秋田市在住小児科医井嶋敦子さんの新刊です。
ひまりは、猪突猛進型の女の子。かかりつけの和子先生に、「ADHD」であると診断されています。近年、いろんなタイプの病名がつけられていて、私は把握しきれていないのですが、たとえば、昔は落ち着きがないと言われていた子は、今、このADHDだったのかなと考えられます。ADHDの特性は、同じ歳の子にくらべて落ち着きたなく(多動性)、待たずにすぐ行動し(衝動性)、集中が続かずミスが多い(不注意)という特性があります(あとがきより)。
5年生までは、そんなひまりのことを、先生たちも、あたたかく見守ってくれていました。でも6年生になり、先生が変わってからは、おこられてばかり。
そんなひまりの状況を、ひまりが毎日少しずつ日記を書くように、自分の一日を記録します。その「時間割」を、友達に読んでもらうので、その友達視点のひまりの様子、というように描かれているので、わかりやすい。
薬の名前や、ADHDの正式名称など、難しい言葉も出てくるけど、ひまりが正確に書くと意識しているという設定なので、無理がありません。
ひまりは、クラスの男の子2人もADHDが入っているといいます。
でも、困っていなかれば、診断も治療も必要ないと。
なるほど。この状況、実際なのだと思います。きっとまわりに「変わっている子」がいるはず。その子がでも困ってなければいい、困っていたら、診断し、適切な対処が必要。まわりの理解が必要です。
そして、なぜできないの? と言われつづけたADHDの子は、自分がダメな子だと思ってしまうようになり、場合によっては・・。
あれこれ、私が書くより、とにかく、いろんな方に読んでいただきたい。
児童書コーナーだけでなく、育児書、医学書、教育書のコーナーでの展開をしていただけたらいいな。
敦子様があとがきに、自分もまた・・と書かれています。ああ、ひまりのように、おまじないを決めて、ひとつひとつをクリアして生きてらっしゃるんだろうなあと思いました。その積み重ねが小児科医という職業を持ちつつ児童文学も書かれる敦子様。頭のいい方、努力の人というイメージだったけれど、この本を読んで、とても腑に落ちるものがありました。
ひまりの主治医である和子先生は、ひまりと同じく肥満気味。という点だけは、敦子さんと違ってますが、他は敦子さんのイメージ。きっとひまりも、すてき時間割を積み重ねて、すてき大人になるに違いありません。