
◎2016年9月24日(土)
女神山と真昼岳山麓の滝めぐりは紅葉の時期に合わせて行くつもりでいたが、他にも紅葉の中を歩きたいところがあり、すべてを一遍に回ったら時間的にも体力的にもきつくなるのは確実で、敢えてそれをやったら、結局、回り切れずに改めて行くことにもなるのが落ちだ。ここは紅葉前だが滝めぐりを先行で済ませてしまおう。
真昼岳と女神山は2010年の6月に行っている。その際、女神山は真昼岳からの帰路、兎平から往復した。その頃、滝見にはさほどの興味はなく、途中で見かけた「飛竜の滝」にすらきれいな滝だなと思ったくらいのもので、登山口で「真昼大滝」に行けずに戻って来たオッサンに話しかけられ、内心、よくやるわと思ったのが正直なところだ。今はちょっと違う。きれいで存在感のある滝ならば、命がけにならない限りは見てみたい。
紅葉の時期に東北のどこを歩こうかと練っていると、真昼山地の「白糸の滝」やら「真昼大滝」が目についた。そして、すぐにあの行けずのオッサンのことを思い出した。これはぜひ見ておかないことには。そんな次第での今回の滝めぐりである。2009年に瀑泉さんも行かれていた。こんな東北奥の滝、さすが滝屋さんのアンテナ網は違うものだなと感心したが、今回の滝めぐり、結果的に瀑泉さんの記事を参考に歩くことになる。少なくとも、瀑泉さんが見られた滝だけは見ておこう。
【女神山&滝めぐり】
●女神山登山口(6:44)……女神山……降る滝……白糸の滝……姥滝……登山口(10:54)
(登山口の広場。右の看板に、バスのUターンスペースにつき駐車禁止とあった。ここまでバスが入るの?!)

ほとんど寝ないままに女神山の登山口に着いた。未舗装の長い林道には閉口した。おまけに細く、路肩の待機スペースは無いに等しい。軽どうしのすれ違いでもかなりきつい。ここを団体さんを乗せたバスが堂々と通ったら、対向車は退避のしようもない。そんな事態になりたくはない。林道そのものは6kmらしいが、少なくも4km近くは未舗装になっている。駐車場に着くと、車は派手に泥をかぶり、ドアミラーにまで跳ね上がっていた。車は今のところ一台もない。今日はこれから晴れる予報だが、周囲には薄くガスが立ち込めている。あとどれくらいの辛抱だろうか。晴れるのは確実で、朝モヤの濃い秋田自動車道でも、ぽっかりと青空が覗いたスポットに何回か出くわしている。
足は長靴にした。周囲はかなり濡れている。女神山には1時間少々で登れるだろう。その後の滝見にしても、登山道の延長だし、水をかぶってまでの滝見にはならないようだ。出発前にトイレを覗く。仮設トイレ風の個室はさぞ悪臭できたないかと思ったが、これが半水洗で鼻をつまむこともない。トイレットペーパーまで備えていた。それほどの意識もなかったが、せっかくだからと使わせていただいて出発。
(下って沢に出る)

(なだらかなハイキングコース)

(黒いカタツムリ)

(左に白糸の滝)

いきなりの下り。階段状になっているが、横杭も土も濡れていて滑りやすい。沢に出る。ここからしばらく平坦な道の歩きになる。道はしっかりしている。紅葉は一か月先だなぁなんて思いながら歩いていると、道の真ん中にカタツムリがいた。身が黒。カタツムリには久しぶりに出会ったが、黒いのは初めてだ。つまんで道端に移動する。早速、「白糸の滝」の標識が現れた。これは帰りのお楽しみに取っておくが、チラチラと見える滝が気になる。続いて「姫滝」の標識。この標識はクマらしきものに半分やられている。今日はこの「姫滝」も含めて、名前のある滝は一通り見るつもりでいる。ちなみにこの辺一帯の沢は「下前渓谷」と呼ばれているらしい。
(分岐。右に上がる)

(すぐに急になる)

(雲が次第に上がっていく)

周回コースの分岐になった。右が女神山。向こうからここに合流する道を下る予定になっている。ここは右。意外というか、結構というか、なかなかの登りになった。寝不足とドライブ中のタバコの吸い過ぎがたたってつらい。すぐに休んでは息を整える。早々に汗が吹き出した。上に行くにつれてブナ林が広がる。風を期待したがまったくない。
食べられそうもないキノコがあちこちに顔を出している。ブナ林の切れ目から西側の県境尾根らしき山々が見えた。まだガスが巻いている。大気の動きもない。これでは、早々の回復も期待はできないかもしれない。
(また緩やかになって)

(ブナ林の中の歩き)

緩やかな広い尾根になった。ブナ林の中の歩きは気持ちが良いが、つい、クマの気配を気にしてしまう。周囲にはドングリやブナの実も落ちている。広くなっても相変わらずの無風。
(落ちた標識)

(木漏れ日が入り込む)

この辺から足のかかとが痛くなってきた。靴ズレのようだ。長靴がちょっと大きめのためか、登り姿勢ではどうしてもかかとにあたる。下りでは問題ないだろうと、ここは我慢して山頂を目指す。下りルート予定との分岐を過ぎると、ようやくブナ林に木洩れ日が差し込むようになった。なかなか幻想的な雰囲気だ。
(女神山山頂。三角点が2基ある)

(景色はこんなもの)

女神山山頂に到着。ここまで1時間20分ほどかかった。コースタイムがどの程度のものかは知らないが、ここのところ鳥海山を含めてまっとうな歩きをしていない自分には相応のタイムだろう。やはり、周囲の展望はまったくなく白い。真昼岳寄りの展望地まで行ってみたが、ここもダメ。青空が顔を出す気配はない。すぐに山頂に戻ったが、ヤブの露で全身がビッショリになってしまった。
(山頂下の分岐を往路時の反対方向に)

一服吸って下る。さっきの分岐まで戻り、落ちた「ブナ見平」の板切れが指す方面に行く。分岐から先も道はしっかりしている。起伏のあまりない道を歩いていても、さすがにかかとの痛みは治まらず、テーピングをした。事前にやっていればよかったろうが、痛み出してからのテーピングではあまり効果もない。
(ブナカノカ?)

(ブナ見平)

単調な歩きがずっと続く。傾斜がさしてない分、上りよりも下りコースの方が長いように感じる。こちらもまたブナ林になっている。途中、県境尾根を辿るらしき明瞭な踏み跡が分かれていくのを見かけたが、誤って入り込まないようにとの配慮か、改めて「女神山」「ブナ見平」の標識が置かれている。この標識もまた落ちている。倒れたブナの樹にキノコが付いている。ブナカノカか?
ブナ見平は、ブナ林の中のちょっとした平地になったところで、ブナの大木があるわけではない。ここで休憩。丸太の腰掛けがあったが、直に座ると尻が濡れそうなので、シートを出して座る。空を見上げると大分青くなってきている。そして暑くなった。
(ようやく青空)

(県境から分かれて左に。直進は県境をそのまま)

(女神山)

ブナ見平から少し下って、県境から離れる。この先、南に向かう県境ルートにはテープと踏み跡が続いてはいるが、ちょっと荒れ気味だ。立っている杭にはかろうじて「県境」の文字が見える。
ここから先は少しばかり急。土が粘土質になっていて滑る。途中で女神山が見えたのはうれしかった。
(岩清水)

沢が近づき、前方下に滝筋が2本見えてきた。下りきると「降る滝」の標識があった。踏み跡を沢沿いに入り込むと「岩清水」の標識。目の前の2本の滝から流れ込む水が石清水なのだろうか。
(降る滝が見えてくる)

(降る滝)

(近づいて)

(上を見やる)

(振り返って単独女史)

「降る滝」はこの沢沿いの先。小径が続き、足を濡らすこともなく行ける。沢にはいくつもの金属板が渡してある。5分も歩くと「降る滝」に着いた。細いがいい滝だ。落差60m(以下、瀑泉さんの推測で記す)。真下に行ってみる。飛沫があたる。滝壺はない。ここは涼しい。沢はここで周囲が崖になっていて、この先に行くには大迂回だろう。
見上げながらいい滝だなあと思い、離れるのも惜しいところだが、この先がある。岩清水に戻る。途中、妙齢の単独女史と出会った。沢沿い歩きは不慣れなのか、ちょっとためらい歩きをしていた。ここでまた滝に戻るというのも魂胆丸出しなので先に行ったが、もう少し滝見タイムを延ばしていれば良かったか。今9時50分。時間的にハイカーに出会っても不思議ではない。
(女神霊泉?)

沢の左岸に落ち込む小滝が見えた。これが「女神霊泉」だろうか。標識は見かけなかった。確か岩からしみ出す霊泉とのことだったが。
(姫滝に向かっている)

(ここで戻る)

周回コースの女神山登り口に合流。続いて、上り時に気になっていた「姫滝」の標識。どこに「姫滝」があるのかは知らないが、小さな沢沿いに踏み跡がある。入る。荒れた沢だった。クモの巣も張っている。踏み跡はすぐにヤブに埋没して消えた。ということは、このまま沢通しで行けということなのだろうと解釈して沢に入ったが、この沢も長靴では滑る。まして登山靴では無理だろう。10分ほど遡行してあきらめた。水も細くなり、どうもこの先に滝があるようにも思えない。滑りもしなかったら、もっと先まで行ってみたかったが、こう滑るのではどうしようもない。案外、その先すぐだったりして。
(白糸の滝)

(巨大なクラゲかUFOか)

さきほどチラ見しただけの「白糸の滝」に下る。ここも階段状になってはいるが、埋め込んだコンクリ棒が滑るので用心して下る。「白糸の滝」は巨大なクラゲのような滝だった。落差20m。丸い岩盤伝いに水がスダレ状というか白糸のように落ちている。これもいい滝だ。こんな風体の滝を見るのも初めて。しばらく滝の前で座って眺める。
(姥滝)

次は「姥滝」か。どこにあるのか見当もつかないが、尾根を挟んだ反対側から2人連れが戻って来た。よく見ると、ここから踏み跡が続いている。西和賀町作製の地図やイラストを取り出して見比べる。「姥滝」は「降る滝」から流れる沢の延長にあり、「姥滝」の手前にあるのが「爺滝」。この「爺滝」を見るのは難しかろう。そして「白糸の滝」を流れる沢(白糸沢)と、この先で合流するということだ。「姫滝」は白糸沢の上流に位置している。また、駐車場から下ったところにあった沢は「相沢」という沢で、上流には「ひやげ滝」、下流には「不動の滝」があることになっている。イラスト表示の基本は3つの沢のようで、ここに至って、そういうことかと状況を理解はしたが、自分が探した「姫滝」は、別な枝沢に入り込んでのものだった。何だか釈然としない。
「姥滝」は二条の滝で落差20m。滝壺はしっかりとある。落ち口を見上げるとちょっとばかり魅力的で、上部が気になったが、巻いて登るにしても、この長靴ではどうにもなるまい。まして、ジリジリと暑くなっている。積極的に行ってみたいといった気分が起きてこない。
(ナナカマドの実を見て)

(駐車場に戻る)

ハイキングコースに戻って駐車場に向かう。3人連れと出会う。駐車場には自分の車を含めて8台。何とその1台はバスだった。登山届に帰着時間を記入した際に目に入ったが、16人グループのようだ。2人連れが準備中。
これから引き続きの「真昼大滝」があるのだが、この女神山で短時間ながらも思いの外くたびれた。「真昼大滝」はどうしたものかと思案した。いつもの悪い思考パターンだ。大したこともないかかとの靴ズレの痛みを理由の一つに思い浮かべたが、今回、行ってしまわないとまた来ることになる。気持ちを立て直して行くか。ダメなら引き返せばいい。
もう11時だ。こんな半端な時間に林道を走って来る車はいないだろう。ストレスを味わいたくはない。靴だけ履き替えて出発。予想と違って1台とすれ違ったが、林道起点付近で道幅も多少は広くなっていたので難なくスルーできた。ちょっと遅かったら嫌なことになっていただろう。
(女神山の軌跡)

「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図200000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)、数値地図25000(地名・公共施設)、数値地図250mメッシュ(標高)、数値地図50mメッシュ(標高)及び基盤地図情報を使用した。(承認番号 平24情使、 第921号)」
【真昼岳滝めぐり】
●真昼岳登山口(12:00)……天空の滝……真昼大滝……小松倉大滝……登山口(14:42)
(真昼岳登山口)

(泥濘の道)

これもまた泥んこの長い林道を通って真昼岳登山口に着いた。ここは幅が広いだけまだましだが、対向車と狭いところですれ違い、ちょっとバックしていただいたのが1回。後は軽トラが待機してくれたのでストレスなしに到着できた。ただ、車がかぶった泥はさらにひどい有り様になっていた。
駐車場には車が3台。大方、真昼岳登山だろう。この真昼岳林道、先で通行止めになっているようで、車はさらに先まで行けるが、何となく不安で、車はここに置いて歩くことにする。2kmもないと思う。
今度は沢靴を履いて出発となったが、林道はすぐにひどい泥濘道になり、知っていたら長靴で先まで行けたのになぁと後悔。戻るのも面倒で、そのまま行く。
材木置き場を通過。今日は作業日らしく、車が途中に3台ほど置かれている。モーター音も聞こえる。左下を流れるのは木内川に「蟇淵の滝」が見えた。帰りに寄ってみようか。道にブルが立ちはだかって材木を運んでいる。運転のおニイさんがすぐに気づいて、エンジンを止めてくれた。脇を通ったがここでまた泥んこになった。おニイさんに「釣りですか?」と聞かれ、「滝見ですよ」と答えたが、この先に名瀑があるとは思ってもいないらしく、きょとんとした顔をしていた。地方の地元の方は往々にしてそういうものだろう。
(ここは左)

(案内看板)

20分ほど歩いて<西和賀町真昼山系滝巡りガイドマップ>の看板を見かけた。林道はこの先通行止め。やはり、泥んこ道をここまで車で来るのは無理だった。ところで、看板があるのに、その先、滝に導く標識があるわけでもない。このガイドマップ看板と同じものが西和賀町のHPにあり、それを刷り出しで持参していたから、見当付けで下の沢に向かう道に入った。すぐに沢に出た。順番として先ずは「真昼大滝」を目指す。「小松倉大滝」を先行してしまうと、それだけで甘んじ、真昼大滝はもういいやということになりかねない。
(沢に出る)

ここは小松倉沢と真昼本沢が合流するところで、瀑泉さんの記事で中洲状になっていることを知っていたので、沢を渡って、向こう側にあるはずの真昼本沢に向かった。水は少ないのか、せいぜいヒザ下が没する程度。すぐに真昼本沢に着いた。
(テープを追うと)

(結局、沢歩きになる)

さて、件のガイドマップを見ると、沢沿いにオレンジ色の破線が付いている。おそらくこれが歩道かと思うが、それらしき踏み跡はなく、左岸側にテープを見つけて入り込んでみると、それはヤブに隠れた踏み跡で、こんなところを歩き続ける我慢強さはない。さっさと沢に復帰して沢を歩くことにした。その後、この巻き道はガイドマップを見る限りでは左岸を大きく高巻くようだが、沢からはかなり上に付いていると思われ、「真昼大滝」は下からではなく正面から見るといった案配になるのだろうか。
マップには右岸側にも歩道があるようで、これは「天空の滝」の上に続いている。こちらの歩道、テープの類すら確認することはできなかった。実は、その歩道を使って、「天空の滝」の上に出、沢沿いもしくは小尾根から真昼岳の稜線に出ることを想定したりしたのだが、ネット記事を調べる限り、真昼本沢上流から真昼岳に登った記録が一件あっただけで、他にはなかった。いずれにしても、今日はそれを実行するには体力的にきついし、まず時間的に無理。この時点、沢を歩きながら、そんなことを模索していたことはすっかり忘れている。
(障害物もところどころに)

歩きづらい沢だ。ヌメリも滑るし、大石越えがやっかいなところもある。ヘルメットを持って来なかったことに今さらながらに気づいた。無理はできない。大きな石の前で左右をうろちょろし、ためらいながら越えるパターンが何度かある。
(天空の滝)

なかなか「天空の滝」に出ない。というか、ガイドマップで最初の沢が分岐し、その沢に入ってから滝に出会うものとばかりに思っていたが、その分岐沢が現れない。沢を間違ったのかなとまで思ってしまった。そのうちに、轟音が聞こえ、右岸を見上げると、そこに「天空の滝」があった。真昼本沢に落ち込む滝だった。落差45m(こちらもまた以下、瀑泉さん推測)。下の木立で全容は見えない。さらに、滝の真上に陽が昇っていて、上部もはっきりしない。しばらく待って、雲に陽が隠れた瞬間に写真に収めた。瀑泉さんはヤブ越えで真下まで行かれたようだが、今日はヤブはいいや。
(真昼霊泉)

続いて「真昼霊泉」。この滝、ネット写真や写真集で、なかなか神秘的な滝だなと思っていたが、現物もまさにそうで、奥まったところでひっそりと静かに落ちている。左右の細い直瀑、中のスダレ滝、これをまとめて「真昼霊泉」というのだろうか。瀑泉さん記事に落差の記載はない。チラ見程度で終えていらっしゃる。この滝の写真は半端なものしか撮れなかった。真上の陽は往復ともに隠れず、陽を避けると全体が撮れないといった状況だ。そんなことを記しても、たかがコンデジカメラマンにはきれいな写真が撮れるわけもないのだが。
(ちょと先に行く。水流の速いところもあるが、深いところでもせいぜい腰下)

(何やら滝が見えてきた)

先に進む。流木の巣のようなところが現れ、さらに強い水流を避けて大石を乗り越えたが、帰りはどうすんだかと気になった。すると左に斜めに落ち込む滝が先に見えた。あれが「真昼大滝」か。歩き出してからちょうど1時間だ。急いで滝の正面に出向いた。これはなかなかの滝だ。そう思った。落差30m。これまでの滝と違って、裾広がりだ。邪魔な陽の光は落ち口にある木立に妨げられていて、しっかりと全容を見られる。見惚れた。何とも神々しい滝だ。自分にはこれが精いっぱいの形容だ。くどく記せば滝の質も落ちる。
(真昼大滝)

(正面から)

(右から)

(下部横から。もうちょっと経てば、モミジがアクセントになるかも)

滝壺はいたって浅い。流れ落ちる水が神水にも思え、滝の岩壁に口をつけて水を受けようと顔を近づけると、頭から水をかぶった。生ぬるいが爽快な気分になった。しばらくあちこちと場所を移しては滝を見ながら休んだ。
(真昼本沢の先。かなり窮屈な感じがする)

真昼大滝もまた真昼本沢の支流から流れ込む滝だ。本流の先には「下の滝」、「上の滝」が続くらしいが、ガイドマップには「上級」と記され、自分にはお呼びではない。そもそも、沢はここから狭隘になり、さらに傾斜もきつくなっている。倒木も目につく。巻くにしてもきつそうだ。
振り返っては真昼大滝を眺めた。後は注意しながらの下りで、改めて見るつもりの「真昼霊泉」も「天空の滝」も目に入らなかった。「真昼大滝」を見たから、それでいいだろうといった気持ちになっていることは確かだ。
帰路が肝心とばかりに、慎重に大石を乗り越えながら下り、中洲の交差点に戻った。その直前に、釣りらしきオッサンに出会った。地元の方だろうが、オッサンもまた驚いたろう。全身を上から下までまじまじと観察された。
(小松倉沢はここを直進する。左から真昼本沢)

(小松倉大滝)

そのまま小松倉沢に入る。真昼本沢に比べて浅く、水の流れも穏やかだ。10分ほど水の中を漕ぐ行くと滝が現れた。これが「小松倉大滝」。落差12~3m。これで今日の滝見は終わりとなる。ゆっくりと休憩する。この滝はよく見かける滝といったイメージだ。
中洲に戻る。顔と頭に水をかぶり、手拭いを水に浸して全身を拭う。さっぱりした。車に戻って着替えれば、温泉に立ち寄る必要もあるまい。さっきの釣りのオッサンの軽トラが河原から見えた。そのまま上がって行くと林道に出た。
(作業を中断してもらって通過)

ブルのオニイさんに挨拶して、またエンジンを止めてもらって脇をすり抜ける。沢できれいになった沢靴はまた泥んこになった。岩壁から落ちる沢水で靴の泥を落とした。その脇をオッサンライダーが通って行った。そういえば、あとでしっかり見るつもりでいた「蟇淵の滝」はすでに過ぎていた。「真昼大滝」を見たから、もう用はない。
(本日、消化の歩き)

駐車場には自分以外に車が一台だけ。神奈川県ナンバーの車だ。着替えようとしたら、さっきのオッサンライダーが戻って来た。ここまでやって来たけど、この先、行けないの? 通行止めになっているけど、バイクなら行けんじゃないですか。 だけど、ブルが作業していたから、戻ってきたんだ。 あのブルのおニイさん、気がいい感じだから、言えば、脇にどいてくれますよ。 あぁそう。じゃ行ってみるか。ありがとう。 オッサンはUターンして林道の先に向かった。戻ってこなかったから、そのまま秋田県側に入ったのだろう。
だれもいないので、外で着替える。車の中での着替えは狭っ苦しく、姿勢に無理もいき、ヘタをすれば、足が攣ったりもする。着替えている間に、ヤブ蚊にわんさと襲われた。耳から足首まで相当に刺された。今日はウナコーワを持ってきたから、刺されるままにしておいた。確かに、その場は治まったが、翌日が大変だった。身体のあちこちが腫れて痒くなった。
ここでもまた登山届に帰着時刻を記入する。15時、帰路に就く。
林道を無事に抜け、真昼温泉にでも寄ろうかと思ったが、車が車道にまで置かれていたのでパス。錦秋湖SAの風呂も使えるかとそのまま秋田道に入ってSAに立ち寄ると、涼しいためか、それほど風呂に入りたい気持ちもなくなっていた。実のところ、身体よりも泥だらけの車を洗いたいところだ。
あとは黙々、ひたすらに自宅を目指して高速道を走った。福島に過ぎると、栃木まで断続的な雨。途中でソバを食べたり、土産を買ったりしながらも21時には家に着いたが、今回の往復は1,045kmの走行だった。岩手だからまだいいが、これが秋田ともなったら+300kmにはなろうかというもの。紅葉狩りの山行も一人運転だとつらいもんだなと、ついうんざりとしてしまった。
(真昼本沢滝めぐりの軌跡)

「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図200000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)、数値地図25000(地名・公共施設)、数値地図250mメッシュ(標高)、数値地図50mメッシュ(標高)及び基盤地図情報を使用した。(承認番号 平24情使、 第921号)」
今日あたり、ネットで東北の山歩きの最新記事を眺めていると、先週末あたりから八幡平や秋田駒の紅葉が始まっていたようだ。三ツ石山あたりは「盛り」とまで記されている。女神山の紅葉はまだまだだったが、こんな記事を見てしまうと、もう一泊して八幡平にでも行けば良かったかなとつい思ってしまうが、いずれの記事を読んでもガスが濃くて、終日、視界が悪かったようだ。
女神山と真昼岳山麓の滝めぐりは紅葉の時期に合わせて行くつもりでいたが、他にも紅葉の中を歩きたいところがあり、すべてを一遍に回ったら時間的にも体力的にもきつくなるのは確実で、敢えてそれをやったら、結局、回り切れずに改めて行くことにもなるのが落ちだ。ここは紅葉前だが滝めぐりを先行で済ませてしまおう。
真昼岳と女神山は2010年の6月に行っている。その際、女神山は真昼岳からの帰路、兎平から往復した。その頃、滝見にはさほどの興味はなく、途中で見かけた「飛竜の滝」にすらきれいな滝だなと思ったくらいのもので、登山口で「真昼大滝」に行けずに戻って来たオッサンに話しかけられ、内心、よくやるわと思ったのが正直なところだ。今はちょっと違う。きれいで存在感のある滝ならば、命がけにならない限りは見てみたい。
紅葉の時期に東北のどこを歩こうかと練っていると、真昼山地の「白糸の滝」やら「真昼大滝」が目についた。そして、すぐにあの行けずのオッサンのことを思い出した。これはぜひ見ておかないことには。そんな次第での今回の滝めぐりである。2009年に瀑泉さんも行かれていた。こんな東北奥の滝、さすが滝屋さんのアンテナ網は違うものだなと感心したが、今回の滝めぐり、結果的に瀑泉さんの記事を参考に歩くことになる。少なくとも、瀑泉さんが見られた滝だけは見ておこう。
【女神山&滝めぐり】
●女神山登山口(6:44)……女神山……降る滝……白糸の滝……姥滝……登山口(10:54)
(登山口の広場。右の看板に、バスのUターンスペースにつき駐車禁止とあった。ここまでバスが入るの?!)

ほとんど寝ないままに女神山の登山口に着いた。未舗装の長い林道には閉口した。おまけに細く、路肩の待機スペースは無いに等しい。軽どうしのすれ違いでもかなりきつい。ここを団体さんを乗せたバスが堂々と通ったら、対向車は退避のしようもない。そんな事態になりたくはない。林道そのものは6kmらしいが、少なくも4km近くは未舗装になっている。駐車場に着くと、車は派手に泥をかぶり、ドアミラーにまで跳ね上がっていた。車は今のところ一台もない。今日はこれから晴れる予報だが、周囲には薄くガスが立ち込めている。あとどれくらいの辛抱だろうか。晴れるのは確実で、朝モヤの濃い秋田自動車道でも、ぽっかりと青空が覗いたスポットに何回か出くわしている。
足は長靴にした。周囲はかなり濡れている。女神山には1時間少々で登れるだろう。その後の滝見にしても、登山道の延長だし、水をかぶってまでの滝見にはならないようだ。出発前にトイレを覗く。仮設トイレ風の個室はさぞ悪臭できたないかと思ったが、これが半水洗で鼻をつまむこともない。トイレットペーパーまで備えていた。それほどの意識もなかったが、せっかくだからと使わせていただいて出発。
(下って沢に出る)

(なだらかなハイキングコース)

(黒いカタツムリ)

(左に白糸の滝)

いきなりの下り。階段状になっているが、横杭も土も濡れていて滑りやすい。沢に出る。ここからしばらく平坦な道の歩きになる。道はしっかりしている。紅葉は一か月先だなぁなんて思いながら歩いていると、道の真ん中にカタツムリがいた。身が黒。カタツムリには久しぶりに出会ったが、黒いのは初めてだ。つまんで道端に移動する。早速、「白糸の滝」の標識が現れた。これは帰りのお楽しみに取っておくが、チラチラと見える滝が気になる。続いて「姫滝」の標識。この標識はクマらしきものに半分やられている。今日はこの「姫滝」も含めて、名前のある滝は一通り見るつもりでいる。ちなみにこの辺一帯の沢は「下前渓谷」と呼ばれているらしい。
(分岐。右に上がる)

(すぐに急になる)

(雲が次第に上がっていく)

周回コースの分岐になった。右が女神山。向こうからここに合流する道を下る予定になっている。ここは右。意外というか、結構というか、なかなかの登りになった。寝不足とドライブ中のタバコの吸い過ぎがたたってつらい。すぐに休んでは息を整える。早々に汗が吹き出した。上に行くにつれてブナ林が広がる。風を期待したがまったくない。
食べられそうもないキノコがあちこちに顔を出している。ブナ林の切れ目から西側の県境尾根らしき山々が見えた。まだガスが巻いている。大気の動きもない。これでは、早々の回復も期待はできないかもしれない。
(また緩やかになって)

(ブナ林の中の歩き)

緩やかな広い尾根になった。ブナ林の中の歩きは気持ちが良いが、つい、クマの気配を気にしてしまう。周囲にはドングリやブナの実も落ちている。広くなっても相変わらずの無風。
(落ちた標識)

(木漏れ日が入り込む)

この辺から足のかかとが痛くなってきた。靴ズレのようだ。長靴がちょっと大きめのためか、登り姿勢ではどうしてもかかとにあたる。下りでは問題ないだろうと、ここは我慢して山頂を目指す。下りルート予定との分岐を過ぎると、ようやくブナ林に木洩れ日が差し込むようになった。なかなか幻想的な雰囲気だ。
(女神山山頂。三角点が2基ある)

(景色はこんなもの)

女神山山頂に到着。ここまで1時間20分ほどかかった。コースタイムがどの程度のものかは知らないが、ここのところ鳥海山を含めてまっとうな歩きをしていない自分には相応のタイムだろう。やはり、周囲の展望はまったくなく白い。真昼岳寄りの展望地まで行ってみたが、ここもダメ。青空が顔を出す気配はない。すぐに山頂に戻ったが、ヤブの露で全身がビッショリになってしまった。
(山頂下の分岐を往路時の反対方向に)

一服吸って下る。さっきの分岐まで戻り、落ちた「ブナ見平」の板切れが指す方面に行く。分岐から先も道はしっかりしている。起伏のあまりない道を歩いていても、さすがにかかとの痛みは治まらず、テーピングをした。事前にやっていればよかったろうが、痛み出してからのテーピングではあまり効果もない。
(ブナカノカ?)

(ブナ見平)

単調な歩きがずっと続く。傾斜がさしてない分、上りよりも下りコースの方が長いように感じる。こちらもまたブナ林になっている。途中、県境尾根を辿るらしき明瞭な踏み跡が分かれていくのを見かけたが、誤って入り込まないようにとの配慮か、改めて「女神山」「ブナ見平」の標識が置かれている。この標識もまた落ちている。倒れたブナの樹にキノコが付いている。ブナカノカか?
ブナ見平は、ブナ林の中のちょっとした平地になったところで、ブナの大木があるわけではない。ここで休憩。丸太の腰掛けがあったが、直に座ると尻が濡れそうなので、シートを出して座る。空を見上げると大分青くなってきている。そして暑くなった。
(ようやく青空)

(県境から分かれて左に。直進は県境をそのまま)

(女神山)

ブナ見平から少し下って、県境から離れる。この先、南に向かう県境ルートにはテープと踏み跡が続いてはいるが、ちょっと荒れ気味だ。立っている杭にはかろうじて「県境」の文字が見える。
ここから先は少しばかり急。土が粘土質になっていて滑る。途中で女神山が見えたのはうれしかった。
(岩清水)

沢が近づき、前方下に滝筋が2本見えてきた。下りきると「降る滝」の標識があった。踏み跡を沢沿いに入り込むと「岩清水」の標識。目の前の2本の滝から流れ込む水が石清水なのだろうか。
(降る滝が見えてくる)

(降る滝)

(近づいて)

(上を見やる)

(振り返って単独女史)

「降る滝」はこの沢沿いの先。小径が続き、足を濡らすこともなく行ける。沢にはいくつもの金属板が渡してある。5分も歩くと「降る滝」に着いた。細いがいい滝だ。落差60m(以下、瀑泉さんの推測で記す)。真下に行ってみる。飛沫があたる。滝壺はない。ここは涼しい。沢はここで周囲が崖になっていて、この先に行くには大迂回だろう。
見上げながらいい滝だなあと思い、離れるのも惜しいところだが、この先がある。岩清水に戻る。途中、妙齢の単独女史と出会った。沢沿い歩きは不慣れなのか、ちょっとためらい歩きをしていた。ここでまた滝に戻るというのも魂胆丸出しなので先に行ったが、もう少し滝見タイムを延ばしていれば良かったか。今9時50分。時間的にハイカーに出会っても不思議ではない。
(女神霊泉?)

沢の左岸に落ち込む小滝が見えた。これが「女神霊泉」だろうか。標識は見かけなかった。確か岩からしみ出す霊泉とのことだったが。
(姫滝に向かっている)

(ここで戻る)

周回コースの女神山登り口に合流。続いて、上り時に気になっていた「姫滝」の標識。どこに「姫滝」があるのかは知らないが、小さな沢沿いに踏み跡がある。入る。荒れた沢だった。クモの巣も張っている。踏み跡はすぐにヤブに埋没して消えた。ということは、このまま沢通しで行けということなのだろうと解釈して沢に入ったが、この沢も長靴では滑る。まして登山靴では無理だろう。10分ほど遡行してあきらめた。水も細くなり、どうもこの先に滝があるようにも思えない。滑りもしなかったら、もっと先まで行ってみたかったが、こう滑るのではどうしようもない。案外、その先すぐだったりして。
(白糸の滝)

(巨大なクラゲかUFOか)

さきほどチラ見しただけの「白糸の滝」に下る。ここも階段状になってはいるが、埋め込んだコンクリ棒が滑るので用心して下る。「白糸の滝」は巨大なクラゲのような滝だった。落差20m。丸い岩盤伝いに水がスダレ状というか白糸のように落ちている。これもいい滝だ。こんな風体の滝を見るのも初めて。しばらく滝の前で座って眺める。
(姥滝)

次は「姥滝」か。どこにあるのか見当もつかないが、尾根を挟んだ反対側から2人連れが戻って来た。よく見ると、ここから踏み跡が続いている。西和賀町作製の地図やイラストを取り出して見比べる。「姥滝」は「降る滝」から流れる沢の延長にあり、「姥滝」の手前にあるのが「爺滝」。この「爺滝」を見るのは難しかろう。そして「白糸の滝」を流れる沢(白糸沢)と、この先で合流するということだ。「姫滝」は白糸沢の上流に位置している。また、駐車場から下ったところにあった沢は「相沢」という沢で、上流には「ひやげ滝」、下流には「不動の滝」があることになっている。イラスト表示の基本は3つの沢のようで、ここに至って、そういうことかと状況を理解はしたが、自分が探した「姫滝」は、別な枝沢に入り込んでのものだった。何だか釈然としない。
「姥滝」は二条の滝で落差20m。滝壺はしっかりとある。落ち口を見上げるとちょっとばかり魅力的で、上部が気になったが、巻いて登るにしても、この長靴ではどうにもなるまい。まして、ジリジリと暑くなっている。積極的に行ってみたいといった気分が起きてこない。
(ナナカマドの実を見て)

(駐車場に戻る)

ハイキングコースに戻って駐車場に向かう。3人連れと出会う。駐車場には自分の車を含めて8台。何とその1台はバスだった。登山届に帰着時間を記入した際に目に入ったが、16人グループのようだ。2人連れが準備中。
これから引き続きの「真昼大滝」があるのだが、この女神山で短時間ながらも思いの外くたびれた。「真昼大滝」はどうしたものかと思案した。いつもの悪い思考パターンだ。大したこともないかかとの靴ズレの痛みを理由の一つに思い浮かべたが、今回、行ってしまわないとまた来ることになる。気持ちを立て直して行くか。ダメなら引き返せばいい。
もう11時だ。こんな半端な時間に林道を走って来る車はいないだろう。ストレスを味わいたくはない。靴だけ履き替えて出発。予想と違って1台とすれ違ったが、林道起点付近で道幅も多少は広くなっていたので難なくスルーできた。ちょっと遅かったら嫌なことになっていただろう。
(女神山の軌跡)

「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図200000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)、数値地図25000(地名・公共施設)、数値地図250mメッシュ(標高)、数値地図50mメッシュ(標高)及び基盤地図情報を使用した。(承認番号 平24情使、 第921号)」
【真昼岳滝めぐり】
●真昼岳登山口(12:00)……天空の滝……真昼大滝……小松倉大滝……登山口(14:42)
(真昼岳登山口)

(泥濘の道)

これもまた泥んこの長い林道を通って真昼岳登山口に着いた。ここは幅が広いだけまだましだが、対向車と狭いところですれ違い、ちょっとバックしていただいたのが1回。後は軽トラが待機してくれたのでストレスなしに到着できた。ただ、車がかぶった泥はさらにひどい有り様になっていた。
駐車場には車が3台。大方、真昼岳登山だろう。この真昼岳林道、先で通行止めになっているようで、車はさらに先まで行けるが、何となく不安で、車はここに置いて歩くことにする。2kmもないと思う。
今度は沢靴を履いて出発となったが、林道はすぐにひどい泥濘道になり、知っていたら長靴で先まで行けたのになぁと後悔。戻るのも面倒で、そのまま行く。
材木置き場を通過。今日は作業日らしく、車が途中に3台ほど置かれている。モーター音も聞こえる。左下を流れるのは木内川に「蟇淵の滝」が見えた。帰りに寄ってみようか。道にブルが立ちはだかって材木を運んでいる。運転のおニイさんがすぐに気づいて、エンジンを止めてくれた。脇を通ったがここでまた泥んこになった。おニイさんに「釣りですか?」と聞かれ、「滝見ですよ」と答えたが、この先に名瀑があるとは思ってもいないらしく、きょとんとした顔をしていた。地方の地元の方は往々にしてそういうものだろう。
(ここは左)

(案内看板)

20分ほど歩いて<西和賀町真昼山系滝巡りガイドマップ>の看板を見かけた。林道はこの先通行止め。やはり、泥んこ道をここまで車で来るのは無理だった。ところで、看板があるのに、その先、滝に導く標識があるわけでもない。このガイドマップ看板と同じものが西和賀町のHPにあり、それを刷り出しで持参していたから、見当付けで下の沢に向かう道に入った。すぐに沢に出た。順番として先ずは「真昼大滝」を目指す。「小松倉大滝」を先行してしまうと、それだけで甘んじ、真昼大滝はもういいやということになりかねない。
(沢に出る)

ここは小松倉沢と真昼本沢が合流するところで、瀑泉さんの記事で中洲状になっていることを知っていたので、沢を渡って、向こう側にあるはずの真昼本沢に向かった。水は少ないのか、せいぜいヒザ下が没する程度。すぐに真昼本沢に着いた。
(テープを追うと)

(結局、沢歩きになる)

さて、件のガイドマップを見ると、沢沿いにオレンジ色の破線が付いている。おそらくこれが歩道かと思うが、それらしき踏み跡はなく、左岸側にテープを見つけて入り込んでみると、それはヤブに隠れた踏み跡で、こんなところを歩き続ける我慢強さはない。さっさと沢に復帰して沢を歩くことにした。その後、この巻き道はガイドマップを見る限りでは左岸を大きく高巻くようだが、沢からはかなり上に付いていると思われ、「真昼大滝」は下からではなく正面から見るといった案配になるのだろうか。
マップには右岸側にも歩道があるようで、これは「天空の滝」の上に続いている。こちらの歩道、テープの類すら確認することはできなかった。実は、その歩道を使って、「天空の滝」の上に出、沢沿いもしくは小尾根から真昼岳の稜線に出ることを想定したりしたのだが、ネット記事を調べる限り、真昼本沢上流から真昼岳に登った記録が一件あっただけで、他にはなかった。いずれにしても、今日はそれを実行するには体力的にきついし、まず時間的に無理。この時点、沢を歩きながら、そんなことを模索していたことはすっかり忘れている。
(障害物もところどころに)

歩きづらい沢だ。ヌメリも滑るし、大石越えがやっかいなところもある。ヘルメットを持って来なかったことに今さらながらに気づいた。無理はできない。大きな石の前で左右をうろちょろし、ためらいながら越えるパターンが何度かある。
(天空の滝)

なかなか「天空の滝」に出ない。というか、ガイドマップで最初の沢が分岐し、その沢に入ってから滝に出会うものとばかりに思っていたが、その分岐沢が現れない。沢を間違ったのかなとまで思ってしまった。そのうちに、轟音が聞こえ、右岸を見上げると、そこに「天空の滝」があった。真昼本沢に落ち込む滝だった。落差45m(こちらもまた以下、瀑泉さん推測)。下の木立で全容は見えない。さらに、滝の真上に陽が昇っていて、上部もはっきりしない。しばらく待って、雲に陽が隠れた瞬間に写真に収めた。瀑泉さんはヤブ越えで真下まで行かれたようだが、今日はヤブはいいや。
(真昼霊泉)

続いて「真昼霊泉」。この滝、ネット写真や写真集で、なかなか神秘的な滝だなと思っていたが、現物もまさにそうで、奥まったところでひっそりと静かに落ちている。左右の細い直瀑、中のスダレ滝、これをまとめて「真昼霊泉」というのだろうか。瀑泉さん記事に落差の記載はない。チラ見程度で終えていらっしゃる。この滝の写真は半端なものしか撮れなかった。真上の陽は往復ともに隠れず、陽を避けると全体が撮れないといった状況だ。そんなことを記しても、たかがコンデジカメラマンにはきれいな写真が撮れるわけもないのだが。
(ちょと先に行く。水流の速いところもあるが、深いところでもせいぜい腰下)

(何やら滝が見えてきた)

先に進む。流木の巣のようなところが現れ、さらに強い水流を避けて大石を乗り越えたが、帰りはどうすんだかと気になった。すると左に斜めに落ち込む滝が先に見えた。あれが「真昼大滝」か。歩き出してからちょうど1時間だ。急いで滝の正面に出向いた。これはなかなかの滝だ。そう思った。落差30m。これまでの滝と違って、裾広がりだ。邪魔な陽の光は落ち口にある木立に妨げられていて、しっかりと全容を見られる。見惚れた。何とも神々しい滝だ。自分にはこれが精いっぱいの形容だ。くどく記せば滝の質も落ちる。
(真昼大滝)

(正面から)

(右から)

(下部横から。もうちょっと経てば、モミジがアクセントになるかも)

滝壺はいたって浅い。流れ落ちる水が神水にも思え、滝の岩壁に口をつけて水を受けようと顔を近づけると、頭から水をかぶった。生ぬるいが爽快な気分になった。しばらくあちこちと場所を移しては滝を見ながら休んだ。
(真昼本沢の先。かなり窮屈な感じがする)

真昼大滝もまた真昼本沢の支流から流れ込む滝だ。本流の先には「下の滝」、「上の滝」が続くらしいが、ガイドマップには「上級」と記され、自分にはお呼びではない。そもそも、沢はここから狭隘になり、さらに傾斜もきつくなっている。倒木も目につく。巻くにしてもきつそうだ。
振り返っては真昼大滝を眺めた。後は注意しながらの下りで、改めて見るつもりの「真昼霊泉」も「天空の滝」も目に入らなかった。「真昼大滝」を見たから、それでいいだろうといった気持ちになっていることは確かだ。
帰路が肝心とばかりに、慎重に大石を乗り越えながら下り、中洲の交差点に戻った。その直前に、釣りらしきオッサンに出会った。地元の方だろうが、オッサンもまた驚いたろう。全身を上から下までまじまじと観察された。
(小松倉沢はここを直進する。左から真昼本沢)

(小松倉大滝)

そのまま小松倉沢に入る。真昼本沢に比べて浅く、水の流れも穏やかだ。10分ほど水の中を漕ぐ行くと滝が現れた。これが「小松倉大滝」。落差12~3m。これで今日の滝見は終わりとなる。ゆっくりと休憩する。この滝はよく見かける滝といったイメージだ。
中洲に戻る。顔と頭に水をかぶり、手拭いを水に浸して全身を拭う。さっぱりした。車に戻って着替えれば、温泉に立ち寄る必要もあるまい。さっきの釣りのオッサンの軽トラが河原から見えた。そのまま上がって行くと林道に出た。
(作業を中断してもらって通過)

ブルのオニイさんに挨拶して、またエンジンを止めてもらって脇をすり抜ける。沢できれいになった沢靴はまた泥んこになった。岩壁から落ちる沢水で靴の泥を落とした。その脇をオッサンライダーが通って行った。そういえば、あとでしっかり見るつもりでいた「蟇淵の滝」はすでに過ぎていた。「真昼大滝」を見たから、もう用はない。
(本日、消化の歩き)

駐車場には自分以外に車が一台だけ。神奈川県ナンバーの車だ。着替えようとしたら、さっきのオッサンライダーが戻って来た。ここまでやって来たけど、この先、行けないの? 通行止めになっているけど、バイクなら行けんじゃないですか。 だけど、ブルが作業していたから、戻ってきたんだ。 あのブルのおニイさん、気がいい感じだから、言えば、脇にどいてくれますよ。 あぁそう。じゃ行ってみるか。ありがとう。 オッサンはUターンして林道の先に向かった。戻ってこなかったから、そのまま秋田県側に入ったのだろう。
だれもいないので、外で着替える。車の中での着替えは狭っ苦しく、姿勢に無理もいき、ヘタをすれば、足が攣ったりもする。着替えている間に、ヤブ蚊にわんさと襲われた。耳から足首まで相当に刺された。今日はウナコーワを持ってきたから、刺されるままにしておいた。確かに、その場は治まったが、翌日が大変だった。身体のあちこちが腫れて痒くなった。
ここでもまた登山届に帰着時刻を記入する。15時、帰路に就く。
林道を無事に抜け、真昼温泉にでも寄ろうかと思ったが、車が車道にまで置かれていたのでパス。錦秋湖SAの風呂も使えるかとそのまま秋田道に入ってSAに立ち寄ると、涼しいためか、それほど風呂に入りたい気持ちもなくなっていた。実のところ、身体よりも泥だらけの車を洗いたいところだ。
あとは黙々、ひたすらに自宅を目指して高速道を走った。福島に過ぎると、栃木まで断続的な雨。途中でソバを食べたり、土産を買ったりしながらも21時には家に着いたが、今回の往復は1,045kmの走行だった。岩手だからまだいいが、これが秋田ともなったら+300kmにはなろうかというもの。紅葉狩りの山行も一人運転だとつらいもんだなと、ついうんざりとしてしまった。
(真昼本沢滝めぐりの軌跡)

「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図200000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)、数値地図25000(地名・公共施設)、数値地図250mメッシュ(標高)、数値地図50mメッシュ(標高)及び基盤地図情報を使用した。(承認番号 平24情使、 第921号)」
今日あたり、ネットで東北の山歩きの最新記事を眺めていると、先週末あたりから八幡平や秋田駒の紅葉が始まっていたようだ。三ツ石山あたりは「盛り」とまで記されている。女神山の紅葉はまだまだだったが、こんな記事を見てしまうと、もう一泊して八幡平にでも行けば良かったかなとつい思ってしまうが、いずれの記事を読んでもガスが濃くて、終日、視界が悪かったようだ。
ブナ林の中は、画像だけでも歩きたくなる気分です。気持ち良い気分が伝わってきますよ。
白糸の滝、どこにでもある名前、期待していなかったけど、変わった珍しい滝、名前を変えたらよかったのに、ベーゴマ滝、とか・・・あの岩に特徴があるでしょ。
真昼霊泉、本当に何かが棲んでいるような感じですね、霊でも出てきそう。壮大で見入ってしまいます。
お疲れ様でした、でも、遠出しただけの価値のある、滝廻りになっていますね。もう紅葉の時期が近付いて、早いです。
岩手は晴れていたとはいえ、前日まで雨のようでしたから、その影響で、どうしても朝の早い時間帯はガスがかかってしまいました。滝見に入った時点で晴れたのには助かりましたが、やはり、陽が出ると、東北とはいえ暑いものですね。
白糸の滝ですが、あの滝、上からだとすまし顔の滝に見えましたが、下に行って見ると、上からのイメージとはまったく違うおかしな滝でしたね。何にでも似ているし。白糸のネーミングは、細い筋で幾重にも流れるのでそう称するのでしょうが、私には、その手前で見た「降る滝」というネーミングが安易ながらも特徴づけられた一言といった感じでおもしろかったですが。
真昼霊泉は手前がちょっとしたヤブになっていて、どうしても入りづらいところがありますね。やはり眺める滝ですね。あの辺はヘビもいそうな気もするし、あまり深入りしたい気持ちは起きませんでした。
今度は、遠出しいお釣りのくる紅葉を見たいと思っております。
さすがに紅葉には早かったようですが,それでも此処の滝達は見栄えがしますからネ。其れなりに満足いただけたのではないかと思います。
ところで,いつの間にか「滝巡りガイドマップ」なる看板が出現したのですか(驚)。
まぁ,今のところそれ以外は野暮な状況になっていないことにホットしましたが,此処は知る人ぞ知る滝ですしネ。余計なことはして欲しく無いというのが本音ですヨ。
それと真昼霊泉,個人的には真下まで行きたい気持ちはあったんですがネ。結構,高い位置にあったのと,カミさんを放っておくワケにもいかず諦めたんですヨ。まぁ,その代わりといっては何ですが,天空の滝では,カミさんを先に行かせて,滝下で写真を撮って来ましたケドね。
それにしても,往復1045kmとはネェ・・・東北道に入るには,たそがれオヤジさんの方が近いでしょうが,900kmでウンザリしている自分には,およびもつかないですヨ。まして,下前渓谷では,女神山登山+姫滝探索でしょう(汗)。
ソウソウ東北の滝についてもう一つ,吾妻連峰にある「大倉小滝」は日本一の小滝ですから是非訪ねてやって下さい。たそがれオヤジさんなら,まったく問題ない道のりですし,自分のブログの中では一番古い記事ですが,それなりに参考になると思います。
白糸の滝、面白い形をしていますね。私はこれが一番気に入りました。迫力と見応えなら真昼大滝なんでしょうが。
しかし往復1000km越えとは・・。私は半分で音を上げます。
三ツ石山の紅葉、アプリでたまたま見た記事がとても綺麗でした。東北までは軽々にいけないのでたそがれさんの記事で楽しませていただき、私は日光辺りの紅葉をうまいこと見たいと思っています。なお赤城の紅葉はまだ早いんだろうなと思いつつ行ってみたらやっぱりまだでした。
瀑泉さんガイドのおかげで一通り回って、満足して帰ってきましたよ。
私なりの強いてのベストは真昼大滝、降る滝、天空の滝ですかね。それぞれに陽射しと水量が変われば、ベストも入れ替わるような気もしますし、真昼霊泉も間近に見るべきだったとも早速後悔しています。
残念なのは姫滝を見られなかったことですが、元々、枯れたりする滝のようで、せめて岩壁くらいは確認すべきだったか思っています。
調べると、真昼大滝はごく最近に「発見された」滝のようですね。大きなガイドマップを掲げたり、西和賀町のHPを見れば、その縮小版が見られたりと、町のPRは積極的なのでしょうが、その看板近くで作業をしている地元らしきブルのおニイさんが、私が滝見に行くと言ってはキョトンとしているようでは、PR活動もさほど行き届いていないのではと思います。
私、女神山と違い、真昼岳というのは、やはりそれなりの通の方が足を向ける山かと思っています。ですから、その延長にある真昼本沢の滝群も、見たい方、好きな方だけが訪れる滝のままのような気もいたしますけどね。
「大倉小滝」の情報ありがとうございます。瀑泉さん記事は早速、拝見いたしました。行き着くまで難所のような気がいたしますし、まして以来7年が経過しておりますので、もっと情報を集めて検討してみます。
余談ですが、1,045kmといいましても、私、結構、高速代をケチろうとして往路時にかなり迂回しているのですよ。どこに行っても1,000円の時代が懐かしいですよ。
東北の紅葉は、まだ早いかなと思いながらも、先日の鳥海山の色づきからしてちょっとは見られるかなと期待はあったのですが、女神山に関してはやはり早かったですね。色づきと言うにも遠い感じでした。やはり標高の関係でしょうね。
三ツ石山は1,466m、女神山は956m。同じような緯度にあっても、500mの標高差は色づきには大きな差にもなるのでしょう。
奥多摩や赤城山の紅葉も10月も半ばを過ぎないことにはねぇ。ただ、始まればあっという間ですから、注意しておかないと枯れた紅葉を見ることになるし。
ふみふみぃさんのお好みは白糸の滝ですか。あの滝、いろんな顔を持った滝といったイメージでした。これ、クラゲとかUFOといったことではなく、上から見える姿と下から見上げる姿がかけ離れているのですよね。美と醜というか…。
往復1,000kmはそれほどでもないですよ。往復ともに雨が降ったり上がったりの変化が続きましたから。これがずっと同じような天気だったら、飽きるどころか耐えられなくなったと思います。
山もやはり思い立ったが吉日ですよ。綿密な計画を練って行ってみたら雨に降られたり、何だこんなものだったのかといったことが往々にしてありますからね。
今回は、天気が良いのを確認して、即、行動しましたよ。
今回も、紅葉の時期にぶつけて先延ばしで行ったら、慌ただしくも、印象もまた薄れた歩きになっていたのかもしれません。二兎をいっぺんに追うつもりでいたわけですから。
紅葉は改めてじっくりと堪能して来るつもりでいます。
足元の選定ですが、確かにそうですね。私の車の後部席は下駄箱の状態になっていて、4種の登山靴はおろか、沢靴2種、地下足袋3種、長靴1種といったところです。長靴が1足しか入れていなかったので助かりましたが、さらにスパイク長靴を加えていたら、悩んだところでしょう。
遅コメ失礼いたします。
今週は珍しく公務が忙しくバタバタしておりました。
今回は滝見物ですか。
それにしても表題の真昼大滝は見事ですね。
白糸の滝も通常イメージする白糸とは異なり見応えがありますね。
真昼山地は滝見をする人たちにとっては対象の滝が多く外せない場所なのでしょうね。
しかし長距離運転、ご苦労様でした。
昨今東北遠征に出かけましたので身にしみますよ。
ましてや1人ですからね。
公務でご多忙とは例の会合ですか?およそ、自分には公務なんてのは縁のない仕事ですね。
東北遠征ですが、今週末も予定しております。エリアとしては、ちょっとばかり北になります。今度は純粋に紅葉見物ですよ。
欲張って、滝見も含めてはいますが、沢歩きのない、あくまでも遊歩道から眺める滝です。うまく、天気と紅葉がマッチしてくれれば幸いなのですが。
昨日、今日と甲斐駒に行くつもりでいましたが、昨日の天気予報が悪く、結局、行くのは取りやめました。不参加ということになります。今日の天気では、少しばかり後悔していますが、昨日は確実に雨の中の歩きになっていたことを考えれば仕方のないことでしょう。
代わりに、今日、金山の2時間半歩きで茶を濁しましたが、そんな短時間でもいい汗を流しましたよ。