ある歯科医師からの報告です。しばらく療養していた患者さんが、 口から血を流しているとの事で、診察に訪れたとのことです。入れ 歯のない状態で、口を真一文字に閉じ、無表情で、その患者さん は寝ていた。口をようやっとのおもいでこじ開け、以前使用していた 義歯を挿入して診察したところ、残っていた2~3本の歯が反対側 に突き刺さっていた。その後、入れ歯を調節して上げたところ、 柔和な顔になり他に移動していかれるとき、小さく手を振って退室 していかれたとのことです。今、健康でいることの必須条件に、80 歳まで健康な歯を残しましょうとの運動を関係団体で執り行われて います。だが4割以上の方が放置した状態であるといいます。その 為、そのことによって、意志の疎通が巧く機能しなかったり、噛む 機能の阻害が脳の活性化を鈍らせ、認知症の原因になる一因で はとも言われています。生きることが優先で、腸へ直接パイプで 注入する手術などを見聞きすることがあります。その為、長期に 義歯のない状態で、顔も無表情になり、生気のない状態が病気を 長引かせ、心も沈んだままと成る。私も、若いときからの喫煙も 一因か、歯槽膿漏で歯を次々と抜く羽目と成りました。現在は上下 とも総義歯のお世話になっています。初めてその様な状態に成った とき、かって若い頃に体験した、身内の何気なく人前で外したり入れ たりの所作に非常に嫌悪感を持ちました。その様な経験から絶対に それだけはしないと思ったものです。
部分入れ歯の時には、聞き及んでいた寝るときには外す。そんな 行為も、コップでの保管もさして問題にはなりませんでした。だが、 総義歯での保管の問題や就寝時の容姿など異物の取り扱いに 非常に戸惑いました。置く場所によって、家族に迷惑を掛けること だけはしないと、考えていましたので結局、四六時中外さないこと にしました。考えるまでもなく、自前の歯を外すわけがないので、 これが正解のようです。全く問題はなく、脳の活性化にも役立つよう です。後は訓練で克服しなければならないことがあります。それは、 胡麻あえのものやトマトなどの細かい種のある食品です。これらを 食したときに、義歯と歯ぐきの間に入り込み、非常な苦痛を伴うこ とです。そこで、義歯を浮かせぎみにして、舌の先で気付かれない ように掃除するコツを会得することです。決して他の人を不愉快に する、外して洗浄などは行わないことです。総入れ歯になった後も、 自前の歯と同じように、何でも美味しく頂いています。おかげで上歯 が圧力に負けて、亀裂破損に何個かなりその都度作り直していま す。でも、八割がた普通に振舞えることに感謝しています。最近、 改めて分かったことに、左右のバランスが微妙に狂ったり、圧の掛り 具合や食物を噛み砕いたときの噛みあわせが微妙に高く感じたりの 違和感を得たら即調整してもらうことです。食事後のブラッシング (義歯や歯ぐき)や義歯の裏側に、少しでも油断すると歯石がつきま す。それを細工用の丸ヤスリなどで取り除くことは大切なことです。 それにしても、歯がないことは人とのコミュ二ケ-ションに重大な支障 をきたします。健康に重要な役割を担う歯は、自前であれ義歯であれ、 常に完備していることが肝心なことのようです。