万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

移民政策-そら恐ろしいバルセロナ方式

2016年01月05日 15時41分02秒 | 国際政治
スペイン・カタルーニャ再選挙の公算 独立派の連立交渉決裂
 昨晩、NHKの『クローズアップ現代』では、移民問題がテーマとして取り上げられておりました。この番組の中で、バルセロナ方式なる新たな移民政策の手法が紹介されておりましたが、バルセロナを取り巻く状況を考慮しますと、この方式、背筋が寒くなる側面がないわけではありません。

 当番組の説明によりますと、フランス等が採用している同化政策も、イギリスが推進してきた多文化共生政策も、テロの多発により共に失敗に終わったため、新たに世界的に注目を浴びるようになったのが、バルセロナ方式なそうです。バルセロナ方式は、移民を集住さずに個人化して住民の中に混住させつつ、出身国の独自の文化の保持は認めるというものです。いわば、分散政策、あるいは、メルティング・ポット政策の一種なのですが、移民受け入れを促進するために、幾つかの手法を併用しています。その一つは、若年層を対象とした徹底した教育であり、ラップ・ミュージック界の著名人を講師として招き、小学生に移民に対する偏見を排除する詩を作らせ、それを教室で発表させています。理想的な詩を作った生徒は、講師から称賛され、他の生徒たちも同調するように誘導されます。いわば、移民政策への批判の余地のない洗脳教育が実施されているのです。そしてもう一つの手法とは、アンチ・ルーマー運動であり、こちらは、成人を含む全ての市民が対象となります。アンチ・ルーマー運動では、市民の中から運動部隊が結成され、移民に関する”悪しき噂(ルーマー)”を聞き付け次第、駆けつけて噂を否定します。コメディー仕立ての寸劇で噂を消すこともあるようですが、こちらもまた、移民に関する全ての”悪い噂”は全て”虚偽”であると決めつけており、事実の追求は許されていません。ラッパーやコメディを用いるなど、表面上はソフトなのですが、どちらの方法とも、一つの思想を強要することにおいて全体主義的なのです。

 そして、バルセロナが、カタルーニャ独立運動の中心地であることに思い至りますと、この政策は、別の側面をも浮き上がらせることになります。それは、バルセロナ方式とは、民族性の消去を目的とした手法ではないのか、という疑いです。バルセロナでは、わずか10年余りで移民率が凡そ3%から15%に跳ね上がっており、バルセロナ方式は、移民数のさらなる増加を想定しています。この方式が、仮に”モデル”となって全世界に拡散されとしますと、国際社会における民族自決の原則は、危機を迎えることになるのではないでしょうか。

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