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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

第16回世界バレエフェスティバル Bプロ 千秋楽

2021-08-27 03:24:25 | BALLET
2021年8月22日(日)14時~
第16回世界バレエフェスティバルBプロの最終日でもあり、特別ガラを中止した今回のフェスティバルの大千秋楽でもあるこの日。
初日と同じ演目でも、踊りこんでの完成度の高まり、大千秋楽ということでの集大成としての踊りを見せてくれました。初日と比べて、印象が深まった演目が多かったです!

─ 第1部 ─

◆「グラン・パ・クラシック」
振付:ヴィクトル・グゾフスキー 
音楽:フランソワ・オーベール 
菅井円加、ダニール・シムキン

菅井さんが頑張りました!シムキンくんとの息が自然と会うようになり、パッと手を離されての自立アラベスク3連続も、ふらつかずに綺麗に決まりました。シムキン君もむやみにサポートテクで底上げを図ることなく、自然な流れで息の合った演技。やはり、初日に、これから良くなりそうなペアだなと思った予感は当たっていました・・・✨

◆「スティル・オブ・キング」
振付:ヨルマ・エロ 
音楽:フランツ・ヨーゼフ・ハイドン 
マルセロ・ゴメス

ゴメスのために振りつけられた、王の一生?王として昇り詰め、裏切られ・・といった演劇的要素の多い作品をさすがの表現力で、シンプルな拵えのソロを飽きさせずに見せてくれました。
次も来てくれるかな・・・3年に一度のバレフェスは、常連組はまた3年後に!と言葉を交わして別れるのだろうなと思いつつ、これが最後かもしれないと思っているであろうダンサーの心中もまた、想像すると胸が熱くなりますね。そういうダンサーはカーテンコールの表情で察することもあります。

◆「トゥー・ルームズ」
振付:イリヤ・ジヴォイ 
音楽:マックス・リヒター 
マリーヤ・アレクサンドロワ、ヴラディスラフ・ ラントラートフ

ベテランのボリショイペアですが、堂々たるAプロのライモンダとは全く異なるこの作品。人と人の距離感をテーマにしており、コロナ禍の今だからこそ一層響く演目かも。作品そのものはB+位かもしれませんが、表現力豊かなスターダンサー二人が作品の厚みを増しているためか中々の作品に見えました^^ショートボブのオデコを出してハーフアップにしたマーシャがいたずらっ子のように可愛い。威厳あるライモンダとはまた違う彼女の魅力満載。
魅力発散と言えば、投げキス投げハート、ラントラートフさんとの掛け合い(笑)も含めてカーテンコール女王でもある彼女、なんともチャーミングで、温かい気持ちにさせてくれるのもまた、スターの資質。
インスタにもたくさん、フェスの様子をUPしてくれていましたね^^

◆「白鳥の湖」より 黒鳥のパ・ド・ドゥ   
振付:マリウス・プティパ  
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
エリサ・バデネス、ワディム・ムンタギロフ

初日は、これは正統派の「白鳥の湖」ではない!とちょっとネガティブな気持で観てしまいましたが、パデネスがどこまでも演劇的にたっぷりとタメて誘惑するオディールを確信犯的に徹底して演じ、テクニックの見せ場でもしっかりと勝負している感じ、ムンタギロフがまた、演劇的なバレエに定評のあるロイヤルの王子としての矜持を見せんと、優雅なテクニックと共に、純粋でオディールの策略にすっかりと嵌められた王子の恋に惑う姿をノリノリで演じている様子を見ているうちに楽しくなってきました・・・^^
一見合わない二人が、それぞれの得意分野を徹底して見せる、ある意味清々しいパフォーマンスでした。

─ 第2部 ─

追悼 カルラ・フラッチ、パトリック・デュポン(映像)

◆「ジュエルズ」より "ダイヤモンド"
振付:ジョージ・バランシン 
音楽:ピョートル・チャイコフスキー 
オリガ・スミルノワ、ウラジーミル・シクリャローフ

スミルノワはやはりチュージンと踊る方が似合うなぁと。
あと、お衣装はそれぞれ、マリインスキーとボリショイで着ているものを持ってきたのかもしれませんが、意外と白いお衣装の解釈は純白、アイボリー、シルバー台の細かいスワロフスキー、アンティークゴールド台の大粒のスワロフスキーと、違いが際立つので、ここは揃えてほしかった・・・。
いつかスミルノワにはリベンジしてもらいたいです。

◆「3つのプレリュード」

振付:ベン・スティーヴンソン 
音楽:セルゲイ・ラフマニノフ
アマンディーヌ・アルビッソン、マチュー・ガニオ

とてもオペラ座らしいパフォーマンスでした。
オペラ座ダンサーがコンテ作品を踊ると、そのダンサーの美しさとバレエ団伝統のエレガンスが加味されて、作品自体の印象が変わることが多いのですが、今回もまた・・・。
シンプルなお衣装で2人の関係性が少しずつ近づく3場面が暗転で繋がれた構成が、マチューとアマンディーヌの落ち着いた美貌で流れるように、でも着実に踊るこのペアの持ち味により、ジワジワと見ているものに豊かな充足感を与えるというか・・・。
「オペラ座のコンテ」にしかない、不思議な魅力に満ちた作品、でした。

◆「海賊」
振付:マリウス・プティパ 
音楽:リッカルド・ドリゴ 
オニール八菜、マチアス・エイマン
深い青緑の薄物のドレスをふわりと軽やかに広げて、ティアラも華やかな八菜さん。マチアスはやはりふわりとジャンプしても最後の着地が吸い付くような足先のコントロールが見事。
Aプロのキミンの爽快な演技の残像でそれを凌駕しなくてはとマチアスにプレッシャーを見てしまった初日と比べ、自分の演技としての自信と余裕を取り戻したオペラ座ペア、とても良かったです。

─ 第3部 ─

◆「椅子」
振付:モーリス・ベジャール(ウージェーヌ・イヨネスコに基づく) 
音楽:リヒャルト・ワーグナー
アレッサンドラ・フェリ、ジル・ロマン

知の巨人ベジャールの西洋文明に軸足を置いた作品が、こうして没後も上演されるのが嬉しい。95歳と94歳の男女の物語を踊るベテランダンサー。
多様性がバレフェスに厚みを持たせてくれる。作品もダンサーもこの半世紀続くバレフェスの伝統の生き証人なのだ・・・という感動が沸いた時間でした。
基本セットは背景のみで、次々とPDDあるいはソロ作品の見せ場が続くガラに置いて、この大量の椅子のセットを準備する心意気よ・・・😢

─ 第4部 ─

◆「ロミオとジュリエット」より 第3幕のパ・ド・ドゥ

振付:ルドルフ・ヌレエフ 
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
ドロテ・ジルベール、ユーゴ・マルシャン

ジュリエットの寝室のPDDですね。ミュージカルなら「ひばりが鳴いている行かなくては」「あれはナイチンゲール、行かないで」の幸福と別れの辛さのアンビバレンツに胸締め付けられる場面。
ヌレエフ版なので、若い二人の情熱が存分に表現されます。
舞台奥にしつらえられた天蓋付のジュリエットの寝台から飛び出し、舞台狭しと駆け抜け、リフトし、リフトしながらも脚を動かし、短い時間にどれだけの振りを盛り込むかを競うような天才ヌレエフの振付特有の忙しさ(笑)はしかし踊りこなせるダンサーを得るとなんとも言い難い観ることの愉悦を得られるのですが^^
この場面、疾風怒涛のように縦横無尽に舞台を駆ける長身の二人に圧倒されているとロミオが走り去ってしまっていた…という感じで、ちょっと観客が置いてきぼり感があるPDDだなと。ものすごくやり切った感のあるカーテンコールの二人に、もっと拍手を送りたいのだけれど、実はついていけてない観客だったのでは?と^^;ガラで踊るPDDとしては、切り取り方に工夫が必要かも?と思いました。

◆「シャル・ウィ・ダンス?」より "アイ・ガット・リズム"
振付:ジョン・ノイマイヤー 
音楽:ジョージ・ガーシュウィン
菅井円加、アレクサンドル・トルーシュ
菅井さん、第一部は挑戦、でしたが、ここでは、踊りなれた相手と好きな音楽で(あれ?「エリザベート」になってしまった・・・^^;)伸び伸びと。
タキシードにシルクハットで2人が双子のように楽し気に踊る姿に和みます。

◆「悪夢」 
振付:マルコ・ゲッケ 
音楽:キース・ジャレット、レディー・ガガ
エリサ・バデネス、フリーデマン・フォーゲル

今やオネーギン役者のフォーゲル君ですが、ゲッケ作品のちょっといたずらっぽい仕掛けを嬉々として踊る姿を見ると、初登場の若々しくユーモアにあふれた姿をすぐに思い出すことが出来ます・・・マッチを擦ってはすぐに振り消すしぐさを何度も繰り返すユニークな振りがありますが、カーテンコールでもこの振りをやってみせてくれました^^。VIVA永遠の少年。
エリサ・パデネスは菅井さんと共に、2回目の登板。この作品、彼女にも似合っていました。

◆「ドン・キホーテ」
振付:マリウス・プティパ 
音楽:レオン・ミンクス 
エカテリーナ・クリサノワ、キム・キミン

トリにふさわしい、二人の爽快な演技!どんどんスピードアップするフェッテ、なのに全く崩れない。お祭り最後の高揚感をここぞとばかりに魅せてくれた二人よ、ありがとう!

この回は、千秋楽スペシャルで、いつものカーテンコールの後、一度幕が閉じ、再度開いた時には全員がお祭りの法被をお衣装の上から羽織って。
菅井さんが代表で、センターからすり足で進み出て、口上を。
皆一列に正座して、金の扇を前に置いての日本風のご挨拶も。
スミルノワのようにクラシックチュチュにはさすがに借り着感ですが、マチューや菅井さんのように、シンプルでインがシャツタイプだと祭りの実行委員さんですか?と聞きたくなるほど、あつらえたようにピッタリでした❣

恒例の手ぬぐい撒きもありませんでしたが、今回の手ぬぐいはセンターに富士山の可愛い図柄。幸運な45名の方の席番が手ぬぐいの御見本とともに、ロビーに貼られていました。

3年後には、BravoもBravaBraviBrave,全て声を出して伝えることが出来る世の中でありますように・・・。

指揮: ワレリー・オブジャニコフ、ロベルタス・セルヴェニカス  
管弦楽: 東京フィルハーモニー交響楽団
ピアノ: 菊池洋子(「3つのプレリュード」)

◆上演時間◆
第1部 14:00~14:55
休憩 15分
第2部  15:10~16:00
休憩 15分
第3部  16:15~16:45
休憩 15分
第4部  17:00~17:55


第16回世界バレエフェスティバル クラスレッスン見学会

2021-08-22 13:14:18 | BALLET
2021年8月22日日曜日
11:15〜1時間ほど、東京文化会館のステージをレッスン場として繰り広げられるバレフェス参加ダンサーによる、バレエの祭典会員対象のクラスレッスン見学会に行って参りました。
私たち観客は2.3階の客席から、彼らのバーレッスン、そしてバーを取り払ってのオルガ・エブレイノフ先生による生ピアノでのフロアレッスン。

バーが下手、中央、上手に、平行に4台ずつ設置されており、参加ダンサーは、下手手前からマルセロ・ゴメス、ユーゴ・マルシャン、キム・キミン、その右にワディム・ムンタギロフ。一番奥のバーに菅井円加さん。
中央の列は、手前からアレクサンドル・トルーシュ、フリーデマン・フォーゲル、マチアス・エイマン。
上手は手前からマチュー・ガニオ、アマンディーヌ・アルビッソン、エリサ・バデネス。

体温調節できるように重ね着を工夫したりのお稽古着チェックも楽しみですが、フロアレッスンで数人ずつの、グループになって課題をこなす、その組み合わせが…❣️
マチューとフォーゲルくんの美形同士とか、マチアスとキミンのフェッテを見比べるとか、ユーゴとフォーゲルくんのオネーギン並びとか、もう、一瞬一瞬が貴重すぎて…

もうすぐ、Bプロ千秋楽が始まるので、一度筆をおきますね。
また、皆のお稽古着レポを続けて書きたいと思います^_^

記事再開です。
下手奥から、菅井さんは前がジップ開きの紫のトップスに青緑のパンツ。裾をからげたりしてらっしゃいました。バーレッスンの最初では黒のダウンベストで体温調整を。
その手前は、青いTシャツにベージュのパンツ、肩に白いタオルをかけたワディム・ムンタギロフ。同じバーの左にキム・キミン。グレーの半袖Tシャツに黒のパンツというシンプルなスタイルながら、スタイルの良さが目立ちます。
その手前のバーには黒のヘアバンド姿のユーゴ・マルシャン。
上下黒で、下は短パン。黒Tの背中にはTornee a Tokyo 2017 Paris Operaの文字が!彼がエトワールに任命された記念のツアーTシャツですね^^
一番手前はマルセロ・ゴメス。Grayの長袖Tシャツに長ズボン。青と白の市松柄?のバンダナをヘアバンドに。
センターバーは、一番奥がマチアス・エイマン。黒の膝丈のハーフパンツに黒Tシャツに黒ダウンベスト。黒のハイソックスで少年っぽさが強調されるお稽古着です^^
その手前のバーにはフリーデマン・フォーゲル君。OSAKA6と大きなロゴ入りのタンクに黒パンツと黒ヘアバンド。
その手前にグレーのサイドパーツボブのオリガ先生。
一番手前にはアレクサンドル・トル―シュ。最初緑の長袖Tシャツにサイドラインの黒パンツでしたが、バーレッスンが終わってフロアレッスン時には中に仕込んでいた黒半袖Tシャツにグレーの短パン姿に。
上手の奥はエリサ・パデネス。赤紫のキーホールネックのレオタードに渋めの濃い紫の長パンツ。
その手前は(多分)アマンディーヌ・アルビッソン。
女性は髪型やマスクで判別しづらく・・・。
紺のオーバーサイズTシャツの下にレオタードを仕込んでいらした様子。
手前はマチュー・ガニオ。以前もクマのTシャツなど、ちょっと捻ったお稽古着でチェックを入れるのが楽しみなマチュー。今回はなんとTOKYO OLYMPIC Tシャツでした!紺に白ロゴで、オレンジや紫、黄緑の◆がサイドにあしらわれたデザイン。パンツはチャコールで、バーレッスンの最初には、Tシャツの上に、グレーグラデのカラーブロックのフード付きパーカーを着ていました^^

約1時間、主に男性陣のきれいに筋肉のついた伸びやかな体と、レッスンであってもさすがの技術・体幹の確かさがはっきりとわかり、数人ずつのフロアレッスンで、バレエ団を越えて、同じ「海賊」をA,Bガラでそれぞれ踊ったマチアスとキミンの並び、ですとか、同じオネーギンダンサーであるフォーゲルとマルシャンですとか、本当に眼福で・・・・。

今回のレッスン見学会、元々は10:30スタートの予定が、直前にDMとメールで11時スタートに変更とお知らせが。更に前日の夜、メールで、11:15からになりましたと。スターダンサーをまとめ、総意を取り、それを祭典会員にお知らせするというスタッフの仕事量とそれを行う誠実さと熱意をひしひしと感じたクラスレッスン見学会でした。NBSスタッフの方に感謝の念を送ります!


第16回世界バレエフェスティバル Bプロ初日

2021-08-20 08:29:00 | BALLET
2021年8月19日(木)14:00~
第16回世界バレエフェスティバル Bプログラムの初日に行って参りました。

Aプロの千秋楽が素晴らしかったので、Bプロの構成や如何に、とわくわくしての参戦です^^

─ 第1部 ─
◆「グラン・パ・クラシック」
振付:ヴィクトル・グゾフスキー 
音楽:フランソワ・オーベール 
菅井円加、ダニール・シムキン

Aプロでは、一人憂愁の王子を踊ったシムキン君。こういうガラのテクニシャンスターカップルが踊る演目、ピッタリですし、パートナリングの上手い彼は女性ダンサーの良さも引き立てつつ自分のテクニックも存分に見せるので、これは楽しみ。ただ、相手役が純クラダンサーではない菅井さん。さて。
Aプロの本来のノイマイヤーダンサーとしての作品ではとてもクリーンな踊りを見せてくれた菅井さん。こちらでは・・・アラベスクで自立を繰り返す場面、シムキン君が手を離すと必ずグラっとするの、今までのシムキンくんの相手役を務めてきたマリア・コチェトコワやヤーナ・サレンコでは見られなかったこと。ただ、組んでいる相手に視線をやる時に、なんとも言えない信頼していますよ、という言葉が聞こえてきそうな、穏やかで温かい微笑みをシムキン君に投げかけるのがとても素敵で、これから千秋楽までに素敵な雰囲気になってきそうなペアだなと思いました。最後の女性のフェッテをサポートテクで最後超スピードでクルン!!と回らせて自分もジャンプして決めるのさすがシムキン君。

◆「スティル・オブ・キング」
振付:ヨルマ・エロ 
音楽:フランツ・ヨーゼフ・ハイドン 
マルセロ・ゴメス

ハイドンの曲、というのが珍しくて新鮮。作品は、黒レギンスのゴメス様によるシンプルなコンテ。

◆「トゥー・ルームズ」
振付:イリヤ・ジヴォイ 
音楽:マックス・リヒター 
マリーヤ・アレクサンドロワ、ヴラディスラフ・ ラントラートフ

これは、この二人のために振りつけられた現代作品。黒のセパレーツに透ける黒のミニワンピを被せたお衣装のショートボブ(オデコ出し)のマーシャとラントラートフさんのコンテは、テクニック万全で白黒のロゴ入りリボン?の背景の一部をお衣装に着けたような、全体の世界感が疎外と融合、のようなメッセージ性があって、マーシャの存在感が伝わってきて、これはこれで見ごたえあり。そして、二人のカーテンコールはいつもチャーミング♡ 今回は二人で指を合わせて一つのハートを作ってくれました^^

◆「白鳥の湖」より 黒鳥のパ・ド・ドゥ   
振付:マリウス・プティパ  
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
エリサ・バデネス、ワディム・ムンタギロフ

ムンタギロフにピッタリの演目で、彼は、黒鳥オディールに心奪われる演技も王子としての踊りも完璧。Aプロの金子さんはBプロには出られなかったのかしら・・・。スケジュールの都合でしょうか・・・。シュツットガルトのパデネスは2演目登場の大活躍。彼女は、弾力性のある情熱的な踊りが身上なので、王子への視線の送り方、表情、そして見せ場のフェッテはお見事、でしたが、所謂白鳥タイプのダンサーではないので、王子に支えられて上体を反り、両腕を白鳥のようにうねらせるような振りではアームスの動きがうーん、ちょっと違う・・・と違和感が。返す返すも、白鳥をロパートキナ様に基準をおいてしまうわが身が恨めしい。

─ 第2部 ─

追悼 カルラ・フラッチ、パトリック・デュポン(映像)
バレフェス参戦初日の同行の友人に、Aプロで如何にスター性でデュポンが映像なのに観客の琴線に触れる演技であったかを力説しておいたのですが、Bプロの映像は、お二方とも、キャリアの後半のもので・・・。
そういえば、デュポン、歌舞伎に傾倒して、最後の方の舞台はちょっと迷走気味だったなぁ・・・と自分がその時代には観客としてぎりぎり間に合ったものの、今一つ天才ダンサーパトリック・デュポンにハマれなかったあの頃を思い出すなどしておりました💦
彼ほどのダンサーでも、若い頃と円熟味を増してきてからの作品選び、方向性の持って行き方にも迷うのだなそれが人生というものなのかも。。。としみじみ思ってしまいました。

◆「ジュエルズ」より "ダイヤモンド"
振付:ジョージ・バランシン 
音楽:ピョートル・チャイコフスキー 
オリガ・スミルノワ、ウラジーミル・シクリャローフ

スターダンサーがそのクラシックダンサーとしての美の方向性を示しつつ、観客はそれをうっとりと眺めている癒しの演目、という位置づけ?の「ダイヤモンド」
ボリショイペアは如何に?正直、クラシックバレリーナとしての美点を多く持ち合わせているスミルノワに期待していたのですが・・・。
何がいけなかったのかちょっとバラバラなまとまりのない印象の「ダイヤモンド」でした。背景がいつものくぐもった水色、あるいはセンターに小さな雲一つ、ではなく、満天の星空で、スミルノワのお衣装とヘッドアクセサリーが純白に細かなスワロフスキーが繊細に煌めく感じなのに対し、シクリャローフくんのお衣装が、アイボリーに金モールとスワロフスキーで、統一感がなかったからか・・・。
やはり、アニエス・ジョゼ組や、ロパートキナ様のダイヤモンドが懐かしい・・・

◆「3つのプレリュード」
振付:ベン・スティーヴンソン 
音楽:セルゲイ・ラフマニノフ
アマンディーヌ・アルビッソン、マチュー・ガニオ

実はあまり期待していなかったのですが、今回のBプロイチ、くらいに気に入りました。アイボリーベージュのシンプルなスカート付レオタードのアルビッソンと、肩紐付の淡いグレーのタイツにレオタード素材の白シャツのガニオ。
最初はレッスンバーを挟んで、そして、バーなしで、と徐々に解放されていく3場面の男女の在り方が、しっとりと落ち着いた美貌で、安定したテクニックの二人が丁寧に紡ぐ様がとても心地よく、円熟期にあるペアの良さがジワジワと伝わる佳作でした!観られてよかったです。

◆「海賊」
振付:マリウス・プティパ 
音楽:リッカルド・ドリゴ 
オニール八菜、マチアス・エイマン
Aプロでキム・キミン、クリサノワのマリインスキーペアが話題をさらった「海賊」。オペラ座の誇りにかけて・・・とマチアスくん、3連続のジャンプを全て外側の回転にしたり、彼なりのテクニックで魅せる方向で頑張りました。オニールさんはとても爽やかで若々しくてイキイキしていたけれど、マチアスはアリタイプというより、やはり、ジャン・ド・ブリエンヌとかの方が似合うかなぁ・・・と贅沢にもちょっぴり演目選びに不満が^^;

─ 第3部 ─

◆「椅子」
振付:モーリス・ベジャール(ウージェーヌ・イヨネスコに基づく) 
音楽:リヒャルト・ワーグナー
アレッサンドラ・フェリ、ジル・ロマン

セリフあり、とのことで、イヨネスコのテキストが事前に渡されておりました。老境の男性が、女性に、トリスタンとイゾルデのような恋が出来るのだろうか・・・と問いかけてみたり・・・。人間の老いと直面させる作品。
舞台の天井からも大量に吊り下げられ、舞台上にもふんだんに用意された椅子を駆使した振付で、ジル・ロマンがセリフありのバレエに挑みます。フェリもイタリア語であまり意味をなさない言葉を時々発したり、イメージの女性として、時に若々しく、時に老婆のように見える動きで、新たな挑戦を。録音使用のワーグナーの旋律と共に、誰にも訪れる老い、というテーマを掘り下げる、観客それぞれが舞台を観ながら自身の内面に深くいざなわれるような作品で、いかにも、ベジャール作品!と堪能しました。バレフェスで、ジルが他バレエ団の女性スターダンサーと組む時の化学反応が好きな一ファンとしては、嬉しい演目でした^^

─ 第4部 ─

◆「ロミオとジュリエット」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:ルドルフ・ヌレエフ 
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
ドロテ・ジルベール、ユーゴ・マルシャン

ようやくユーゴ登場!Aプロのオネーギンは間に合わず、急遽、フォーゲルくんが2回踊ることになり、それはそれで、新鮮かつなかなかピッタリですてきな組み合わせでのオネーギンとタチアナを堪能できて美味しかったのですが。。。
ロミジュリ、これは寝室のPDDですね。疾走する刹那の一夜。夜明けにはベローナを発たなくてはならないロミオとの初夜。若い二人の愛と別れの瞬間的な高まりを、長身の二人がダイナミックに演じます。
ガラでこの場面だけ・・・というのは珍しいかも。二人の演じ方なのか、忙しい振り付け(笑)が身上のヌレエフ版の宿命か、ひばりが・・・あれはナイチンゲールです、のようなやり取りがあまり感じられず、ひたすら走り抜け、そして走り去るロミオ・・・という感じで、物語としての緩急が今ひとつ見えずらかったのが勿体なかった一幕でした。最終日も観るので、ちょっと変わっているといいな・・・など。

◆「シャル・ウィ・ダンス?」より "アイ・ガット・リズム"
振付:ジョン・ノイマイヤー 
音楽:ジョージ・ガーシュウィン
菅井円加、アレクサンドル・トルーシュ

トップハットに黒燕尾の二人が軽快に踊る。
菅井さん、今回2度目の登板。ノイマイヤーダンサーとして、こちらの方が本領発揮といったところ。

◆「悪夢」 
振付:マルコ・ゲッケ 
音楽:キース・ジャレット、レディー・ガガ
エリサ・バデネス、フリーデマン・フォーゲル

カーキ色のタンクトップにミリタリー調のパンツ姿の二人。フォーゲル君は髪をサイドパーツにしてなでつけて固めたスタイル。レディーガガも使用した音楽の使い方が面白い作品。この二人に似合っていました。

◆「ドン・キホーテ」
振付:マリウス・プティパ 
音楽:レオン・ミンクス 
エカテリーナ・クリサノワ、キム・キミン

今回、照明暗めのコンテが多かったせいか、パッとした照明の下でのグランパドドゥに沸く会場。キミンもクリサノワもここぞとばかりにテクニック満載の素晴らしいパフォーマンスを・・・と言いたいところですが、キミンの拵えが一応マタドールスタイルの短いジャケットながら、白シャツに上下黒で、装飾も少ない。クリサノワは艶やかな赤いチュチュに黒のビスチェスタイルのスペイン風の衣装で何の問題もないのですが・・・髪も艶のないザンバラで、せっかくの晴れ舞台で、スタイリッシュな色男の役どころなのだから、ちゃんと役として演じてほしい・・・と。

一つ良かったなと思ったのは、観客の成熟度。
どうしても、しっとり系の作品や、難解で地味目なコンテは、パフォーマンス後の拍手も炸裂とはなりにくいし、逆に華やかなコーダのついた、魅せるためのグランパは観客も拍手を入れやすい。
なので、最後のグランフィナーレでその感覚を引きずったら厭だな・・と思っていたら、ちゃんと、観客は、作品の良さを反映して、公正にそして全体を称えるような拍手をちゃんと送っていて、ここはちょっとホッとしたところ。

Aプロは一人で鑑賞したので、凄く集中できたのですが、今回はクラシック音楽ファンの友人を伴ったところ、5列目の特等席だったのにも関わらず、暗い照明の場面で船を漕いでいたxxx この辺りの席の観客な皆、熱心なバレエファンで、食い入るように舞台を見つめている人ばかりなのに・・・と腹立たしく思ってしまったり、ここでつついて起こすべきか、本人のリズムに任せて放置すべきか・・・気が散ってしまったxxx
この素晴らしいフェスを自分だけの楽しみにしているのが勿体ないと、友人を誘いたくなるのですが、こういうこともあるので悩ましい。
友人は、疲れていたので、時折睡魔に襲われたけれど、どの作品も観ることが出来たし、とても満足している、とのことでした^^;

次の千秋楽観劇は是非、集中して観たいものです^^!

指揮: ワレリー・オブジャニコフ、ロベルタス・セルヴェニカス  
管弦楽: 東京フィルハーモニー交響楽団
ピアノ: 菊池洋子(「3つのプレリュード」)

◆上演時間◆
第1部 14:00~15:00
休憩 15分
第2部  15:15~16:05
休憩 15分
第3部  16:20~16:50
休憩 15分
第4部  17:05~17:55


第16回世界バレエフェスティバル Aプロ初日

2021-08-14 07:22:44 | BALLET
2021年8月13日(金)14:00~
東京文化会館にて、
第16回世界バレエフェスティバルに行って参りました。

お席は14列下手サブセン。
1階は満席のようでしたが、わたくしの左2席が空いていて、このご時世だからか・・・と心が痛みました。
とはいえ、バレエの来日公演自体、2020年のパリオペラ座バレエ団公演以来なので、世界の一流ダンサーがこれだけ東京に来てくれていることに感動しながら・・の開幕です。
一言ずつ感想を。

─ 第1部 ─

◆「ゼンツァーノの花祭り」
振付:オーギュスト・ブルノンヴィル 
音楽:エドヴァルド・ヘルステッド 
オニール八菜、マチアス・エイマン

可愛らしい拵えの二人。マチアスの綺麗に伸びたつま先、ふわりと膝の高さくらいまで優につま先が来るジャンプの高さと着地のしなやかさを存分に見せながら、ブルノンヴィルスタイルの細かな足技を見せる演目。
オニール八菜さんはちょっとお顔が疲れている?あるいはこういう可愛い感じがちょっと似合わない?もっと彼女に合う演目は別にありそうですが・・・。今回の参加者の中では若手なので、オープニングのフレッシュカップル演目を振り分けられた感じですね。マチアスの弾むような若々しさにはピッタリでした。

◆「ロミオとジュリエット」より 第1幕のパ・ド・ドゥ

振付:レオニード・ラヴロフスキー 
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ 
オリガ・スミルノワ、ウラジーミル・シクリャローフ

ラヴロフスキー版を観る機会があまりないので、興味深い。
フラットなバルコニーの上でロミオ登場から別れがたい二人・・・までの恋の上昇気流が綴られます。クリサノワのヘアバンドのようなヘッドドレスとドレスの肩先を覆うキャップスリーブが共にパールのネット状になっていて素敵でした。シクリャローフくんと比べてスミルノワが高身長に見えて、その彼女のリフトを安定感バッチリにこなすシクリャローフくんの成長に(というか、可愛さで抜擢されていたデビュー当時から何年経ったと思っているのだ自分←)感嘆。カーテンコールで全ダンサーが並ぶと、意外にもさほど高身長の印象がなかったスミルノワ。舞台で大きく見えるタイプのダンサーなのか。
身体をひねるポージングが多いジュリエットでしたが、その造形が美しかったです。

◆「パーシスタント・パースウェイジョン」

振付:ジョン・ノイマイヤー 
音楽:ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
菅井円加、アレクサンドル・トルーシュ

トル―シュが登場するとどことなく詩情が感じられるのですよね・・・。とはいえ、この作品はAプロには珍しいコンテ。菅井さんがグレータフタのシンプルで禁欲的なラインのロングドレスにぴしっと固めた黒髪シニヨンの外見同様シャープなダンスで魅せました。しかし、久しぶりのバレエ、バレフェスに会場入りからコーフンしていたわたくしは、この演目ではやや上の空で次のために密かに英気を養っておりました・・・ごめんなさい💦

◆「オネーギン」より 第1幕のパ・ド・ドゥ

振付:ジョン・クランコ 
音楽:ピョートル・チャイコフスキー

ドロテ・ジルベール、フリーデマン・フォーゲル

相方のユーゴ・マルシャンが間に合わず、急遽組んだカップルのドロテ、フォーゲル君組。薄物のネグリジェに後ろ一本の三つ編みにベージュシフォンのリボンのドロテ。感受性豊かな大きな瞳に黒髪痩身で、少女の初恋の夢想・・・の場面、ピッタリです。そこに現れる彼女の夢の中の圧倒的な支配者である黒いピッタリとしたシャツ姿のオネーギン。若いレンスキー役者だったフォーゲルくんがいつか挑戦したいと言っての初挑戦の舞台では髪がフワフワして、まだ役と馴染んでいないなぁと思ったのも今は昔。ピタッとなでつけた髪、高身長でクランコダンサーとしてシュツットガルトを代表するフォーゲル君、大柄なドロテを相手に難しいリフトをなんなくこなし、意外な組み合わせながら、それぞれが役に合っていて、とても良いのでは・・・とうっとり眺めている終盤、オネーギンが鏡の中に戻る寸前のリフトからの流れで、下手から上手に向かうところで盛大に音を立てて転んでしまいました💦 タイミングがずれたのか・・・ヒヤッとしましたが、つまづいてからの体制立て直しの様子を見るに、故障とかはなさそうで、ホッとしましたが・・・。二人はその後、鏡に消えるオネーギン、手紙を情熱的に書き連ねるタチアナ、の演技にすぐに戻って、ミスをリカバーしてくれましたが・・・。初日ならではのアクシデントでしょうか。どうぞご無事で。二人の並びはとても良かったと思います。


─ 第2部 ─

追悼 カルラ・フラッチ、パトリック・デュポン(映像)

2021年にお亡くなりになった、バレエ界の、そしてバレフェスのレジェンドお二人の懐かしい過去映像が流れました。
カルラ・フラッチ女史は、わたくしが見た2000年にはすでにレジェンドの特別出演枠で、若きマッシモ・ムッルの奴隷とパールのネックレスで戯れるクレオパトラでした。映像はそれこそ創世記の1976年でしょうか、シルフィードのロマンチックチュチュに背羽根の捕まえようとするとスルりと逃げてしまう可憐な妖精でした。

パトリック・デュポンは、わたくしがバレエを真剣に見始めた時には既に活躍の最後のあたりで・・・バレフェスで活躍する姿を見るのはこの映像が初めて。白鳥の湖一幕の道化。なんてチャーミングな!彼はその卓越した身体能力以上に、舞台人として観客を魅了するすべを身に着けた人なのだなぁと実感。映像なのに、会場には笑いと拍手が起こりました。
良き追悼となったと思います。

◆「白鳥の湖」より 第1幕のソロ

振付:パトリス・バール 
音楽:ピョートル・チャイコフスキー 
ダニール・シムキン

シムキンくんのソロ。いつも組んでいるコチェトコワとかサレンコとかの都合がつかなかったのか・・・。しかも純クラ。もともと王子タイプではないけれどもテクニックは純クラなので、小柄なお姫様必須なのですが・・・。
大人になってますますおでこくんになったシムキンくん。モノクロームの湖の映像の前で、モスグリーンの軍服に白タイツで一人憂愁の王子を踊るシムキンくん。彼のクラシックバレエ愛が伝わってきました。
ドラゴンボールが好きなPOPな超絶技巧ダンサーである往年のシムキンくんよ、どこに・・・。時は流れゆく。

◆「ジュエルズ」より "ダイヤモンド"

振付:ジョージ・バランシン 
音楽:ピョートル・チャイコフスキー 
アマンディーヌ・アルビッソン、マチュー・ガニオ

バレフェスでダイヤモンドと言えば、ヴィシニョーワ様、ルテステュ様、ロパートキナ様と、カリスマティックな大スターがその個性を前面に出して踊る、というイメージ。
パリオペの実力派中堅?ベテランの二人、手堅く決めてきました。
マチューっていかにも甘くて華やかな王子様なのだけど、彫の深さの加減故か、舞台に出るとなぜか絶妙に地味になるので、手堅く落ち着いた雰囲気のアルビッソンとの並びはお似合いでした。パリオペの純白チュチュに胴着とビスチェ部分にラメ入り生地を使って大きなラインストーンを配したゴージャスなお衣装なれど、オーボエの哀愁漂う音楽に合ったメランコリックなダイヤモンドでした。

◆「マノン」より 第1幕のパ・ド・ドゥ

振付:ケネス・マクミラン 
音楽:ジュール・マスネ
金子扶生、ワディム・ムンタギロフ

金子さんが程よいハリのある筋肉のついたスレンダーボディに黒髪巻き毛のアップヘアで、なんとも魅惑的なラテン美女に。マノン、のイメージと言うよりもカルメンの方がしっくりきそうなビジュアルなれど、金髪で優し気なムンタギロフとのコンビネーションも良い感じ。難しいリフトの連続の振りも情感や恋の高揚感を失うことなくこなしていましたが・・・。「マノン」だけは、何度も何度もみたシルヴィ・ギエムの残像が残っているため、腰の位置で抱きかかえられたマノンが足を小刻みにパタパタさせるところ、ちょっと端折って見えてしまい、あぁ、このマクミランの振付を空中でしっかりと全て明確に見せることの出来るダンサーであるシルヴィは本当に得難いダンサーだったのだなと。当たり前のようにそのパフォーマンスを定期的に享受していたことのすごさを改めて振り返る演目ではありました。

◆「ル・パルク」

振付:アンジュラン・プレルジョカージュ 
音楽:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
アレッサンドラ・フェリ、マルセロ・ゴメス

解放のPDD. 白いナイトシャツ姿でダウンヘア―のフェリ。冒頭、指を濡らして後頭部から首筋、乳房をなぞり、身体の中心部に向けておろしていくところから、濃厚なエロスと女性性が立ち上り、一気に引き込まれるところ、さすがフェリ。年齢を重ねた女性だからこその、内側から立ち上る人間の性と生の根源的な力を感じさせるパフォーマンスでした。受け止めるゴメス共々、ラテンの血が響き合う素敵なカップルでしたが、好みから言うと、男性に繊細さがあって、女性と拮抗する感じがあるほうが、作品全体のフォルムがしっくりとくるのはこの作品にローラン・イレールの幻影をどうしても見てしまうファンのサガですかしらね・・・。ゴメスさまはもちろん、安定感抜群のパフォーマンスでフェリの情念をしっかりと受け止めていて素晴らしかったです。

◆「海賊」

振付:マリウス・プティパ 
音楽:リッカルド・ドリゴ 
エカテリーナ・クリサノワ、キム・キミン

これぞフェス!これぞバレフェスの華!
旬のダンサーが技を競い華を競う。会場を興奮のるつぼに落とし込む!
キミンは本当に素敵なダンサーですよね・・・。
回転の高さは言うに及ばず、フワッと浮き上がってからのきれいなポージングで回転してからの音のない着地、までがまるでスローモーションのように明確に見える。どうしたらこんなことができるのか。180度開脚しての3連続ジャンプとか、手脚が長くて高身長で、くっきりした黒髪の艶やかさといい、本当に目の覚めるようなダンサーです。上半身にジュエリーだけをつけての鮮やかなターコイズのハーレムパンツ姿はお似合い。
クリサノワも負けておらず、ちょっとオシポワをエレガントにしたようなテクニックの強いダンサーで、淡い草色のドレスが彼女にはお似合いだけれど、キミンのターコイズとはあっていないような・・・。
などという些末なことは帳消しにしてくれる爽快な二人のパフォーマンスでした。

─ 第3部 ─


◆「スワン・ソング」

振付:ジョルジオ・マディア 
音楽:モーリス・ベジャールの声、ヨハン・セバスティアン・バッハ
ジル・ロマン

ベジャールバレエ団代表。紗幕の後ろでのパフォーマンス。
紗幕をキャンバスのようにしてライトで図形が描かれたり・・・の演出。
ダンスそのものを見せるというより、総合的なパフォーマンスアートとでもいうべき作品、でしょうか。これは、往年のベジャールダンサーであるジルが、バレエ界の縮図であるバレフェスに登場した、という記録として受け止めました。参加してくださることにい意義がある、というか。

小林十市 連載エッセイ「南仏の街で、僕はバレエのことを考えた。」【第16回】世界バレエフェスティバル、そして「表紙」の思い出。 | バレエチャンネル | 公演、ダンサー、バレエ団、レッスン、悩みや疑問などの情報を届けます (balletchannel.jp)

↑ ベジャールダンサーとして名を馳せた小林十市さんが、「バレエチャンネル」で連載エッセイを書いていらっしゃいますが、今回のバレフェスによせてご自身の出演回の思い出をつづっていらっしゃいます。URLを張ったつもりだったのですが・・・。飛べなかったら、ググってください^^;
 
◆「オネーギン」より 第3幕のパ・ド・ドゥ

振付:ジョン・クランコ 
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
エリサ・バデネス、フリーデマン・フォーゲル

息の合った二人。踊りこんでいることがわかる物語が浮かび上がる踊りでした。手紙を読んだバデネスは明らかに動揺している。そこにさっそうと登場するオネーギン。愛を請うて床に足を流し、タチアナに縋りつくオネーギン・・・タチアナが一回転しての抱擁を繰り返すところ、フォーゲル君は微笑みを浮かべるのですね。この瞬間、彼はタチアナの愛を取り戻したと希望を持っている。しかし、横たわった姿勢からのはじける様なアラベスクのところでタチアナが彼を断ち切ると心を決めたことがわかり・・・からの激しく手紙を破り捨てて彼に出て行って!と指さして・・からの顔を覆っての嗚咽・・・。
文学少女からの公爵夫人というタチアナが秘めていた情熱の揺らぎ、というにはあまりにラテン的にストレートなバデネスのタチアナでしたが(わたくし的にはアイシュバルトとゲランが双璧)素晴らしかったです。

◆「瀕死の白鳥」

振付:ミハイル・フォーキン 
音楽:カミーユ・サン=サーンス
スヴェトラーナ・ザハロワ

コロナの隔離時期などとの調整で出演が叶わなくなったダンサーの代わりに別の公演ですでに日本入りしていたザハロワ様にご登場願ったという流れらしいのですが、やはり彼女のクラシックバレリーナとしての美しさは格別ですね。
瀕死は、白鳥の最後の苦しみを野性を感じさせる表現を織り交ぜることが多いように思うのですが、ザハロワの白鳥はどこまでも儚く優雅で、最後絶命の瞬間にカクっと手首が落ちるところまで、繊細な美そのものでした。

◆「ライモンダ」 

振付:マリウス・プティパ 
音楽:アレクサンドル・グラズノフ 
マリーヤ・アレクサンドロワ、ヴラディスラフ・ ラントラートフ

わたくしはマーシャファンなので、オニール八菜さんや金子扶生さんのような大輪の薔薇系ダンサーを観ると、アレクサンドローワ的なダンサー出現!と喜んできたのですが、なんと、御大ご登場ですよ^^さすがバレフェス。
しっかし・・・マーシャ、貫禄が・・・。もともと堂々としたタイプですが、更に貫禄が・・・。ラントラートフさんは相変わらず飄々と軽快な王子様で、一層マーシャの貫禄が印象的に^^;
でも、こういうクラシカルでゴージャス感のある演目、いいですね。
ラントラートフさんのロイヤルブルーのロングマントがマーシャの回転に巻き込まれてしまった一幕があり、そこから、ラントラートフさん、マント捌きに一層注意を払っていらしたような^^;

初日ならではのアクシデントが散見された回でしたし、いつもなら4部制でもう一度休憩があって・・・と言うところではありましたが、久しぶりの海外バレエとの触れ合いがこのようなゴージャスな面々によるもので、なんとも胸いっぱい感無量。緊急事態宣言下、関係者の方々も薄氷を踏む思いでう準備されていたのであろうことを思うと、本当に感謝の念に堪えません。
この3年に一度という素晴らしいフェスティバルが今回も絶えることなく続いていることに大きな拍手を送りたいと思います。

フィナーレの花火の映像は、夏に東京に来てくれたダンサーへのサービスなのかな、粋なことを・・・^^と思いましたが少し長かったかな?ダンサーが客席にお尻を向ける時間が長いと興覚めですから、ちょっと調整して欲しいかも。
あと、Aプロの楽日とBプロも同じく初日と楽日を観る予定です。

指揮: ワレリー・オブジャニコフ、ロベルタス・セルヴェニカス  
管弦楽: 東京フィルハーモニー交響楽団
佐々木さん曰くの「奮発して」の東フィルでしたが、後半金管がやらかしてましたね^^;
これも初日ならでは、でありますように(^_-)-☆

ピアノ: 菊池洋子(「ル・パルク」、「瀕死の白鳥」、「ライモンダ」)
チェロ: 伊藤悠貴(「瀕死の白鳥」)
お二人とも、特にピアノの菊池さんが素晴らしかったです。
黒のアメリカンスリーブのシックなロングドレスで、ダンサーに促されても袖のピアノの位置で一礼してスッと去るスマートさといい、卓越した演奏といい理想的なあり方で、バレフェスに対する位置づけをしっかりと理解されている大人のふるまいに感動しました。






◆上演時間◆


第1部  14:00~14:55
休憩 20分
第2部  15:15~16:10
休憩 20分
第3部  16:30~17:15



2021 六月大歌舞伎「桜姫東文章」下の巻

2021-06-17 03:42:38 | Musical
2021年6月16日(水)歌舞伎座にて
第二部 14:10~
「桜姫東文章」下の巻を観てまいりました。
序幕「岩淵庵室の場」
二幕目「山の宿街権助住居の場」
大詰「浅草雷門の場」

桜姫は2004年歌舞伎座で、玉三郎と段治郎で観ています。
あの頃、市川猿之助一座のスーパー歌舞伎で大活躍されていたのですよね、段治郎さん。183㎝の長身で、並びが良く、ダイナミックな動きと手足の長いシルエットが荒唐無稽な鶴屋南北の世界によく似合っていました。
この時の配役で印象に残っているのは町人に身をやつして桜姫を見守っている忠義の家臣、葛飾のお十を春猿、粟津七郎を門之助という、この頃よく組んでいた並び。いかにも物堅いお侍の雰囲気の門之助と色っぽくて、桜姫の身代わりに置屋へ赴くのが品の良い若奥様が忠義のためとはいえ何たる自己犠牲・・・と思ったことが蘇りました。段治郎さんは今は喜多村緑郎として新派に、春猿は河合雪之丞として同じく新派に・・・。時の流れを感じます。

今回は36年前に大ヒットした玉孝再び・・・ということで、お二人の実年齢を考えると信じられない、美しさと様式美の世界に酔いしれました。
筋書の玉三郎のコメントに、体力的に厳しいかと思っていたが、上下に分けての上演ならば全精力を注げるのでは、と挑戦する気になった理由を残していらっしゃいます。

四月と六月、上下に分けての上演ということで、下段の前に、上段の説明が。

長谷寺のNO2,僧残月(中村歌六)と、桜姫の吉田家のお局長浦(上村吉弥)は密通が露見して、今や、ひっそりと北本所岩淵の庵室でほそぼそと暮らしている。
古物商とのやり取りの際、薬になるかと百姓が持ち込んだトカゲが毒と分かって落としていく。貧しい庵の衝立に掛かるは長浦が桜姫より賜った小袖。その向こうに臥せっているのは白菊丸の生まれ変わりと信じる桜姫をかばって長谷寺を追われた清玄。白菊丸と心中前に分け合った香箱を後生大事に懐に入れているのを金子と勘違いする残月と長浦。その後、葛飾のお十(片岡孝太郎)が亡くした子の供養を頼みに訪ね来て、清玄が連れてきた桜姫と釣鐘権助の赤子を連れて帰る。実はお十は桜姫を陰ながら守る吉田家の家臣チームの一員。残月と長浦は、蜥蜴を煎じて清玄を毒殺。穴掘り人足をして生計を立てている釣鐘権助のところに長浦を使いに出す。そこに連れてこられたのは流浪の桜姫。残月は驚き、襦袢姿の桜姫に件の小袖を着せかけますが、ムラムラと口説きモードになったところで権助と長浦が戻ってきて、腕の入れ墨を夫婦の証と、間男の罪だと言って、庵を乗っ取り、二人を追い出す権助。
ここ、小袖を着付け、長浦の化粧箱を見つけて、銀の髪飾りを装着、ティアラ?を付けて、姫の正装となる手順を舞台上で観られるのがなんとも興味深く、姫の日常を垣間見る思い。
このようにして、落ちてまた姫に戻り・・を繰り返す、落ちても本質の姫は変わらないという、桜姫の個の強さがこの作品の魅力だなぁと思わせるところ。
それにしても、桜姫の運命がジェットコースター過ぎて、本当に歌舞伎って・・・と面白くてたまらない。
愛しい権助との再会を喜ぶ桜姫。庵と墓堀人夫の体の権助と、絢爛たる赤姫の桜姫のGAPがスゴイ。これはまずいと下々の生活に慣れさせるために女郎をさせようと(この発想もスゴイ)話をつけるために出かける権助。はよ帰ってたも・・と繰り返し縋る姫が可愛い。行燈もなく暗闇に心細くしているところに、雷が落ち、清玄が息を吹き返す。(コワい)清玄は白菊丸との因縁を説明したうえで思いを遂げたいと心中を迫る。逃げ惑う姫。出刃包丁を振りかざす錯乱した清玄と怯えながら海老反る姫の型のの美しさよ・・・。逃げ追いかける大立ち回りの末、清玄は掘られた墓穴に落ち、手にした包丁が喉に刺さるが、その状態で穴から出てきて柳を両手に息絶える・・・。壮絶なり。
そこに(早変わり!一人二役の妙!)帰って来た権助、女郎屋へ連れて行こうとすると人魂が出て怯える姫。介抱する権助の頬に、毒に当たった清玄の頬に浮かんだのと同じ青あざが・・・。察する姫。

15分の休憩を挟んで2幕目は、桜姫の身請け代で長屋の大家に収まった権助の新居。「山の宿町権助住居の場」
この頃はまだ街外れだった浅草。町内の捨て子を添え金目当てで引き取った権助、この子がお十の夫仙太郎(中村錦之助)が勝手に捨てた子と知って仙太郎を強請る。金の代わりにお十を置いていかせるが、そこに置屋から桜姫が戻されてくる。権助と同じ釣鐘を彫ったのが細腕故に風鈴にしか見えず、「風鈴お姫」と人気女郎となっていたが、枕元に化け物が出るというので、戻されてきたのだった。身代金を返せという代わりに、お十を差し出す。籠に乗せられたお十に物陰で見ていた仙太郎が「粟津七郎が離縁する・・・」と書かれた離縁状を渡す。実はこの二人が吉田家の家臣で、桜姫守護のための働きを称える文であると観客は察する流れ。下町の女郎生活を経た姫は、赤姫の衣に黒白だんだらのつぎはぎをした小袖姿同様に、話し言葉も伝法な江戸っ子言葉と姫言葉が奇妙に入交じり、それをスッとした顔でさらりと言うものだからおかしくてたまらない。枕を並べて二人が煙管片手に横になる様は今や似合いの一対の夫婦。くつろぐ時間は短くて、町内の寄合いに呼ばれる権助。一人になった桜姫に清玄の霊が、傍らの赤子が桜姫の子であり、権助は清玄の弟であると告げる。酒に酔って帰宅の権助、松井源吾にあてた密書を取り落とし、自身が信夫の惣太という侍であることを明かす。自分が奪ったものとして都鳥の一巻を取り出して桜姫の父である吉田少将と弟の梅若、そして一巻を狙った入間悪五郎を殺害したことを口走って寝入る。全てを知った桜姫は、我が子を探して流浪していたこともあり、葛藤の末に権助の血を引く子を手にかけ、続いて、権助にとどめを刺し、敵討を果たす。

大詰 浅草雷門の場
幕が降り、幕が上がると浅葱の幕。それがパッと一瞬で消えるとそこはパァッと明るい雷門の門前。葛籠を背負うは武者人形の如き奴の軍助(中村福之助)。粟津七郎とお十、そして桜姫の弟の松若(片岡千之助)が捕手を追い落す。葛籠を開けるお十と松若。都鳥の一巻を持った桜姫が現れます。松若が家宝の都鳥の一巻を手にしたことで吉田家再興は果たせたと、夫と子を殺したことで自害を図る姫を止めるところに、大友常陸之助頼国(仁左衛門3役目!)と七郎、軍助が現れる。権助の悪事が露見した以上、桜姫は自害するに及ばず。吉田家再興を祝しての大団円で幕。

鶴屋南北ものならではの江戸の夜、雷、人魂とおどろおどろしい闇が濃く、同時に桜姫のあでやかな姿と共に、華やかで明るい場面のコントラストが強い。高僧は心中未遂故の心の弱みから堕落し、生臭坊主が落ち延びていく。聖と俗のコントラストもまた、強く、男の未練は転生した先、自身が殺害されて霊となっても連綿と続く。
一見、運命に翻弄されているような桜姫は、罪びとを愛し、自らは身を落としながらも、最後まで、お家再興という望みを捨てず、あばら家で見つけた化粧箱から、髪飾りを取り出して立派な姫の姿を再生させたと同様に、艱難辛苦が夢であったかのように、姫として再生を果たす。家に翻弄される時代の姫であるのに、とことん自分自身であり続けるスーパーお姫様として、初見では衝撃と興奮がなかなか収まらなかったのを覚えています。

玉三郎丈の筋書でのコメント、「改めて実感したのは、精神的負担のまるでない役だということです。様々なものを抱えた人たちの中にあって、ひとりだけ逸脱しているのです。遊女にまでなっているのにお家騒動も解決して、あっさり姫に戻っていく。五代目(岩井)半四郎のために桜姫本意に書かれた作品で、非常に不思議な、とても良いお役です」
これが全てですね。
玉三郎様の声のトーンの自在さと赤姫が似合う美貌、仁左衛門様の粗末な着物の裾をからげておみ足を晒しても穴に落とされ、喉に刀を突き立てて蘇っても・・・思いのままに生きる悪党と前世の迷いに絡めとられる僧侶の2役を鮮やかに演じ分ける技量。
このお二人の、錦絵の如き美しさ。
鶴屋南北の描く江戸の光と影の強さ、深さと共に、一生忘れられない舞台、でした。

コロナ下で、客席両隣が空席に設定されていたのがなんとももったいないことでした。。。