この本、私は内容も作者に関しても、何の予備知識を持たずに読みました。めずらしいことです。
1943年、戦争の色濃いアメリカの田舎。「オオカミ谷」と呼ばれる丘陵地が舞台です。11歳の少女アナベルの住むこの村にトビーといういわば浮浪者のような戦争帰りの男がいます。村人たちからはうとまれているけれど、アナベルやアナベルの母は彼を受け入れていました。そんな中、学校にベティという少女が転校してきます。ベティは、他に行くところがなく祖母の家に来たという少女。アナベルに対して脅迫まがいのことをしかけてきます。
そして事態は単なるいじめ疎外という問題では終わらず、進んでいきます。
アナベルがついた嘘とは? 真実とは?
「どうなるんだろう」「本当はどうなんだろう」という思いで、苦しいような思いを抱きながら、読み進めました。
ベティが黒なのは間違いないけれど、トビーはどうなの? 本当はどうなの? と、すみません、疑心暗鬼でした。
読み終えて、アナベルの強さに、頭が下がりました。
ラストの2ページが秀逸です。引用したいけれど、それをしては小説の醍醐味が失われてしまいます。ぜひ、読んでください。(ラストから読むのは、ダメです)
*2017年ニューベリー賞オナー&カーネギー賞ショートリスト作品。原題は「Wolf Hollow」です。
*日本ならば、この時代を描くと、もっと古くさい感じになってしまうと思うのですが、アメリカが舞台だと、古さを感じさせないという印象も。不思議ですね。現代を描くと情報が多すぎるけれど、そういうものがないので、心の本質に迫ることができるようです。