万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

北朝鮮の米朝首脳会談キャンセル警告-金正恩委員長は逃げ腰なのでは?

2018年05月16日 15時34分15秒 | 国際政治
北朝鮮「一方的に核放棄強要なら米朝首脳会談再考」米をけん制
 先月27日に板門店で開催された南北首脳会談は、北朝鮮危機の話し合い解決に向けた流れを巧みな演出によって造りだした観がありました。しかしながら、注目の米朝首脳会談を凡そひと月後に控えた今日、北朝鮮は、南北閣僚級会談を中止すると共に、米朝首脳会談のキャンセルをもする示唆するキム・ケグァン第1外務次官の談話を発表しています。

 北朝鮮が米朝首脳会談の再考を言い出した理由について、マスメディアは、対米牽制ではないか、と憶測しております。この説に従えば、アメリカから一方的に核放棄を強要される会談となるならば、金正恩委員長は、開催しない方が‘まし’と見なしていることとなります。つまり、キャンセルへの言及は、北朝鮮にとっての核・ミサイル開発とは、アメリカをはじめ国際社会から利益を引き出すための手段であって、見返りなき核放棄は受け入れられない、とする立場表明となるのです。

 北朝鮮は極端な自己中心主義の国ですので、首脳会談開催の決定権は自らのみにあると見なしている可能性は大いにあります。いわば、‘上から目線’で、アメリカが見返りを提供しなければ、交渉の席には着かないと脅迫していることとなるのですが、これまでの経緯を考慮すれば、この強硬姿勢は奇妙でもあります。何故ならば、米朝首脳会談を最初に提案したのは、金委員長自身に他ならないからです。トランプ米大統領は、北朝鮮側の意向に応えたに過ぎず、自らがイニシアティヴをとって金委員長の米朝首脳会談への参加を取り付けたわけではないのです。

 アメリカにとっての米朝首脳会談開催の意義とは、北朝鮮に対して‘見返り’を与えるためではないはずです。むしろ、北朝鮮に対し、米軍による軍事制裁ではなく、平和的手段による解決チャンスを与えることが目的であり、いわば、‘温情’であったはずなのです。つまり、北朝鮮が首脳会談の席に着くつもりがないならば、アメリカには、金委員長の意向を思い止まらせる動機がないのです。あるいは、ノーベル平和賞の授与が取り沙汰されているように、トランプ大統領の名誉心に訴えているのかもしれませんが、国家犯罪を繰り返してきた北朝鮮に‘見返り’を与える行為は、真の意味において名誉ある行為とは言い難く、その効果にも疑問があります。

 金委員長もまた、自らが首脳会談を一方的に放棄できる立場にないことは、内心、十分に承知していることでしょう。となりますと、金委員長は、既に米朝首脳会談に対して逃げ腰なのかもしれません。仮に、同会談において両者が決裂した途端、即、米軍による軍事制裁もあり得るからです。以前、中国の習近平国家主席が訪米した折に、トランプ大統領は、同主席をテーブルの隣にしてシリア攻撃を即断しております。また、イラン方式が無理であることが判明した、あるいは、アメリカを再度騙そうとしたことが既に‘ばれ’てしまったため、同会談を開く意味を失ったからかもしれません。

金委員長は、米朝首脳会談が開催されれば、合意が成立するにせよ、決裂するにせよ、北朝鮮にとりまして不利な結果しかもたらさないと判断した場合には、’次善の策?’として首脳会談を見送ろうとしたとしても不思議はありません。事の真偽を確かめるにはより詳細な情報を要しますが、米朝首脳会談がお流れになる可能性は否定できないように思えるのです。

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コメント (2)
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