Cape Fear、in JAPAN

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にっぽん男優列伝(255)仲代達矢

2014-12-08 00:30:00 | コラム
32年12月13日生まれ、まもなく誕生日を迎える81歳。
東京出身。

公式プロフィール


三船と宮口精二、三橋達也と山崎努、そして仲代達矢(なかだい・たつや)。

自分の好きな日本の映画俳優ベスト5ですが、いやぁ我ながらお前は何歳なのか!? って思います苦笑

存命の俳優は2人だけですし、若手がひとりも居ません。
これが女優となれば異性への関心? も加わりますから、ぴちぴちギャルばかりになるのですけど。

この5人に共通するのは、黒澤映画に出演経験があること。
まぁそれだけ黒澤を信奉しているってことですから、堪忍してください。

黒澤映画では三船が演じるキャラクターの「対になるような存在」だった仲代さん・・・ですが、
黒澤以外にも様々な名監督―小林正樹、岡本喜八、五社英雄、市川崑、成瀬巳喜男などなど―に好んで起用され、主演でも助演でも監督の狙いどおりの働きをするプロフェッショナルとして知られています。(みんな、死んじゃった監督ですが)

その膨大な映画キャリアから3本選ぶとするならば・・・

『切腹』(62)
『天国と地獄』(63)
『炎上』(58)

になるでしょうか。

そう、自分だってべつに、黒澤映画に出る仲代さんだけを見ているわけじゃあないんですよ。


※文句なしのベストワンは、やっぱりこれ。
武家社会の矛盾と非人間性を鋭く問うたこの映画に出会って、時代劇のイメージが大きく変わりましたもの!!




<経歴>

無名塾主宰。
映画小僧の視点ゆえ「映画のひと」と括りがちですが、なによりも演劇のキャリアを大事にする「舞台のひと」のようです。
また、日本映画黄金期は基本的に大手5社いずれかと契約を結ばなければ映画俳優をつづけることが難儀な時代でした。
けれども仲代さんは大金を積まれてもイエスとはいわず、フリーランスの立場を取りつづけた、骨のある、でもある意味では、ヘンクツな俳優でもあったのです。


戦時中の疎開先が調布市の仙川や千歳烏山で、自分がよく知る場所であったことに驚きました。
戦後は中華そば製麺所を起こし、働きながら定時制高校に通う。

様々なアルバイトで食いつなぎつつ、大好きな映画や舞台鑑賞にのめり込む。

20歳のとき、将来を俳優に賭けて俳優座養成所に入所。
第4期生で、同期に佐藤慶や宇津井健が居ました。

映画俳優デビュー作は、黒澤の代表作『七人の侍』(54)。

通りすがりの浪人役であり、台詞もありません。だから、初見で気づくひとは少ないのではないでしょうか。

ほんのワンショットの撮影なのに、時代劇の歩きかたが出来ない仲代のために半日を要した―黒澤自身は覚えていないようですが、仲代さんにとっては忘れられないエピソードだそうです。

そうですよねぇ、自分だったら田舎に帰っちゃうかもなぁ笑

しかし何度もいうように、これは端役中の端役です。
56年の『火の鳥』こそ、実質的なデビュー作といっていいでしょう。

以下、年代順に。
(映画キャリアだけでも多いため、テレビや舞台作品いついては割愛)

56年
『サザエさん』…なななななんと、ノリスケ役!

57年
『黒い河』『あらくれ』『肌色の月』

58年
『母三人』『結婚のすべて』『ぶっつけ本番』
『炎上』…三島の代表作『金閣寺』をベースに映画化、仲代さんは主人公(市川雷蔵)の同級生をニヒルに好演
『裸の太陽』

59年
『人間の條件』第1部~第6部(61年まで)…これを最後まで観ることは、ジョイスの『ユリシーズ』を最後まで読むことと同じ―と、誰かがいったとか、いわなかったとか
『鍵』『野獣死すべし』『暗夜行路』

60年
『女が階段を上る時』『みな殺しの歌より 拳銃よさらば!』

61年
『用心棒』…拳銃を持つ卯之助を、じつに楽しそうに演じる

「地獄の入り口で待ってるぜ」
「こいつ、どこまでも向こう見ずの本性を崩さずに、死んでいきやがった」

最高に格好いい!!

62年
『椿三十郎』
『切腹』

63年
『天国と地獄』…情に厚い戸倉警部を熱演

「苦しいときは権藤氏のことを思い出せ!!」

『白と黒』『みれん』

64年
『ミスター・ジャイアンツ 勝利の旗』『怪談』

65年
『最後の審判』『四谷怪談』『血と砂』

66年
『大菩薩峠』『他人の顔』

67年
『殺人狂時代』『佐々木小次郎』『上意討ち 拝領妻始末』
『日本のいちばん長い日』…低く、「深い」声が評価されてナレーターに抜擢される

68年
『斬る』『野獣暁に死す』
『肉弾』…再びナレーターに挑戦

69年
『人斬り』『地獄変』

70年
『幕末』『無頼漢』『商魂一代 天下の暴れん坊』

71年
『いのちぼうにふろう』『出所祝い』

73年
『人間革命』『朝焼けの詩』

74年
『華麗なる一族』

75年
『青春の門』『金環蝕』
『吾輩は猫である』…「頑張って」苦沙弥を演じる。誰が演じても、これは厳しいと思う。

~この年、妻・恭子と無名塾を創立する~

76年
『挽歌』『不毛地帯』

77年
『姿三四郎』

78年
『女王蜂』『雲霧仁左衛門』『ブルークリスマス』


~80年、黒澤と勝新太郎に軋轢が生じて『影武者』から勝が降板、仲代さんはその代役として武田信玄を演じる~


81年
『日本の熱い日々 謀殺・下山事件』
82年
『鬼龍院花子の生涯』『遠野物語』
84年
『北の螢』
85年
『乱』
86年
『道』『熱海殺人事件』
87年
『ハチ公物語』
88年
『アナザー・ウェイ ―D機関情報―』
89年
『226』
91年
『陽炎』『フィレンツェの風に抱かれて』
92年
『豪姫』『遠き落日』
93年
『月光の夏』
95年
『EAST MEETS WEST』
96年
『宮澤賢治 ―その愛―』
99年
『金融腐食列島 呪縛』

―こうやって俯瞰すると、やはり60年代の活躍が凄まじいですね。

『雨あがる』(2000)、『助太刀屋助六』(2001)、松下幸之助を演じた『陽はまた昇る』(2002)、
『阿修羅のごとく』(2003)、『男たちの大和/YAMATO』(2005)、『犬神家の一族』(2006)、
久し振りに「仲代さんだなぁ!」と感動した『春との旅』(2010)、
『ツナグ』(2012)、『人類資金』(2013)。
また、『かぐや姫の物語』(2013)や『ジョバンニの島』(2014)では声優として参加、相変わらず渋くて深みのある声を披露してくれています。

この年代の俳優さんが次々に亡くなっていますが・・・
仲代さんは、あと10年は「映画俳優してくれる」のではないでしょうか。

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本館『「はったり」で、いこうぜ!!』

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明日のコラムは・・・

『にっぽん男優列伝(256)長塚京三』

コメント (2)
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