万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

北朝鮮の無駄な言い訳

2016年01月10日 16時12分05秒 | 国際政治
水爆実験は自衛措置…金正恩第1書記指摘と報道
 新年早々、北朝鮮は”水爆実験”と称して、国際社会を唖然とさせる核実験を実施しました。この無謀な実験について、北朝鮮は言い訳を並べておりますが、どれ一つとして核実験を正当化できるものはありません。

 過去の事例からも観察されるように、北朝鮮の言い訳は、常々国際社会を説得させるにはほど遠く、逆効果でしかない場合が少なくありません。当実験についても、金正恩第一書記は、「主権国家の合法的権利であり、誰も中傷できない」と述べたそうですが、この発言も、北朝鮮が国際法が定める行動規範を守る意思がない”無法国家”であると宣伝したに等しく、自ら国際社会から批判される原因を作ったようなものです。”違法行為”を”合法行為”と言い募れば、危険視されるのは当然の事です。一般の社会にあっても、”私は、無法者だ”と叫べば、当然、”野獣”扱いされることでしょう。また、”米帝から国の自主権と民族の生存権を守るための自衛的措置”と弁明したとも報じられておりますが、これも、自衛どころか、国際社会による武力制裁の口実を自ら提供したようなものです。大量破壊兵器の開発・保有に伴う制裁リスクについては、全く度外視しているのです。加えて、北朝鮮は、中国に対しては、”水爆実験はアメリカを朝鮮戦争の平和条約締結交渉に引き出すための手段”と説明し、米中韓北の四カ国による講和交渉を持ちかけたともされています。この弁明についても、暴力で交渉の場が開かれ、たとえ講和条約の締結に漕ぎ着けたとしても、それが順守される保障はありません。北朝鮮は、自らは何にも縛られない”無法国家”であると、既に宣言しているのですから。

 北朝鮮は、長らく北朝鮮を覆ってきた特異なイデオロギーである”主体思想”、即ち、過激な自己中心主義による自家中毒状態にあるのかもしれません。狂った思想は、得てして誤った判断や悪しき行動しかもたらさないものです。他者の理解など歯牙にも掛けない一方で、自らの言い訳だけは他者から言葉通りに理解されると期待しているとしたら、北朝鮮の思考は、やはり狂っているとしか言いようがないと思うのです。

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