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◎2021年2月28日(日)
昨年の11月にモミジ谷、両崖山、天狗山を周回したが、21日に発生した火災でその辺り一帯が燃え、28日時点でまだ鎮火していないようだ(翌1日には鎮圧宣言が出たが)。両崖山山頂の御岳神社まで焼け落ちたということで、火災の経過がずっと気になっていた。七年前に起きた仙人ヶ岳の火災に比べたら、今回は百ヘクタールと、規模は1/4にはなるが、それでも1km四方の面積になる。まして、人家が接近している里山エリアだ。
どの程度燃えたのか確認しておきたかった。ヤジ馬気分が半分以上はある。家に帰って来た息子を誘ったら、東武で来る途中、車窓からは山火事の跡は見えなかったし、渡良瀬川対岸の山からでも、おそらく燃えたところは見えないはずだと同行は断られた。息子は足利の中学校に通ったから足利には詳しいし、むしろ、その時の同級生が大岩山毘沙門天関係者だから、そちらが心配だとのこと。
話は違うが、というか、これが本題なのだが、渡良瀬橋の南側の橋の袂に鳥居と階段が見え、さらに南側には道路を挟んで小高いヤブっぽい山がある。おそらく、道路敷設で寸断され、かつてはつながっていたのかとは思うが、以前から、登れる山なら登ってみたいと思っていた。それが浅間山だった。場所的には、遠望にはなるが、織姫神社の正面に位置する。あそこに登れば、両崖山方面の様子を窺うことはできないだろうか。
渡良瀬川の南側の河川敷・中橋緑地多目的広場の駐車場から歩くことにする。駐車料金は200円とのこと。消火活動のヘリポートに使われていたら他を探すしかない。足利市駅周辺ならいくつかあるだろう。
行ってみると、広場の駐車場は使えたが、土手ベリには警官が数人立っていて、そんなにはいないヤジ馬を整理していた。駐車場に入ろうとしたら、「消火ヘリを見に来たのでしたら、駐車場は利用しないでください」と言われ、「いや、川の南側の山歩きです」と答えて中に入れた。そのやり取りを聞いていた料金徴収のオジさんは苦笑いをしていた。
(頭上のヘリをカシャッと)
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(渡良瀬川から両崖山方面。ヘリが一機)
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歩き出すと、ヘリが頭上に見えたので、写真を撮ると、今度は「河川敷から写真を撮っていると、消防隊には目障りになるので控えてください」と警官から注意を受ける。いろいろ軽率な行動はとれないようだが、どこまでが許容なのか知らない以上は仕方がない。見上げるヘリの胴体には「埼玉県」と記しされていた。ドアは開け放し、消防士二人が身を乗り出していた。訓練を積んでいなけゃ、あんな体勢はとれない。
(これから歩く浅間山。右が男浅間山で左が上浅間山になる)
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(渡良瀬橋と織姫神社)
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(渡良瀬橋の袂にある女浅間山の鳥居)
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(ペタンコ祭りとかをやる神社らしい)
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(浅間神社下の宮)
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(神社以外にはこれしかない。向こうの山との間には車道が通っている)
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土手を歩きながら両崖山方面を眺める。煙はおろか、焼け焦げている様子は見えない。ここで残念と思ったのでは不謹慎というもの。渡良瀬橋まで歩き、信号待ちをして、鳥居をくぐって階段を登った。鳥居には「浅間神社」とあり、階段上の囲いの門には「足利浅間神社 下の宮」とある。下があれば上の宮もあるのだろう。
やはり、ここは神社だけの小高い丘。織姫神社方面は見えない、お参りだけして下る。ここで気になったのが、市の民俗文化財の「ペタンコ祭り」。何かで読んだ気がするが、置かれた解説板によれば、山開きの6月1日にこの一年で誕生した子供の無病息災な成長を願って、額(ひたい)に神社の朱印を押す風習があるようで、三百年続いているとあった。これは決して無料ではない。料金看板が掲示されていて、朱印ペタンコだけで500円、縁起物付きのセットは2,500円とある。親心としては一生に一度のことだし奮発するだろうが、ここのところの少子化と地方都市の人口減ではさほどの売上げにはつながらないかもしれない。山とんぼさんのブログによれば、女の子はここの下の宮(女浅間神社)、男の子はこれから行く上の宮(男浅間神社)でそれぞれ押印してもらうらしい。
狭い境内を回ると、男浅間神社も加えた案内図が置かれ、男浅間神社の南参道入口に八雲神社が記されている。森高千里の『渡良瀬橋』の歌詞に八雲神社にお参りした下りがあるので調べたことがある。足利市内には五社の八雲神社があって、詩に出てくる八雲神社は緑町の神社で、地図にある田中町の八雲神社ではないらしい。
(男浅間山はここから)
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(すぐに上が見えてくる。城址といえば、確かにそんな雰囲気もある)
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車道に戻る。東武線のガードをくぐって道沿いに歩くと、右手に「足利富士 上浅間神社」の門柱が見えた。住宅地の裏手を登って行くと、周辺案内図が置かれていて、ここに富士山城跡いうのが記されていたので気になり、その場でスマホを出して調べた。詳細は不明のようだが、天正年間に足利長尾氏が足利城(つまりは両崖山にあった城)の出城として築いたようで、反北条の同氏が後に親北条氏に転じ、秀吉の北条攻めに連座して没落。三つの峰(浅間山、富士山、坊主山)それぞれに城が置かれていたとあった。神社の歴史は古いが、出城としての寿命は短かったようだ。ここで、素人の疑問だ。本城の足利城の跡には御岳神社が建ち、支城というか出城の富士山城には浅間神社というのは何でだろう。同じ神社では不都合だったのだろうかなんて考えてしまう。
(織姫神社の後ろに両崖山。黒くなってはいない)
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(唯一の合目石)
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道をゆるゆるとカーブしながら登って行くと、織姫神社が見え、その上には両崖山が見えた。その上には消火活動中のヘリが一機。煙は見えず、やはり、焼け焦げて黒くなっている部分はこちら側からでは見えない。火災は山陰なのだろうか。ただ、山頂の神社が焼け落ちたということなら、両崖山の上が黒くなっていても不思議ではないのだが。
七合五勺目の合名石を見かけた。ただ、この「勺」の字が「ク」になっている。「夕」ではない。文字は明瞭。なぜだろう。脇面には嘉永二年の年代がある。
(この鳥居を見て、上の宮を期待したのだが)
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(こじんまりと現代風だった。後ろがビュースポットになる)
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上がるに連れて解説板が多くなる。案内図、城址の説明、そして、これは石碑だが、神社とペタンコ祭りの由来と続く。見上げるとすでに広場風になっていて鳥居が見えている。鳥居には富士浅間山神社の扁額。登り上げると真新しい神社があって、ジョギングスタイルのオバちゃんと犬連れのオジさんが両崖山の方を眺めている。
(ここからでは焼け跡はやはり見えなかった)
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(両崖山をアップで撮ったが)
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(天狗山側。撮った時には煙に気づかなかった)
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(これだとわかるだろうか)
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(織姫神社は閉鎖されているかと思ったが、参拝客の姿が見えた)
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(反対側からは富士山)
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(手前が坊主山で奥が八幡山古墳群)
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(浅間山)
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ここからの展望は最高だ。少し霞んではいるが富士山が見え、浅間山、男体山、赤城山、谷川連峰もはっきり見える。肝心の両崖山方面、ここから見ても、両崖山、天狗山、大岩山ともに、いや、その周辺にも焼けた跡は見えない。オバちゃんが「煙が見えるわね」と言うので、目をこらすと、確かに天狗山の左裏手にうっすらと煙が漂っている。
しばらく景色を眺めていた。そもそも山火事を見に行くということ自体、「気になって」とはいってもただのヤジ馬と違うところはない。裾野の住民には避難勧告が出ている。煙を確認したのだから、もういい。せっかく、山名は知らなかったが、以前から登ってみたかった浅間山だ。楽しむほどの広い山域ではないが、一通り歩いておこう。
(下る)
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(胎内洞穴。いい訳だが、逆光でまともに撮れなかった)
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(上浅間山の石尊宮。後で思うと、周囲をよく見て回ればよかった)
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(坊主山)
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鳥居の下で道が四方向になった。自分が歩いて来た表参道、下り予定の南参道、そして他に胎内洞穴と山頂石尊宮方面。まずは胎内洞穴。下ってすぐのところにあった。解説板によると、中には文殊菩薩が祀られ、修験者が中で加持祈祷を行なったらしい。
戻って、山頂石尊宮。ここもまたヤブっぽい道を行くとあっけなく山頂に着いた。お宮が一基あるだけ。この時点では気づいていないが、後で地図を確認すると、地図では「上浅間山」となっていて、三角点が置かれている。そんなのは知らないから、お宮を見ただけで終わっている。三角点を知っていたら、標石を探している。また戻って、南参道を下る。何だか、これでは歩いたうちに入らないなとブツブツ思っていると、目の前にこんもりした山が見えた。あれが坊主山らしい。あそこも寄るとしようか。
(歩いていて気持ちがよかったが)
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(あっけなく峠の登山口に出てしまった)
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(西に下ると、登れそうなところはなかった)
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南参道歩きもあっ気ないままに舗装道に着いてしまった。坊主山には標識もあって、簡単に登れる山と思っていたがさもあらず、標識どころか向かう踏み跡すらなく、崖状になっている。とりあえず、舗装道を右に下ったみたが、登り口は見あたらない。このままでは住宅街に行きそうで、カーブで戻ろうとして、念のため、スマホで坊主山を検索してみた。<やまの町桐生>に掲載されていた。「峠を東へ下ってすぐ右に坊主山への踏み跡をみつけました」とある。何だ、東どころか西に下ってんじゃないか。南参道入口(ここが峠)に戻る。その間、ジョギングオバちゃんが脇を走って行った。
(東に下り過ぎて道らしきところを行くとこうなった)
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(梅を見て苦笑い)
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(結局、また戻る)
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そんな踏み跡はなかった。「すぐ」どころかさらに下に行くと、右に向かう幅広の道があったので、行ってみると密な竹林になり、中には入り込めそうにもなく、周囲はロープまで巡らされ、中は密ヤブ。これじゃダメだと引き返したら、草刈りをしているオッサンがいたので、声をかけ、あの山に登りたいんだけど、道はあるんですかねと聞くと、南参道入口の前にあるとのこと。また引き返す。
(強引に入り込む)
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(右寄り下にトラロープが見えている。これに頼って登る)
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よほどに目が悪いのか、どこをどう見ても、そんな道はない。坊主山はあきらめて帰ろうとしかけたが、オッサンに「もう登って来たんかい」と笑われそうなので、強引にヤブ中に突っ込んだ。踏み跡は依然としてなかったが、しばらく漕いで行くと、右手にトラロープが見えた。このトラロープはずっと上まで続いているようだ。これに沿って上に向かう。さりとて、ロープの部分のヤブが薄いわけではない。ロープが消えると、山頂が見えてきた。
(坊主山山頂)
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(文字の消えた山名板。どなたか行くことがあれば、油性のマジックを持参して書き込んでいただきたいところだが)
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(上の宮が見えた。ここからだと、後ろの両崖山が接近しているように見えている)
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(道型だろうと、これを下ると)
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(結局、ヤブの中に入り込んだ)
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(そして、こんなところに出た)
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ぽっかりと開けたヤブもない山頂で、落葉に敷きつめられた小広場。周囲は立ち木で展望はよくないが、男浅間神社は見えた。何もない。文字の消えた山名板があるだけ。西側に道に近い踏み跡が続いていた。正規のコースはこれだろうか。追ってみると、すぐに消えてヤブ入り。方向転換して南に下ってみる。あの竹林に入り込まなければいいが。
(石碑やらをいくつか集めて置かれていた)
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(こんなのや)
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(あんなのが)
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坊主山は標高90m程度の山。ヤブこぎで下っても苦戦になるほどのレベルでもなく、刈払いされた台地状の丘に出た。真下には住宅が続いている。全身にまみれた葉クズを落として、先に行ってみると、石碑やら石仏を集めた一角に出て、道が続いていた。ここは太いアルミパイプで仕切られていたので中には入れなかったが、石仏には元文の文字が読み取れた。墓地跡かとも思ったが、馬頭観音碑も置かれている。
(八雲神社)
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後は渡良瀬の河川敷に戻るだけ。散歩で終わってしまった以上は、ついでにと八雲神社に寄る。前述のように、森高千里の作詞とは違う八雲神社だ。こじんまりした町の中の神社。石門には「村社八雲神社」とあった。参拝客もだれもいない神社。隣接した社務所は戸を閉ざしていた。
(中橋)
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(駐車場と田中橋)
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(東京消防庁のヘリだった)
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駐車場上の土手に出た。土手の道を歩かず、すぐに下の河川敷の多目的広場を歩いて駐車場に向かっていると、また、警官が土手から走って下りて来た。今度は何を言われるのかと警戒した。「ここを歩いていると、消火活動のヘリの方に目ざわりになりますから、上がってください」と言われた。「私、先の駐車場に車をとめていますから」と答えると、「あっ、そうですか。じゃ結構です」と土手に走って戻って行った。
仕事柄とはいえ、みんな、神経がピリピリしていることがわかる。広場での活動は、どこのスポーツ団体でも自粛しているようだ。だから、広いスポーツ広場をポツンと一人で歩いている姿は目立つのかもしれない。山火事はいまだに収まらず、まして、渡良瀬川対岸の北側駐車場は閉鎖され、ヘリポートにも使われているようで、この南側からも川水を汲む給水車が走っている。そんな状況の中で、ハイキング楽しんでいる己の不謹慎さに、車に戻ってから少々あきれた気分になってしまった。楽しい散歩ができた気持ちとは裏腹に、何だか後ろめたい思いの帰り道だった。
(今回の軌跡。歩き時間は2時間弱だった)
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「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図200000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)、数値地図25000(地名・公共施設)、数値地図250mメッシュ(標高)、数値地図50mメッシュ(標高)及び基盤地図情報を使用した。(承認番号 平24情使、 第921号)」
昨年の11月にモミジ谷、両崖山、天狗山を周回したが、21日に発生した火災でその辺り一帯が燃え、28日時点でまだ鎮火していないようだ(翌1日には鎮圧宣言が出たが)。両崖山山頂の御岳神社まで焼け落ちたということで、火災の経過がずっと気になっていた。七年前に起きた仙人ヶ岳の火災に比べたら、今回は百ヘクタールと、規模は1/4にはなるが、それでも1km四方の面積になる。まして、人家が接近している里山エリアだ。
どの程度燃えたのか確認しておきたかった。ヤジ馬気分が半分以上はある。家に帰って来た息子を誘ったら、東武で来る途中、車窓からは山火事の跡は見えなかったし、渡良瀬川対岸の山からでも、おそらく燃えたところは見えないはずだと同行は断られた。息子は足利の中学校に通ったから足利には詳しいし、むしろ、その時の同級生が大岩山毘沙門天関係者だから、そちらが心配だとのこと。
話は違うが、というか、これが本題なのだが、渡良瀬橋の南側の橋の袂に鳥居と階段が見え、さらに南側には道路を挟んで小高いヤブっぽい山がある。おそらく、道路敷設で寸断され、かつてはつながっていたのかとは思うが、以前から、登れる山なら登ってみたいと思っていた。それが浅間山だった。場所的には、遠望にはなるが、織姫神社の正面に位置する。あそこに登れば、両崖山方面の様子を窺うことはできないだろうか。
渡良瀬川の南側の河川敷・中橋緑地多目的広場の駐車場から歩くことにする。駐車料金は200円とのこと。消火活動のヘリポートに使われていたら他を探すしかない。足利市駅周辺ならいくつかあるだろう。
行ってみると、広場の駐車場は使えたが、土手ベリには警官が数人立っていて、そんなにはいないヤジ馬を整理していた。駐車場に入ろうとしたら、「消火ヘリを見に来たのでしたら、駐車場は利用しないでください」と言われ、「いや、川の南側の山歩きです」と答えて中に入れた。そのやり取りを聞いていた料金徴収のオジさんは苦笑いをしていた。
(頭上のヘリをカシャッと)
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(渡良瀬川から両崖山方面。ヘリが一機)
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歩き出すと、ヘリが頭上に見えたので、写真を撮ると、今度は「河川敷から写真を撮っていると、消防隊には目障りになるので控えてください」と警官から注意を受ける。いろいろ軽率な行動はとれないようだが、どこまでが許容なのか知らない以上は仕方がない。見上げるヘリの胴体には「埼玉県」と記しされていた。ドアは開け放し、消防士二人が身を乗り出していた。訓練を積んでいなけゃ、あんな体勢はとれない。
(これから歩く浅間山。右が男浅間山で左が上浅間山になる)
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(渡良瀬橋と織姫神社)
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(渡良瀬橋の袂にある女浅間山の鳥居)
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(ペタンコ祭りとかをやる神社らしい)
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(浅間神社下の宮)
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(神社以外にはこれしかない。向こうの山との間には車道が通っている)
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土手を歩きながら両崖山方面を眺める。煙はおろか、焼け焦げている様子は見えない。ここで残念と思ったのでは不謹慎というもの。渡良瀬橋まで歩き、信号待ちをして、鳥居をくぐって階段を登った。鳥居には「浅間神社」とあり、階段上の囲いの門には「足利浅間神社 下の宮」とある。下があれば上の宮もあるのだろう。
やはり、ここは神社だけの小高い丘。織姫神社方面は見えない、お参りだけして下る。ここで気になったのが、市の民俗文化財の「ペタンコ祭り」。何かで読んだ気がするが、置かれた解説板によれば、山開きの6月1日にこの一年で誕生した子供の無病息災な成長を願って、額(ひたい)に神社の朱印を押す風習があるようで、三百年続いているとあった。これは決して無料ではない。料金看板が掲示されていて、朱印ペタンコだけで500円、縁起物付きのセットは2,500円とある。親心としては一生に一度のことだし奮発するだろうが、ここのところの少子化と地方都市の人口減ではさほどの売上げにはつながらないかもしれない。山とんぼさんのブログによれば、女の子はここの下の宮(女浅間神社)、男の子はこれから行く上の宮(男浅間神社)でそれぞれ押印してもらうらしい。
狭い境内を回ると、男浅間神社も加えた案内図が置かれ、男浅間神社の南参道入口に八雲神社が記されている。森高千里の『渡良瀬橋』の歌詞に八雲神社にお参りした下りがあるので調べたことがある。足利市内には五社の八雲神社があって、詩に出てくる八雲神社は緑町の神社で、地図にある田中町の八雲神社ではないらしい。
(男浅間山はここから)
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(すぐに上が見えてくる。城址といえば、確かにそんな雰囲気もある)
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車道に戻る。東武線のガードをくぐって道沿いに歩くと、右手に「足利富士 上浅間神社」の門柱が見えた。住宅地の裏手を登って行くと、周辺案内図が置かれていて、ここに富士山城跡いうのが記されていたので気になり、その場でスマホを出して調べた。詳細は不明のようだが、天正年間に足利長尾氏が足利城(つまりは両崖山にあった城)の出城として築いたようで、反北条の同氏が後に親北条氏に転じ、秀吉の北条攻めに連座して没落。三つの峰(浅間山、富士山、坊主山)それぞれに城が置かれていたとあった。神社の歴史は古いが、出城としての寿命は短かったようだ。ここで、素人の疑問だ。本城の足利城の跡には御岳神社が建ち、支城というか出城の富士山城には浅間神社というのは何でだろう。同じ神社では不都合だったのだろうかなんて考えてしまう。
(織姫神社の後ろに両崖山。黒くなってはいない)
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(唯一の合目石)
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道をゆるゆるとカーブしながら登って行くと、織姫神社が見え、その上には両崖山が見えた。その上には消火活動中のヘリが一機。煙は見えず、やはり、焼け焦げて黒くなっている部分はこちら側からでは見えない。火災は山陰なのだろうか。ただ、山頂の神社が焼け落ちたということなら、両崖山の上が黒くなっていても不思議ではないのだが。
七合五勺目の合名石を見かけた。ただ、この「勺」の字が「ク」になっている。「夕」ではない。文字は明瞭。なぜだろう。脇面には嘉永二年の年代がある。
(この鳥居を見て、上の宮を期待したのだが)
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(こじんまりと現代風だった。後ろがビュースポットになる)
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上がるに連れて解説板が多くなる。案内図、城址の説明、そして、これは石碑だが、神社とペタンコ祭りの由来と続く。見上げるとすでに広場風になっていて鳥居が見えている。鳥居には富士浅間山神社の扁額。登り上げると真新しい神社があって、ジョギングスタイルのオバちゃんと犬連れのオジさんが両崖山の方を眺めている。
(ここからでは焼け跡はやはり見えなかった)
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(両崖山をアップで撮ったが)
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(天狗山側。撮った時には煙に気づかなかった)
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(これだとわかるだろうか)
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(織姫神社は閉鎖されているかと思ったが、参拝客の姿が見えた)
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(反対側からは富士山)
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(手前が坊主山で奥が八幡山古墳群)
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(浅間山)
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ここからの展望は最高だ。少し霞んではいるが富士山が見え、浅間山、男体山、赤城山、谷川連峰もはっきり見える。肝心の両崖山方面、ここから見ても、両崖山、天狗山、大岩山ともに、いや、その周辺にも焼けた跡は見えない。オバちゃんが「煙が見えるわね」と言うので、目をこらすと、確かに天狗山の左裏手にうっすらと煙が漂っている。
しばらく景色を眺めていた。そもそも山火事を見に行くということ自体、「気になって」とはいってもただのヤジ馬と違うところはない。裾野の住民には避難勧告が出ている。煙を確認したのだから、もういい。せっかく、山名は知らなかったが、以前から登ってみたかった浅間山だ。楽しむほどの広い山域ではないが、一通り歩いておこう。
(下る)
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(胎内洞穴。いい訳だが、逆光でまともに撮れなかった)
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(上浅間山の石尊宮。後で思うと、周囲をよく見て回ればよかった)
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(坊主山)
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鳥居の下で道が四方向になった。自分が歩いて来た表参道、下り予定の南参道、そして他に胎内洞穴と山頂石尊宮方面。まずは胎内洞穴。下ってすぐのところにあった。解説板によると、中には文殊菩薩が祀られ、修験者が中で加持祈祷を行なったらしい。
戻って、山頂石尊宮。ここもまたヤブっぽい道を行くとあっけなく山頂に着いた。お宮が一基あるだけ。この時点では気づいていないが、後で地図を確認すると、地図では「上浅間山」となっていて、三角点が置かれている。そんなのは知らないから、お宮を見ただけで終わっている。三角点を知っていたら、標石を探している。また戻って、南参道を下る。何だか、これでは歩いたうちに入らないなとブツブツ思っていると、目の前にこんもりした山が見えた。あれが坊主山らしい。あそこも寄るとしようか。
(歩いていて気持ちがよかったが)
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(あっけなく峠の登山口に出てしまった)
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(西に下ると、登れそうなところはなかった)
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南参道歩きもあっ気ないままに舗装道に着いてしまった。坊主山には標識もあって、簡単に登れる山と思っていたがさもあらず、標識どころか向かう踏み跡すらなく、崖状になっている。とりあえず、舗装道を右に下ったみたが、登り口は見あたらない。このままでは住宅街に行きそうで、カーブで戻ろうとして、念のため、スマホで坊主山を検索してみた。<やまの町桐生>に掲載されていた。「峠を東へ下ってすぐ右に坊主山への踏み跡をみつけました」とある。何だ、東どころか西に下ってんじゃないか。南参道入口(ここが峠)に戻る。その間、ジョギングオバちゃんが脇を走って行った。
(東に下り過ぎて道らしきところを行くとこうなった)
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(梅を見て苦笑い)
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(結局、また戻る)
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そんな踏み跡はなかった。「すぐ」どころかさらに下に行くと、右に向かう幅広の道があったので、行ってみると密な竹林になり、中には入り込めそうにもなく、周囲はロープまで巡らされ、中は密ヤブ。これじゃダメだと引き返したら、草刈りをしているオッサンがいたので、声をかけ、あの山に登りたいんだけど、道はあるんですかねと聞くと、南参道入口の前にあるとのこと。また引き返す。
(強引に入り込む)
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(右寄り下にトラロープが見えている。これに頼って登る)
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よほどに目が悪いのか、どこをどう見ても、そんな道はない。坊主山はあきらめて帰ろうとしかけたが、オッサンに「もう登って来たんかい」と笑われそうなので、強引にヤブ中に突っ込んだ。踏み跡は依然としてなかったが、しばらく漕いで行くと、右手にトラロープが見えた。このトラロープはずっと上まで続いているようだ。これに沿って上に向かう。さりとて、ロープの部分のヤブが薄いわけではない。ロープが消えると、山頂が見えてきた。
(坊主山山頂)
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(文字の消えた山名板。どなたか行くことがあれば、油性のマジックを持参して書き込んでいただきたいところだが)
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(上の宮が見えた。ここからだと、後ろの両崖山が接近しているように見えている)
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(道型だろうと、これを下ると)
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(結局、ヤブの中に入り込んだ)
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(そして、こんなところに出た)
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ぽっかりと開けたヤブもない山頂で、落葉に敷きつめられた小広場。周囲は立ち木で展望はよくないが、男浅間神社は見えた。何もない。文字の消えた山名板があるだけ。西側に道に近い踏み跡が続いていた。正規のコースはこれだろうか。追ってみると、すぐに消えてヤブ入り。方向転換して南に下ってみる。あの竹林に入り込まなければいいが。
(石碑やらをいくつか集めて置かれていた)
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(こんなのや)
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(あんなのが)
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坊主山は標高90m程度の山。ヤブこぎで下っても苦戦になるほどのレベルでもなく、刈払いされた台地状の丘に出た。真下には住宅が続いている。全身にまみれた葉クズを落として、先に行ってみると、石碑やら石仏を集めた一角に出て、道が続いていた。ここは太いアルミパイプで仕切られていたので中には入れなかったが、石仏には元文の文字が読み取れた。墓地跡かとも思ったが、馬頭観音碑も置かれている。
(八雲神社)
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後は渡良瀬の河川敷に戻るだけ。散歩で終わってしまった以上は、ついでにと八雲神社に寄る。前述のように、森高千里の作詞とは違う八雲神社だ。こじんまりした町の中の神社。石門には「村社八雲神社」とあった。参拝客もだれもいない神社。隣接した社務所は戸を閉ざしていた。
(中橋)
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(駐車場と田中橋)
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(東京消防庁のヘリだった)
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駐車場上の土手に出た。土手の道を歩かず、すぐに下の河川敷の多目的広場を歩いて駐車場に向かっていると、また、警官が土手から走って下りて来た。今度は何を言われるのかと警戒した。「ここを歩いていると、消火活動のヘリの方に目ざわりになりますから、上がってください」と言われた。「私、先の駐車場に車をとめていますから」と答えると、「あっ、そうですか。じゃ結構です」と土手に走って戻って行った。
仕事柄とはいえ、みんな、神経がピリピリしていることがわかる。広場での活動は、どこのスポーツ団体でも自粛しているようだ。だから、広いスポーツ広場をポツンと一人で歩いている姿は目立つのかもしれない。山火事はいまだに収まらず、まして、渡良瀬川対岸の北側駐車場は閉鎖され、ヘリポートにも使われているようで、この南側からも川水を汲む給水車が走っている。そんな状況の中で、ハイキング楽しんでいる己の不謹慎さに、車に戻ってから少々あきれた気分になってしまった。楽しい散歩ができた気持ちとは裏腹に、何だか後ろめたい思いの帰り道だった。
(今回の軌跡。歩き時間は2時間弱だった)
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「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図200000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)、数値地図25000(地名・公共施設)、数値地図250mメッシュ(標高)、数値地図50mメッシュ(標高)及び基盤地図情報を使用した。(承認番号 平24情使、 第921号)」
おっしゃるとおり、私もその野山ハイキングコースあたりかと思いますよ。天狗山の北西側あたりでしょう。ただ、果たして、ハイキングコースから焼け跡を確認することができるかどうかは微妙な気がします。
それにしても、両崖山の神社が焼け落ちたというのに、当然、周囲の樹も燃えたかと思うのですが、それがまったく見えなかった。報道を見ていると、火元は、天狗山付近らしいし、西からの赤城おろしにあおられて、神社まで飛び火したと思われますが、燃えたのは立ち木ではなく下草やら落葉という報道もありました。いろんな情報がここに来て出ているようです。
いずれにしても、気軽に行けて、コースもいろいろと作れそうな里山エリアです。いずれ自分の目で確かめてみないことには。
しかし、仙人ヶ岳、両崖山、黒保根と、あの周辺に集中して山火事が起きているのが何とも不思議です。
ちなみに、27日は唐澤山神社の鳥見ついでに、天狗岩から眺めたら、赤城山をバックにうっすらと煙が見えました。
ただ、昨日も北関を使ったのですが、大岩山トンネルも五十部トンネルの周辺も燃えた感じは無く、果たして東京ドーム23個分も何処が燃えたのだろうと気になりました。
まぁ、可能性としては、両崖山、天狗山を中心とする野山ハイキングコース周辺なのかな。なんにしても安蘇のお山のことですから、いずれ見に行こうと思っています。