” 筋肉や骨などの構造だけを見ていても十分ではありません。"
目鼻口耳といった感覚器官を含めた、身体構造の全体を支える「筋膜システム」の鍛え方。
武術やスポーツでは、感覚器官はどちらかというと鍛えようのない急所や弱点とされ、
骨や筋肉に比べて、ないがしろにされている感があります。
しかし、スポーツのパフォーマンス向上やメンタルの安定化のうえでは、要となる急所。
心身一如と言いますが、感情にもっとも働きかける感覚器官を含めた身心調整の技法として、
これほどに統合化され、具体化されたメソッドは初めてかもしれない。
以前、腰割や能の身体運用についてのメソッドを受講しに伺った安田登氏が推薦文を寄せているのにもびびっと来ました。
(心の時代の次へ ~ あわいの力)
(能をやっていて一番よかったと思えるのは、自分の成果を気にしなくてよくなったということ)
米国生まれのボディワークである「ロルフィング」をベースにした身心調整法の探求。
「ロルフィング」のことをあまり信じようとしていませんでした。旧ソビエト軍のシステマに似た匂いがするような気がしたからです。 世界最高峰の技術は得てして軍事産業から生まれるが、身体操法についてもそうなのか。 東洋の古武術にある累々とした教義の重なりが、システマチックにノウハウ化されるものなのか。筋肉や骨の使い方ばかりを追い求めるが、目鼻口耳や皮膚といった感覚器官とそれらを含めた筋膜全体で捉えることが大事らしい。
「普遍的でありながら共有されにくいところ」を技法化する、素晴らしいアプローチだと思います。
毎日の腰割やスクワットに取り入れて、感覚器官や筋膜システムに意識的にスイッチを入れる習慣を持とうと思います。
( ↓ ) ~ This is Life ~
生命体のありとあらゆるものを包み、つなげている筋膜(Fascia)。 ~ 筋膜とは
身体全体に張り巡らされたネットのようなものが筋膜で、
身体中のあらゆる組織(筋肉、骨、内臓、血管、神経など)を繋ぎ、
ネットの張力で身体の構造全体を支える。
筋膜を、個々のミクロな構造体やポケット状の単体の組織としてではなく、
分断された筋肉群や骨格を、一つのhuman-beingとしてつなげ、生命構造を支えているシステムとしてとらえる。
(字幕オンにすると、作者の驚きがピュアに伝わってくるよう。)
FTM 2014 June - Views of the living Fascia
身体をグレープフルーツにたとえた映像が出てきますが、筋膜はゆで卵の殻むきにも似ているように思います。
全体を包む薄膜の扱いは、少々のコツでうまくいく。
身体の縦の繋がりを感じる
鼻の奥にある篩骨(しこつ)という立方体の骨は、匂い(嗅覚)の通り道になっていて、
この篩骨から尾骨までの筋膜は一繋がりになっている。
筋膜はちょうど布団のシーツのようになっているから、
シーツの隅からでも、離れた場所にある筋膜のシワ(癒着)に働きかけることができる。
ロルフィングでは、「重力」との調和を取り戻すことによって身心の質を変えていくが、
身体の縦の繋がりに重力はダイレクトに働く。
「からだが適切に機能すれば、その中を重力の力が流れます。」(アイダ ロルフ博士)
未だ十分に解明されていない重力というフォースを侮ってはいけない。
地球環境の中で、どこへ行っても、何時も変わらない、唯一つ不変の力。
少なくとも私たちは、重力の中で生きる、重力に適応した生命体だ。
鼻はセンサーであり、洞窟である
左右の上顎骨を指で押さえ拡げながら鼻呼吸すると、篩骨にスペースができて、篩骨周辺を意識しやすくなり、
そこから縦方向の膜の繋がり全体が反応し、尾骨の動きを感じ取れるという。
(この縦の膜の繋がりは、胚子の段階で形成される原子線条と呼ばれる中心線に由来し、身体全体の正中線のセンサーになっているという。
篩骨は空間の中における方位磁石のような働きをし、「鼻筋の通った動き」というような正中線の通った堂々とした身心の方向付けを担う。)
鼻を鼻筋や鼻孔(鼻の穴)だけではなく、鼻腔全体に拡がる洞窟だと意識することで、
目がスッキリしたり、呼吸が深くなって、お腹が動き出すということが起きる。
鼻をそんな風に捉えたことがなかった。
(鼻の絵を描け、と言われて、空洞だらけの鼻腔の絵を描くひとはまずいないと思う。)
鼻の奥の空洞を意識して刺激を与える、というのは、口角への刺激や、倍音声明、
顔の中心線で意識を整える「ひふみ体操」に通じるものがあります。
(夜明けのスクワット~ 腰割りトレーニングの習慣 ~)
(骨ストレッチ×倍音声明 ~ 體使いへの道)
魑魅魍魎とした「感覚」を掴むためのヒントが沢山。
「筋膜システムをオンにする」3つのプロセス
1)手を体に置いて、その重さが「沈んで」くるのをイメージする。
2)手を置いた場所の少し深いところが溶けるように緩んでいく「流れ」を感じる。
3)筋膜を介して他の部位との繋がりが拡大し、緩んだ筋膜のシートが大きくなり、
そのシートの弾性が引き出されて自発的な動きや衝動が起こる。
たとえば前屈時に臀部の筋膜シートを拡げることで、前屈が自然と深くなったりということが起きる。
筋膜のシートをもっと広い空間に「拡げて」いくことで、動きの質がダイナミックで自由なものに変わる。
内田樹先生の言う「動きに甘みが出てくる」とはこのような動きの変容を指すのでしょうか。
(「倍音声明」体験へ)
沈む感覚を手掛かりに筋膜を活性化するメソッドの他に、ぜひ取り入れてみたいと思ったのは「目」や「視線」をつけるメソッド。
「視線をつけて」動きの質を変える。空間の捉え方を変える。
( ↓ ) バレエには「首をつける」という表現があるそうで、視線で空間を切り開いて、その方向に腕を伸びやかに導いていく。
視線を使わないで行った腕の動きと比べれば、違いは歴然だといいます。
必ずしも、目で見ることができない体の部位であっても、視線をつける意識を持つことで動きが変わる。
1ミリ動くのに数秒かけるくらいのつもりで、じっくりと自分の身体の中で起こっていることに注意を向けると、
身心の中で起こる緊張のパターン(身心のクセ=ホールディング)に気づき、徐々にその緊張を手放すことができます。
この時、緊張が特に多くあるのが、首から上、目鼻口耳に集中しているのに、そこが盲点になりがち。
目の動きの他にも、たとえば、足上げ腹筋(ニーアップ)の時に、口や鼻を連動させて、お腹のコアを緩ませる。
実際には無理でも、膝のお皿に舌を伸ばして舐めるイメージを持つと、表面の筋肉が緩んで、自然と膝が上がってくる。
目鼻口耳や皮膚などの感覚器官を意識的に使い、筋膜システムをオンにして、
”新しい身体の使い方や感じ方を身につける”、
”自分自身とからだとのつながりが深まり、精神的・肉体的により統合された状態へと変化していく。”
故障でロング休暇の後半一週間お休みでしたが、休暇明けの明日から野菜の酵素パワー習慣も再開します。