あれは、6月だったか。
日も暮れかけた夕方に、スーパーへ行った私は、
独りの少女を見かけた。
その少女は大きな声で、
「誰か、この子をもらってください」と繰り返し訴えていた。
私は、どうしたの?と、そっと聞いてみた。
「うちの鬼ババが、鬼ババが・・・」
少女は、塾の帰り道、段ボールに入れられた子猫を見つけたそうな。
小さくて、可愛い子猫。
少女は即ざま抱き上げて、家へ連れて帰ったそうな。
そこに待ち構えるは、鬼の形相をした母親。
こっぴどく叱られた少女は、
「鬼ババァ~」っと叫んで、子猫を抱いたまま家を飛び出したそうな。
ところが、鬼ババも負けちゃいない。
少女を全速力で追いかけてきたそうな。
追いついた鬼ババは、こう言ったそうな。
「友達に飼えるか、聞いてみろ!
ダメなら、そこのスーパーの前で、飼える人を探せ!」
少女は、その足で思い当たる数人の家を回り、すべて断られ、
ついに、思い切ったそうな。
「怖いけど・・・やっぱりスーパーへ行こう!」
威勢のいい少女。
でも私に子猫を渡した瞬間、わんわん泣いた少女。
もしかすると、鬼ババはこっそり隠れて
その一部始終を見ていたのかも知れない。
「鬼ババ 鬼ババ 言ってからに」と。
あれから、今年で14年。
あの少女と、鬼ババは元気に暮らしておられるだろうか。
その後、子猫は威勢がよく、鬼のように怒ってばかりで、
でも一度も誰かを傷つけた事のない、実は気の良い猫として、
今でも、ここに居りますよ。
そう伝えたいと、時々思う。
きくさんや、今年も病院は、ダメですか?
きく:「ぜったい ゆるさん」
ワクチンぐらい、どってことないよ
きく:「いやなものは ぜったい いや」
そうね。パニック起こしちゃうものね
きく:「あたしには あたしの いきかたが あるの」
うん。決めた。
きく:「なにがだ? おかちめんこめ!」
きくは、どっこも行かんでいい
きく:「だから いかないって いってるでしょ」
本当に病気になった時、その時は一緒に考えような
きく:「おまえなんかの すきには させんぞ ぶたごりらめ!」
ないわ~、豚ゴリラはないわ~・・・