万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日本国が新型コロナウイルス対中賠償を請求すべき理由

2020年05月02日 11時46分58秒 | 国際政治

 報道によりますと、武漢発の新型コロナウイルスのパンデミック化を受けて、各国では、中国に対して損害賠償を求める動きが広がっているそうです。これまでのところ、アメリカをはじめ、イギリス、イタリア、ドイツ、エジプト、インド、ナイジェリア、並びに、オーストラリアの国名が挙げられています。

 新型コロナ禍による世界経済に与えたダメージは甚大であり、IMFも、1929年に起きた‘大恐慌以来、最悪の不況を経験する可能性が高い’と述べ、今年の経済成長率も、年初のプラス3%予測からマイナス3.3%へと大幅に下方修正しています。全世界の諸国が被った損害分を全て中国が賠償するとなりますと、その額は、第一次世界大戦後にドイツに課せられた数字をも上回り、人類史上最大の賠償額を記録することとなりましょう。実際に、上記の8か国だけでも合計凡そ5300兆円となり、米ミズーリ州の訴訟を合わせますと1京円を超えるというのですから、まさしく天文学的な額です。

 それでは、各国の対中賠償請求が本格化してくる中、日本国政府は、どのような方針で臨むのでしょうか。日本国もまた、新型コロナウイルス禍の紛れもない被害国の一つです。既に同ウイルス対策を主たる目的とする2020年度補正予算が成立しており、その額は凡そ25兆6900億円に上ります。コロナ禍が発生しなければ不要な支出ですので、こうした国家の対策費は、対中賠償請求額に含めることができるかもしれません。因みに、東京オリンピックが中止となった場合の損失額だけでも、凡そ17.8兆円と試算されています。官民合わせた諸々の損失を含めますと、総額で50兆円を遥かに越えることでしょう。そして、非常事態宣言の期間が長引くほどにその額も積み増してゆくものと予測されるのです。

 新型コロナウイルスのパンデミック化の責任は、封じ込め可能な発生初期段階において重大な情報を隠蔽し、かつ、自国からの全面的な出国禁止措置(ウイルスの封じ込め措置)を怠った中国にありますので、日本国は、他の諸国と同様に中国に対して賠償を請求し得る正当な根拠を有しています。むしろ、賠償請求を見送る理由こそ見当たらないのです。

 しかしながら、国内のマスメディアの論調などを見ますと、海外での賠償請求の動きに関する報道は抑え気味であり、どこか自国とは関係のない‘よその国の出来事’のように報じています。日本国政府も、対中賠償請求問題については表立っては言及しておらず、普段は政府批判に終始している野党も沈黙を守っています。日本国内の消極的な姿勢の背景には、おそらく、自公連立政権の内部にあって主導権を握っている親中派の意向、即ち、中国からの‘強い要望’があるのでしょう。公共放送局であるNHKの社屋に中国電視台が入居しているぐらいですから、日本国のマスメディアの大半は、中国、あるいは、中国をも陰で操る国際組織のコントロール下にあるのかもしれません。賠償問題に関するオープンな報道や議論が中国からの圧力によって‘自粛’させられている状況からしますと、日本国政府がまたしても中国に‘忖度’し、国民の多くが泣き寝入りを強いられる可能性もないわけではありません。仮に、全世界の諸国が中国に賠償を請求するにも拘わらず、日本国一国だけが‘請求権’を放棄すれば、日本国民の多くは納得しないはずです。

現状では、今後の見通しは決して明るくはないのですが、ここで原点に返り、善き国際社会への貢献という側面から賠償請求の問題を捉えてみる必要があるように思えます。何故ならば、日本国政府による中国の犯罪的行為の黙認は、深刻なモラルハザードを意味するからです。国際社会における中国の無責任な‘反社会的行為’を放免しますと、将来に渡って何度となく同じ悲劇が繰り返されることとなりましょう。つまり、損害賠償を含め、同国の責任を厳しく問うことは、国際社会にあって法の支配を確立することに他ならないのです(主権平等の原則の下で全ての諸国が等しく国際ルールを護り、誠実に責任を果たしてゆく国際社会…)。

安倍政権は、その成立以来、常々、国際社会に向かって法の支配を強調してきたのですから、今般にあっても同原則を貫くべきなのではないでしょうか。そして、日本国が、大国の横暴を許さない公正で公平な国際社会の実現を志すならば、先ずは日本国の政界やメディア等における中国、並びに、その背後組織の影響力を排除してゆくべきなのではないかと思うのです。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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陰謀論に傾きすぎだと思う (Unknown)
2020-05-04 05:22:21
 アメリカの大統領府に属する情報組織も新型コロナは人工でもなく遺伝子組み換えでもないと言っている。
 中国が情報を提出するのが遅れたといっても、「あれ、この病気は何?」と戸惑ったのじゃないかな?何しろ武漢の惨状を見ても「あれ何?アハハ」だったヨーロッパ、アメリカ、日本なども、ものすごくボケていたのだから言えた柄でもないでしょう。
 武漢ウィルスをチャイニーズが世界へもっていったというのも変。アメリカやヨーロッパ、あるいは日本のビジネスマンが運んだかもしれない。要するに昔と違って人の交流が格段に増しているから伝染して行ったというべき。I-phoneを作るのに、どれほどのサプライチェーンがあるかを考えれば、そんなもの伝染するよ当たり前となる。JALやANAの飛行機が空港でたくさん駐機している映像を見れば、どれほど人が移動していたのかわかる。病気の拡散の原因は人の移動。
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Unknownさま (kuranishi masako)
2020-05-04 08:13:22
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。

 アメリカの情報組織は、科学的な判断はできませんので、政治的な認識としての発言ではないかと思います。少なくとも、新型コロナウイルスには、自然界のウイルスにしては不可解な点が多く、また、技術的にはウイルスの遺伝子改変は可能ですので、結論を出すにはまだ早いのではないでしょうか(武漢のウイルス研究所を含め、徹底した調査が行われたわけではない…)。なお、同ウイルスについては、中国政府には、WHOの加盟国として感染症の発生国として封じ込めの措置を採る国際的な義務がありました。ウイルスの拡散手段の問題ではなく、中国政府が意図的に情報を隠蔽し、同義務を怠ったからこそ、賠償請求を受けているのです。
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