昨年は秋田から1校しかエントリーがなく、秋田大会が成立しませんでした。でも、今年は秋田から2校3チーム、そして弘前高校が遠路来てくれて、開催されました。
秋田西校、弘前高校は、これまで何度も松山に行っている常連校。対して秋田北校は、今回初出場でした。
さて、どうなるか。わくわくしながら観戦。
結果を先に言えば、弘前高校が3勝0敗で、松山行きを決めました。と書けば、圧勝だったように思われそうですが、実際の対決はどれも僅差でした。
ディベートの1点で勝敗が分かれた対戦がいくつもあり。また俳句に対しての評価も、これが他の審査員のメンバーだったら、わからないなと思うものもありました。
最優秀句は、
鞦韆(しゅうせん)やこげばこぐほどすれちがう 秋田西
この句、すごくいいです。句としては、あくまでぶらんこを写生して、余計なことを言っていません。それでいて、人生もこうだよな。一生懸命になればなるほど、すれ違うってことあるよな、という読みを誘います。作者1年生だそうで。おそるべし! これが、「ぶらんこや」だったらつまらない。「鞦韆」という漢字と他のひらがなのバランスもいい。「ぶらんこ」の兼題に対して、「ふらここ」「鞦韆」「半仙戯」など、他の言い回しのものを使いこなせるかというのも、大事なポイントだったようです。秋田西は、さすが、それが、入ったばかりの一年生にも伝えられていた。そこは、全員が俳句をやり始めた秋田北には厳しいところだったのかもしれません。
また、秋田西が、
冷ややかなぶらんこ握る指に熱 という句を出しました。
ここに「冷ややかな」という秋の季語をつけたところを、ディベートでつけなかったところもしかりです。審査員のお一人は、この秋の季語と春の「ぶらんこ」が季重ねで入っていると、5点という厳しい点数でしたが、私は、この句は好きでした。「冷ややかなぶらんこ」とつなげて一つの言葉とすれば、これは秋のぶらんこととることができます。(これが、つまり俳句観の違い)果たして作者がそれを意識して創ったかどうか? ディベートのまな板にあげられなかったのは残念でした。
他に好きだったのは、
指揮棒の止まる一瞬風光る 秋田北
兵児帯の子の舞溢れ風光る 秋田北 この句、敗れたけれど、対戦した句が、
笑い方ヘタじゃないよね光る風 秋田西 だったのでね・・・。
どちらもいい句でしょう。 兵児帯は、あの帯の軽さ柔らかさと風光るがとても響き合っていると思います。笑い方~の句は、実は作り笑いをしているという様子を、口語表現でうまく言ったと思います。
忙しき革靴の群れ風光る 弘前 俳句は、一部を切り取り、全体を想像させることができる。その見本のような句。(兵児帯の句もしかり)ということをディベートで強調してもらいたかったな。
老犬を埋めし裏山半仙戯 弘前 半仙戯 というチョイス、表記が、果たして合っているのかどうかを、論点にしてほしかった。・・・もう忘れ去られたようなぶらんこが、山にあるみたいな感じだと、この表記もいいと思います。
ぶらんこや地球を廻すために漕ぐ 弘前
ぶらんこやバイト仲間の愚痴を聞く 弘前 ディベートの中で、実際にはバイトは禁止なので経験はないと言っていました。俳句は創作だからそれでいい。そして、経験はなくても、バイト仲間というクラスメートとも違う人間関係の微妙さを、きちんと答えていました。記録を見ると、審査員皆さん鑑賞点をこちらに入れてました。逆に、どういう景かをきかれて、自分の経験で答えただけの場合は、そこで終わってしまい残念だなと感じました。
ぶらんこや「こっちおいで」の声待ちて 秋田北 この句、ただ引っ込み思案の子が誘いを待っている だけじゃなく、もっと孤独感や、もし誘ってもらったとしても、きっと楽しいわけではないというこの先を強調できたらなあ。(私、この句にはちょっと怖さを感じるのですが、そこまでは誰も読まなかったようです←怖い話を書くため、今いろいろ考えているせいかも)
異国の地降りれば肩に紋白蝶 秋田北 これ、上下名詞という形は悪いけど、紋白蝶という、日本ではとこにでもいるかそけき生き物と異国での出会いが、とてもいいと思います。
海風や蝶の入り来る乳児院 弘前 乳児院に蝶が入ってくるという景がいい。
てふてふの重心羽に偏れり 弘前
と、列挙すると、やはり弘前の力を感じますね。おそろいのTシャツを着て、きっと松山でも、頑張ってくれるでしょう。
こうして、句を並べると、レベルの高かった東京大会に見劣りしません。
秋田西、秋田北には、まだ投句審査というチャンスが残っています。
俳句甲子園関係者の皆様、審査員の皆様、選手そして学校関係者の皆様、長丁場、お疲れ様でした!!