万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

北朝鮮の”水爆実験”-国際社会は筋を通すべき

2016年01月09日 15時27分14秒 | 国際政治
北朝鮮、SLBM発射実験?の映像を公開
 今月6日、北朝鮮は、”水爆”と称して地下核実験を実施したそうです。2003年のイラク戦争を思い起こしますに、北朝鮮もイラクと同じ道を歩むのでしょうか。

 イラク戦争では、独裁体制の下、サダム・フセイン政権が大量破壊兵器を隠し持っているとする疑惑の段階で開戦に至りました。大量破壊兵器保有の確たる証拠が発見されなかったものの、イラク側が、無制限無条件であるべき査察に非協力的であったことが、戦争への引き金となったのです。この時、査察を不十分として開戦に反対する声もありましたが、米英が押し切る形で”第二次湾岸戦争”が始まります。イラク戦争の経緯からしますと、北朝鮮による”水爆実験”は、”第二次朝鮮戦争”、あるいは、”北朝鮮戦争”を誘発してもおかしくはありません。何故ならば、イラク戦争時の開戦事由を、今日の北朝鮮はその大半を充たしているからです。第一に、大領破壊兵器の保有を宣言し、国際社会に重大な脅威を与えています。第二に、北朝鮮は、当時のイラク以上に強圧的な独裁体制が敷かれており、しかも、イラクのクルド人弾圧と同様に自国民を虐待しています。第三に、2009年4月以降、北朝鮮は、IAEAの査察団を追放し、核保障措置協定を破っています(1994年の米朝枠組み合意も、2007年の六か国協議の共同合意も事実上破棄…)。違いがあるとすれば、朝鮮戦争の休戦協定には、湾岸戦争の停戦決議(国連決議687)やその後の査察に関する国連決議(決議1154、並びに、決議1441)のような、大量破壊兵器の不保持義務に関する条文が含まれていない点くらいなものです。この点についても、今日のNPT体制にあっては、根拠なき秘密裏での大量破壊兵器の保持は(北朝鮮のNPT脱退は承認されていない…)、国連安保理において平和に対する脅威として扱われ、武力行使も選択肢の一つとなります。今後の国連安保理の対応次第では、北朝鮮は、核施設のピンポイント破壊であれ、全面的な戦争であれ、国際社会から武力制裁を受ける可能性も否定はできないのです。

 イラク戦争時には、イラク側の否定に呼応して米英の開戦論に反対した諸国も、北朝鮮が核保有を堂々と宣言している以上、無碍には反対はできないはずです。それとも、今度は手段を変えて、徹底した経済制裁という”兵糧攻め”で北朝鮮の核放棄と体制崩壊を試みるのでしょうか。北朝鮮の暴挙を容認したのでは示しがつかず、如何なる制裁手段を用いるのであれ、国際社会は、筋の通った対応をすべきではないかと思うのです。

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