たそがれオヤジのクタクタ山ある記

主に北関東の山を方向音痴で歩いています。山行計画の参考にされても責任は負いかねます。深慮せず軽く読み流してください。

目指せ百名山!なんちゃって。ラストは幌尻岳。 その1<とよぬか山荘から幌尻山荘>

2014年09月02日 | 北海道の山
◎2014年8月27日(水)~29日(金)

<8/27>新千歳空港──とよぬか山荘泊(14:30着)
<8/28>とよぬか山荘発(3:00)──第2ゲート(4:00)……取水施設(5:55)……幌尻山荘(7:41~8:07)……命の水(9:29)……幌尻岳(11:09~12:06)……命の水(13:06~13:30)……幌尻山荘(14:20)泊
<8/29>幌尻山荘(5:20)……取水施設(6:42)……第2ゲート(8:08~バス8:30)──とよぬか山荘(9:20)
※林道ゲートには第1、第2があるが、解説書によってあやふやなものがあり、ここでの「第2ゲート」は、取水施設寄りの現行シャトルバスの運行終点としている。

 「別に百名山へのこだわりはございません」と言いたいところだが、達成まであとわずかといった状況になってしまうと、こだわりなしの気持ちもあやふやなものになり、むしろ積極的に行きたくなる。さっさと片付けてしまいたい。どうせなら、年内に終わらせてしまおうか。5月末、屋久島・宮之浦岳に向かう前日、幌尻山荘に予約を入れた。8月前半と後半に空きがあった。電話で申し込むと、ファックスで予約確認が送られてきた。すぐに幌尻山荘の宿泊代1.500円を振り込み、とよぬか山荘とシャトルバスを予約、続いて飛行機と、予約、予約が相次ぎ、ほっとしたところで屋久島に向かった次第である。99番目の宮之浦岳は腰痛以外の支障がなく歩けていい気分に浸り、これなら、ラストの幌尻も問題なくまっとうだなと期待した。
 幌尻岳に登るには、一般的なコースが3つほどあるようだ。チロロ林道から入る北からのコース、南からの新冠コース、そして、今回、自分が歩いた額平川を渡渉して登るコース。このうち、北も南も、自分にはエキスパート向けの世界に思え、額平川渡渉のポピュラーなコースしか選択のしようがなかった。ちなみに、北からルートは「那須の山だより」のaki氏が、南はハイトスさんが最近歩かれている。拝見すると、それぞれ一長一短の趣きがある。いずれにしても天気次第であることは言わずもがなのことで、晴天であることが前提条件だ。
 本コースでの日帰りを考えないわけではなかった。だが、山含みの北海道遠征も今回で8度目になるだけに(決して、訪れる都度に百名山ばかり登っているわけではない)、ゆっくり歩いてみたという思いもあり、まして、引き続きで登るつもりの山もない。せめてもと幌尻山荘一泊を入れた。しかし、実際に歩いてみて、日帰りはかなりハードであることは確かだ。
 出発前に最新の情報を確認する。8月中に額平川の増水でシャトルバスが運休したのが何日かあった。現地に行って足止めの状況になった場合の代案として芦別岳と夕張岳を想定した。『山と高原地図』、以前は両山マップの記載はなかったが、今のには載っている。改めて購入して持参する。

 さて、出発が近づいたとある日、I男からいつ行くのかと聞かれた。他人の山行を気にする柄でもないだろうと、日程を教えてやったのだが、後日、I男もそれに合わせて予約を入れたと言いにきた。つまり、同行させてくれということだ。うっとうしい気持ちもなくはなかったが、山小屋に泊まることを考えれば2人の方が気も楽だし、現地での車の運転も任せられる。問題は、彼がはたして登りきれるのかという疑問。登れない状態になったら、こちらは遠慮なしに放り出すよと言い含めておいた。ということで、今回は2人山行。飛行機が違うので、新千歳空港で待ち合わせとなった。彼が早い便のため、その間、空港でガス缶購入を依頼した。ガス缶は空港の売店で販売している。
 余談だが、ガス缶は飛行機では持ち込み禁止ゆえ現地で調達するしかない。宅配にすると、X線通しでそれらしきものがなければ航空便、あれば自動車便になるらしい。これは帰ってから知ったことで、帰りの荷物に焼酎の残りを入れて送ったところ、自動車便に切り替わり、その旨の説明書きも貼って届いていた。ゆうパックでは、さらに変更通知のハガキまで届く。ガス缶の場合も同じだろう。このしくみを知っていれば、容量が2/3も残っていたガス缶を現地で処分して来ることもなかった。持ち帰りできたはずだ。

(キタキツネ?ただのキツネ?)


 空港でI男と合流し、レンタカー屋に行く。自分の荷物はレンタカー屋に送っている。ここから先、ダラダラと記しても仕方あるまい。途中でラーメンを食べて、とよぬか山荘に着いたのは14時30分。国道から山荘に向かう道すがら、この先、集落があるのだろうかと思ってしまった。キツネにも出会った。しかし、豊糠は意外にもしっかりした集落であった。

(とよぬか山荘)


 とよぬか山荘は廃校利用の施設。あてがわれた室内には2段ベッドで12人分の寝床があった。時間が遅かったのか、上段しか空いていなかった。どうも、朝一の3時バスに乗る方を集めた部屋のようだ。2食付きの宿泊代5,000円と往復のシャトルバス代3,500円をここで支払う。15時、風呂に入る。大きな家族風呂といったところ。夕食は定番のジンギスカン。羊肉が嫌いな方はどうなるのか、それは確認しなかった。ワインとビールを飲む。
 翌朝のバスは3時発。用事もないので、もう一度風呂に入って19時にはさっさと寝る。その間、談話室で白ヒゲの方と話をした。名古屋からいらしたそうだ。北海道に来て、もう一か月半とか。次は利尻に向かって百名山達成とのこと。こういう優雅な方もいらっしゃるんだなと、えらくうらやましく思った。ここの山荘の客層、メインはリタイア風のオジチャンと付属のオバチャン。ついでに山ガール数人といったところで、この時期なのか、我々のような現役はあまり見かけない。
 話は前後するが、ちょっと驚いたことに、ここの手持ち朝食はオニギリなのであるが、2個入りパックが2つ。つまり、オニギリ4個になっていて、実際は2食分とも言える代物であった。事前に用意した昼食がお荷物になってしまいそうだ。

 夜中におかしな夢をみた。トイレ個室2つに長い列。ようやく自分の番になったところで、トイレがつまって使用不可。もう一度、長い列の後ろに並び直した。「やべぇ、バスに間に合わないよ~!」と叫んだところで目が覚めた。23時50分。隣のベッドではI男が寝息をたて、どこからかうなった感じのイビキも聞こえている。まだみんな寝ている。山小屋でのトイレ使用、自分にはいつも死活問題である。出さないことには先に進めないのに、あの環境では出ない。意外とヤワなのだ。そんな、トイレ危惧の潜在意識が夢でもたげてしまったようだ。せっかくだからと、便意を誘発させるべく、そーっと外に出て、缶コーヒーを飲んでタバコを吸う。夜空には月も星もまったく見えない。明日の幌尻山荘のトイレはともかく、今日のとよぬか山荘のシャワートイレの場だけでもつまる前に確実に処理しておきたい。しかし、出発まで3回足を運んだものの、1/3も出せなかった。まったく先が思いやられる。手ごろなヤブがあればいいが…。
 1時半を過ぎるとざわつき始めた。準備万端の方もいる。もしかして、しきりに外に出てはタバコを吸っていた自分が起こしてしまったのだろうか。

(午前4時。シャトルバスが終点ゲートに到着して歩き出す。北海道でも4時はまだ暗い)


 3時バスには15人の乗客。内訳は4人グループ、2人×4、単3人。この中で、山荘に泊まらなかった方は2人だろうか。単のうち1人は日帰り。4人グループには見送りの女性がいた。後でお話を聞くと、見送り女性はいうなればドライバー役で、本隊は山中2か所のテント泊で、伏美岳まで縦走し、件の女性が登山口でお出迎えという算段だそうな。このグループ、昨夜は一升瓶で酒を飲んでいた。日帰り以外の単独氏は、談話室のヒゲGさんと、近くの民宿に泊まった浜松の方。この方、昨年、ツアーで15万円かけて参加したのに、雨で幌尻岳には行けず、樽前山と何とか山で我慢させられ、今回はフェリーを使っていらっしゃったそうだ。幌尻山荘泊りの方は、全員、今日の一泊だけのようだ。
 ほぼ一時間で第2ゲートに到着。ここから先は歩きになる。ツアーの場合、林道終点まで荷物を運んでもらえるのもあるらしい。まだ4時だ。暗い。懐中電灯を持って歩き出す。日帰りの方はあっという間に闇の中に消えた。林道歩きだからまだいいが、そうでなかったら、この暗闇では危なくて歩けない。4時半を過ぎてようやく明るくなった。電灯を消す。

(次第に明るくなってくるが、足元はまだ暗い)

(林道沿いの滝)

(5時40分。上も明るくなって、青い空が広がっている。やったねぇーの心境)


 長い林道だ。取水施設まで7.5kmある。I男がいっしょだから退屈さもしのげる。彼、昨夜はイビキで寝つけなかったとこぼしていたが、明け方のトイレの方は万全だったようだ。うらやましい。この林道、一方的な上りならまだしも、ところどころで長い下りになっていて、帰路は楽勝ではないようだ。薄明りの中、林道沿い、川沿いに滝が流れ込み、周りの景色に飽きはこない。林道そのものは2台通過が可能な幅。新しいタイヤ跡がある。天気は今のところ上向きのようだ。
 2人に抜かれる。見ると、ヒゲGさんと浜松の方(以下、浜Gさんとする)。すっかり意気投合している。早足だと思ったが、後でヒゲGさんが言うには、前半ゆえ、かなりのスローペースだったとか。1か月半も北海道の山を歩いているのだから、不思議でもないが、付き合わされた浜Gさんには、後半部でこれが応えたようだ。その後、我々と前後しての歩きとなった。

(取水施設に到着。軽トラは幌尻山荘か取水施設関係の車だろう。ここから渡渉が続くはず)


 取水施設(ダム)に到着。ここからいよいよ川歩きだ。今回、自分は新調したアクアグリッパーなるソールの沢靴使用につき、出発から通しで履いている。I男はフェルトソールに履き替える。彼、初めての沢歩きで、テンションがかなり上がっている。さて、川の水の量が気になる。ガイドによると「渡渉10数回」とある。4時に幌尻山荘を出発したとの7人くらいの一団が休んでいらした。元気そうなオバチャンに水量レベルを聞いた。隣では、疲れ顔のダンナが靴を履き替えている。オバチャン「そうね、深いところで私のここあたりかしら。一部よ、一部」と、ご自身の股間を指さしながら笑っておっしゃる。となると、深くて太ももくらいだろう。ところで、何で、一部、一部と連呼したのだろう。ぼんやり考えていたが、シャレで「い恥部」と言いたかっのかと思うのは深読みすぎか。このオバチャン、昨日は最高の天気だったと言っていたが、その言い方が、さも、今日の天気が崩れることを期待しているかに思えた。

 川沿いに「幌尻山荘⇒」の標識がある。距離は4kmとある。しばらくは川沿いの上の道を上下し、岩に据えられたクサリ場を2か所通過。ここから見る川の流れは緩急自在で、色の具合から深浅も多彩というか豊富というか。

(最初の渡渉)

(こんな深いところもある。上に垂れたテープは渡渉ポイントの目印のようだ)


 いよいよ、渡渉開始。1回目は膝越えで、流されることはない。しかし冷たい。意を決した後のI男はおもしろそうに渡っている。また上に上がる。この繰り返しがしばらく続くが、上流に向かうに連れて、流れが急になるのは自然のこと。たまにふらつくこともある。急流渡渉部分には2mほどの棒が放り出されている。この7尺棒は何だろう。
 5回目くらいの渡渉だったろうか。川はカーブし、白濁の急流になっている。上流寄りに右岸から滝が入り込んでいるポイントに出た。反対側から12人くらいの団体さんが渡って来る。どうやらツアーのようで、ガイド風の青年がさっき見かけた棒を対岸に半端に横に伸ばして、それを一行が支えにつかんで渡っている。何とも不安定な渡り方だ。水は腿まである。ジイチャンが渡った。滑ったのかバランス崩しなのか、こけた。身体が水没。しかし、棒だけはしっかりと握っていた。助かった。歓声が上がる。

(帰路の団体さんの渡渉。自分もここで流されかけた)


 じっと眺めていたが、これでは、いつまで経ってもこちらが渡れない。意を決して、団体さんの下流約1.5mを渡る。すごい急流だ。瞬間、バランスを崩した。流されると思ったが、瞬時に大石をつかんでいた。大石に手をかけて、何とか渡りきったが、ヘソから下を水没させてしまった。一瞬のことゆえ、ザックに水を入れることはなかった。この危うげな渡渉、団体さんにしっかり見られていて、悲鳴とため息が聞こえた。爆笑と嘲笑はなかったがお恥ずかしい限り。
 さて、問題はI男。対岸で、何やら通らしき方の指導を受けている。何ということはない。あの棒を水にさし、支柱にして渡れということだったのである。I男は快適に渡ってきた。こちら何とも初心者マークの心境だ。しかし、川渡りといったら松木川程度のものだが、この川の渡渉は、回数、流れともに半端ではない。軽い気持ちでは流されちまう。

(クサリ付き)

(休んでいると4人組がやって来た)

(岩に赤で〇ヒのマーク。「ヒ」とは何だろう)


 この先、岩のへつりのようなところもあるが、クサリがしっかりと付いている。肝心なのは、渡渉ポイントと対岸のマークを見逃さないこと。徐々に精神的に疲れてきた。遠くに、陽のあたった河原のスポットが見えた。あそこで休もう。
 中州で休んでいると、例の4人組がやって来た。山ガール2人が入っている。いずれも疲れた様子はなく、いかにも山慣れといった感じだ。彼らもここで休憩。

(最後の渡渉)


 引き続きの渡渉。渡渉の間隔は次第にあいてきて、山道歩きが加わってもなかなか終点に至らない。ようやくヒザ越えを渡って小屋が見えてきた。渡渉回数「10数回」程度では終わらなかったようだ。実のところ、帰りに数えてみたら、本流の渡渉だけで20回あった。これが9月に入れば、水量も減って、ヒザ程度になるらしい。I男に特別なトラブルはなかったが、一回、倒木に滑ってヒザをしたたかに打ちつけている。

(幌尻山荘に到着)


 幌尻山荘に到着。ここは標高950mくらいか。取水施設が750mとして、歩き出しの第2ゲートは480mくらい。ここまで4時間40分かけて、わずか470mしか上がっていないことになる。ここから幌尻山頂までは1100mもある。体力、持つかねぇ。まだ時間も8時前、天気は良好というのがせめてもの救いだ。

 便所臭い山荘だった。山小屋は往々にしてこんなものだ。前の庭にはブルーシート。中にいるのは管理人さんだけ。まず、沢靴と靴下を脱いで、日なたに置く。靴下はネオプレーン製だからすぐに乾くだろう。小屋のスリッパを履いて、受付を済ます。毛布を一枚支給され、寝場所を指定される。ザックから寝袋やら夕食、着替えを取り出してデポした。
 ほどなく4人組が登って来て、ちょっと休憩し、すぐに出発した。まずは、とよぬか山荘のオニギリをいただく。その間に、ヒゲGさんも浜Gさんも上がって来た。お2人ともになかなかタフじゃないの。
 登山靴に履き替える。では、I男君、幌尻岳に向けて出発しましょうかね。沢で楽しんだ分、しばらくは展望なしの急登続きでげんなりするかもよ。

その2に続く)

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2 コメント

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沢渡り (K女)
2014-09-02 23:00:31
北海道の8月と言っても、水は冷たそう。20回も渡らないと幌尻山荘に着かないのは、秘境と言っても良い感じ。
これからが、第二の難関を突破しての山頂へ行くのですね、水に濡れた後にみなさん体力があるね。

その2を楽しみしています。
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K女さん (たそがれオヤジ)
2014-09-02 23:28:20
K女さん、こんばんは。
早速のコメント、ありがとうございます。
「その2」もアップいたしましたので、よろしかったら、ご賞味ください。
水が冷たく感じるのは最初だけで、あとはマヒします。こういった場合、水から離れると足の不調やら痙攣につながるのですが、今回は大丈夫でした。
体力が続いたのは、もしかして私だけだったかも。
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