万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日独において”反対派を使う手法”が使われたのか?

2016年01月20日 15時54分49秒 | 国際政治
首相与党の支持率最低に=ドイツ
 
 ある政策を実現したい場合、国民の反発を避ける有効な方法として、”反対派にさせる”、という政治手法があります。例えば、保守政党にリベラルな政策を実施させれば、保守層からの反発を最低限に抑えることができます。逆もまたあり得ることであり、リベラル政党が、リベラルの看板で保守的政策を敢えて実行する場合もあります。

 それでは、この手法、実際の政治に用いられているのでしょうか。ドイツでは、保守派のCDU・CSUの党首であるメルケル首相が、従来とは次元の違う、大胆な移民受け入れ政策を実施しています。日本国でも、年末に、対韓譲歩とも言える電撃的な日韓慰安婦合意が成立しました。これらの政策は、保守政党による反保守政策の実施と言っても過言ではありません。しかしながら、両国とも、保守派の反発を抑えられたのか、というと、そうではないようです。メルケル首相は、支持母体である保守層からの離反を招き、今日、支持率は低下傾向にあるそうです。日本国でも、日韓慰安婦合意については保守層を中心に不安と不満が燻っています。世論調査では、内閣支持率の低下は報告されていませんが、もろ手を挙げて日韓合意を評価している国民は、リベラル政党支持者の方が多いのではないでしょうか。

 考えても見ますと、”反対派を使う手法”とは、保守からリベラルにかけて、背後で政界全体を操る存在を想定しなければなりませんし、仮に、このような”陰の決定者”が実在するとしますと、民主主義は、既に形骸化していることにもなります。何れにいたしましても、たとえ”反対派を使う手法”が使われたとしても、今日の政治あっては、その効果はもはや期待できないのではないかと思うのです。

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