この夏、そこにあった宇宙。 (恩寵の時空、色彩の記憶)
鼻先すぐのところに朝露の雫の冷たさを感じながら、
そこでは異界の断片が漏れ出して(Revealして)いるようでもあった。
風景というか、空気の質感みたいなものが似ている。
ポールの今度の新曲は、なんと、アクション・シューティング・ゲーム「Destiney」のテーマソング。
”なお、ポールは作曲家のマイク・サルバトーリとマーティ・オドネルとともにゲームのスコアも担当しています”とのこと。
ポールの音楽は異界のフィールドをも行き来する。
内田樹先生の鋭い論考は、音楽にまで及ぶ。
私たちの自己中心性と愚鈍さの核にあるのは、判断基準のでたらめさではありません。
むしろ、判断基準のかたくなさです。
マルクス主義が支配的なイデオロギーである時代が終わった今でも、
多くの人々は依然として歴史は「鉄の法則性」に従って粛々と「真理の実現」に向かって流れていると信じています。
これは、ほんとうです。
さすがに人間社会が「未開」から「文明」へ直線的に進化していると素朴に信じている人は少なくなりましたけれども、
いまここにあるものだけが存在するに値するものであり、存在するに値しないものは消滅した
(あるいは、消滅したものは、存在するに値しなかったものだ)
という「歴史の淘汰圧」についての信頼は にわかには揺るぎません。
「これからは・・・の時代だ」とか「・・・はもう古い」ということばづかいの前提にあるのは、
この歴史の淘汰圧への盲信であると言ってよいでしょう。
このような考え方を本稿では「歴史主義」と呼ぶことにします。
歴史主義は音楽史を語るときの私たちの考え方にも深く浸透しています。
現に、いまだに「今・ここで・私が」聴いている楽曲こそ、
歴史の審判と市場の淘汰を 生き延びた、もっとも洗練され、もっとも高度で、もっとも先端的な音楽であると、
何の根拠もなく信じているリスナーは少なくありません。
インドの探査機を含む7台もの火星探査機が火星の軌道に集まっているというニュース、
映画ゼロ・グラヴィティの製作費より安いコストでインドの火星探査は実現したというから凄い時代になってきました。
さて、科学が力を持った背景にはダーウィンの「進化論」の発表が関係していて、
新しいこと、変化することが「向上」することを意味し始め、
「生存競争」に生き残るために変化してゆくことが正義と同等の意味を持ち始めた、という考え方があります。
(芸術とはナニモノなのか)
内田先生が指摘する「歴史主義」は、同時代に、「進化論」に裏打ちされて常識化していったものだと考えることができます。
太古の黄金時代や古来の聖典にこそ真実が存在し、
参照すべきは未来ではなく、過去や創世記にある、という考え方は捨てられた。
進化することや、新しいことが良いことだ、というのが常識になった。
ゲーム「Destiny」で展開される世界は、ポスト地球の近未来の世界。
ポスト終末的な世界観は、今の延長上にある「変化」というレベルを超えた、大きな断絶があるように思います。
進化論でいうと、自然淘汰や自然選択ではなく、突然変異。
20世紀が思い描いた21世紀の未来感と、今現在の21世紀が思い描く未来感は異なってきているように思うのですが、
それは、「変化」というよりは、異なるものへの「変性」、「変容」のニュアンスが強くなっているような気がします。
今の延長線上にはない変わり方への期待や不安が、進化論ではなく、聖書的な創造説的な方へ人を向かわせるような気がする。
「地続きではない」未来という世界の捉え方は、仏教的であり、量子論的でもある。
そういう処にも、たずさえ、口ずさんでいけるような曲を作るポールはえらい、と思うのであります。
Some hope for the future; Some wait for the call 幾ばくかの未来への希望 呼ばれる時を待っている
To say that the days ahead will be the best of all そして言うんだ これからの日々は最上の時間になる
We will build bridges up to the sky 我らは空に向かって橋を架け
Heavenly light surrounding you and I 天上の光が僕らを包み込む
From out of the darkness our future will come まったくの暗闇の中から 僕らの未来は立ち顕れる
If we leave the past behind 過去を置いてこれたなら
we’ll fly beyond the Sun 太陽の向こう側にでも行ける
We’ll be together, sharing the load 僕らは一緒になり 共に苦難を分かち合う
Watching in wonder as our lives unfold 僕らの生命が展開していくのを驚きの眼で眺めている
Hope for the future, It’s coming soon enough 未来への希望、すぐにやって来る
How fast can we achieve? 僕らはどのくらいの速さで達成できるだろうか?
Hope for the future, It will belong to us, 未来への希望、それは僕らのものだ
if we believe. 信じることができるなら
Hope shines brightest in the dark 希望は暗闇の中でさえ、輝くことができる
Where nothing’s ever seen 何も見えない暗闇にあろうとも
Lighting undiscovered places no one’s ever been 知られざる、誰も知らない所を照らしている