たそがれオヤジのクタクタ山ある記

主に北関東の山を方向音痴で歩いています。山行計画の参考にされても責任は負いかねます。深慮せず軽く読み流してください。

今度こそと期待して出かけた安達太良山の紅葉はガスガスで強風。結果はスカだった。今年はどうも自分の日程とは相性が悪いらしい。

2021年10月14日 | 東北の山
◎2021年10月8日(金)

奥岳登山口駐車場(9:10)……薬師岳(10:15)……安達太良山(11:27~11:49)……峰の辻?(12:13)……勢至平分岐(13:05)……あだたら渓谷自然遊歩道入口(13:47)……駐車場(14:25)

 前回、栗駒山系秣岳に行くきっかけになったのは、又従弟からの東北紅葉きれい情報だったが、他に安達太良山もリストにあった。安達太良山に行ったのはもう30年以上前の10月末。早くも初雪があり、終わりかけのはずの紅葉はどうだったかは覚えていない。その頃の自分は紅葉にも興味もないただの百名山ピークハンターだった。雪があって、鉄山まで行き、硫黄臭かったこと、くろがね小屋の前を通ったこと、岳温泉に泊まって帰ったこと等がメモに残っているくらいだ。写真は撮ってもいない。
 今回も休暇をとった。混雑の中での紅葉見物は避けたかった。現に、自分が栗駒山に行った日の週末は、いわかがみ平がこれまでにないほどの混雑ぶりで、シャトルバスの運行が大混乱したらしい。安達太良山だけなら日帰りも可能だが、何せ東北遠征だ。せっかくだし、他にも行きたくなる。そのついでにセットしたのは天気次第の神室岳と蔵王の滝見だった。そのために白石蔵王駅前の安いビジネスホテルを予約した。車中泊で済ますほどの元気はないし、温泉泊まりの金銭的な余裕もない。
 安達太良山は楽をして登りたかった。つまりロープウェイ利用。薬師岳までロープウェイで上がれば、その先は周回しても楽だ。だが、<てんきとくらす>を確認すると当日の登山指数は<C>。下欄の郡山市の天気は終日晴れ。なんでCなのかわからなかったが、よく見ると、風が強く、風速15m以上あるからCになったようだ。その程度なら山行にはちょっと厳しいかもで登れるが、考えれば、強風でロープウェイも運休じゃないかと気になりはじめた。正直のところ、下から登って行くのはできるだけ避けたかった。ムダそうな片道1050円払いと1時間少々の労力を天秤にかければ、同じ結果を見るのなら、自分には1050円が軽くなる。むしろ、ロープウェイの方が最盛期なら絶景を楽しめるようでもあるしといった言い訳も可能だ。
 二本松インターから岳街道に向かう車は多かったが、途中からどんどん脇道に出て行き、奥岳駐車場に向かう車は少なくなりながらも、目の前を走る車は群馬ナンバーで、ずっと後ろを走る形になった。確実に安達太良山紅葉見物に違いない。やはり駐車場まで一緒だった。平日とはいっても紅葉時期だ。駐車場には次々と車が入って来るし、駐車の車も多い。天気は曇っている。風の気配はない。ロープウェイは動いているだろう。

(あたりまえのようにロープウェイ乗り場に向かう)


(これだった)


 家を6時に出た。単にロープウェイの運行開始時間の8時半に合わせてのことで、乗り待ち行列も9時には落ち着くと思っていた。ナビの到着予定時刻が早くなりそうなので、前回の失態の不安もあり、念入れで高速のPAで2回トイレに寄っては時間をつぶす。もう何も出ないのを確認しただけだった。残念ながら、今回はその手のトラブルは何もない。むしろ他人様がらみはあった。ハイマツ帯もないのに、どこでも、ちょっとヤブに入れば何食わぬ顔をして登山道に復帰できたのに心残りだったというのもおかしなことだが、それを期待していたわけではない。それはともかく、予定どおりに9時に着いた。車が多けりゃハイカーの姿も目立つ。またマスクかいなと、マスクを着けて準備し、ロープウェイ乗り場に向かう。乗り待ちの行列はなかった。看板には「強風のため運行見合わせ」とあった。やはり運休か。上の風が強いらしい。

(運休では仕方がない。歩くコースへ。これが後で知る馬車道)


(列から外れると急に寂しくなった。正面の薬師岳右側の斜面が曇り空ながらも盛りなのがわかる)


(薬師岳には、あのロープウェイ山頂駅からは右に下るようだ。まったく薄ぼんやり)


 そもそも、こんな時間に歩き出す人は、大方がロープウェイ利用での計画だったのだろう。自分も例外にはない。車で来る途中で、下る車も多かった。ロープウェイが運休では仕方がないから帰ろうという気持ちもわかる。自分の主観ではあきらめ顔で一般道に向かうハイカーが多かった。自分も同じ顔つきのはず。1050円の振り子が逆転して重くなった。
 散発ながらも列状だが、半分以上がくろがね小屋方面に行き、薬師岳に向かうハイカーは意外に少ない。車も通れそうな、歩きやすくて緩い道だから(後で知ったが「馬車道」とのこと)、そのまま行ってしまう人もいるのだろう。薬師岳方面コースに入り込んだ際、瞬間ヤブ道で、こちらを歩く人はかなり少ないのではと思ったが、先で普通の登山道になった。ただ、粘土質で滑るところが結構ある。ハイカーの列は消えてゲレンデ下。四駆で乗り込んだオッサンが無線でやりとりをしている。ケーブル会社にしてみれば紅葉期の運行は死活問題だろう。何せ、1050円が目の前を素通りして行くわけだし。ここでマスクは外す。息苦しく、内側は汗をかいている。

(この辺はこれからの紅葉なのだろう)


(きれいなのはきれいなのだが…)


(むしろ目先の紅葉か。だが、この辺はこれからだ)


 焼けた感じの紅葉を見ながら登って行く。やはり、この斜面はケーブルから眺めるもので、展望の効かない登山道では目先の色づきしか見えない。いつもと違ってどんどんハイカーを追い抜く。抜かれることはない。これが山頂まで続く。決して軽快な歩きではない。ほとんどがロープウェイ利用予定だったハイカーなのだから、これは自慢にもならないし、まして歩き時間経過をみれば、ずっと標準タイム前後の歩きをしているに過ぎない。
 薬師岳の斜面の色づきは濃くて良いようだが、低い潅木類で一角しか見えないし、曇り空ではすっきりもしない。もしかしてこの天気のままかなと思ったが、結局はそうなってしまった。

(五葉松平から。紅葉が深い色になっている)


(ななかまどの実)


(安達太良山の山頂が雲間からちらりと)


(すぐに消えた)


 あまり面白くもない歩きが続く。五葉松平通過。よくは知らないが、ツツジ類だろうか、そんな木々に覆われているせいか広場にはなっていなかった。確かに低い松が目に付くようになっていたが、五葉松とは知らなかった。ずっと先に安達太良山らしきピークが見えている。ガスでシルエットになっている。そのピークもまた程なく消えた。すぐそこの薬師岳すら見え隠れしている状態だ。
 今回の山行ではコースプランで迷った。南側の銚子ヶ滝登山口から登れば、滝も見られる。ただ、自分にはきつそうだし、途中の和尚山の紅葉がきれいとは思えないので、一般的なコースにしたが、これではまともに紅葉を拝めないのでは滝見の方を主にした方がよかったようだ。失敗したか。見るものもなくただに歩いている。敢えて特記することもない。この辺からナナカマドの実が赤く目立つようになる。

(薬師岳山頂)


(叩いてみた)


(薬師岳から)


(山頂方面。天気が良ければ…)


 いくらか視界が開け、石ゴロの広場に出た。ここが薬師岳。脇に新しげな石祠があったので行ってみると鐘があった。特に意味もなく叩いてみた。周囲には人もいる。こんなことは滅多にしない。よほどに退屈な歩きだからだろう。周囲の紅葉は確かにカラフルできれいだ。オレンジ、赤、黄色。安達太良山の斜面の紅葉はかなり濃い。だがこれではダメ。ガスに覆われているのでは30%の紅葉満喫気分だ。ため息も出ない。

(やはりロープウェイ客向けの木道なのだろうが歩きやすい)


(これからだろうな)


(赤は早いみたい)


 上に向かう。広場の端には「この上の空がほんとの空です 二本松市」と記された標柱が立っている。見上げると、瞬時、青空が出たものの、ほんとの空はすぐに雲に覆われた。そして、ロープウェイの上の乗り場からの木道と合流。10時20分。ここまで来て今さらどうでもいいが1時間10分の余計な歩きをしたということになる。この頃から下山者と行き交うようになる。時間的に当初からロープウェイを当てにせずに登った方々だろう。話をしているのを聞くと、山頂は猛烈な風で立っていられなかった、ガスで何も見えなかった、…と紅葉見物には相応しくない話ばかりが続く。風は確かにある。薬師岳から先は次第に強くなり、絶えず帽子が飛ばされないように深くかぶり直しをする。立っていられないほどではない。たまにぐらつく程度の歩きか。山頂はまったく見えていない。目の前に目障りな木々がなくなっただけ、視界周辺の紅葉は楽しめる。

(五葉松が主で、紅葉はそれに埋没している)


(近くで見る黄色もなかなか)


(しつこく赤。何せ、遠くの紅葉が見えないのではしょうがない)


(安達太良山の手前ピーク。色づきは良い)


(う~ん残念)


(曇り空ながらもきれいだ)


 木道がしばらく続き、歩きづらい登山道に戻ると目の前に安達太良の前衛峰らしきピークが見えてくる。今、歩いているところから近い分、ガスも若干切れて紅葉は幾分きれいに見える。残念ながら、この辺の紅葉が本日の一番だったかもしれない。
 きれいさついでに、話は横道に逸れる。知り合いに夫婦でよく山歩きをする方がいて、自分の知り合いは奥さんの方なのだが、彼女に紅葉時期は二人であちこちに行くのかと尋ねると、顔を曇らせ、返って来た言葉は、旦那が色弱で、鮮やかな紅葉がよくわからないから、特に紅葉目的で山に行くことはないとのこと。これは失礼なことを聞いてしまった。紅葉しているという感覚はあるらしい。ただ、一般に感じる鮮やかな紅葉には見えないそうだ。信号の変化はわかるから車は運転するし、日常生活に何ら不都合はない。八月には夫婦で車泊続きで東北の山登りをしながら一周したとのことだったし、今度は奄美大島にきれいな海を見に行くとも言っていた。山歩きをしても見事な紅葉が視覚にそのままに伝わらないのは気の毒なもの。ここで敢えて記すことでもないが、色弱の方にはそういうこともあるんだなと、そして自分が意識もせずに味わう四季の移ろう色彩の変化の楽しみを一部欠いたままでは残念なものだとふと思った。せっかくだから余計ついでのままに記すが、ネットで調べると、色弱の方の色識別には様々なタイプがあるらしく、それを細かく、このタイプには紅葉がこう見えていると具体的な写真付きで記事にしているものもあった。

(表登山道との合流点)


(手前ピークが近づく)


(二本松市方面)


(左寄りの小さな山が篭山)


(なだらかなで広い斜面は草紅葉)


(小ピークでくつろぐハイカー)


 束の間の紅葉を楽しむ。山頂はガスで隠れている。いまだにロープウェイの発動音は聞こえない。安達太良山の斜面は色濃くなっている。せめてあれに陽があたればなぁと思う。左から表登山口が合流。10時48分。薬師岳からは33分。自分はコースタイム35分に近く歩いている。このまま行けば、山頂には11時30分に着くはず。とはいっても、この山頂まで40分とは『山と高原地図』のタイムであって、備え付けの案内図看板には35分とあった。自分の足では39分かかってしまった。歩程時間へのこだわりはもういいか。そもそも、この安達太良山は、一般コースを歩いている限りは楽な山なのだ。
 さっき見えていた手前ピークに着いたようだ。多くのハイカーが休み、展望を楽しんでいる。自分もまた休み、惜しい紅葉を楽しむ。確かにここの紅葉は絶品かもしれない。草紅葉も広く延びている。振り返ると、ロープウェイ山頂駅がかすかに見えている。感覚としてわからなかったが、あの中を歩いて来たのか。こうして見ると、盛りの中を歩いていたようだ。

(山頂に向けて。下るハイカーも多い)


(次第に殺風景になり)


(紅葉は消えた)


(そして山頂の乳首)


(帰路はこちらを下ることになる。ガスガス)


 ハイマツ、五葉松の緑が主になり、紅葉は消え、火山特有の大石がゴロゴロ出てくると、前方にぽっくりしたピークがガスの中から浮き上がった。あれが乳首と呼ばれる安達太良山の山頂らしい。やはり、くろがね小屋方面からの方々がどんどん上がって来て、山頂は賑わい出している。あの乳首は、遠くから見ると確かに乳首だが、近づいて大きくなると乳首というよりも乳房に見える。
 風が強く、間近にいても乳首が見え隠れを繰り返す。風向きからか硫黄の臭いがし、砂がやたらと飛んで来て、眼鏡越しに目に入り込む。ノドはザラザラ。乳首に登るハイカーは行列になっている。上り下りとも一方向しかないらしく、鎖場でつかえている。しばらく下で眺めていたが、途切れたところで行ってみる。やはり鎖場で引っかかった。関西弁の10人ほどのGB隊が下るのに往生していて、こちらは寒い中の待ちになっているからイラついてくる。たまらず、鎖が垂れた脇の岩を登った。後続者はいず、あきれ顔で眺めていた。不思議なものだ。コース上にロープやクサリがあれば、どうしてもつかむものだと思ってしまう人が多い。あくまでも添え物だろうに。

(乳首山頂から下を見る)


(風が強くて、すぐに見えなくなる)


(三角点のある山頂)


(クサリ場でつかえている)


(乳首を見ながら休憩。ところで、「乳首」以外の表現はないものかね)


 ガスガスで何も見えない山頂。それでいて、青空の一部が切れて見えたりしている。立っていられないほどではないが風は強い。「紀元二千六百年記念」と記された石碑が横倒しになっている。地元青年団が日中戦争の必勝でもここで祈願したのだろう。あの頃の大日本帝國の政府、軍部、臣民すべてが狂気の渦の中にあり、今の北朝鮮と何ら変わらない。そんなことはどうでもいい。斜めになった三角点標石を確認して、さっさと下の広場に下り、離れたところでアイコスを吸った、これが紙巻きタバコなら火がつかない。
 菓子パンを食べ、下りをどうするか検討すべく地図を広げた。地図は飛ばされされそうになった。くろがね温泉方面のコースは人がぞろぞろと歩いている。そこを避けるには、篭山との間にあるコースを下り、勢至平に出た方がいいだろうか。鉄山まで行っても展望は期待できまい。今回は安達太良山の紅葉の雰囲気だけでも味わえただけでも良しとしよう。これが雨でも降っていたら悪い印象になってしまう。翌日の天気を考えれば、これでもラッキーだったかもしれない。

(下る。左側を行けばくろがね小屋だろうが、自分の記憶では、30年前はここを通らず、鉄山に行き、そのままくろがね小屋に下っている。右は小屋を経由しないコースかと思うが、標識を見落としたのか、はっきりしないので左側を下った)


(目立った紅葉はない)


(振り返って)


(標識はないが、この辺からくろがねコースから離れる)


(篭山が近づく。今思うに、たいして時間もかからずに行けたはず。失敗した)


(くろがねコースははっきり見えている)


(何なのかよく知らないが「友と雪」の碑)


 下る。途中まではくろがね小屋コースといっしょで、途中で分岐する。自分の歩き方が悪かったのか、明瞭な分岐がわからぬままに斜めに下ると、勢至平への標識が出てきた。この道で正解だったようだ。歩いている人はまずいない。くろがね小屋からの道に合流する(勢至平分岐)までの間に出会った人は5人もいなかった。右手に見える篭山が気になり、よほどに立ち寄ろうかと思ったが、登ったところできれいな紅葉が期待できそうにも思えないのでやめた。

(これからもっときれいになると思う)


(道はこんなだったが)


(次第にこうなり)


(とうとうこうなった)


(振り返り1)


(振り返り2)


(オバチャン2人が何かやっているようなので、戻って待機した)


(左からくろがね小屋の道・馬車道に出た)


 最初のうちはのんびりと歩けたが、途中から悪路になり、U字型に掘られ、この高さが1m近くある。両サイドの高いところを歩いている分にはいいが、それが消えるところもあり、そうなると、下を歩かねばならず、これがまた粘土質で滑る。上がったり下りたりを繰り返しているうちに疲れ、途中の狭い広場で休憩したりした。
 珍しくも登って来る2人のオバチャンの姿が見えた。だが、順番にヤブに入って用足しをしている気配があり、その脇を通るわけにもいかなくなり、しばらく2人が揃うのを見えないところに戻って待っていた。すると登って来る2人に聞かれた。この道はどんな道かと。正直に伝えた、えぐられていて歩きづらいと。すると、じゃやめようかしらと戻ったが、すぐにくろがね小屋からの道に合流した。ウソみたいな道だった。これじゃ、車も通れるじゃないの。下るハイカーの姿も多い。ここでかすかに動力音が聞こえた。ロープウェイが動きだしたのかもしれない。

(馬車道)


(道沿いの紅葉はまだ淡い)


(旧道)


 この道に出て下るのに、少しばかりの楽しみがあった。終点近くに「あだたら渓谷自然遊歩道」があり、沢沿いに歩いて、滝も見られるらしい。これに記憶はないから、30年前に来た時には歩道を通っていないようだ。
 歩きながら、この道が「馬車道」というだと知った。これに「旧道」が何度もクロスする。試しに旧道に入ってみたが、馬車道を歩いている方がどんなにか楽だったか。その区間だけのことだったのか、たいして面白みはなかった。小学生、中学生の遠足だろうか、集団を追い越して下って行くと、ようやく遊歩道の入口看板が目に入った。もうこの頃になると、ハイカーというよりも行楽客の姿が目立ち、空身か小さなデイバッグ姿が多くなってきた。

(渓谷自然遊歩道入口)


(いきなりの橋)


(沢を見下ろしながらの歩き)


(ナメ床の流れ)


(橋に人がいた方がアクセントになったかも)


(平滑の橋)


(きれいな小滝だった)


(これが昇竜の滝のようだ)


(少し下流から)


(魚止めの滝)


(炭窯跡)


(名無しの滝)


(ここで渓谷から離れる)


(橋から二階滝。滝の名前は後で知った)


 遊歩道に入る。渓谷沿いの橋を渡って行く。最初のうちは、なんだ、この程度のものかと期待未満のものだったが、次第に道が泥濘になりかけてくると、「渓谷美」に近くなった。ただ、沢沿いの紅葉はまだ早いようだ。眺めながら、足元の泥濘に注意しながら下って行く。
 「平滑の橋」を渡ると、幅広の小滝。この辺から、渓谷にも変化が出てきて、つい歩くのが遅くなったり、沢に降りてみたりもした。ナメも続いているので、沢靴なら、沢を歩きたいところだ。「昇竜滝」、「魚止滝」と続く。名前の付いた滝は見落としがなければこの程度のものだったか。「炭窯跡」を過ぎると、もう終点に近い。ひどい泥濘があった。足跡がかなりあるが、ここは上にトラバースして避けた。真新しいスニーカーを泥んこにしてしまった女性が、オレの足を見て、「登山靴だったら、あんなとこ平気だべ」と、福島弁訛りで話しかけてきた。

(少々きつくなってきた)


(ゲレンデ下に出た)


 最後の橋を渡ると上り坂。さすがにつらくなっていた。これがまた長い。ようやく馬車道に戻り、ゲレンデの中に入った。もうロープウェイは動いていた。再びマスクを着用。後で知ったことだが、沢沿いの自然遊歩道は、あと何週間か後の下の紅葉盛りの時には絶品の景色になるらしい。

(レストハウス)


(ロープウェイだかゴンドラは動いていた)


(駐車場に到着)


 レストハウスに向かう。登山姿のハイカーは少なく、圧倒的に見るからに行楽客が多い。レストハウス脇の水道とタワシで足の泥を落とし、トイレを拝借。駐車場の車は多くなっていて、タクシー以外に観光バスも3台駐まっていた。運転手が外でタバコを吸っている。まさに緊急事態宣言解除前の風景だ。違いはマスク姿だけといったところだろう。空は相変わらずどんよりし、薬師岳もまた紅葉が黒く見えている。
 車に戻って紙巻きタバコを吸う。どうせこのままホテルだし、着替えもしないが、ズボンの裾は泥だらけになっている。車だから気にすることもあるまい。まぁ、こんな天気での安達太良山の紅葉で、ネット記事では栗駒山と並んで東北の二大紅葉と記しているのもあった。天気が良ければ、相応に楽しめたのだろうが、致し方あるまい。近場ならともかく、宿を予約してまで来ている。簡単に日程は変更できない。一日延ばしにすればよかったかなといった気持ちもよぎったが、それをしていたら、今日以上に後悔することになっていた。

【そして、その翌日の土曜日。雨で、山歩きどころの天気ではなかった】
 ホテルの部屋のカーテンを開けると外は雨の気配。タバコを吸いにフロアー端のベランダに行った。このホテルは全館禁煙で、部屋でタバコを吸うと、部屋のクリーニング代と臭いが消えるまでの日数分の宿泊代を請求する旨の張り紙があり、これまで禁煙ルームで平気でやっていた窓を開けたりトイレの換気扇下での喫煙ができない。ブルームテックなら部屋吸いでもOKとあったが、アイコスではダメなのか。おかげで、昨晩は酒を飲みながら、頻繁にベランダに通った。
 喫煙ベランダから眺めると、駅前を歩く人は皆、傘をさしている。部屋に戻ってテレビをつけると、今日は終日雨のようだ。これで神室岳は消えた。だが、このまま家に帰ったのでは宿泊した意味がなくなる。せめて、蔵王方面に向かい、空模様を確認してからの行動にしよう。
 蔵王の滝見、具体的には三階の滝と不動滝。もちろん、いずれも澄川を渡渉して真下から見るつもりでいる。昨夜のうちに買っておいたおにぎりを食べて出発。

(三階の滝にはここから行くのかと思う。現に、ぎりぎりまで車で乗り入れた方もいたようだ)


(三階の滝滝見台)


(これだ)


 ホテル出発40分後に澄川に下る遊歩道(自然研究路)の前にいた。雨はむしろ強くなっていて、視界もかなり悪い。外に出る気も起きず、車からは出なかった。つまり、遊歩道入口を確認しただけで終わり。この遊歩道は先でかなり崩壊していて、通行止めのようだ。
 せめて滝見台から見えやしないかと滝見台に向かう。駐車場には車は一台もなく、傘をさして階段を下ると、果たして目の前に見えるのは白い世界で、滝のシルエットすら感じない。ここからは遠望だししょうがないと、次は蔵王不動尊に向かう。不動滝もこの天気では無理だろう。いつか来る日のために途中までは歩いておきたい。つまりは下見。年内に東北に3回もやって来るのはきつい。

(不動滝というか蔵王不動尊駐車場)


(不動様)


(展望台に下る)


(展望台)


(ここもまたこれ)


(不動尊の裏手には遊歩道の延長があった)


(結局戻る)


 不動尊の道路を挟んだ向かいには、なぜかやたらと広い駐車場があった。これは不動滝見物のための駐車場だとしたら、以前は滝見に来る人も多かったのだろう。長靴を履いて傘をさして不動尊に向かう。
 まずは不動滝展望台に下る。音はすれども滝の姿は見えない。音からしてかなりの豪瀑の感じがする。立入禁止のチェーンをくぐってみるつもりでいたが、どこをどう見ても、下に遊歩道跡の形跡はない。まばらながらもヤブが広がっているだけだ。こっちではないのかと不動尊の裏手に回ると、遊歩道が続いていた。これかなと思ってしばらく行くと、今度は、滝の音がどんどん離れ、ついには聞こえなくなった。その間、川に下る踏み跡もなく、車道にあくまでも並行して歩いていて、いずれはエコーラインに合流しそうな雰囲気だった。それもそのはず。西に歩き過ぎていた。これでは滝には行けるわけもない。戻る。

(自分には、ここを乗り越えて遊歩道に出るものと思っているが、踏み跡もないのでは確証も持てない)


(ほんのりと不動滝が見えた)


 展望台からもう一度、踏み跡をつぶさに探した。視界がもう少し開けていれば、先が見通せ、歩道跡の一角をとらえられたかもしれない。ガスで先は見えなかった。後で考えれば、ここからの乗り越えしか考えられない。行ってみようと思ったが、その時はヤブの中を彷徨し、戻るに戻れなくなるような気がした。ここでチラリと不動滝のシルエットが見えた。やはり大きな滝のようだ。
 わからずのままに撤退か。となると、今度来るとすれば、最初に見た遊歩道入口から三階の滝を見て、不動滝。そしてそのまま戻る。もしくは、澄川の対岸側から続いていた遊歩道からということになるが、その道はかなり荒れ、橋も流されているらしく、中には、澄川まで行き着けなかったというネット記事も目にしている。

(今度はこちらを下ってみた)


(ここであやふや。とにかく、今日はこれ以上は危険)


 もう帰るか。不動尊に戻ると、その裏に、さっき歩いた歩道とは同じ方向ながらも川寄りに付けられた踏み跡を見つけた。もしかしてこれかと、ロープをまたぐ。しばらく歩く。確実に川に下っている気配はあるが、ヤブに覆われた崖のようなところに出て、踏み跡は消えた。先はガスで見えない。おそらく、ここを下っても行けるだろうと思ったが、空身で傘をさしている状態では、それをやったら無謀過ぎで危険が伴う。ここで下見は打ち切りにした。

(笑ってしまうが蔵王エコーラインからの紅葉)


(同じく。昨日なら少しはきれいに見えたろう)


 心残りがあり、エコーラインを上に向かう。あわよくば、路沿いの紅葉が見られるかもしれないと思ったからだが、それは甘く、上がるに連れてガスは濃くなるだけで、ライトを点灯した走りになった。適当なところで帰ることにした。

 東北道に入る。どうもモヤモヤ感が残る。せめて銚子ヶ滝だけでも見に行けばスッキリするか。だが、二本松インターが近づいても安達太良山そのものが見えない。やはり、こちらも同じか。ようやくあきらめもついて家路にそのまま就くことにした。
 今日の三階の滝と不動滝だが、事前にルートを調べたが、詳しく書かれた記事の大方が2011年の東日本大震災以前のもので、瀑泉さんの記事もまた2009年だった。澄川沿いにもかなりの震災の影響があったろうし、その後も崩壊は自然のままに今も続いているはずだ。震災後、特に最近の両滝の見物歩きに参考になる記事はさほどになく、写真メインで詳細歩きを省いているのがほとんどだ。ルート図で何となく歩き方はわかったつもりでいるが、来年以降に改めて行くとしたら、それこそ体当たり、勘どころで行くしかあるまい。遠望で済ますつもりはない。

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