2009年の世界バレエ・フェスティバルで見せてくれた、アニエス・ルテステュとジョゼ・マルティネス、オペラ座を代表するエトワール2人の「ジゼル」第2幕。
幻想的で静謐、真夏の東京の世界のスターダンサーが繰り広げる熱い舞台において、一気にその場の空気を変えてしまった二人の演技。
全幕で是非観たい!というバレエ・ファンの希望が伝わったのか、今回のオペラ座日本公演での「ジゼル」の初日を飾り、唯一2回公演を行うことになったこの二人です。
まずは初日に駆けつけました。
昨日のゲネでも感じたのですが、本番では一層。。。
豪華絢爛ハリウッド版「シンデレラ」と比べると、さすがは19世紀のバレエ、シンプルで舞台装置も簡素です。
ではありますが、藁ぶき屋根の厚み、ジゼルの家に至る曲がりくねった小道、遠くに見えるアルブレヒトの居城など、必要最小限にして、効果的なリアル感と配置。
まずは幕開け、村人たちが軽く登場、ひらりとひと踊りするのですが、この村人たち、妙にノーブル(笑)
背負い籠が似合わないことはなはだしいのですが、これもまたオペラ座ならでは、ということで。
そういえば、昔は現エトワールのマチューも籠を背負っていたこともあったわけですし・・・。
そして端正な印象のあるプルミエ昇格、注目株のジョシュア・オファルトのヒラリオンが登場。
ノーブルな持ち味の彼は、ヒラリオンの粗野さや単純さを表現するために重心を変えたりといったアプローチを行ったとか・・。
小さな白い花束をそっとジゼルの家の前に置きますが、その愛情表現は比較的控え目です。
ジゼルには憧れているものの、そんなに近しい間柄ではないヒラリオンです。
人の気配に立ち去る彼。
アルブレヒト登場!
簡素な姿に身をやつしてはいますが、キラキラの王子オーラ。
すっと伸びた背筋、エレガントな立ち居振る舞いに出自は隠せません。
どうだい、村人に見えるだろう。見えませんって!それに腰に・・・貴族の証の剣をつけたまま。
ふっ、これはこれは。はずしてマントとともに預けた従者の肩を抱き、この家に住む少女の美しさを楽しげに語ります。
「わたしは賛成致しかねますね・・こんなこと」と渋い表情の従者ウィルフリード。
彼はこの気まぐれな楽しみごとが良い結果をもたらさないであろうことを予見しているようです。
突然、高飛車に、呼ぶまで姿をあらわすでないぞ、控えておるが良い、と領主様。
向かいの納屋に剣を隠して、ウィルフリードは首を振り振り、小道を上って去ります。
さて。
コンコン、コンコン、コンコン、と音楽に合わせて扉を軽くノックする彼。そうしておいて家の陰に・・・
ジゼルが扉を開けて走り出てきます。
金髪を下ろして耳の後ろで小さな白い花飾りで軽くとめつけたヘアスタイルが楚々とした少女の風情のアニエス。
落ち着いたブルーの濃淡のふんわりとしたスカートと胴着が大人っぽいアニエスをろうたけた美少女に見せています。
喜びに輝く顔、あら、彼かと思ったのにだれもいない・・・まぁ!
知らない間に真後ろに立っていたアルブレヒトに驚きとときめきと恥じらいがないまぜになった表情のジゼル。
ジョゼのアルブレヒトは可愛い村娘の気持ちを好きなように弄ぶ恋の達人。
狩りと同様、貴族の楽しみごとのひとつとして気晴らしの恋愛ゲームをたしなんでいる感じです。
花占いの時には2本の白い花を家の前からつんできて、2~3枚花弁をちぎったところで素早く残りを数えて悲嘆にくれるジゼル。頭の回転の速い娘。洞察力があり、感受性が強く、精神の動揺が激しいジゼルの性格がさりげなく提示されます。
アルブレヒトはその花を投げ捨て、もう一本の花を手に、素早く枚数チェック。
ジゼルの手を取り、ほら、大丈夫だよ!と。
ヒラリオンがやってきて二人の邪魔をします。
あまりの彼の剣幕に思わず腰に手を・・あ、剣は。ヒラリオンはその様子を見逃しません。
が、アルブレヒト丸腰でも貴族の威厳。格の違いでヒラリオンはねめつけられて引き下がります。
村人たちが現れてダンス。
ジゼルも踊って!とせがまれて、もとより踊りが大好きな彼女、恋人の前でイキイキと踊ります。
皆と踊っている最中に胸が苦しくなるジゼル。
どうしたの?ここで休んでいて、僕が踊っているのを見てね、とアルブレヒトは心配するもののさほど深刻に捉えていはいません。ジゼルもすぐにまた輪に加わります。
そこにジゼルの母ベルタ登場。
かなりのベテランさん、どの階級の人かと思えばなんとオペラ座バレエ教師。さすがのマイムと迫力です。
ジゼルの心臓を心配し、結婚前に亡くなった娘たちが・・・とウィリ伝説を一同に語ります。
さあ、だからジゼル、家にお入りなさい。
アルブレヒトはジゼルと投げキスを交わしつつ、ベルタが振り向くと大人しく会釈・・の繰り返し。
人影のなくなった広場に現れたヒラリオン。
先程のアルブレヒトの様子にもしやと・・・納屋に隠した剣を発見!
すると、狩りの貴族の一行が現れ、ヒラリオンはひとまず姿を隠します。
公爵のおなり~!
なんと、バチルド姫の父にヤン・サイズが!うーん、彼は怪我が多くてキャリアと華からするとプルミエに上がっていても良い逸材。その彼がこんな踊らない役に・・勿体ないけれど舞台にいてくれるだけで場が華やぎますv
しかし、アニエスのインタビューによると、このパリオペ版の「ジゼル」では昔の初夜権(領主は領民が結婚するに当たり、その花嫁を花婿より先にお試し!?することができる、というトンデモな法律。オペラ「フィガロの結婚」でもモチーフになっていますよね)により、実はジゼルはクールランド大公の庶子、だから村人ならぬ美少女で・・・という設定らしい。
アニエスとヤンの血がつながっていてもおかしくはないですけど、ベルタに対するヤンの若さは・・・うーん、まぁそれはおいておいて^^;
「ナルニア国物語」の挿絵に出てくるような広く垂れた袖口の貴婦人のドレスが優雅です。
思わずバチルド姫のドレスにそっと後ろから触れるジゼル。
身体は弱いけれど、好奇心は旺盛で積極的。でもはにかみやでかわいらしいジゼル。
気づいて振り返った姫に慌てて母のもとに駆け寄るものの、微笑みながら「あまりにもお姫様がお美しいのでつい・・」と自己紹介。バチルド姫も悪い気持がしません。
あら、きれいな娘さんね。あなた、恋人は?います、ご紹介しますわ・・あら、どこにいったのかしら?
わたくしはね、婚約しているのよ。まぁ・・ステキですわ!
そうだわ、お父様、わたくしちょっと思いついたことが。・・・好きになさい。
バチルド姫はジゼルに黄金の首飾りを与えます。
ペザント・パ・ド・ドゥ.
チャーミングなエマニュエル・ティボーくん。相変わらずゴムまりのような躍動感と黒髪巻き毛に大きな瞳。
彼はトロワやこういったディベルティスマン的なPDD要員として定着している模様。確かにハマっているし彼の踊りを見られるのは嬉しいけれども、キャリア的にはここで立ち止まっていて欲しくはないかな・・とやや複雑な気持ちに。
ユレルは着実な踊りを見せてくれましたが、やっぱり怪我で降板したミリアムがここに入れば・・と思わずにはいられません。
こんな小屋ですがよろしければ・・・。ベルタの招きで公爵たちは家に。
貴族は三々五々、休憩の場を捜して解散します。大公はウィルフリードに合図はこれで、と角笛を渡し、彼はそれを入り口にかけます。
ヒラリオンは納屋からアルブレヒトの剣を取り出してその紋章を検めます。おぉ、これは!角笛と見比べてある確信を得る彼・・・。
村人たちがダンスを再開。いつの間にかアルブレヒトもそこに加わっています。
ねぇ、さっきはどこにいらしていたの?あのね・・・ジゼルは首飾りをアルブレヒトに見せます。
そこに割って入る、ヒラリオン。二人の間を剣で隔てます。何のつもり?!
誰の剣だと思う?まさか?
嘘!沈黙していたアルブレヒト、憤然とその剣で斬りかかろうとするところ、忠義のウィルフリードが止めに入ります。
角笛を鳴らすヒラリオン。
貴族の一行が集まります。
おや、アルブレヒト、どうしたのだその格好は?いや、一足先に出発していたのですが、すっかり狩りに夢中になっていて・・ハハ、そうか。
姫もおいでとは・・・宮廷マナーでバチルドの手にキスをしようとするアルブレヒト。
その様子を凍りついたように見ているジゼル、一瞬ハッとします。何をしているの!?
言ったでしょう。彼がわたくしの婚約者よ。
バチルドからの決定的な一言に首飾りをはずすジゼル。ここでよく、首から引きちぎらんばかりにして激情を表すジゼルが多いのですが、アニエスの解釈は独得でした。
何もかもを察し、そしてそのことの重さに愕然とし、放心したジゼルの手から首飾りが滑り落ちます。
もう彼女は外界と遮断された精神状態に・・・。
過ぎ去った恋の時間を思い出して涙にくれるでもなく、アルブレヒトに取りすがるでもなく、ただただ心が空白になり、どんどん中が崩壊していく様を静かに見せるアニエスのジゼル。
時は止まり、アルブレヒトに非難の目を向けたバチルド姫の肩を抱いた大公はそ~っと小道を掃けていく貴族たちの列の最後に着きます。
落ちている剣を拾って地面を滑らせたり、花占いを思い出したり、の定番のマイムはさらりと行い、一度は母に抱かれて小屋に向かおうとするも、アルブレヒト、ヒラリオンの間をすり抜け最後、アルブレヒトに空中で抱かれて倒れます。
ジゼルの死。
所謂、「狂乱の場」ですが、アニエスのジゼルは状況を察する洞察力と、首飾りをくれたバチルドの咎であるはずもないとの冷静な判断ができる知性を持ちあわせ、また、その衝撃をアルブレヒトに向けて発散させるでもなく、ひたすらに自己に向かって受け止めようとするけれども、弱い心臓がそれに耐えきれなかった・・・という、安易な涙を許さない心が冷たくしびれていくような最期を遂げます。
母親の腕の中のジゼル。
アルブレヒトはヒラリオンを責め、ヒラリオンはアルブレヒトを責める。
村人たちに同意を求めるも、誰一人としてアルブレヒトと目をあわせようとはしません。
ウィルフリードがアルブレヒトの肩をマントで包み込み、場を去るように忠言。
走り去る彼。
残された者たちの悲嘆、で第1幕が終わります・・・
幻想的で静謐、真夏の東京の世界のスターダンサーが繰り広げる熱い舞台において、一気にその場の空気を変えてしまった二人の演技。
全幕で是非観たい!というバレエ・ファンの希望が伝わったのか、今回のオペラ座日本公演での「ジゼル」の初日を飾り、唯一2回公演を行うことになったこの二人です。
まずは初日に駆けつけました。
昨日のゲネでも感じたのですが、本番では一層。。。
豪華絢爛ハリウッド版「シンデレラ」と比べると、さすがは19世紀のバレエ、シンプルで舞台装置も簡素です。
ではありますが、藁ぶき屋根の厚み、ジゼルの家に至る曲がりくねった小道、遠くに見えるアルブレヒトの居城など、必要最小限にして、効果的なリアル感と配置。
まずは幕開け、村人たちが軽く登場、ひらりとひと踊りするのですが、この村人たち、妙にノーブル(笑)
背負い籠が似合わないことはなはだしいのですが、これもまたオペラ座ならでは、ということで。
そういえば、昔は現エトワールのマチューも籠を背負っていたこともあったわけですし・・・。
そして端正な印象のあるプルミエ昇格、注目株のジョシュア・オファルトのヒラリオンが登場。
ノーブルな持ち味の彼は、ヒラリオンの粗野さや単純さを表現するために重心を変えたりといったアプローチを行ったとか・・。
小さな白い花束をそっとジゼルの家の前に置きますが、その愛情表現は比較的控え目です。
ジゼルには憧れているものの、そんなに近しい間柄ではないヒラリオンです。
人の気配に立ち去る彼。
アルブレヒト登場!
簡素な姿に身をやつしてはいますが、キラキラの王子オーラ。
すっと伸びた背筋、エレガントな立ち居振る舞いに出自は隠せません。
どうだい、村人に見えるだろう。見えませんって!それに腰に・・・貴族の証の剣をつけたまま。
ふっ、これはこれは。はずしてマントとともに預けた従者の肩を抱き、この家に住む少女の美しさを楽しげに語ります。
「わたしは賛成致しかねますね・・こんなこと」と渋い表情の従者ウィルフリード。
彼はこの気まぐれな楽しみごとが良い結果をもたらさないであろうことを予見しているようです。
突然、高飛車に、呼ぶまで姿をあらわすでないぞ、控えておるが良い、と領主様。
向かいの納屋に剣を隠して、ウィルフリードは首を振り振り、小道を上って去ります。
さて。
コンコン、コンコン、コンコン、と音楽に合わせて扉を軽くノックする彼。そうしておいて家の陰に・・・
ジゼルが扉を開けて走り出てきます。
金髪を下ろして耳の後ろで小さな白い花飾りで軽くとめつけたヘアスタイルが楚々とした少女の風情のアニエス。
落ち着いたブルーの濃淡のふんわりとしたスカートと胴着が大人っぽいアニエスをろうたけた美少女に見せています。
喜びに輝く顔、あら、彼かと思ったのにだれもいない・・・まぁ!
知らない間に真後ろに立っていたアルブレヒトに驚きとときめきと恥じらいがないまぜになった表情のジゼル。
ジョゼのアルブレヒトは可愛い村娘の気持ちを好きなように弄ぶ恋の達人。
狩りと同様、貴族の楽しみごとのひとつとして気晴らしの恋愛ゲームをたしなんでいる感じです。
花占いの時には2本の白い花を家の前からつんできて、2~3枚花弁をちぎったところで素早く残りを数えて悲嘆にくれるジゼル。頭の回転の速い娘。洞察力があり、感受性が強く、精神の動揺が激しいジゼルの性格がさりげなく提示されます。
アルブレヒトはその花を投げ捨て、もう一本の花を手に、素早く枚数チェック。
ジゼルの手を取り、ほら、大丈夫だよ!と。
ヒラリオンがやってきて二人の邪魔をします。
あまりの彼の剣幕に思わず腰に手を・・あ、剣は。ヒラリオンはその様子を見逃しません。
が、アルブレヒト丸腰でも貴族の威厳。格の違いでヒラリオンはねめつけられて引き下がります。
村人たちが現れてダンス。
ジゼルも踊って!とせがまれて、もとより踊りが大好きな彼女、恋人の前でイキイキと踊ります。
皆と踊っている最中に胸が苦しくなるジゼル。
どうしたの?ここで休んでいて、僕が踊っているのを見てね、とアルブレヒトは心配するもののさほど深刻に捉えていはいません。ジゼルもすぐにまた輪に加わります。
そこにジゼルの母ベルタ登場。
かなりのベテランさん、どの階級の人かと思えばなんとオペラ座バレエ教師。さすがのマイムと迫力です。
ジゼルの心臓を心配し、結婚前に亡くなった娘たちが・・・とウィリ伝説を一同に語ります。
さあ、だからジゼル、家にお入りなさい。
アルブレヒトはジゼルと投げキスを交わしつつ、ベルタが振り向くと大人しく会釈・・の繰り返し。
人影のなくなった広場に現れたヒラリオン。
先程のアルブレヒトの様子にもしやと・・・納屋に隠した剣を発見!
すると、狩りの貴族の一行が現れ、ヒラリオンはひとまず姿を隠します。
公爵のおなり~!
なんと、バチルド姫の父にヤン・サイズが!うーん、彼は怪我が多くてキャリアと華からするとプルミエに上がっていても良い逸材。その彼がこんな踊らない役に・・勿体ないけれど舞台にいてくれるだけで場が華やぎますv
しかし、アニエスのインタビューによると、このパリオペ版の「ジゼル」では昔の初夜権(領主は領民が結婚するに当たり、その花嫁を花婿より先にお試し!?することができる、というトンデモな法律。オペラ「フィガロの結婚」でもモチーフになっていますよね)により、実はジゼルはクールランド大公の庶子、だから村人ならぬ美少女で・・・という設定らしい。
アニエスとヤンの血がつながっていてもおかしくはないですけど、ベルタに対するヤンの若さは・・・うーん、まぁそれはおいておいて^^;
「ナルニア国物語」の挿絵に出てくるような広く垂れた袖口の貴婦人のドレスが優雅です。
思わずバチルド姫のドレスにそっと後ろから触れるジゼル。
身体は弱いけれど、好奇心は旺盛で積極的。でもはにかみやでかわいらしいジゼル。
気づいて振り返った姫に慌てて母のもとに駆け寄るものの、微笑みながら「あまりにもお姫様がお美しいのでつい・・」と自己紹介。バチルド姫も悪い気持がしません。
あら、きれいな娘さんね。あなた、恋人は?います、ご紹介しますわ・・あら、どこにいったのかしら?
わたくしはね、婚約しているのよ。まぁ・・ステキですわ!
そうだわ、お父様、わたくしちょっと思いついたことが。・・・好きになさい。
バチルド姫はジゼルに黄金の首飾りを与えます。
ペザント・パ・ド・ドゥ.
チャーミングなエマニュエル・ティボーくん。相変わらずゴムまりのような躍動感と黒髪巻き毛に大きな瞳。
彼はトロワやこういったディベルティスマン的なPDD要員として定着している模様。確かにハマっているし彼の踊りを見られるのは嬉しいけれども、キャリア的にはここで立ち止まっていて欲しくはないかな・・とやや複雑な気持ちに。
ユレルは着実な踊りを見せてくれましたが、やっぱり怪我で降板したミリアムがここに入れば・・と思わずにはいられません。
こんな小屋ですがよろしければ・・・。ベルタの招きで公爵たちは家に。
貴族は三々五々、休憩の場を捜して解散します。大公はウィルフリードに合図はこれで、と角笛を渡し、彼はそれを入り口にかけます。
ヒラリオンは納屋からアルブレヒトの剣を取り出してその紋章を検めます。おぉ、これは!角笛と見比べてある確信を得る彼・・・。
村人たちがダンスを再開。いつの間にかアルブレヒトもそこに加わっています。
ねぇ、さっきはどこにいらしていたの?あのね・・・ジゼルは首飾りをアルブレヒトに見せます。
そこに割って入る、ヒラリオン。二人の間を剣で隔てます。何のつもり?!
誰の剣だと思う?まさか?
嘘!沈黙していたアルブレヒト、憤然とその剣で斬りかかろうとするところ、忠義のウィルフリードが止めに入ります。
角笛を鳴らすヒラリオン。
貴族の一行が集まります。
おや、アルブレヒト、どうしたのだその格好は?いや、一足先に出発していたのですが、すっかり狩りに夢中になっていて・・ハハ、そうか。
姫もおいでとは・・・宮廷マナーでバチルドの手にキスをしようとするアルブレヒト。
その様子を凍りついたように見ているジゼル、一瞬ハッとします。何をしているの!?
言ったでしょう。彼がわたくしの婚約者よ。
バチルドからの決定的な一言に首飾りをはずすジゼル。ここでよく、首から引きちぎらんばかりにして激情を表すジゼルが多いのですが、アニエスの解釈は独得でした。
何もかもを察し、そしてそのことの重さに愕然とし、放心したジゼルの手から首飾りが滑り落ちます。
もう彼女は外界と遮断された精神状態に・・・。
過ぎ去った恋の時間を思い出して涙にくれるでもなく、アルブレヒトに取りすがるでもなく、ただただ心が空白になり、どんどん中が崩壊していく様を静かに見せるアニエスのジゼル。
時は止まり、アルブレヒトに非難の目を向けたバチルド姫の肩を抱いた大公はそ~っと小道を掃けていく貴族たちの列の最後に着きます。
落ちている剣を拾って地面を滑らせたり、花占いを思い出したり、の定番のマイムはさらりと行い、一度は母に抱かれて小屋に向かおうとするも、アルブレヒト、ヒラリオンの間をすり抜け最後、アルブレヒトに空中で抱かれて倒れます。
ジゼルの死。
所謂、「狂乱の場」ですが、アニエスのジゼルは状況を察する洞察力と、首飾りをくれたバチルドの咎であるはずもないとの冷静な判断ができる知性を持ちあわせ、また、その衝撃をアルブレヒトに向けて発散させるでもなく、ひたすらに自己に向かって受け止めようとするけれども、弱い心臓がそれに耐えきれなかった・・・という、安易な涙を許さない心が冷たくしびれていくような最期を遂げます。
母親の腕の中のジゼル。
アルブレヒトはヒラリオンを責め、ヒラリオンはアルブレヒトを責める。
村人たちに同意を求めるも、誰一人としてアルブレヒトと目をあわせようとはしません。
ウィルフリードがアルブレヒトの肩をマントで包み込み、場を去るように忠言。
走り去る彼。
残された者たちの悲嘆、で第1幕が終わります・・・