開催中のカンヌ映画祭について書こうと思っていたのだが、受信BOXがパンクするほどのメールが届いた。
映画小僧を自称しているが、スコセッシがオスカーを取ったときよりも多い。
自他共に認めるAV狂ではあるが、中西里菜(=AKB)が「やまぐちりこ」としてAVデビューしたときよりも多い。
他者にとっては自分、映画小僧やAV狂よりも前に、格闘技マニアであったらしい。
まぁいいんだが、少しだけ意外。
だって彼は、死んだわけではないのだから。
いやアスリートにとっての引退は、いちど死ぬことを意味するのか。
かつて「人類最強」「60億分の1」と称された格闘家エメリヤーエンコ・ヒョードル、引退。
ここ数ヶ月は「化けの皮が剥がれた」だのナンヤカンヤ批判を受けるほどの「弱さ」を露呈させたが、
大晦日、石井慧を大の字にさせたパンチのスピードを見ると「まだまだ、いけるんじゃないか」と思わせる幻想力があった。
そう、ヒョードルは「人類最強」という幻想とともに生きた。
2000年代、その幻想が補強され神話となる。
と書くとまるでフィクションのように感じられるかもしれないが、一時期、ヒョードルはほんとうに人類最強だったのだと思う。
ほんの一瞬ではあったものの、神話は現実だったのだ。
ヒョードルは特別な存在、とくに日本人にとっては―それを思えば、この異常なメールの数も理解出来る。
怒りの表情は見せるが、喧嘩上等ではない。
対戦相手への敬意を忘れず、しかし格闘技への深い愛情から、度の過ぎたパフォーマンスをするファイター(小川直也やジョシュ・バーネット)に対しては嫌悪を露わにする。
それでいて遊園地が大好きで、試合の翌日はきまってディズニーランドや富士急ハイランドに出没する。痣だらけの顔のままで。
異様に絵が巧く、ちょっと引いてしまうほど正教に傾倒している。
とくに近年は、試合直前まで首にかけた十字架を外さなかった。
「ストライクフォース」ヘビー級トーナメント(まさかの1回戦敗退)開催前のビデオ撮影の際、ほかのファイターがパンツ以外を脱ぎ捨てて臨んだのに対し、ヒョードルだけはディレクターの「外してくれ」という要求にNOをつきつけ、十字架を「死守」したのであった。
勝敗についても引退についても「神のみぞ知る」というほどのヒョードルが、自身で引退を決意した。
それでもヒョードルはきっと「神が決めたことだから」というのだろう、うん、それでいいし、それでこそヒョードルなのだと思う。
間近に観たのは、対小川直也戦が最初。
ミルコとのタイトルマッチ(=文末の煽りVを参照)では、身体が硬直するほど緊張して観戦した。
2007年の大晦日―『やれんのか!』で、初めて握手をして会話までさせてもらった。
日本語で「大好きです」といい、
日本語で「アリガトウ」と返されただけの、わずかな会話だったけれど。
現在35歳、老け顔といえばそうだが、自分より3つも下だったか。
「白くて」「でっかい」「きゅーぴーちゃん」、といったのは、確かネットで知り合った女子である。
いい得て妙、その人懐っこい感じが人類最強という称号とミスマッチで、神話の存在なのに近寄り難さというものはなかった。
その後の人生が気になるところだが、プーチンとも親交(トップ画像)があり、友人のひとりはアクション俳優のジャン=クロード・ヴァン・ダムときたもんだ、自分なんかが心配しなくてもうまいことやっていけるだろう、魔裟斗ほどの世渡り上手じゃないとしても。
ひとつだけ、はっきりしたこと。
数年前からそうであったが、ヒョードルの引退により、米総合格闘技『UFC』が格闘技の最高峰となった。
かつて最高峰と呼ばれた『PRIDE』の舞台・日本は、完全に遅れを取った形になる。
遅れを取ったでは生易しいか、はっきりいえば「過去」になってしまった。
寂しいし、悔しいが、北米の躍進を恨めしく眺めている場合ではないということ。
もういちど、最初からやってみよう。
ヒョードルだったら、「それが神の意思です」というだろうし。
皇帝、ほんとうに、ほんとうに、おつかれさまでした。
※映画の完成度、素晴らしい煽りV
…………………………………………
本館『「はったり」で、いこうぜ!!』
前ブログのコラムを完全保存『macky’s hole』
…………………………………………
明日のコラムは・・・
『黙りなさい―と、映画の神はいっている』
映画小僧を自称しているが、スコセッシがオスカーを取ったときよりも多い。
自他共に認めるAV狂ではあるが、中西里菜(=AKB)が「やまぐちりこ」としてAVデビューしたときよりも多い。
他者にとっては自分、映画小僧やAV狂よりも前に、格闘技マニアであったらしい。
まぁいいんだが、少しだけ意外。
だって彼は、死んだわけではないのだから。
いやアスリートにとっての引退は、いちど死ぬことを意味するのか。
かつて「人類最強」「60億分の1」と称された格闘家エメリヤーエンコ・ヒョードル、引退。
ここ数ヶ月は「化けの皮が剥がれた」だのナンヤカンヤ批判を受けるほどの「弱さ」を露呈させたが、
大晦日、石井慧を大の字にさせたパンチのスピードを見ると「まだまだ、いけるんじゃないか」と思わせる幻想力があった。
そう、ヒョードルは「人類最強」という幻想とともに生きた。
2000年代、その幻想が補強され神話となる。
と書くとまるでフィクションのように感じられるかもしれないが、一時期、ヒョードルはほんとうに人類最強だったのだと思う。
ほんの一瞬ではあったものの、神話は現実だったのだ。
ヒョードルは特別な存在、とくに日本人にとっては―それを思えば、この異常なメールの数も理解出来る。
怒りの表情は見せるが、喧嘩上等ではない。
対戦相手への敬意を忘れず、しかし格闘技への深い愛情から、度の過ぎたパフォーマンスをするファイター(小川直也やジョシュ・バーネット)に対しては嫌悪を露わにする。
それでいて遊園地が大好きで、試合の翌日はきまってディズニーランドや富士急ハイランドに出没する。痣だらけの顔のままで。
異様に絵が巧く、ちょっと引いてしまうほど正教に傾倒している。
とくに近年は、試合直前まで首にかけた十字架を外さなかった。
「ストライクフォース」ヘビー級トーナメント(まさかの1回戦敗退)開催前のビデオ撮影の際、ほかのファイターがパンツ以外を脱ぎ捨てて臨んだのに対し、ヒョードルだけはディレクターの「外してくれ」という要求にNOをつきつけ、十字架を「死守」したのであった。
勝敗についても引退についても「神のみぞ知る」というほどのヒョードルが、自身で引退を決意した。
それでもヒョードルはきっと「神が決めたことだから」というのだろう、うん、それでいいし、それでこそヒョードルなのだと思う。
間近に観たのは、対小川直也戦が最初。
ミルコとのタイトルマッチ(=文末の煽りVを参照)では、身体が硬直するほど緊張して観戦した。
2007年の大晦日―『やれんのか!』で、初めて握手をして会話までさせてもらった。
日本語で「大好きです」といい、
日本語で「アリガトウ」と返されただけの、わずかな会話だったけれど。
現在35歳、老け顔といえばそうだが、自分より3つも下だったか。
「白くて」「でっかい」「きゅーぴーちゃん」、といったのは、確かネットで知り合った女子である。
いい得て妙、その人懐っこい感じが人類最強という称号とミスマッチで、神話の存在なのに近寄り難さというものはなかった。
その後の人生が気になるところだが、プーチンとも親交(トップ画像)があり、友人のひとりはアクション俳優のジャン=クロード・ヴァン・ダムときたもんだ、自分なんかが心配しなくてもうまいことやっていけるだろう、魔裟斗ほどの世渡り上手じゃないとしても。
ひとつだけ、はっきりしたこと。
数年前からそうであったが、ヒョードルの引退により、米総合格闘技『UFC』が格闘技の最高峰となった。
かつて最高峰と呼ばれた『PRIDE』の舞台・日本は、完全に遅れを取った形になる。
遅れを取ったでは生易しいか、はっきりいえば「過去」になってしまった。
寂しいし、悔しいが、北米の躍進を恨めしく眺めている場合ではないということ。
もういちど、最初からやってみよう。
ヒョードルだったら、「それが神の意思です」というだろうし。
皇帝、ほんとうに、ほんとうに、おつかれさまでした。
※映画の完成度、素晴らしい煽りV
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