那珂川の八重桜が満開になった。
かつて御衣黄桜(ギョイコウザクラ)という緑色の桜を初めて見た時、綺麗だとは全然思わないし、写真を撮る気もしなかった。
でも、その名前が貴族の衣服の萌黄色(モエギイロ)から付けられていることを知り、改めてよく眺めると、どことなく気品があると感じた。
目でなく、脳で感じる花もあると思った。
「脳で感じる花」と書いたところで、ふと思い出した桜があった。
奈良県庁や東大寺周辺に咲いている桜で、花が小さく、地味な感じなので、観光客は見向きもせずに通り過ぎていく。
(2015年4月29日撮影)
桜の名前は「ナラノヤエザクラ(奈良の八重桜)」という。
百人一首の「いにしへの 奈良の都の 八重桜 けふ九重に にほひぬるかな」(伊勢大輔)は、まさにこの桜を歌ったものだ。
本物と亜種があり、本物の幹には「八」と書いた木札がかけられている。
でも、本物と亜種を比べてもあまり見分けがつかない。
4月下旬から5月上旬に咲き、咲き始めると一斉に咲いて三日間ぐらいで終わってしまうので、見るチャンスが限られている。
最初は白く、だんだんピンクが混ざり、最後は赤く染まって落花する。
奈良市内の限られた地域にしか存在せず、奈良県の県花、奈良市の市花に制定されている。
ということを知ってて見るのと、知らないで見るのとでは・・・