クリスマスが描かれる映画でもうひとつ、大事な作品を忘れていた。
生涯のベストテンの一本に入れている、ミロシュ・フォアマン×ジャック・ニコルソンの『カッコーの巣の上で』(75)。
刑務所の強制労働がイヤで精神病を偽ったマクマーフィーが、入院した精神病院で「ひっちゃか、めっちゃか」を繰り返し、ついにはロボトミー手術で植物人間にされてしまう―という、じつにショッキングな映画だった。
シャバに戻りたくなったマクマーフィーが、病院からの「脱獄」を企てる。
しかし世間はクリスマスで浮かれている。
ここ(病院)に居続けるこいつら(患者たち)にも、少しは刺激が必要なはずだ。
脱獄前夜―。
彼は病院内に女子を連れ込み、患者たちに酒を振る舞った。
翌朝―。
鬼看護婦長が乱痴気騒ぎの「宴のあと」を目の当たりにし、怒りに震える。
ナンヤカンヤがあって、マクマーフィーは強制的に手術台に乗せられる・・・というわけ。
ロマンチックな日、、、のはずなのだけれどもね。
さて、自分の話である。
21歳のころ、バイト先の女子大生Kちゃんに恋をした。
脚美人。
アニメ声。
病弱風。
もろ自分の好みである。
けれども。
ちゃんと告白して、ちゃんと振られた。
聞けばKちゃんも、振られたばかりだという。
同じバイト先のSさんと、うまくいきそうで、いかなかったと。
じゃあ、どっちも傷心なんだねと笑い合う。
こうなると、ドラマなんかでは新しい恋が生まれたりするもの。
恋が生まれなくとも、たとえば『ディア・ハンター』(78)では・・・
帰還しない恋人(クリストファー・ウォーケン)を待つのが辛くなって、メリル・ストリープは共通の友人であるデ・ニーロに「お互い、慰め合いましょう」といってベッドに誘っている。
映画のなかのデ・ニーロは自尊心を傷つけられたような演技をしていたが、自分なら「ほい、きた!」とむしゃぶりつくところだろう。
だが現実は甘くない。
Kちゃんは、トーゼンだが「慰め合いましょう」といってくれなかった。
お前がいえって?
それはさすがにおかしいでしょう、狂っているでしょう、振られた張本人なのだから。
しかしクリスマスにひとりで居るのはさすがに寂しいから、その日の晩だけはデートみたいなことをしてみよう―ということになった。
デートの場所は、自分が住む町田のオンボロアパート。
なんとか出来そうだが、そうはさせまい! とする雰囲気が強く、これは無理だなぁと最初の10分であきらめた。
うん、なにもしてませんよ。
訂正、手だけつなぎました。
純よのぉ、自分にもそんな時代があったんだよ。
さて、そんな日になにを喰ったかという話である。
チキン?
ちがう。
ピザ?
ちがう。
ケーキ?
ちがう。
炊き込みご飯、だったのである。
Kちゃん手作り? の。
自分のリクエストではない。
白米推しだし。
炊き込みや、まぜご飯の類は「あんまり…」だし。
好きなのは唯一、わかめご飯くらいだし。
それでも、3合の炊き込みご飯はその晩で完食した。
エラソーにいうが、そこそこ美味かったから。
「ねぇ、なんでこれにしたの? チキンとかじゃなくて」
「クリスマスから、かけ離れたものを食べたかったんだもん」
なるほどなぁ。
傷心娘、いじましいじゃないかと。
というわけで、ふたりがどうこうしたとかいう展開は、ぜんっぜんなかった。
現実は、こんなものということで。
おわり。
※映画『ラブ・アクチュアリー』より、無言の告白シーン
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本館『「はったり」で、いこうぜ!!』
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明日のコラムは・・・
『ツキと6ペンス』
生涯のベストテンの一本に入れている、ミロシュ・フォアマン×ジャック・ニコルソンの『カッコーの巣の上で』(75)。
刑務所の強制労働がイヤで精神病を偽ったマクマーフィーが、入院した精神病院で「ひっちゃか、めっちゃか」を繰り返し、ついにはロボトミー手術で植物人間にされてしまう―という、じつにショッキングな映画だった。
シャバに戻りたくなったマクマーフィーが、病院からの「脱獄」を企てる。
しかし世間はクリスマスで浮かれている。
ここ(病院)に居続けるこいつら(患者たち)にも、少しは刺激が必要なはずだ。
脱獄前夜―。
彼は病院内に女子を連れ込み、患者たちに酒を振る舞った。
翌朝―。
鬼看護婦長が乱痴気騒ぎの「宴のあと」を目の当たりにし、怒りに震える。
ナンヤカンヤがあって、マクマーフィーは強制的に手術台に乗せられる・・・というわけ。
ロマンチックな日、、、のはずなのだけれどもね。
さて、自分の話である。
21歳のころ、バイト先の女子大生Kちゃんに恋をした。
脚美人。
アニメ声。
病弱風。
もろ自分の好みである。
けれども。
ちゃんと告白して、ちゃんと振られた。
聞けばKちゃんも、振られたばかりだという。
同じバイト先のSさんと、うまくいきそうで、いかなかったと。
じゃあ、どっちも傷心なんだねと笑い合う。
こうなると、ドラマなんかでは新しい恋が生まれたりするもの。
恋が生まれなくとも、たとえば『ディア・ハンター』(78)では・・・
帰還しない恋人(クリストファー・ウォーケン)を待つのが辛くなって、メリル・ストリープは共通の友人であるデ・ニーロに「お互い、慰め合いましょう」といってベッドに誘っている。
映画のなかのデ・ニーロは自尊心を傷つけられたような演技をしていたが、自分なら「ほい、きた!」とむしゃぶりつくところだろう。
だが現実は甘くない。
Kちゃんは、トーゼンだが「慰め合いましょう」といってくれなかった。
お前がいえって?
それはさすがにおかしいでしょう、狂っているでしょう、振られた張本人なのだから。
しかしクリスマスにひとりで居るのはさすがに寂しいから、その日の晩だけはデートみたいなことをしてみよう―ということになった。
デートの場所は、自分が住む町田のオンボロアパート。
なんとか出来そうだが、そうはさせまい! とする雰囲気が強く、これは無理だなぁと最初の10分であきらめた。
うん、なにもしてませんよ。
訂正、手だけつなぎました。
純よのぉ、自分にもそんな時代があったんだよ。
さて、そんな日になにを喰ったかという話である。
チキン?
ちがう。
ピザ?
ちがう。
ケーキ?
ちがう。
炊き込みご飯、だったのである。
Kちゃん手作り? の。
自分のリクエストではない。
白米推しだし。
炊き込みや、まぜご飯の類は「あんまり…」だし。
好きなのは唯一、わかめご飯くらいだし。
それでも、3合の炊き込みご飯はその晩で完食した。
エラソーにいうが、そこそこ美味かったから。
「ねぇ、なんでこれにしたの? チキンとかじゃなくて」
「クリスマスから、かけ離れたものを食べたかったんだもん」
なるほどなぁ。
傷心娘、いじましいじゃないかと。
というわけで、ふたりがどうこうしたとかいう展開は、ぜんっぜんなかった。
現実は、こんなものということで。
おわり。
※映画『ラブ・アクチュアリー』より、無言の告白シーン
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本館『「はったり」で、いこうぜ!!』
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明日のコラムは・・・
『ツキと6ペンス』