fromイーハトーヴ ーー児童文学(筆名おおぎやなぎちか)&俳句(俳号北柳あぶみ)

お知らせ・防備録。
記事および画像の無断転用はお断りいたします

Information

『アゲイン アゲイン』(あかね書房)『わくわくもりのはいくえん はる おともだちできるかな』『みちのく山のゆなな』(国土社)『ファミリーマップ』、エンタメシリーズ『家守神』1~4巻、『おはようの声』幼年童話『ヘビくんブランコくん』『オンチの葉っぱららららら♪』、短編集『友だちの木』・歴史物語『アテルイ 坂上田村麻呂と交えたエミシの勇士』他、好評発売中です。各種ご依頼は、左側のメッセージからお願いいたします。    

「童子」川越句会作品集『川』

2018年11月06日 | 日記
           

  所属している俳句結社「童子」には、各地に句会があります。
 その句会ごとに、作品集を出す場合があるのですが、このたびは、川越句会のものです。

 つき当たればここも寺なり夕永き   辻 桃子

 神域をぬければ冬日あたたかし    安部元気

 泥あれば泥に休みてあめんばう    佐藤明彦

 桃咲くやその頃来よと言はれて来   高橋晴日
 甘すぎる鏡開きの汁粉かな      清水雪花
 新涼の墨をたつぷり含ませぬ     岩本 桂
 籠に置く出張鞄初湯殿        大野 宥之助
 行く春の品川宿の札所かな      岡部 郁
 吹降りのいつしかあがり小豆粥    梶川みのり
 乳呑み子の寝返つたるや煤籠     草野小像
 幕間や触れてほめあふ薄衣      斉藤小桐
 保育器の子の足うごく聖夜かな    柴田けふこ
 でこぼこのありてでこぼこ蟻の列   志村喜三郎
 五六個や春の帽子を積みあげる    杉山美加
 賢治忌や銀河のやうな草の露     草露そろ
 涅槃絵や悲しみのさま生き生きと   永松 史
 溶けてなほ抱きあつてゐる雪の像   西村小市
 聖堂の椅子に座布団寒の入り     柳川えみり
 全集の一巻どこへ書を曝す      吉田 空
 
 それぞれが20句ほどにエッセイがついていて、お会いしたことのない方でも、その人となりが見えるようです。何よりメンバーが月一回集って切磋琢磨し、楽しく俳句をやっているのだなあと伝わってきます。

 私が幹事をしている多摩センター句会も、合同句集をいつか作れたらいいのですが・・・。何しろ幹事がいつもバタバタしていて。でもこういうのをいただくと、心が動きます。
 
 辻桃子主宰の句はめずらしく字余りですが、川越の小路に入ってしまった感がでているなあと思いました。「永き日」「日の永き」ではなく「夕永き」としているところ、さすがです。安部元気副主宰の句は、神域(つまり神社ってことか?)はひんやりとしていたのかなという連想が生まれ、佐藤明彦編集長は、泥という場にあめんぼうが休んだ瞬間をとらえいる。
 
 マンネリから脱却できずにいる俳人にとっては刺激になりました。

『その年、わたしは嘘をおぼえた』ローレン・ウォーク作/中井はるの・ 中井川玲子 訳(さ・え・ら書房)

2018年11月06日 | 本の紹介
        

 この本、私は内容も作者に関しても、何の予備知識を持たずに読みました。めずらしいことです。
 1943年、戦争の色濃いアメリカの田舎。「オオカミ谷」と呼ばれる丘陵地が舞台です。11歳の少女アナベルの住むこの村にトビーといういわば浮浪者のような戦争帰りの男がいます。村人たちからはうとまれているけれど、アナベルやアナベルの母は彼を受け入れていました。そんな中、学校にベティという少女が転校してきます。ベティは、他に行くところがなく祖母の家に来たという少女。アナベルに対して脅迫まがいのことをしかけてきます。
 そして事態は単なるいじめ疎外という問題では終わらず、進んでいきます。
 
 アナベルがついた嘘とは? 真実とは?
  
 「どうなるんだろう」「本当はどうなんだろう」という思いで、苦しいような思いを抱きながら、読み進めました。

 ベティが黒なのは間違いないけれど、トビーはどうなの? 本当はどうなの? と、すみません、疑心暗鬼でした。

 読み終えて、アナベルの強さに、頭が下がりました。

 ラストの2ページが秀逸です。引用したいけれど、それをしては小説の醍醐味が失われてしまいます。ぜひ、読んでください。(ラストから読むのは、ダメです)


 *2017年ニューベリー賞オナー&カーネギー賞ショートリスト作品。原題は「Wolf Hollow」です。
 *日本ならば、この時代を描くと、もっと古くさい感じになってしまうと思うのですが、アメリカが舞台だと、古さを感じさせないという印象も。不思議ですね。現代を描くと情報が多すぎるけれど、そういうものがないので、心の本質に迫ることができるようです。