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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ウクライナの核保有というトロッコ問題の回答

2022年10月10日 10時22分40秒 | 国際政治
 ウクライナ紛争を見ておりますと、当事国であるロシアにせよ、ウクライナにせよ、そしてアメリカをはじめとした他の諸国にせよ、何故、紛争の回避や激化を防ぐ方法がありながらそれを採用しようとしないのか、不思議でならなくなります。‘世界’の為政者達のこの非合理的な行動の連続が世界権力の存在を強く示唆するのですが、今般のクリミア橋爆破事件も、どこかに陰謀の陰が感じられます。

 クリミア橋爆破の一報で、先ずもって頭に浮かんだのが日中戦争の発端となった1937年7月7日に起きた盧溝橋事件です(日付が‘ぞろ目’である点にも注目を・・・)。同事件では、誰が発砲したのか、あるいは、何者によって仕組くまれたのか、正確な確認作業を欠いたまま、日中両国が本格的な戦争へと向かうこととなりました。このため、今日なおもコミンテルン等を主犯とする国際陰謀説も信憑性を以て語られるのですが、クリミア橋に爆破事件にあっても、ウクライナ側は自らの攻撃であることを匂わすに過ぎません。その一方で、ロシアのプーチン大統領は、同事件はウクライナ側の特殊部隊によるテロと断定しており、紛争の激化が避けられない状況に至っているのです。

 仮に、ロシアが同事件をウクライナ側の犯行と決めつけるとすれば、核兵器の使用リスクも格段に高めるため、日本国を含め、国際社会も重大な関心を寄せています。このため、ロシアが核の使用を試みた場合に対する対応として、様々な対抗策が提案されることとなりました。ところが、ここでも、理解しがたい不思議な現象が起きています。その道の専門家や識者であっても、誰も、ウクライナの核武装について触れようとしないのです。ある人はミサイル防衛システムの提供を提案し、ある人はアメリカによる核の報復について述べながら・・・。

 ロシアが核の使用を明言している以上、ウクライナには、非核を貫く義務も義理もないはずです。NPTの第10条では、「この条約の対象事項に関連する異常な事態が自国の至高の利益を危うくしていると認められる場合」には、各締約国は同条約から脱退できるとしています。ウクライナは、脱退条件を満たしているのですから、同条約を脱退して核武装に踏み切る権利を有しているのです。同国が核保有を宣言すれば、その決断に反対する国は殆どないことでしょう。そもそも合理的に考えれば、戦争状態や侵略を受けた状況下にあって、一方の当事国や被害国のみに核保有が許されないわけはないのです。

 それでは、アメリカにはウクライナの核保有を反対する理由はあるのでしょうか。もちろん、核保有国の特権を手放したくないとする大国固有の独占意識はあるのでしょう。しかしながら、最貧国とされる北朝鮮でさえ核を保有している現実を見れば、不完全で欠陥に満ちたNPTの存在がむしろ国際社会の平和を損ねていることは疑い得ません(既に、大国独占状態は崩壊している・・・)。また、核放棄後のウクライナの安全を国際的に保障した「ブダペスト覚書」に基づいて、アメリカがウクライナに代わってロシアに対して核兵器をもって報復するオプションもあり得ますが、同オプションを選択しますと、核戦争に留まらず、ロシアの反撃能力を完全に奪わない限り、即座に第三次世界大戦へと発展する展開となります。ロシアによる対米攻撃は、NATOを枠組みとした集団的自衛権の発動を意味するからです。片務条約とはいえ、日本国もアメリカとは軍事同盟を結んでいますので、傍観者を決め込むことは難しくなりましょう。

 アメリカによる核の報復が第三次世界大戦を引き起こし、アメリカ本土がロシアの核攻撃の対象となり得るとなりますと、ウクライナによる単独核保有の方が、遙かに人類にとりまして望ましい選択と言うことになります。ウクライナは核の抑止力によって自国の防衛力を格段に強化することができますし、たとえ核戦争が起きたとしても、それは、第三次世界大戦に発展することなくロシアとウクライナ間に限定されるからです。倫理学にあってトロッコ問題というものがありますが、この選択は、同問題における一つの回答ともなりましょう(トロッコ問題とは、暴走したトロッコの先に分岐器があり、ここで線路を切り替えれば、直線上にいる5人は助かるけれども、別の路線上にいる1人は犠牲になる場合、どのように判断するのか、という問題。「ある人を助けるために他の人を犠牲にするのは許されるか?」を問うている・・・)。

 誰かが必ず犠牲にならなければならないトロッコ問題は、多くの人々を悩ませてきた問題であると共に、できることならば、現実には起きてほしくないと誰もが願っている問題でもあります。しかしながら、しばしば、政治の世界では、トロッコ問題、否、同問題をより複雑にしたような犠牲選択の問題に直面してしまうことがあります。それでもなお、ウクライナの核保有は、その報復効果による抑止力が有効に働けばロシアによる核の使用を回避できますし(線路上に防壁を設けるようなもので、必ずしも犠牲になるとは限らない・・・)、核戦争を伴う第三次世界大戦による滅亡の危機からも人類を救うことになるのです。もっとも、仮に同紛争が世界権力によって予め仕組まれたものであり、同計画が白日の下に晒され、多くの人々がその阻止に務めれば、トロッコ問題そのものが消滅することになりましょう。犠牲を迫るトロッコが壊れてしまうのですから。

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世論調査に見る‘秘密投票’の問題

2022年10月07日 10時55分34秒 | 統治制度論
 安部元首相の国葬に対する国民の評価については、目下、真逆の見解が錯綜するという奇妙な状況を呈しています。献花台に並んだ長蛇の列から、事前の世論調査とは逆に実際には国葬賛成派が多数とする主張がなされる一方で、同献花者は、新興宗教団体による動員もしくは信者達による自発的協力ではないかと疑う声もあります。また、高市大臣からの伝聞とした‘SNSの国葬反対の8割は大陸由来’とする三重県県会議員のツイートも物議を醸しています(旧統一教会が大陸由来の新興宗教団体である点を踏まえると、逆に、国葬賛成派が大陸由来である可能性の方がよほど高いから)。一体、真実はどこにあるのか、誰もが正確には分からないのです(もっとも、元統一教会との関係を考慮すれば、反対多数では・・・)。

 国葬の評価をめぐる今般の混乱から分かった一つだけ確かなことは、何れの立場であれ、多くの人々が世論調査の結果、メディアの映像、SNS等を疑っているという事実です。これらに共通する問題は、誰もが客観的に確認できないという点にあります。世論調査であれば、実施者が回答者を恣意的に選んだり、数字を改竄することは意図も簡単なことです。また、献花台に並んでいた人々が誰なのか、同僚、血縁者、隣人といった縁のある人以外、映像を見ただけでそれを判別できる人はいません(特に、マスク着用となると映像からでは殆ど判別不可能・・・)。たとえ組織的な背景があったとしても、全国各地から自発的に集まってきた‘一般国民の参列者’として報じることができるのです。この点、個人のアカウントが設定されているSNSの方が外部からの工作は難しいかもしれません。

何れにしましても、‘国民’と言った不特定多数の実像を、その一部を以て数字や映像で表わそうとする場合、実施者によって操作されてしまうリスクが常に伴います。献花者動員説は‘邪推’と表現されがちですが、政治的動員は、民主主義国家にあっても頻繁に用いられている国民誘導手法の一つですので、‘邪’ではなく、理性に基づく合理的な推理です(動員は、必ずしも左翼系団体のデモとは限らない・・・)。否、国民が主権者である民主主義国家であるからこそ、国民を自らの都合のよい方向に動かしたい側からしますと、世論を誘導したり、偽装することは、極めて重要な作業となるのでしょう。

 それでは、この問題、どのようにしたら解決されるのでしょうか。自然科学の世界では、如何なる説も客観的な検証が要求されます。他者によって再現できない研究結果は、それが如何に尤もらしいデータ上の数字が並んでいても、科学的な理論、つまり、事実として認めてもられないのです。政治や社会の分野にあっても、数字が使われている以上、事後的な検証が事実認定の条件となるのは言うまでもありません。無検証な数字は、頭に浮かんだ主観的な文字や記号に過ぎず、それが事実であることを証明する一切の根拠が欠けているのです。因みに、この側面は、デジタル化を進めれば進めるほどに、数字に対する不信感が増してしまうというパラドックスをも説明しています。

 調査結果の数字に対する検証の重要性が理解されますと、自ずとその解決方法も見えてきます。つまり、先ずもって、誰もが客観的な立場から検証できる形での調査方法を考案する必要があります。特に、民主主義国家では、国民の意見が重要視されていますので、世論調査にあっては厳密なる検証が求められるべきなのです。この点に注目しますと、‘秘密投票’という方法にも問題があることに気付かされます。公表された調査結果については、メディア等を介して見る人のみならず、アンケートに答えた人自身さえ、自らの回答が世論調査の結果に正確に反映されているのか、確認することができないからです。最も確実な方法は、回答項目ごとに全ての回答について氏名リストを作成し、回答者のアイデンティティーを確認できるシステムを導入することなのかもしれません。

もっとも、この案に対しては、プラバシー保護、並びに、政治的意思表明に伴う政治的リスクの観点から難色が示されることでしょう。そして、ここでこの問題は、実のところ、ネットやSNSにおける匿名性の問題のみならず、普通選挙という民主主義の基盤となる制度の問題ともリンケージせざるを得なくなります。何故ならば、秘密投票とは、民主的選挙制度を構成する原則の一つであるからです。

先のアメリカ大統領選挙では不正選挙問題が持ち上がりましたが、その際に紹介されたのが、既に導入済みの州や地方自治体もあるという、自らの投票を後にチェックできるシステムです(もっとも、自身の投票の確認だけでは不十分・・・)。同システムの詳細は不明ですが、今後、検証性を飛躍的に高めるシステムが開発されれば、同問題は解決に向かうことでしょう(選挙については、検証テクノロジーが未開発の段階では、人の手による集計の方が安全かもしれない・・・)。世論調査にあっても、秘密投票に起因する人為的数字操作の問題は、テクノロジーによって解決する日が、近い将来、訪れるかもしれません。それまでの間は、世論調査の結果が示す数字については、国民にとりましては‘話半分に聞く’程度となり、政府にあっても政策決定の決定的な根拠とはなり得ないということになりましょう。

以上に投票の秘密性に関する問題を述べてきましたが、政治に関する世論調査は、政府の政策運営にも影響を与えますので、今日、統治機関と国民とを繋ぐ民主的ルートの一つと見なされています。それ故に、秘密投票の問題は、国民が自らの政治的選択や意見を自由に表明する公開主義が望ましいのか、それとも、身の安全を確保すために誰にも知らせない秘密主義が望ましいのか、という、民主的社会の根本問題をも問うているように思えます(世論調査側も不正選挙を行なった側も秘密投票を悪用?)。また、今般、ロシアは、ウクライナ東部・南部4州の併合に対する非難決議案の国連総会での採択に際して、秘密投票を提案していると報じられていますが、国際社会にありましても、秘密投票による無検証のリスク(数字の信頼性の低下・・・)と公開公表による安全リスク(賛否何れにしても不利益を受けるリスク・・・)というジレンマに直面しているのです。どのようにすれば、同ジレンマを解くことができるか、この問題は、人類の叡智にかかっているように思えるのです。

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ウクライナ紛争は世界権力による誘導なのか?

2022年10月06日 14時31分00秒 | 国際政治
ウクライナ紛争を観察しておりますと、合理的には説明できないような極めて不自然な現象が多発しています。‘戦争は狂気である’として片付けてしまう向きもありますが、自ら危機を招くような各国の為政者の様子からしますと、世界権力の描いたシナリオに沿って演じているに過ぎない可能性も否定はできないように思えます。二度の世界大戦を含む近代以降の歴史には、イエズス会、東インド会社、秘密結社等の系譜を引く世界権力が背後で糸を引いていた形跡が残されています。今般のウクライナ紛争も、同権力体の存在を視野に入れつつ、慎重には慎重を期して対応しませんと、人類はまたもや世界大戦の悲劇に見舞われることでしょう。現実は、狂気に見せかけた世界支配のための戦争であるのかもしれないのですから。

 それでは、プーチン大統領もゼレンスキー大統領をも上部から操る世界権力による誘導という視点から見ますと、ウクライナ情勢は、どのように説明されるのでしょうか。報じられているように、ロシアは、9月30日にウクライナ東部・南部の4州の併合(ロシア連邦共和国への加盟)を宣言しています。世界権力の目的が第三次世界大戦に誘導することにあるとしますと、同併合宣言には、別の意図が隠されていることとなります。それは、核戦争のハードルを下げる、あるいは、撤去してしまうというものです。プーチン大統領は、自国領域に対する攻撃を核使用に踏み切る判断基準としていますので、占領地がロシア領ともなれば、同国の核使用の口実を与えることになるからです。

 その一方で、アメリカのバイデン大統領は、ロシアによる核使用に対しては断固たる措置をとると明言していますので、紛争の激化と拡大は必至の情勢となります。アメリカが1994年のブダベスト覚書を根拠としてロシアに対して核兵器による報復攻撃を行なえば、通常兵器による戦争から核戦争へと発展しますし、アメリカによる対ロ核攻撃は、同時に米ロ両国間の開戦を意味します。ロシアがアメリカに対して直接に攻撃すれば、NATOにおいて集団的自衛権が発動されるのは言うまでもありません。かくして、第三次世界大戦の火蓋が切って落とされることとなるのです。

もっとも、併合は宣言されたものの、軍隊が武力で制圧している占領地であるために国境線が曖昧との指摘があります。これは、現在、核兵器使用の基準が定まっていない状況にあることを意味します。つまり、即座に核戦争に発展するリスクは緩和されています。即、核戦争となりますと事態をコントロールできなくなる可能性があるからなのでしょう。実質的に全世界の‘核のボタン’を握っている世界権力は、ロシアによる核使用のタイミングを見計らっている、あるいは、使用する核兵器は戦略核とするのか戦術核とするのか、慎重に判断しているのかもしれないのです。戦術核、即ち、小型核兵器の使用であれば、本格的な世界戦争、否、世界支配を前にして、同兵器の威力を実験したいのかもしれません。

 こうした世界権力の存在を仮定した憶測に対しては、ロシア軍の劣勢を根拠として陰謀論や妄想に過ぎないとする反論もありましょう。目下、オセロゲームに喩えられたように戦局が逆転しつつあると報じられております。ウクライナの勝利は目前であり、プーチン大統領の失脚により同紛争は程なく収まるであろうと・・・。第一次世界大戦にあってキール軍港における水平の反乱によりヴィルヘルム2世が退位を余儀なくされ、その後に調印されたヴェルサイユ条約によりドイツが徹底的に弱体化されたように、今後、ロシアには、プーチン政権瓦解による屈辱的な敗戦が待ち受けているかもしれません(プーチン大統領が世界権力の駒であれば、元より敗戦シナリオが準備されている可能性も・・・)。(2022年10月17日追記)

 しかしながら、事はそう単純ではないように思えます。ロシアの敗戦色が濃くなるほどに、同国は追い詰められた状況になるのですから核兵器使用の可能性は高まるからです。核兵器には、戦局を逆転するほどの破壊力があります。つまり、結局、上述したシナリオに合流する可能性がありますので、決して楽観はできないのです。

そして、最終目的が世界支配であるとしますと、ウクライナ紛争には、もう一つのプロジェクトが同時進行しているとも推測されます。同プロジェクトとは、人口削減です。人口削減につきましては、コロナ・ワクチンに関連して囁かれておりますが、しばしば人類の人口は地球の環境が耐えられない程に多すぎるとする‘科学的な見解’を目にします。過剰人口説の根拠は地球環境にあるのですが、世界権力の視点からしますと、全人類を一人残らずIT等を用いて監視下に置くには多すぎると言うことかもしれません(膨大な電力が必要・・・)。ロシアの動員令の発令もこの文脈から理解されますし、核戦争を伴う第三次世界大戦にまで発展すれば、その死傷者の数は先の二つの大戦と比ではないはずです。

日本国内を見ましても、中国という国が非道な無法国家であることは紛れもない事実ではあるものの、元統一教会と癒着してきた保守政党から発せられる対中強硬論については扇動の疑いを拭い去ることができません。また、政権が危機に瀕するたびに都合よく北朝鮮がミサイルを発射し、日本の首相が‘国家と国民を守る強い指導者’のパフォーマンスを繰り返されるのも、単なる偶然とは思えないのです。こうした推理は陰謀論として一笑に付されがちですが、陰謀が渦巻いてきた人類の歴史を振り返りますと、最悪の事態を未然に阻止し得る時期を逃してはならないと思うのです。

 

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元統一教会被害者の救済は献金等の返還・賠償支払いで

2022年10月05日 12時18分10秒 | 国際政治
世界平和統一家庭連合(元統一教会)との関係が批判を浴びている現状に対応すべく、自民党は、「霊感・悪徳商法等の被害救済に関する小委員会」を設け、霊感商法や多額の献金などが問題視されている同教団から被害を受けた信者やその家族に対する救済措置を設ける方針なそうです。具体的な対策としては、相談体制の充実や再発防止を目的とした法改正が挙げられています。しかしながら、同問題の被害が金銭的なものである以上、最も必要とされているのは、教団側からの被害者への献金等の返還や賠償の支払いではないかと思うのです。

今般の救済策から垣間見える自民党の基本戦略は、自党と同教団との関係に触れることなく、新興宗教団体の反社会的行為として片付けてしまう‘他人事作戦’のようです。霊感商法や悪徳商法の取り締まりに特化する、あるいは、矮小化すれば、政治と宗教との癒着問題に立ち入らなくても一先ずは解決を装うことができるからです。言い換えますと、同教団をかくも巨大な組織に育てた責任が自らにあることには頬被りをし、あたかも被害者を救おうとする救済者に見せかけようとしているのです。霊感商法や悪徳商法に限定すれば、連立相手である公明党の支持母体である創価学会に火の粉が飛ぶこともありませんので、一石二鳥でもあるのでしょう。真に必要とされている宗教団体による選挙協力、政治動員、秘書等の派遣を禁じる法改正も遠のいてしまいます(公明党の存在は、現行の憲法にあっても違憲では・・・)。

その一方で、報じられているように相談室を設置しても、法改正を行なったとしても、おそらく、世界平和統一家庭連合にとりましては、教団存立の危機に陥るほどのダメージとは与えないかもしれません。既に莫大な資金を日本国内の信者から吸い上げていますし、法改正によって解散を命じられない限り、信者からの献金システムは維持されるからです(同教団と密接な関係にあった萩生田政調会長は、既に解散は難しいと述べている・・・)。布教方法の偏向や献金額の制限等によって資金源は細っても、教団は生き残ってしまうのです。また、政治との関係についても、教団側は、自らと‘同じような考え方の政治家‘への応援は続けるとも述べていますので、結局、両者の関係は地下に潜ってしまうこととなりましょう。

今般の被害者救済は、いわば、自民党、世界平和統一家庭連合、公明党、創価学会にとりまして最もダメージを低く抑えることができる‘最適解’なのでしょうが、この方法では一般の国民も教団信者被害者も取り残されてしまいます。そこで、先ずもって試みるべきは、教団へ提供された資金を取り戻すことです。安部元首相暗殺事件の容疑者である山上の供述が事実であれば、教団への献金は、それが自発的なものであれ‘搾取’や‘詐欺’と言っても過言でありません。今般、教団側は、献金額を月収の三分の一を超える場合には、家族の同意を確認するとした自己改革案を公表していますが、裏を返しますと、三分の一以下であれば、家族の同意なく献金ができることになりましょうし、家族の同意があれば、三分の一以上献金できることにもなります。

霊感商法につきましては、刑法、不当景品類及び不当表示防止法、消費者契約法等を根拠として、法律上の罪や違法行為を問うと共に損害賠償を求める民事裁判を起こすことできます。購入した壺において教団側が説明したような霊験や効果が現れなかったことを証明すれば、詐欺罪や不当表示が成立するかもしれませんし、消費者契約法でも、契約の取消し並びに返還請求ができる可能性があるそうです。それでは、信者の献金はどうでしょうか。

信者が定期的に教団側に提供するお金については、献金、寄付、贈与、会費の何れに当たるのかという議論があるそうです。もっとも、世界平和統一家庭連合は、献金と表現していますので、法律上は献金として捉えられているのでしょう。ところで、献金となりますと、贈与等とは異なり、政治献金と同様に受け取る側の活動目的が限定されます。信者は、教団の宗教活動を資金面から支えるために、自らのお金を宗教団体に提供していることとなるのです。このため、宗教活動からの逸脱がありますと、返金請求が認められるケースもないわけではありません(福岡地方裁判所平成12年4月28日判決・・・)。同教団は、水面下では反社会的活動を行なってきましたし、信者に対して自らの侮日・反日的な政治活動の実態を伏せてきた可能性もあるからです(もっとも、同教団は韓国の宗教団体ですので、信者の多くは朝鮮半島出身者であり、侮日・反日活動を黙認していた可能性も・・・)。また、祖先が地獄で苦しんでいると言った畏怖誤信があり、「社会的に相当な範曲を逸脱した行為」として勧誘自体にも違法性があれば、民事上の損害賠償が認められたケースもあります(東京地方裁判所令和2年2月28日判決など・・・)。

今日の新興宗教団体は、潤沢な資金力をバックに政治に対しても介入してきたのですが、信者や元信者からの返金や賠償請求やのラッシュが起きれば、その存立基盤が崩れることとなります。自己保身から政治サイドが動かないのであれば、司法による救済のほうが、様々な反日カルト教団を消滅に向かわせるという意味において、余程、効果的なのではないかと思うのです。

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政治家による権力世襲化問題-岸田首相の縁故人事

2022年10月04日 13時00分58秒 | 統治制度論
報道によりますと、岸田文雄首相は、自身の長男であり、公設秘書を務めてきた翔太郎氏を首相秘書官に任命する人事を固めたそうです。この人事に関するネット上の反応を見ますと、同報道に接した国民の間から厳しい批判の声が沸き起こっております。露骨過ぎるとも言える同縁故人事に疑問を感じない国民は殆どいないかもしれません。民主主義とは真逆の方向に歩き始めているのですから。

 政治家による縁故人事は、これまでも国民には見えないところで頻繁に行なわれてきたのでしょう。岸田首相自身も2世議員であり、今回の一件は、首相職にあって長男を登用したために目立ちはしたものの、従来の政界の慣行を踏襲したに過ぎないのかもしれません。後継者として選んだ自らの実子や血縁者をまずは自身の事務所に採用し、公職を得た際には私設または公設の秘書官に登用するというものです。そして、スムースに‘権力’の世襲を実現するためには、政府内部の仕組みを知り、実務経験を積む必要もありますので、首相秘書官といったポストは、いわば‘インターン’のようなものなのでしょう。もちろん、先代政治家の死去により、急遽、民間から転じて跡継ぎとなるケースも見受けられますが、政治家の血縁者には、‘権力’への特別の道が敷かれているのです。

 こうした水面下で構築されてきた政治職の世襲化、あるいは、政治権力の私物化システムが、民主主義を損ねてきたことは言うまでもありません。先ずもって、リンカーンの言葉を借りれば、民主主義とは、「人民(国民)の人民(国民)による人民(国民)のための政治」と端的に表現されるのですが、政治職が世襲されますと、「○○家の○○△□による○○家のための政治」に堕してしまうのです。政治権力とは、安全、安心、安定を求める国民の必要性に正当性の根源を有しますので、権力の私物化は、それが喩え人類史において世襲君主制として多々見られたとしても、古今東西を問わずに‘悪政’と見なされてきたのです。

 前近代の世襲制にあっては善き統治者の出現は神に祈るしかなかったのですが、人類は、民主主義の制度化に成功することで、世襲制とは異なる統治システムへと移行をしてゆきます。民主化こそ致命的な欠陥を有する世襲制から人類が脱却する契機となったのですが、今日の日本国の政治状況、否、世界的な傾向を見ますと、時代が世襲制に向けて逆戻りしているような錯覚さえ覚えます。岸田首相が認識している日本の政治体制とは、お飾りとしての将軍がトップに座しつつ、日本各地の各藩が大名家によって支配されている江戸時代と変わりはないのかもしれません(世襲政治家の家々による支配)。あるいは、太陽王とも称されたルイ14世の如くに‘朕は国家なり’と考えているのでしょうか。

 世代を重ねて世襲が慣例化するほどに民主主義との乖離も深刻となり、政治家の一族は、政治家同士では繋がる閉鎖的な世界を創ってゆくことでしょう。密室化した空間では、民主主義を装いながら国民をコントルールするためのノウハウが秘伝、あるいは、機密情報として伝達され、併せて政治利権も引き継がれてゆくことが推測されます。いわば、民主主義が普遍的な価値とされる現代にありながら、閉鎖的な‘政治家マフィア’による少数者支配が常態化するのです。二重思考的に表現すれば、‘世襲は民主主義なり’となるのです。

 それでは、何故、普通選挙という民主的人事制度が存在し、誰もが職業選択の一つとして政治家になり得るにも拘わらず、かくも政治家の世襲が蔓延してしまうのでしょうか。おそらく、この問題は、政府と国民との連結や国民の被選挙権の公使に関する仕組みに重大な欠陥があるからなのでしょう。メディア等も、選挙権に関する‘一人一票同価値’についてはヒステリックな程までにその絶対平等を求める一方で、‘カバン、ジバン、カンバン’の‘三バン’がなければ当選しないとされ、著しく不平等な被選挙権については、国民の関心が向かないように誘導しています。選挙に際しての供託金制度一つとりましても、事実上の財産に基づく制限選挙となり、憲法違反ともなりかねないにも拘わらず、政治家もメディアもこの問題については無視を決め込んでいるのです。

 政治家が自ら民主主義を軽視し、世襲の実例を国民に見せつけているとしますと、日本の社会は閉塞感や停滞感に覆われることとなりましょう(世襲問題は、今日、政界に関わらず様々な分野において目立ってきている・・・)。個々の努力は報われず、才能や能力等に関係なく、生まれによって凡そ全て決まってしまうのですから。政治家は、‘開かれた○○’、‘活力ある日本社会の実現’、‘国民のための改革’、‘誰一人取り残されない社会’といった耳に心地よい言葉を連呼し、あるいは、民間企業に対しては‘身を切らせる改革’を推進しながら、その実、国民の目には自らの一族の権力保持と繁栄のみを願い、私的利益のみを追い求めているように映ります。そして、世襲制は、血脈や家名のみで尊敬や特別扱いを求めるという意味において(国民が思考停止している状態を望む・・・)、権威主義とも親和性が高いのです。

政治家やその一族による権力の私物化を防止し、政府を国民に対して統治機能を提供する公的な機関とするためには、上述したように、障壁となる規制を緩和・撤廃し、政治家という職を国民に広く‘開放する’必要がありましょう。加えて、首相の人事権を制限する改革も要するかもしれません。現状では、首相の一存で、今般の子息の縁故採用のみならず組閣も自由自在なのですから。民主的選挙は、人事権という意味において民主主義の入り口、あるいは、民主的制度の一部に過ぎず、就任後に決定される政策内容をも問われなければ、真に国民のための政治は実現しないこととなりましょう。国民は、国政選挙であれ、地方選挙であれ、選挙に際しては、権力の私物化や世襲化の防止を含め、真の民主化に向けた政治改革を公約として掲げる候補者に、清き一票を投じるべきではないかと思うのです。

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最も平和的なウクライナ問題の解決方法とは?-和平案

2022年10月03日 13時21分07秒 | 国際政治
先日、ロシアのプーチン大統領は、軍事介入によって占領したウクライナ東部並びに南部の4州の併合を、今月23日から27日にかけて実施された住民投票における賛成多数の結果を根拠として宣言しました。クリミアに続くロシアの強引な領土併合の強行に対して、当事国のウクライナのみならず、アメリカをはじめ国際社会から強い反発が起きています。国連安保理にあっても、アメリカとアルバニアが共同で非難決議案を提案したのですが、同決議案はロシアの拒否権の前に葬り去られています。

 ロシアが東南部の4州を自国領として認識するに至ったことで、今後、ウクライナ紛争が核戦争に発展する恐れもあります。何故ならば、プーチン大統領は、過去において核使用の判断基準は、自国領への攻撃であると述べたことがあるからです。主観的ではあれ、同地域がロシア領と見なされれば、ウクライナ軍による占領地奪還の軍事行動は、ロシア領への直接的な攻撃と見なされかねないのです。実際に、ウクライナ軍によるリマン奪回を前に、ロシア国内では核兵器の使用を求める声も聞かれ、チェチェン首相に至っては、「国境付近一帯への戒厳令発令や低出力の核兵器の使用」を提案したとも報じられています。ロシアの核使用については、アメリカは容認せずの姿勢を示していますので、ウクライナ情勢は、第三次世界大戦並びに核戦争にも発展しかねない極めて危険な状況を呈しているのです。それでは、人類破滅への道を未然に防ぐことはできるのでしょうか。

そもそもウクライナ紛争の主たる原因は、同地域における多民族混住の状態にあります。ユーラシア大陸中央部に位置する同地域では、長きにわたる歴史において様々な民族や国家が興亡を繰り返してきました。キエフ公国を共通の起源とするベラルーシを含めてロシア人とウクライナ人の三者を明瞭に区別するのは難しいとされていますが、東部・南部の地域はロシア、並びに、ウクライナ双方とも‘固有の領土’とは言いがたい側面があるのです。このことは、手続きや手段においては国際法違反が問われているものの、同紛争の原因については、民族紛争、即ち、政治問題であることを示しています。民族対立が主因であれば、まずもって、この問題を解決しないことには紛争は収まりません。そこで、以下の住民投票の再実施を軸とした和平案を考えてみることにしました。

1.ロシア占領地への武器を携行した中立的国際監視・調査団の派遣

・国際監視・調査団の構成は両国に対して中立的な国の部隊(軍隊)が望ましい
・住民が自由に意思表示できる状態を確保する。
・ロシアが占領地から自軍を撤退させて同地の管理を国際監視団に委ねる可能性はゼロに近いので、国際監視団の受け入れと安全の保障はロシア側に求める。

2.国際的な監視下での住民・現地調査の実施

・国際監視団・調査団によるロシア側占領地内におけるロシア系とウクライナ系それぞれの人口・世帯数、居住地域、宗教等の実態を調査する(なお、ウクライナにはユダヤ教徒も多い・・・)
・紛争に伴う双方の公的施設、並びに、国民の被害や損害状況を把握する。
・同時に、ウクライナ領内の非占領地並びに全世界のウクライナ難民の実態も調査する。

3.ロシア・ウクライナ間の歴史調査

・ソ連邦時代にウクライナ人並びにロシア人の強制移住が行なわれていた場合には、双方の個人の請求権、並びに、帰還の希望の有無を把握する。

4.ウクライナにおけるロシア側占領地の将来に対する選択肢の提示

 ①ウクライナ領残留
 ②ロシア領編入
 ③人口比率+居住地域を基準とした分割(双方の住民の同族居住地域への移住も許す・・・)
 ④独立(全州、各州、複数の州による合邦・・・)
なお、何れのケースでも、マイノリティーとなった住民の保護は相互に保障する

5.各州の帰属に関する住民投票の実施

・住民の過半数以上の賛意が得られるよう、投票は、最終的に一つの案に絞り込むことができる複数回方式が望ましい。
・投票資格は、紛争発生以前に同地域に居住していた住民に限定する(紛争後に多数派工作のために移住してきたロシア人には資格を認めない一方で、ウクライナ非占領地並びに海外の避難民には投票権を付与・・・)。

6.各州の投票結果に従った解決

・投票結果に従い、各州は、全部または一部が、ロシア領、ウクライナ領、独立国家となる。
・投票結果によって移住を余儀なくされた双方の住民に対しては、両国政府がフォローする(不動産売買の斡旋、補助金の支給、新たな居住地の提供・・・)。
・自国領となった地域にあって、ウクライナ政府の過去の公共投資によって建設されたインフラ等の残置財産に対しては、たとえそれが既に破壊されていたとしても、ロシア政府、あるいは、独立国家の新政府が、ウクライナに対して補償金を支払う。
・紛争に伴う双方の国民間の被害に関する請求権を精算する。
・ソ連邦時代に強制移住させられたウクライナ人に対して、ロシア政府、あるいは、独立政府は補償する。

7.ロシア・ウクライナ間の国境画定条約の締結と国際的な承認

 以上に、過去の戦後処理や講和条約等を参考としながら和平案のスケッチを描いてみました。ロシアの一方的、かつ、軍事的な圧力の元ではなく、住民の自由意思の表明が保障された環境下での住民投票であれば、その結果については、民族自決の原則に沿う形で正当性が生じることでしょう。すなわち、仮に当該和平案のもとで住民投票が行なわれれば、今般のロシア主導の投票結果と比べれば併合への賛成率は下がり、全州併合の結果は得られなくとも、同地域の人口構成を踏まえれば、ロシアへの併合支持多数が予測されるからです。この案が既に実施済みの住民投票の無効を意味する点においては、ロシアは同案に難色を示すでしょうが、既住の住民がロシア寄りの選択をすれば、ロシアとしても国際的な承認の元での併合が実現します。一方、ウクライナは、今般におけるウクライナ側の被害、並びに、ロシア政府及び独立国家の新政府に移譲することになる残置財産についてはロシアから補償を受けられますので、実質的な被害や損害を最低限に抑えることができます。そして、何にもまして、和平案が成立すれば、双方の国民の命が守られることになりましょう。若者達も、動員されることも、死を覚悟して戦地に赴く必要もなくなるのです。

ウクライナ紛争のエスカレーションは、当事国の両国のみならず、全人類の存亡の危機となりましょう。悲劇的な結末に至らぬよう、日本国を含む国際社会は、双方の国民、並びに、多くの人々が合意し得る和平案の作成、並びに、その実現に向けた努力を惜しんではならないと思うのです。

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