
◎2024年7月17日(水)
野反峠駐車場(8:07)……弁天山(8:27)……エビ山(9:57)……キャンプ場(10:47)……ニシブタ沢(11:02~11:15)……野反峠(13:11)
今回は疲れた。前回の先月と違って、無風と湿気が加わったこともあるだろうし、雨続きだったせいか、ことに下りでは何度も滑っては引っくり返った。4年前の7月16日に今回と同じようなコースを歩いている。その時も天候は同じようなものだったが、さほどに疲れたという思いはない。その際残念だったのは、時間不足で滝見に行けなかったことだった。疲れの要因は足だろう。痛みはその場で抜けたものの、帰ってから足がずっとだるい。たかが5時間歩きだったが、今回の靴は登山靴や運動靴ではなく、ピンが埋め込まれたフェルト製の沢靴での通しだった。帰路がとにかく長く感じ、足裏が痛くなった。疲れたのは、それがあったからかもしれない。敢えて沢靴にした理由は、どうせ沢歩きをするし、荷物になるだけだからと、靴の交換をしたくなかった。沢歩きを含めて、歩きの気持ちが、初めてのところでもないしと安易になっていた。反省点を冒頭に記してしまった。
毎日のように天気はすっきりしない。天気予報はあてにもならない。ただ、午前中ならどこにでも行けそうだ。曇り時々雨の予報でも、霧雨か小雨程度だったら歩ける。終盤どころか、ガスに覆われたポツリポツリの霧降高原のニッコウキスゲに心底から満足していたわけではない。野反湖のニッコウキスゲ(以下、ノゾリキスゲと記す)はまだ見られそうだ。今年は咲きが良いとのこと。まだ十分に楽しめるだろう。雨を気にしながらの、長時間歩きは無理。さりとて、地元近くの低山で、湿気と高温で汗だくになるのはごめんだ。自宅からは遠いながらも野反湖に向かった。
(駐車場から野反湖。かなり雲が下りている。ノゾリキスゲも元気そうにはない)

(八間山方面)

(それでも元気そうなのを)

(弁天山へ。霧雨になっている)

滝見を先行するかで悩んだが、結局は野反峠の駐車場に車を置いた。前回と違って霧雨状態で風はなく、車は少ない。野反湖側に咲くノゾリキスゲを眺め、帰ってからゆっくり楽しもうと、弁天山に向かう。この時点で、前述のようにすでに沢靴で、車にヘルメットを用意しながら、ニシブタ沢を甘く考えていたから出しもしなかった。4年前に沢を見た際に、地味沢とまではいかないまでも、軽く歩ける沢と思っていた。
(途中で。雨粒で新鮮さが残っている)

(最近よく見かける花。敢えて花の名前は記さない)

(南側は雲が上がってきているような気配。右が榛名で、左が赤城だろうか)

(アザミもこれからもずっと見かけるが、この先はかなり色具合が悪くなって、ひからび、トゲだけは元気だった)

(弁天山)

花を眺めては写真撮りをしながらゆっくりと弁天山に登ると、早速に抜かれた。太った男性だった。もう汗だくになっている。景色やら花の類にはまったく興味はなさそうで、がむしゃらに歩くタイプか。山頂で立ち止まりもしなかった。この方、駐車場に帰着すると、着替えをしていたから、おそらく、あの歩き方ではカモシカ平か大高山まで行ったのかもしれない。あくまでも想像だ。自分も13年前に大高山まで行った。結局、降雨もあって6時間半歩きに音を上げ、時間的にも遅くなっていたので、たまたま見かけたバスで野反峠まで戻ったことがある。あの彼氏、今回の半端なオレの歩きコースと同じはずはない。
(ガスがかなり濃くなったような気がする)

(南方面は晴れつつあるようだ)

弁天山では立ち休みをしただけ。早いとこ滝見に行きたかった。対岸の八間山は雲に覆われて見えない。それでいて、南方面の山々は雲の合い間から遠くまで見えている。ここの天気がこれからどうなるのか想像もつかない。ここまで雨除け代わりにペラペラのヤッケを着ていたが、風通しが悪くて蒸れ、ここで脱いだ。脱いだとて、涼しくなるわけでもなく、まったく変化なし。幸いにも霧雨は止んでいた。
(珍しい花ではないかもしれない)

(これくらいはわかりますよ)

(これもまた、ここのところよく見かける)

(道が狭まって下半身が濡れる)

(ニッコウキスゲよりも、このオニユリがオレには好みなんだけど。特に斑点ありが)

(相変わらずの視界)

(湖畔下りへの標識。これが二つほどあった)

エビ山までは遠かった。花を見ては、何度も同じ花を撮ったりしているから、さらに遅くなる。悪いことに、この先は道が狭くなり、高いササヤブが続く。無風ゆえ、汗もやたらと垂れ、シャツもズボンもササに含んだ雨粒も吸い込んで、不快このうえない。スパッツは元より嫌いだし、膝下はすでに絞れるほどに濡れている。刈り払われたところに出ては、ここがエビ山かと思えど、そこには、湖畔に続く道の分岐の標識があるだけ。『山と高原地図』で確認すると、弁天山とエビ山間のコースタイムは1時間15分になっていた。まだまだ先だ。
(果たしてエビ山はどのピークやら。地図では弁天山から北西直進方面だから、左の目の前のピークがエビ山と思ったが、右の尾根が高い。混乱した)

(あれがエビ山かと、ほぼ確信したつもりでいたが)

(ようやく八間山が見えた。写真撮りとしては、すっきりはこれだけだった)

(好みの花にチョウがいた。羽を広げていないからそうとは見えないが)

泥濘も多くなり、迂回もできずに、足がズボズボと入り込む。すでに靴は泥だらけだ。登山靴よりは気にせずに歩ける。沢に入ればきれいになる。その点は沢靴の利点かもしれないが、剥き出しの地面で滑りやすいのには参った。どうしても2、3歩先までの足場に注意して登らないといけない。それでも滑っては尻もちをつく。
(やはり、下からは見えなかったエビ山はさらに先だった)

(立ち休みも、こんなのがあれば、良い理由付けになる)

(ようやくエビ山)

(なるほど「恵比山」か。弁天があれば恵比寿にもしたくなる。ここからキャンプ場に下る)

ようやく正面にピーク。汗をダラダラと流して何度も立ち休み。下って来た単独氏に出会う。待機してくれたが、先に下ってもらった。ようやく登りきったと思ったら、さらにその先にピークがあった。今度は比較的に楽とはいっても、何度も休んでようやくエビ山に到着。弁天山から1時間半。CTよりも15分遅れ。13年前は55分で歩いている。無感動的な体力の衰えぶり。いずれにせよ、今日の登り作業はようやくこれで終わりでほっとした。八間山はまた雲に隠れてしまった。
(湖畔への方向が変わった。下りではなく少しの上りになっている。これは確かに下り尾根のはずだが、さっき見た右に続く尾根は実際は上りになっていた。そこを歩いているようだ。地形図では10mにも満たないからわからない)

(つい、好きな花を撮ってしまう)

(<エビの見晴台>から。キスゲを入れて)

(キスゲを入れなければこうなる。ハート型と表現する方もいるが、色気も失せているオレには逆スペードに見える)

(泥濘がひどい。自分の足跡が鮮明に残る)

(全身濡れ放題。さらに滑る)

(先に行くのが嫌なら、ここを下れば遊歩道に出るだろう。ただ、全身が水と汗まみになる)

(この先もこれだ)

少しだけ休んで、湖畔に出るべく下る。出る先はキャンプサイトのはずだ。薄暗い樹林の中、泥濘の場所がさらに多くなった。進行左下の方から沢音がかすかに聞こえる。おそらくニシブタ沢だろう。地図を見る。トラバースしながら行けそうだが、距離はある。まして、そちら方面はヤブが深そうだ。しかし、この距離で沢音が聞こえるということは、流れがかなり強くなっているのではなかろうか。ちょっと気になった。
下りで4人グループと単独氏が登って来たのと出会った。平日のこの天気で、結構、歩いているハイカーもいる。やはり、目的はノゾリキスゲだろう。
(もう、濡れまくっている。少しは休憩したい。ベンチは水を吸っているわけでもないのでもそのまま腰かけた)

(ニシブタ沢に向かう。道がしっかりしているのはキャンプ利用者のためだろう)

(釣り人がたくさんいた)

(ニシブタ沢の標識)

キャンプサイトの炊事場の前のベンチに腰をおろし、おにぎりを一個食べる。一服したかったがタバコはない。さっさとニシブタ沢に向かう。ニシブタ沢が近づく。野反湖ではこの辺が釣りのポイントなのか10人以上の姿が見えた。ニシブタ沢そのものは禁漁区になっている。
(ニシブタ沢の入口。写真では普通の沢だが)

(とにかく、流れが速くて身体の動きがふらつき、意向のままにならない)

(静かそうに見えるが、とんでもなく強い勢い。水煙が先まで続いている)

(怖くなったのでここで打ち切る)

ニシブタ沢の前に出た。驚いた。流れが強い。4年前に通りがかりに見た印象としては、「予想以上に水量があって勢いもある。ただ、遡行に苦労するレベルではない」だった。家に帰ってから、その時の沢入口の写真と今回の写真を見比べると、勢いはわかりかねるが、今回は水量が多く、沢幅いっぱいに流れている。
ここまで来たからにはと、沢に入ってみると体がぐらついた。自分にはとんでもない流れだ。これは河口付近だけだと思いたい。巻いて行けやしないかと、左岸側のヤブに入り込む。それらしき踏み跡はあったが、すぐに消え、背丈のササ混じりのヤブになって先に進めない。仕方なく沢に戻る。相変わらずに流れは速く、水煙が立ち込めている。深みや鋭利な大石がないだけでも助かるが、先に行くのが怖くなってきた。こんなところをヘルメットならぬ帽子をかぶり、さらにストックを持って遡行するのは何とも無謀で、危険としかいいようがない、ダメだなこりゃ。引き返す。100mも遡行してはいないだろう。
ガチガチの、とはいっても、オレの場合は岩登りするわけでもないのでロープ持参の必要はないが、それなりの沢歩きスタイルだったとしても、あの流れで、果たして滝まで行けたかはわからない。4年前時点では入口から45分という情報だったが、この流れでの45分遡行は無理だろう。その45分とて、以前に参考にしたネット記事は消えている。
今回も縁がなかった。4年前は立ち寄るには時間的に無理だった。見ておきたかった先にある小滝はせいぜい5mの落差もあるまいが、ネットで見た滝の写真は、自分には好みだった。魚止めの滝というらしいが、もっともらしい名前からして、無名の滝だろう。この小滝、ニシブタ沢を遡行する物好きな方はきわめて稀で、アバウトな情報が数件しか出てこない。河口からどれくらい先にあるかも見当がつかない。ただ、45分もかかるとは思えない。また改めてということか。その時は、ノゾリキスゲはさておき、キャンプ場入口から歩いて滝一本に絞るべきだろうが、それだけでここまで2時間半もかけて来るのもなぁと逡巡してしまう。
(とぼとぼと西側遊歩道に)

滝見をあきらめた以上は野反峠に戻るしかない。野反湖バス停まで行けば、付近でノゾリキスゲの群生を見物できるだろうが、それでは遠回りになるし、帰路は長くなるので歩く自信もない。前回と違って、西側の遊歩道歩きで戻ることにする。確か、途中の<テン場のお花畑>にもノゾリキスゲが群生していたはず。
(テン場のお花畑で。以前歩いた時よりも花数は少ないような気がした。もう終わりかけなのだろう)

(同じく)

(同じくだが、他の花も撮っておかないと)

(こんな標識があった)

(なるほどそうかも)

(晴れると期待したが、さらにガスが深くなったような気がする)

(特別なことではない、トンボを入れて撮っただけ)

(エビ平で小休止)

(終わりかけのアザミにしがみついている)

(ようやくラスト1km。ピン入りの沢靴のせいか、足裏が痛い)

テン場のお花畑を見てしまうと、その先が長かった。出会ったのは、野反湖を一周するかのような軽装のニイちゃんとオバさんの二人組。それと、エビ山の下で出会った単独氏。この単独氏、自分とは反対回りだったらしく、向こうも覚えていて、お互いにニヤリとしてしまった。しかし、このコース、いろんなスポット名があるものだ。テンバ場のお花畑を過ぎると、シラカバ淵、エビ平、カモシカ淵、押出し、どじょう小屋沢と標識が続く。エビ平から先はアザミが両サイドから出てきてはチクチクと刺す。それぞれの標識には野反峠までの距離が記されているものの、感覚的にはさほどに距離が縮まらない。どじょう小屋沢の標識には1kmとあってようやくホっとはしたが、ニシブタ沢から峠までは4.5km。その間の3.5km弱を1時間かけている。道は平坦だし、こんなものだろう。むしろ、その残りの1kmに寄り道コースも入り込み、1時間かけてしまった。そろそろ足の裏が痛くなってきた。
(地蔵さんが右に見えた。行ってみる)

(不気味だった。首欠けのままにしておけばよかったのに。地蔵さんには気に入らない頭だったのだろう)

(傍らに咲いていた)

キスゲか出てきたところで、ちょっと不気味なものを見た。ここを通ったのは初めてだ。右上に地蔵さんがあったので、こんなところに珍しいと上がってみた。首欠け地蔵なのだが、その姿のままにあって欲しいのに、足元の台座の上に頭部が置かれていた。よく観察すると、後で、わざわざ頭部を付けようとしたようで、地蔵の身体の石とは違っているし、表情もまた地蔵さんぽい朴訥さがない。身体の首にはコンクリートが残っているから、おそらく、どこからか持ってきたのか、わざわざ造ったのか、頭部を乗せたのだろうが、結局は落ちてしまったようだ。ビートたけしの映画『首』を観ていたからか、ちょっとこれは…と思った。
(何の施設かは覗きもしなかったから知らないが、裏の高台から野反湖を眺めたかった)

(遊歩道になっていた)

(転びながらのキスゲ平鑑賞ができた)

(結局、天気が回復することはなかった)

(終点が見えている)

(だれもいず楽しめた)

(これだけ見られれば十分)

間もなく終点だが、左に物置のようなものがあり、その上が高台になっていたので行ってみた。終点の峠は右手間近に見えている。引き返せばそのまま峠到着なのに、ここは遊歩道になっているようで、東の遊歩道にも行けるようだ。大げさながらも、ノゾリキスゲの楽園のような気配。ましてだれもいない。遠回りを承知で下る。ロープの張られた遊歩道なのに、やたらと滑っては尻もちをついた。その分、楽しめもした。駐車場に戻ったら、野反湖に下って、ノゾリキスゲを見て回るつもりでいたから、その手間は省けた。
(東側遊歩道に合流)

(トンボと)

(アザミもこの辺はまだ現役だが、上でもずっと続いていたが、むしろ汚くすら感じた)

(駐車場に到着。弁天山が見えている)

東側遊歩道に出るまで意外と遠かった。転び続きだったからか。奥の遊歩道沿いの斜面にも黄色の群生が見えているが、ここで見るべきものは見たし、先まで行かずともいいだろう。
駐車場に到着。前回はかなりの車を見かけたが、今日は少ない。汗だくでベトベトして気色が悪かった。風もないままだ。着替え一式を持って、休憩舎のトイレに入ってすべて着替えた。狭い車内でこれをやったら足が攣る。
(着替えてほっとしてここで一服。小滝が心残りだったなぁ)

ほっとしてベンチで一服。ノゾリキスゲは「今季の咲きは良い」という評判ほどのものではなかったが、霧降高原よりは満足ができた。もう一つの小滝見物は失敗したものの、思いは複雑だ。紅葉の頃にもう一度来るべきか、もしくは縁のないままにもういいか。気分次第だろうな。その気になったら行けばいい。
(今回の軌跡)

この地図は電子地形図25000(国土地理院)を加工して使用しています(令和元年手続改正により申請適用外)
野反峠駐車場(8:07)……弁天山(8:27)……エビ山(9:57)……キャンプ場(10:47)……ニシブタ沢(11:02~11:15)……野反峠(13:11)
今回は疲れた。前回の先月と違って、無風と湿気が加わったこともあるだろうし、雨続きだったせいか、ことに下りでは何度も滑っては引っくり返った。4年前の7月16日に今回と同じようなコースを歩いている。その時も天候は同じようなものだったが、さほどに疲れたという思いはない。その際残念だったのは、時間不足で滝見に行けなかったことだった。疲れの要因は足だろう。痛みはその場で抜けたものの、帰ってから足がずっとだるい。たかが5時間歩きだったが、今回の靴は登山靴や運動靴ではなく、ピンが埋め込まれたフェルト製の沢靴での通しだった。帰路がとにかく長く感じ、足裏が痛くなった。疲れたのは、それがあったからかもしれない。敢えて沢靴にした理由は、どうせ沢歩きをするし、荷物になるだけだからと、靴の交換をしたくなかった。沢歩きを含めて、歩きの気持ちが、初めてのところでもないしと安易になっていた。反省点を冒頭に記してしまった。
毎日のように天気はすっきりしない。天気予報はあてにもならない。ただ、午前中ならどこにでも行けそうだ。曇り時々雨の予報でも、霧雨か小雨程度だったら歩ける。終盤どころか、ガスに覆われたポツリポツリの霧降高原のニッコウキスゲに心底から満足していたわけではない。野反湖のニッコウキスゲ(以下、ノゾリキスゲと記す)はまだ見られそうだ。今年は咲きが良いとのこと。まだ十分に楽しめるだろう。雨を気にしながらの、長時間歩きは無理。さりとて、地元近くの低山で、湿気と高温で汗だくになるのはごめんだ。自宅からは遠いながらも野反湖に向かった。
(駐車場から野反湖。かなり雲が下りている。ノゾリキスゲも元気そうにはない)

(八間山方面)

(それでも元気そうなのを)

(弁天山へ。霧雨になっている)

滝見を先行するかで悩んだが、結局は野反峠の駐車場に車を置いた。前回と違って霧雨状態で風はなく、車は少ない。野反湖側に咲くノゾリキスゲを眺め、帰ってからゆっくり楽しもうと、弁天山に向かう。この時点で、前述のようにすでに沢靴で、車にヘルメットを用意しながら、ニシブタ沢を甘く考えていたから出しもしなかった。4年前に沢を見た際に、地味沢とまではいかないまでも、軽く歩ける沢と思っていた。
(途中で。雨粒で新鮮さが残っている)

(最近よく見かける花。敢えて花の名前は記さない)

(南側は雲が上がってきているような気配。右が榛名で、左が赤城だろうか)

(アザミもこれからもずっと見かけるが、この先はかなり色具合が悪くなって、ひからび、トゲだけは元気だった)

(弁天山)

花を眺めては写真撮りをしながらゆっくりと弁天山に登ると、早速に抜かれた。太った男性だった。もう汗だくになっている。景色やら花の類にはまったく興味はなさそうで、がむしゃらに歩くタイプか。山頂で立ち止まりもしなかった。この方、駐車場に帰着すると、着替えをしていたから、おそらく、あの歩き方ではカモシカ平か大高山まで行ったのかもしれない。あくまでも想像だ。自分も13年前に大高山まで行った。結局、降雨もあって6時間半歩きに音を上げ、時間的にも遅くなっていたので、たまたま見かけたバスで野反峠まで戻ったことがある。あの彼氏、今回の半端なオレの歩きコースと同じはずはない。
(ガスがかなり濃くなったような気がする)

(南方面は晴れつつあるようだ)

弁天山では立ち休みをしただけ。早いとこ滝見に行きたかった。対岸の八間山は雲に覆われて見えない。それでいて、南方面の山々は雲の合い間から遠くまで見えている。ここの天気がこれからどうなるのか想像もつかない。ここまで雨除け代わりにペラペラのヤッケを着ていたが、風通しが悪くて蒸れ、ここで脱いだ。脱いだとて、涼しくなるわけでもなく、まったく変化なし。幸いにも霧雨は止んでいた。
(珍しい花ではないかもしれない)

(これくらいはわかりますよ)

(これもまた、ここのところよく見かける)

(道が狭まって下半身が濡れる)

(ニッコウキスゲよりも、このオニユリがオレには好みなんだけど。特に斑点ありが)

(相変わらずの視界)

(湖畔下りへの標識。これが二つほどあった)

エビ山までは遠かった。花を見ては、何度も同じ花を撮ったりしているから、さらに遅くなる。悪いことに、この先は道が狭くなり、高いササヤブが続く。無風ゆえ、汗もやたらと垂れ、シャツもズボンもササに含んだ雨粒も吸い込んで、不快このうえない。スパッツは元より嫌いだし、膝下はすでに絞れるほどに濡れている。刈り払われたところに出ては、ここがエビ山かと思えど、そこには、湖畔に続く道の分岐の標識があるだけ。『山と高原地図』で確認すると、弁天山とエビ山間のコースタイムは1時間15分になっていた。まだまだ先だ。
(果たしてエビ山はどのピークやら。地図では弁天山から北西直進方面だから、左の目の前のピークがエビ山と思ったが、右の尾根が高い。混乱した)

(あれがエビ山かと、ほぼ確信したつもりでいたが)

(ようやく八間山が見えた。写真撮りとしては、すっきりはこれだけだった)

(好みの花にチョウがいた。羽を広げていないからそうとは見えないが)

泥濘も多くなり、迂回もできずに、足がズボズボと入り込む。すでに靴は泥だらけだ。登山靴よりは気にせずに歩ける。沢に入ればきれいになる。その点は沢靴の利点かもしれないが、剥き出しの地面で滑りやすいのには参った。どうしても2、3歩先までの足場に注意して登らないといけない。それでも滑っては尻もちをつく。
(やはり、下からは見えなかったエビ山はさらに先だった)

(立ち休みも、こんなのがあれば、良い理由付けになる)

(ようやくエビ山)

(なるほど「恵比山」か。弁天があれば恵比寿にもしたくなる。ここからキャンプ場に下る)

ようやく正面にピーク。汗をダラダラと流して何度も立ち休み。下って来た単独氏に出会う。待機してくれたが、先に下ってもらった。ようやく登りきったと思ったら、さらにその先にピークがあった。今度は比較的に楽とはいっても、何度も休んでようやくエビ山に到着。弁天山から1時間半。CTよりも15分遅れ。13年前は55分で歩いている。無感動的な体力の衰えぶり。いずれにせよ、今日の登り作業はようやくこれで終わりでほっとした。八間山はまた雲に隠れてしまった。
(湖畔への方向が変わった。下りではなく少しの上りになっている。これは確かに下り尾根のはずだが、さっき見た右に続く尾根は実際は上りになっていた。そこを歩いているようだ。地形図では10mにも満たないからわからない)

(つい、好きな花を撮ってしまう)

(<エビの見晴台>から。キスゲを入れて)

(キスゲを入れなければこうなる。ハート型と表現する方もいるが、色気も失せているオレには逆スペードに見える)

(泥濘がひどい。自分の足跡が鮮明に残る)

(全身濡れ放題。さらに滑る)

(先に行くのが嫌なら、ここを下れば遊歩道に出るだろう。ただ、全身が水と汗まみになる)

(この先もこれだ)

少しだけ休んで、湖畔に出るべく下る。出る先はキャンプサイトのはずだ。薄暗い樹林の中、泥濘の場所がさらに多くなった。進行左下の方から沢音がかすかに聞こえる。おそらくニシブタ沢だろう。地図を見る。トラバースしながら行けそうだが、距離はある。まして、そちら方面はヤブが深そうだ。しかし、この距離で沢音が聞こえるということは、流れがかなり強くなっているのではなかろうか。ちょっと気になった。
下りで4人グループと単独氏が登って来たのと出会った。平日のこの天気で、結構、歩いているハイカーもいる。やはり、目的はノゾリキスゲだろう。
(もう、濡れまくっている。少しは休憩したい。ベンチは水を吸っているわけでもないのでもそのまま腰かけた)

(ニシブタ沢に向かう。道がしっかりしているのはキャンプ利用者のためだろう)

(釣り人がたくさんいた)

(ニシブタ沢の標識)

キャンプサイトの炊事場の前のベンチに腰をおろし、おにぎりを一個食べる。一服したかったがタバコはない。さっさとニシブタ沢に向かう。ニシブタ沢が近づく。野反湖ではこの辺が釣りのポイントなのか10人以上の姿が見えた。ニシブタ沢そのものは禁漁区になっている。
(ニシブタ沢の入口。写真では普通の沢だが)

(とにかく、流れが速くて身体の動きがふらつき、意向のままにならない)

(静かそうに見えるが、とんでもなく強い勢い。水煙が先まで続いている)

(怖くなったのでここで打ち切る)

ニシブタ沢の前に出た。驚いた。流れが強い。4年前に通りがかりに見た印象としては、「予想以上に水量があって勢いもある。ただ、遡行に苦労するレベルではない」だった。家に帰ってから、その時の沢入口の写真と今回の写真を見比べると、勢いはわかりかねるが、今回は水量が多く、沢幅いっぱいに流れている。
ここまで来たからにはと、沢に入ってみると体がぐらついた。自分にはとんでもない流れだ。これは河口付近だけだと思いたい。巻いて行けやしないかと、左岸側のヤブに入り込む。それらしき踏み跡はあったが、すぐに消え、背丈のササ混じりのヤブになって先に進めない。仕方なく沢に戻る。相変わらずに流れは速く、水煙が立ち込めている。深みや鋭利な大石がないだけでも助かるが、先に行くのが怖くなってきた。こんなところをヘルメットならぬ帽子をかぶり、さらにストックを持って遡行するのは何とも無謀で、危険としかいいようがない、ダメだなこりゃ。引き返す。100mも遡行してはいないだろう。
ガチガチの、とはいっても、オレの場合は岩登りするわけでもないのでロープ持参の必要はないが、それなりの沢歩きスタイルだったとしても、あの流れで、果たして滝まで行けたかはわからない。4年前時点では入口から45分という情報だったが、この流れでの45分遡行は無理だろう。その45分とて、以前に参考にしたネット記事は消えている。
今回も縁がなかった。4年前は立ち寄るには時間的に無理だった。見ておきたかった先にある小滝はせいぜい5mの落差もあるまいが、ネットで見た滝の写真は、自分には好みだった。魚止めの滝というらしいが、もっともらしい名前からして、無名の滝だろう。この小滝、ニシブタ沢を遡行する物好きな方はきわめて稀で、アバウトな情報が数件しか出てこない。河口からどれくらい先にあるかも見当がつかない。ただ、45分もかかるとは思えない。また改めてということか。その時は、ノゾリキスゲはさておき、キャンプ場入口から歩いて滝一本に絞るべきだろうが、それだけでここまで2時間半もかけて来るのもなぁと逡巡してしまう。
(とぼとぼと西側遊歩道に)

滝見をあきらめた以上は野反峠に戻るしかない。野反湖バス停まで行けば、付近でノゾリキスゲの群生を見物できるだろうが、それでは遠回りになるし、帰路は長くなるので歩く自信もない。前回と違って、西側の遊歩道歩きで戻ることにする。確か、途中の<テン場のお花畑>にもノゾリキスゲが群生していたはず。
(テン場のお花畑で。以前歩いた時よりも花数は少ないような気がした。もう終わりかけなのだろう)

(同じく)

(同じくだが、他の花も撮っておかないと)

(こんな標識があった)

(なるほどそうかも)

(晴れると期待したが、さらにガスが深くなったような気がする)

(特別なことではない、トンボを入れて撮っただけ)

(エビ平で小休止)

(終わりかけのアザミにしがみついている)

(ようやくラスト1km。ピン入りの沢靴のせいか、足裏が痛い)

テン場のお花畑を見てしまうと、その先が長かった。出会ったのは、野反湖を一周するかのような軽装のニイちゃんとオバさんの二人組。それと、エビ山の下で出会った単独氏。この単独氏、自分とは反対回りだったらしく、向こうも覚えていて、お互いにニヤリとしてしまった。しかし、このコース、いろんなスポット名があるものだ。テンバ場のお花畑を過ぎると、シラカバ淵、エビ平、カモシカ淵、押出し、どじょう小屋沢と標識が続く。エビ平から先はアザミが両サイドから出てきてはチクチクと刺す。それぞれの標識には野反峠までの距離が記されているものの、感覚的にはさほどに距離が縮まらない。どじょう小屋沢の標識には1kmとあってようやくホっとはしたが、ニシブタ沢から峠までは4.5km。その間の3.5km弱を1時間かけている。道は平坦だし、こんなものだろう。むしろ、その残りの1kmに寄り道コースも入り込み、1時間かけてしまった。そろそろ足の裏が痛くなってきた。
(地蔵さんが右に見えた。行ってみる)

(不気味だった。首欠けのままにしておけばよかったのに。地蔵さんには気に入らない頭だったのだろう)

(傍らに咲いていた)

キスゲか出てきたところで、ちょっと不気味なものを見た。ここを通ったのは初めてだ。右上に地蔵さんがあったので、こんなところに珍しいと上がってみた。首欠け地蔵なのだが、その姿のままにあって欲しいのに、足元の台座の上に頭部が置かれていた。よく観察すると、後で、わざわざ頭部を付けようとしたようで、地蔵の身体の石とは違っているし、表情もまた地蔵さんぽい朴訥さがない。身体の首にはコンクリートが残っているから、おそらく、どこからか持ってきたのか、わざわざ造ったのか、頭部を乗せたのだろうが、結局は落ちてしまったようだ。ビートたけしの映画『首』を観ていたからか、ちょっとこれは…と思った。
(何の施設かは覗きもしなかったから知らないが、裏の高台から野反湖を眺めたかった)

(遊歩道になっていた)

(転びながらのキスゲ平鑑賞ができた)

(結局、天気が回復することはなかった)

(終点が見えている)

(だれもいず楽しめた)

(これだけ見られれば十分)

間もなく終点だが、左に物置のようなものがあり、その上が高台になっていたので行ってみた。終点の峠は右手間近に見えている。引き返せばそのまま峠到着なのに、ここは遊歩道になっているようで、東の遊歩道にも行けるようだ。大げさながらも、ノゾリキスゲの楽園のような気配。ましてだれもいない。遠回りを承知で下る。ロープの張られた遊歩道なのに、やたらと滑っては尻もちをついた。その分、楽しめもした。駐車場に戻ったら、野反湖に下って、ノゾリキスゲを見て回るつもりでいたから、その手間は省けた。
(東側遊歩道に合流)

(トンボと)

(アザミもこの辺はまだ現役だが、上でもずっと続いていたが、むしろ汚くすら感じた)

(駐車場に到着。弁天山が見えている)

東側遊歩道に出るまで意外と遠かった。転び続きだったからか。奥の遊歩道沿いの斜面にも黄色の群生が見えているが、ここで見るべきものは見たし、先まで行かずともいいだろう。
駐車場に到着。前回はかなりの車を見かけたが、今日は少ない。汗だくでベトベトして気色が悪かった。風もないままだ。着替え一式を持って、休憩舎のトイレに入ってすべて着替えた。狭い車内でこれをやったら足が攣る。
(着替えてほっとしてここで一服。小滝が心残りだったなぁ)

ほっとしてベンチで一服。ノゾリキスゲは「今季の咲きは良い」という評判ほどのものではなかったが、霧降高原よりは満足ができた。もう一つの小滝見物は失敗したものの、思いは複雑だ。紅葉の頃にもう一度来るべきか、もしくは縁のないままにもういいか。気分次第だろうな。その気になったら行けばいい。
(今回の軌跡)

この地図は電子地形図25000(国土地理院)を加工して使用しています(令和元年手続改正により申請適用外)
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