Cape Fear、in JAPAN

ひとの襟首つかんで「読め!」という、映画偏愛家のサイト。

『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

にっぽん女優列伝(5)浅丘ルリ子

2017-03-26 00:10:00 | コラム
40年7月2日生まれ、76歳。
満州出身。

公式プロフィール


自分が映画を好きになったころには、すでに浅丘ルリ子(あさおか・るりこ)さんは40歳を過ぎていて、そりゃ演技は上手なのだろうけれど、メイクが濃い感じがする(失礼!)し、線は細過ぎるし、目が異様にデカくて、それほど魅力的な女優さんと思えなかったです。

ただ映画を教材として捉えるようになった高校生のころ、浅丘さんのキャリア初期の作品などに触れ、

わ! めっちゃかわいいじゃんか!! と驚いたのでした。
(トップ画像は、その魅力が全開した69年の『華やかな女豹』)

寅さんのマドンナ役としては、浅丘さんが演じたクラブ歌手「リリー」がシリーズのなかで最も印象に残るし、
なるほど、そりゃあ小林旭だって石坂浩二(前夫)だって夢中になるだろうと納得出来ました。




キャリア絶頂期には、日活撮影所の近くに住んでいた・・・ということを知ったので、自分が日活の学生だったころ、撮影所周辺を歩き、このあたりに住んでいたのかな、日本映画黄金期ってすごかったのだろうな、、、などと想像を膨らませたものです。





<経歴>

4人姉妹の次女。
終戦後の46年、館山の引き上げ寮へ入寮する。

14歳のころ、新聞小説『緑はるかに』が映画化(55)されるニュースを聞き、ヒロイン・ルリコ役のオーディションに応募する。
3000人のなかから浅丘さんが選ばれ、幸運な映画俳優デビューを飾りました。

翌年の『愛情』(56)では私生活での経験がない「キスシーン」が含まれていることに動揺するも、父親の激励を受けてやりこなす。

やはり「ふつうでない職業」には、周りのサポートと理解が必要ってことでしょうねぇ。


『裏町のお転婆娘』(56)
『愛は降る星のかなたに』(56)
『踊る太陽 お転婆三人娘』(57)
『今日のいのち』(57)
『鷲と鷹』(57)
『17才の抵抗』(57)

58年からのキャリアが驚異的なので、年ごとにまとめて。
日活アクションのヒロインを演じることが多く、映画ファンのアイドル的存在になったのも頷けます。


58年…『禁じられた唇』『夜の牙』『運河』『夫婦百景』『明日は明日の風が吹く』『美しい庵主さん』『踏みはずした春』『絶唱』『嵐を呼ぶ友情』

59年…『女を忘れろ』『群衆の中の太陽』『俺は挑戦する』『男が爆発する』『世界を賭ける恋』『南国土佐を後にして』『銀座旋風児』『ギターを持った渡り鳥』『波止場の無法者』『銀座旋風児 黒幕は誰だ』

60年…『拳銃無頼帖 抜き打ちの竜』『海から来た流れ者』『拳銃無頼帖 電光石火の男』『大草原の渡り鳥』『銀座旋風児 目撃者は彼奴だ』『十六歳』

61年…『銀座旋風児 嵐が俺を呼んでいる』『でかんしょ風来坊』

62年…『北帰行より 渡り鳥北へ帰る』『銀座の恋の物語』『憎いあンちくしょう』『危いことなら銭になる』『愛と死のかたみ』『若い人』

63年…『何か面白いことないか』『夜霧のブルース』『太平洋ひとりぼっち』『狼の王子』『霧に消えた人』『丘は花ざかり』『結婚の条件』『アカシアの雨がやむとき』

64年…『赤いハンカチ』『夕陽の丘』『若草物語』

65年…『夜明けのうた』『泣かせるぜ』


『憎いあンちくしょう』と『何か面白いことないか』、『夜明けのうた』で演じたキャラクターは、いずれも「典子」であり、映画ファンのあいだでは「典子三部作」といわれています。
キャリア的にもこのあたりで「チヤホヤ的?」な添え物キャラから脱皮、女優としての存在感が増していきます。

『二人の世界』(66)、『帰らざる波止場』(66)、『源氏物語』(66)、『愛の渇き』(67)、『夜霧よ今夜も有難う』(67)、『紅の流れ星』(67)、『波止場の鷹』(67)、『日本一の男の中の男』(67)、『昭和のいのち』(68)、『狙撃』(68)、『地獄の破門状』(69)、『私が棄てた女』(69)、『御用金』(69)、『栄光への5000キロ』(69)、『女体』(69)、『華やかな女豹』(69)。


ここまでのキャリアで、個人的にベストワンを挙げるとするならば・・・
『私が棄てた女』になるでしょうか、小林トシエと好対照をなすキャラクターを好演しています。


『待ち伏せ』(70)、
『戦争と人間・第一部 運命の序曲』(70)、『第二部 愛と悲しみの大河』(71)、『第三部 完結篇』(73)、
『愛の化石』(70)、『ある兵士の賭け』(70)、『告白的女優論』(71)、『嫉妬』(71)、『愛ふたたび』(71)、『蒼ざめた日曜日』(72)。

73年―『男はつらいよ 寅次郎忘れな草』で「リリー」を初めて演じるとファンから絶大な支持を受け、
『寅次郎相合い傘』(75)、『寅次郎ハイビスカスの花』(80)・・・と、たびたび登場する「準レギュラー」へと昇格、
浅丘さんは『寅次郎紅の花』(95)で寅さんと結婚する物語を望み、山田洋次監督に直訴しましたが、それが叶うことはありませんでした。

『渚の白い家』(78)、『鹿鳴館』(86)、『四十七人の刺客』(94)。

活躍の場を映画から舞台へと移したため、21世紀に入ると、映画への出演は激減します。

『木曜組曲』(2002)、『博士の愛した数式』(2006)、『早咲きの花』(2006)、『ジーン・ワルツ』(2010)。

しかし最近作『デンデラ』(2011)の迫力を目の当たりにすると、まだまだ映画で活躍してほしいな! と、個人的には思うのです。

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明日のコラムは・・・

『にっぽん女優列伝(6)浅田美代子』
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名言じゃない-1 GP

2017-03-25 06:39:45 | コラム
創り手としては、のちに名言と評されるような「決め(キメ)台詞」を映画のなかに残したい。

けれども狙った台詞が5つも6つもあったとしたら、どれがほんとうの「キメ」なのか分からなくなり、結果としてどれも中途半端な印象に終わったり。

「キメ」は、ひとつかふたつで充分。
これを際立たせる・引き立たせるために、ほかの台詞をごく自然に・リアルに構成する書き手も多いことだろう。

ただ不思議なもので、ときとして「キメ」以上に印象に残ってしまう「ごく自然な台詞」がある。

きょうは、そんな10傑を展開してみよう。

題して、「名言じゃない-1 GP」。


(1)「ニューヨークは雨だってよ」…『ユージュアル・サスペクツ』(95・トップ画像)

作戦決行の前日、マクマナス(スティーヴン・ボールドウィン)が「ふと」漏らしたヒトコト。

なぜか印象に残るのよねぇ。

(2)「(クマのぬいぐるみに)黙ってろ」…『ダイ・ハード』(88)

リムジンの運転手、アーガイルが後部座席に陣取る「ビッグベア」に話しかける。

(3)「日立のビーバーエアコンがいいらしいぞ」…『太陽を盗んだ男』(79)

犯人・沢田研二と刑事・菅原文太の会話。



けれども、よく考えてみたら、ビーバーエアコンって三菱重工業産なんだよね!笑

(4)「ダメだ、出ない!」…『どこまでもいこう』(96)

男子トイレでのヒトコマ。

準備したのに小便が出てこない―これを台詞にせず、映像だけで表現したのは『バッファロー’66』(98)だった。

(5)「ふん!」…『酔いどれ天使』(48)

医師・志村喬の口癖。

台詞とは、いえないかもしれないが。。。

(6)「ヘビィだ」「またいったな、ヘビィって!」…『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85)

マーティ(マイケル・J・フォックス)とドク(クリストファー・ロイド)の会話。


※チャック・ベリー追悼




(7)「もっと脳味噌を!」…『バタリアン』(85)



コメントの必要なし笑

(8)「お前が話せ。よく回る舌で」「女房に聞いたのか」…『セブン』(95)

ミルズ(ブラッド・ピット)とサマセット(モーガン・フリーマン)が、ジョン・ドゥ(ケビン・スペイシー)のマンションを訪ねるシーン。

(9)「沢山の経験からいっているんだ、女は脚のマッサージくらい、、、みたいな顔をしているクセに、ビンビン感じているんだ」…『パルプ・フィクション』(94)

ヴィンセント(ジョン・トラボルタ)が、ジュールス(サミュエル・L・ジャクソン)に得意げに話している。

(10)「新聞を、新聞を」…『グッドフェローズ』(90)

ヘンリー(レイ・リオッタ)のナレーションでギャング仲間を紹介するシーン。

「なんでも二度いう」男が、たしかにこう話している笑




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3ヶ月の映画街路樹

2017-03-24 00:10:00 | コラム
3ヶ月が経過しようとしているので、現時点における「本年度の収穫映画」5傑を紹介しておきたい。

制作ニュースの段階で「成功作」であることを確信していたのは1本のみ、残りは実際に観て新鮮な感動を覚えた傑作たちである。


(1)『哭声/コクソン』…トップ画像

韓国は、ときどきバケモノのような映画を生むので無視出来ない。

それにしても。
『セブン』(95)もそうだったが、この手の映画には、雨が似合う。

(2)『沈黙』

スコセッシ、撮ってくれてありがとう。

(3)『ムーンライト』

まもなく公開、本年度オスカー受賞作。

物語も素晴らしいが、独特な映像美にも注目してほしい。




(4)『ラ・ラ・ランド』

久し振りに、次回作が「常に」気になる映画監督が登場した―これ、映画ファンの一致する意見。

(5)『アンチポルノ』



企画そのものにアンチを投げかけた、園子温による快作。


(次点)『チア☆ダン ~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』

旬の若手女優とはそういうものだが、それにしたって広瀬すずは、作品に、監督に恵まれるひとだなと。

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『名言じゃない-1 GP』
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2017-03-23 00:10:00 | コラム
総合格闘技を学び始めた20代の真ん中ごろ、リングネームと入場コスチュームを「わりと本気に」考えていた。

リングに立てる実力もなかったクセしてね、でも形から入る男だったから。


まだ総合のことを「MMA」という日本人も居なかったころの話。
桜井"マッハ"速人は活躍中だったが、



山本“KID”徳郁はデビューしていなかった。

「ちゃんとした由来」があったとしても、マッハもKIDも、自分の感覚でいうと、ここ強調しておくよ、自分の感覚ではダサいネーミングだと感じる。

あのころも、いまも。

このふたりには誰もが認める実力があり、そして、一部で? ダサいといわれながらもリングネームを変えなかったことが効き「一周回って」「むしろ」格好いい、、、と評されるようになったのではないか。

・・・ちがうか。

いや、(自分のように)そう捉えるひとも、なかには居たのだと思う。


キャッチコピーは凝るが、リングネームは本名で―自分は、こっちのほうが好きだ。


「60億分の1の男」
エメリヤーエンコ・ヒョードル

「天下無双の火の玉ボーイ」
五味隆典

「クラッシャー」
川尻達也

「不動心」
近藤有己

「20世紀最後の暴君」
ピーター・アーツ


大仰な感じもするが、格闘技におけるキャッチフレーズって「煽り」を意味するものだから。


米UFCは「不動心」のようにシンプルで・・・

「ザ・スパイダー」
アンデウソン・シウバ

「ザ・プロディジー」(=神童)
B・J・ペン




「ザ・プロディジー」って、かっけー! よね。


で、結局。
悩みに悩んで、真ん中に「Smiley」をつけた。

スマイリー。

牧野“Smiley”光永・・・おそろしく、弱そうだ。

実際、アマチュア戦績は2勝3敗2分けという、強いのか弱いのか判断がつかないビミョーなものである。

勝利はふたつとも一本だったのだから、まだ「牧野“グラップラー”光永」とか「牧野“サブミッション”光永」、もっと分かり易く「牧野“一本”光永」のほうが印象に残ったのかもしれないけれど。


アマチュアなのに、入場コスチュームも作った。

繰り返すが、形から入る男だったから。

真っ白な柔道着に「牛さん」のような黒い斑点を描き、さらにフードを取りつける。

これを、服飾デザイナーの友人に頼んで作ってもらった。
もちろん金は払った、たぶん10万円くらいはかかったかと。

さすがプロの仕事、とても格闘家のコスチュームとは思えないような、とっても可愛いものが出来上がった。

コーチに怒られ入場で着ることはなかった(笑!)のだが、
4月に横浜で今年初となる『RIZIN』の大会があり、取材が決定したのでホッとして、きょうはこんなコラムにしてみた、、、というわけなのです。


※この試合のころ、自分は吉田道場に入門し「初めて」オープンフィンガーグローブを装着した




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シネマしりとり「薀蓄篇」(200)

2017-03-22 00:10:00 | コラム
みく「ろ」→「ろ」ーあんぐる(ローアングル)

小津安二郎の映画には、神の視点が宿っていた。

けれども小津映画の神は「ごろん、と横になって」人々の生活を眺める穏やかなタイプであった・・・だから、ローアングルを多用していたと評する識者が居た。

なーるほど、面白い解釈だなぁと。

ローアングルとは簡単にいえば、低い視点で被写体を捉える撮影技法のこと。

映画ファンの8割が、ローアングルのことばで小津を想起するはず。
そのくらい、小津映画の一大特徴だった。


映像を観たほうが早いだろう、これはオーソン・ウェルズによる怪作『市民ケーン』(41)におけるローアングル・ショット。




キャラクターの視点と同じくらいの高さで捉えるショットに比べ、「ふつうでない」感じがよく表現されているかと。

こんな「ふつうでない」感じのショットを多用し、「ごくふつう」の物語を紡いでみせた小津って、やっぱり(よい意味で)ヘンクツだったのだなぁと思ったり。


コスプレを職業とする「えなこちゃん」を取材したことがある。



露出の多い彼女たちを悩ませるのは、ローアングルばかり狙ってくる一部カメラ小僧だろう。

低い視点から全体を捉えるのは構図として「あり。」だけれども、ファインダーを覗いてみたら「股間のドアップ」だったりするわけで。

彼女はプロだから「ある程度は、仕方ない」と思っているらしいが・・・。


そうなんだ、いわゆる「エロ系」盗撮の手口のほとんどが、このローアングルである。

未だ「そんな恰好をしている女も悪い」という意見があるのは驚きだが、女子高生やギャルはキチガイのためにそんな格好しているわけじゃないしね。

小津映画の神も、きっと怒っていることだろうよ。

だから気持ちは分かるが(分かるんかい!!)、肉眼で「ちら見」する程度で我慢しようよ。

その程度であれば、彼女たちだって「しょうがない」と許してくれるはずだから。


さて映画の話に戻って。

「気をつけて鑑賞」するようにすれば、あの映画にもこの映画にもローアングル・ショットを確認することが出来る。

キューブリックのこのショットとか、まさにそうだし、



コーエン兄弟やQTタランティーノ、クリストファー・ノーランの映画などなど。

・・・なんか、分かり易いでしょう?

つまり野心的な監督ほど、いろんな撮影技術を駆使する傾向にあるというわけです。


次回のしりとりは・・・
ろーあんぐ「る」→「る」ーくすかいうぉーかー。

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明日のコラムは・・・

『Smiley』
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