るのは骨の折れる仕事です。少しでも簡単にするこつはないものでしょうか? お年を召した方は「おばあちゃんの知恵」としてご存じかもしれません。お餅を切るときにダイコンを切りながら切ると良いとのこと。これにはれっきとした科学的根拠があります。ダイコンには、アミラ-ゼという酵素が含まれています。酵素とは、人間をはじめ、動植物などの生体で起こる化学反応を活性化させる分子です。反応を活発にさせる分子のことを「触媒」と呼びますが、特に生体内で働く触媒のことを酵素と呼ぶのです。酵素の構造を簡単にいうと、カルシウムやナトリウムなどのミネラルの周りに、タンパク質が巻き付いた状態です。中心になるミネラルの種類やタンパク質の巻き付き方によって、約3千種類の酵素があるとされています。ただ、酵素は一つ当たり一つの仕事しかできない特徴があります。つまり「専任」なのです。ダイコンに含まれるアミラ-ゼは、でんぷんを分解する作用があります。お餅にはでんぷんが含まれています。ですから、ダイコンを切ってその汁がついた包丁でお餅を切ると、アミラ-ゼが包丁とお餅の接触面の粘りや硬さを減らすことが期待できます。ちなみに、軟らかいお餅に大根おろしをつけて食べるおろし餅は、アミラ-ゼの消化を助ける仕組みを利用したものです。まだお餅があるご家庭は、ぜひ酵素の力を試してみてください。(サイエンスライタ-)