万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

暴れ始めた北朝鮮は習政権弱体化の兆候?

2016年01月29日 15時43分45秒 | 国際政治
北朝鮮ミサイル警戒で連携=日米外相が電話会談
 衛星写真の解析によると、北朝鮮の東倉里のミサイル基地では、長距離弾道ミサイルの発射を準備している兆候があるそうです。年明けの”水爆実験”に続く暴挙と言えますが、北朝鮮の暴走は、一体、何を意味しているのでしょうか。

 ”水爆実験”に際して注目されたのは、中国の影響力の限界です。にも拘らず、中国は、現状では北朝鮮に対する制裁強化に対しては消極的であり、あくまでも北朝鮮の”後ろ盾”としての構えを崩していません。しかしながら、仮に、北朝鮮が、懸念されている通り、”ミサイル実験”に及ぶとしますと、自制を求めてきた中国は、再度、面子を潰されることは必至です(もっとも、中国が背後でけしかけている可能性もありますが…)。となりますと、北朝鮮は、中国からの反発を恐れておらず、無視を決め込んでいるようにも見えます。この中国に対する態度豹変の背景を推理してみますと、中国の習体制に異変が起きている可能性が疑われます。北朝鮮は、もとより国境を接する瀋陽軍区の人民解放軍と緊密な関係にあり、それ故に、習政権下の軍制改革に際して瀋陽軍区は北京軍区と合併させられた経緯があります。経済が好調であり、習主席への権力集中が順調に進んでいた時期には、北朝鮮も冒険的な行動を控えていたように見えるのです。一方、今日、北朝鮮が、核・ミサイル実験を再開したとしますと、それは、中国国内の権力構造の変化に呼応、もしくは、連動しているのかもしれません。仮に、習主席が人民解放軍を全面的に掌握しきれずにいる、あるいは、軍内部の”反習近平派”が北朝鮮との独自ルートを再開している場合には、習体制に対する揺さぶりとして、軍の一部が北朝鮮と協力している可能性も否定はできないのです。

 北朝鮮の動きの背景には、ロシアといった他の大国や国際勢力の思惑も働いているかもしれませんが、少なくとも、正確に状況を把握するためには、北朝鮮の国内事情のみならず、周辺諸国との影響関係の分析を急ぐ必要があります。長き歴史を通して激しい権力闘争が繰り返されてきた中国大陸では、真の目的と表の行動が常に一致するとは限らないのですから。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。


にほんブログ村

 

 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする