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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

宝塚花組公演 「太王四神記」 ②

2009-03-22 10:12:55 | TAKARAZUKA
小池演出が冴え渡る宝塚版、「太王四神記」、その魅力は絶妙なキャスティングとそれぞれの人物像の掘り下げ方にも遺憾なく発揮されています。



もう、見た人皆が口をそろえるのは、ヨン・ホゲのカッコよさ!
はい、次の宙組TOPが待たれる大空祐飛さん。
どの角度からも絵になる抜群のスタイルの良さ、アーモンド形の瞳から放たれる目力。
役どころも、ただの悪役ではなく、本当に自分がチュシンの王としての天命を持つ身なのか、
単純に親の期待に応えるのではなく、常に自問自答する聡明さ、友を大切に思う気持ち、キハを愛しながらも彼女の心が自分にないことを知るせつなさをそれを押し殺すクールさ。
最高位の貴族の跡継ぎ、武道に優れ何もかもを持っている男なのに、一番目指したいものを手に入れることができない宿命が彼の運命を狂わせる・・・
複雑な役どころを、陰りのある美貌で見事に演じる祐飛さん、宙組TOPだと白い役どころになってしまうのは惜しい!と思わせるほど、黒い(=陰のある)役が嵌まっています。
屈託のない青年時代、よくお忍びで遊んでいた経験からか、逃避行で一夜をともにしたタムドクとキハを迎えにゆき、軍隊の前でタムドクだけを連れ帰る場面で、2人に「別れの儀式を」と促し、ちゃんと後朝のキスをする時間をスマートに与える辺りなどもただの武将ではなく男女の機微を心得た男の魅力が滲み出ます。
タムドクの子を宿したキハに横恋慕し、婚約式を挙げる際に彼女と取引関係にありつつ、真実思っている、という気持ちを押し殺しながらのやり取りなどはゾクゾクするほど・・・。
え~、ヨン・ホゲの魅力について語るとキリがないのでこの辺りで(笑)

対する主人公タムドクも魅力的。
チュシンの王としての天命を持つことを知るのは母亡き後は父王のみ。
その父は謀略渦巻く宮廷での暗殺を恐れて、彼の天命を伏せ、妻にも極秘出産させて外向きは愚鈍な王子を装わせます。
ヨン・ホゲと友情を結ぶも、父王の厳命による秘密の保持が重くのしかかる、本当の自分を出せない辛さ。
圧倒的な孤独。にも関わらず、持ち前の心の優しさ、聡明さは過酷な運命の変遷にあっても彼を損なうことなく、ナイーブな魅力が輝く・・・ただの正義漢ではない新しいヒーロー像を作り上げているのは見事。
キメ台詞は「力を貸してくれないか」
オバマ大統領も真っ青の(?笑)人心掌握術です。

そんな彼の唯一の理解者として現れるのはキハ。
決して華やかなお顔立ちではないのですが、ほっそりとしなやかなボディラインと細面、凛とした佇まいがオリエンタル・ビューティの美しさを醸し出している辺り、桜乃彩音さんもまた、はまり役。

この3人が三者三様、自分の想いを歌い上げる銀橋のシーンにはグッと来ました・・・

脇も大充実で、キハの妹、タムドクのことを思いながら恩ある姉に譲るいじらしいスジニの愛音羽麗、
ハリのある声もかわいらしい人情家の鍛冶屋バソンの桜一花、
キハのお目付け役、その実、深く彼女を思いやり、最後は命を落とす花形満ヘア(笑)のファチョン会士サリャンの華形ひかるなどの”いい人”たち。
一方、ちょっと由紀さおり似?のクセのあるお顔と高飛車な演技が強い権勢欲にとらわれたヨン・ホゲの母セーム役、花野じゅりあの達者さ、
男役3番手の2の線をかなぐり捨てて悪の権化になりきるファチョン会長老ブルキルの壮一帆
など、善悪双方演じ甲斐のある役どころがたくさん。
そして武道大会の緑、黄、赤、黒の色鮮やかな辺境の民の勇壮な群舞、最後の銀色に光る盾を持ってのスピーディで複雑な動きの戦いの群舞など、
若手の群舞の見せ場もしっかり・・・!と、花組総出で大活躍!の演出は、宝塚の面目躍如。

歌い手不足で、ミュージカルとしては充分とは言えないかもしれない布陣を、活かしきる演技の深さと怒涛の群舞がそんなことを忘れさせるくらい、満足度の高い舞台を作り上げてくれました。

一瞬にして炎に包まれる宮殿、光る剣、ハラハラと落ちる青あざなど、技術スタッフのテクニックも冴え渡り、韓国の宮廷衣装をアニメ風にアレンジした衣装も何気にタカラジェンヌのスタイルの良さを引き立てるカットになっていて、豪華で素晴らしい。



ショーは基本的に2部構成ではないのでなかったのですが、主人公2人がクレーンでせりあがり、愛の勝利で終わるラスト(宝塚らしい・・・これはドラマだともっとドロドロと一波乱あるそうです)のあと、ちょっとした見せ場が設けられています。
ここでも、大空祐飛さんの魅力は際立っていましたね(ファン?)
月組(←星でしたスミマセン!)でも再演?されるらしいので、今から楽しみです





宝塚花組公演「太王四神記」 ①

2009-03-22 04:07:54 | TAKARAZUKA
いよいよ今日が千秋楽となった宝塚花組東京公演ですが、
すべりこみで20日の11:00公演に行って参りました。



幻想歌舞劇『太王四神記』-チュシンの星のもとに-
~韓国ドラマ「太王四神記」より~

脚本・演出/小池修一郎

実は、この公演は観るつもりではなく・・・
韓流ドラマにも花組さんにもあまり関心がなかったので、パスするつもりが、あまりに色々な方が
ブログなどで絶賛されているので気になり、会社のヅカファン同期に話したら彼女も全く同じ状況だった、ということで連れ立って祝日20日、雨の日比谷へ・・・
幸いにもチケットをGETできて2階席2列目で観劇。
壮大な歴史絵巻に相応しく、群舞あり、大掛かりなセットあり、なので全体のフォーメーションが楽しめる2階席がちょうど良かったかもしれません

お話は、ドラマを観ていないわたくしにはちょっと複雑?
韓国の創世記の神話からはじまり、2000年後の4世紀の高句麗で
「朱雀、白虎、青龍、玄武、4つの神器とその守り主がチュシンの王のもとに集うとき、地上に永遠の王国が築かれる」 という伝説のもと、チュシンの星が輝いた日に生まれた2人、王子タムドクと従姉妹のヨン・ホゲが、王位と4つの神器、炎をあやつる巫女キハの愛を巡って闘うという壮大な歴史ファンタジー。

ドラマではCGを駆使した映像で展開した部分を、宝塚の舞台でどう見せるか、が一つの見所。
創世記のシーンはナレーターを置いて、物語を舞台中央でスピーディに展開。
美術、セット、照明などがその演出を支え、単なる紙芝居に陥らないのが小池演出のキモ。

幼い頃から武道にすぐれたヨン・ホゲと、父王の配慮から周囲には愚か者と思わせてその実 文武にすぐれた王子としてエリート教育を受けるタムドクは仲の良い幼馴染。
一方、最高位の貴族に嫁ぐも自身の血筋に大いなる野心を抱く国王の異母妹、ヨン・ホゲの母は星のお告げのチュシンの王は我が子に相違ないと確信。
タムドクを退け、ヨン・ホゲを帝位につけるべく暗躍。

キハは幼い頃拉致されて、創世記から生きながらえてチュシンの国が出来た暁にはそれを乗っ取ろうとたくらむファチョン(火天)会の長老プルキルの支配下にあるが、表の顔は国の神事を司る天地神道の巫女。
その彼女と出会い恋に落ちるタムドク王子。

彼を愛しながら、プルキルにコントロールされる様が「白鳥の湖」のよう・・・とか、
真のチュシンの王の命を取ることはないといわれるエクスカリバーのような剣は「ニーベルングの指輪」のノートゥングのようにも見える・・・とか、4つの神器を見つける過程が「南総里美八犬伝」のようだとか・・
神話とロマンに満ち満ちた壮大な世界を小池演出は巧みな場面転換、キビキビした群舞、いやおうが上にドラマを盛り上げるBGMに徹した音楽・・・などで畳み掛けるように展開させます。



「アストレとセラドン」ロメール最後の作品

2009-03-09 01:31:32 | FILM
映画の記事が続きます

先月、銀座テアトルシネマで上映、順次全国公開、のフランス映画、
エリック・ロメールの「我が至上の愛~アストレとセラドン」Les Amour d'Astree et de Celadon 
を観たのは1月29日。
スルーするには惜しい映画でしたので、ここでちょっと振り返っておきます



ヌーヴェル・バーグ世代の監督の中でも「カイエ・デュ・シネマ」の創刊者・初代編集長を務めたロメールは知性派として知られる存在。
みずみずしい映像感覚と愛についての知的な会話が楽しめる、いかにも、なフランス映画を撮り続けてきた1920年生まれの彼は、今回の作品で映画監督としてのキャリアに幕を下ろすそう。
「海辺のポ-リーヌ(1983)」「緑の光線(1986)」「夏物語(1996)」「木と市長と文化会館、または7つの偶然(1992)」「パリのランデブー(1995)」など・・・恋愛映画、というよりは恋愛論映画の巨匠という独自の路線は万人に受け入れられるものとは言い難かったかもしれませんが、ずっと気になる作家でわたくしはフォローし続けてきましたが・・・。

今回の作品の原作は、17世紀文学サロン、特にパリの貴婦人たちの間で大流行したというオノレ・デュルフェの大河ロマン『アストレ』(Astrée)。
映画の中で主人公アストレについて、両親が村の有力者で、その必要はないのに心の平穏のために羊飼いをしている、という設定がでてきますが、当時はアストレのように、羊飼いでありながらも最高級の宮廷人のように話すというのが理想とされたそうです。
・・・といえばマリー・アントワネットの”プチ・トリアノン”の田園趣味が髣髴とされますが・・・。
17世紀のサロン作家が描く5世紀のローマ時代のガリア地方(旧フランス)での恋のおはなし。

ロメールがこの小説を改めて読み返して、自分が今まで撮り続けてきたテーマ「貞節、忠誠(フィデリテ)」と原作のテーマが同じであること、そして原作の会話の意外な現代性と美しさにを発見して映画化を決意。

理想化された田園風景と神話の中の人物のような登場人物たち、詩的な会話、恋心のすれ違い、恋のさや当て、が当時のロワール地方を思わせるオーベルニュ地方の豊かな自然の中、美しい画像と古楽の調べとともに展開されていきます。



羊飼いのアストレとセラドンは恋人どおし。
ところがアストレは誤解から、セラドンが浮気をしたと思い込み、「私の前にもう二度と現れないで欲しい」と拒絶。
絶望したセラドンは入水自殺を図るが、城に住むニンフ(精霊)に助けられ、死を逃れていた―。
容姿端麗な彼は城主である貴婦人に気に入られ、村へ戻ることを許されない。
ドルイド教の僧侶の姪で城主に仕えるレオニードの計らいで脱出。
森の庵でアストレを想う詩を綴るセラドンを不憫に思ったレオニードとドルイド僧が、アストレに会う機会を彼に与えようとするが―。
周囲の女性を虜にする美貌の持主でありながら一途なセラドンに、モデル出身の新人アンディー・ジレ。そして、そんな彼を魅了する魅力あふれるアストレには、ベルギーの大作家マルグリット・ユルスナールを大叔母に持つミュージシャンのステファニー・クレイヤンクールが抜擢。
ともに演技は初めて、としつつも流れるようなロメールの演出に、優雅な時代の美男美女として嵌まっています。

それにしてもセラドン、頑固で一途すぎ。
そんな彼を放っておけない周囲の協力がまた涙ぐましいのですが、元来青春とは頑迷なものなのかも・・・そしてそれを知る大人たちにとってその姿はまぶしく、かつての自分を想って応援せざるを得ない気持ちにさせられるのかも・・・と思わされました。

精霊の女城主ガラテ様(上の画像セラドンを挟んで左)のローマ衣装の着こなし、セラドンへの身勝手な愛情、優雅な立ち居振る舞いには惚れ惚れします・・・

観た後、しばし、心は理想化された5世紀のガリア地方へ飛び、古楽の調べが耳に残ります・・・
突っ込みどころは色々ありますが、蓮見重彦先生も
「爆笑をこらえてこの艶笑喜劇(21世紀のルビッチ!)を楽しむには映画のいい加減さに対するまともな感性を備えていればそれで充分だ」とおっしゃっていることですし・・・(笑)
マリー・アントワネットの連想がでたところで池田理代子さんの評も引用してバランスをとっておきましょう。
「純愛とはかくもエロティシズムに満ちたものだったのかと感動させられる。
オルフェスとエウリディーケの神話を見るようだった」
ともに納得、です。


「ロシュフォールの恋人たち」デジタルリマスター版

2009-03-02 01:06:32 | FILM
ジャック・ドゥミの名作、ミュージカル映画の草分け、「シェルブールの雨傘」と「ロシュフォールの恋人たち」のデジタル・リマスター版が、渋谷のシネセゾンで公開されています。
シェルブール後45周年企画と言うことですが、実は何を隠そうわたくしの生涯BEST10映画に不動の地位を築いているのは「ロシュフォールの恋人たち Les Demoiselles de Roshefort」



ドヌーブがダンサー、姉フランソワーズ・ドルレアックが作曲家として大成する夢を持つ双子の美人姉妹。
それぞれが運命の恋人と出会うまでをフランス西南部の港町、ロシュフォールの広場でのお祭りの日を中心に週末3日間の出来事として群像劇で見せていきます。

唐突に歌い、踊りだす、ミュージカルの作り物っぽさも、町全体をパステルカラーにペイントしてしまったベルナール・エヴァン、白やカーキに美しいパステルカラーを散りばめた衣装のジャクリーヌ・モローの仕事ぶりで別世界として納得。このお2人はドゥミ監督の美術学校時代の同級生らしいです。
劇中のミシェル・ピコリ扮する楽器店主と世界的ピアニスト、アンディ(ジーン・ケリー)もコンセルヴァトワールの同級生という設定でしたし、なんとなく同級生つながりの信頼感がイイ感じ?
シェルブールのヒットで潤沢になった予算を使って(笑)、クレーンを使った移動撮影で屋外のダンスシーンはダイナミック、かつ滑らか。ダイナミックと言えば冒頭の、ジョージ・チャキリスらイベント屋ご一行街に到着のシーンは俯瞰を取り入れたカメラワークがカッコいいの一言です。
踊りは群舞とかのクオリティ云々よりも、ジョージ・チャキリス、ジーン・ケリーら豪華出演者の、そして双子姉妹のチャーミングなことにとにかく!魅惑されます。
ミシェル・ルグランの憧れに満ちたロマンチックで華麗な音楽が全編を彩っているのがまた素晴らしい。



一番好きなナンバーはお祭りの日に双子が歌い踊るシーン。
女王様の衣装よ、とドヌーブが用意するのは真っ赤な総ラメ、深いスリットがセクシーなロングドレス。
隣の舞台では彼女たちが経営するバレエ学校の生徒たちが踊っているのですが、誰一人としてそちらに眼を向ける観客がいないのが笑えます・・・がそれも納得の吸引力!
え~っと、一応、日曜日の昼間、街の中央広場の特設野外ステージなんですけど・・・(^^;)
こういう突っ込みどころは全編満載で・・・。

お祭りのために街を訪れたイベント屋、チャキリスと相棒がドヌーブと初めて出会うシーンで「美人だね」というのに対して「皆がそういうわ」(直訳では:オリジナルではないわね)といなすのも、ドルレアックが運命の恋人と出会ったとき、互いの眼と眼に燃え上がる恋心・・・の直後彼の口から発するのは「マドモワゼル、下着(コンビネゾン)が見えてますよ」だったりするのも思わずニヤリ。
でも設定として一番「それって・・・(;;)」と思わせるのは2人の母親、きれいなガラス張りの明るいカフェを経営するイヴォンヌ(名女優ダニエル・ダリュー)が下の男の子を授かったのにお相手(ミシェル・ピコリ)と別れた理由がこっけいな苗字(マダム・ダム、なんて・・・!)が嫌だったからxxx
あと、チャキリスと相棒のそれぞれのガールフレンドであるダンサー2人が水兵と恋に落ちたから、と本番前日に仕事を放り出して去るシーンで「あなたは魅力的だけれど青い目じゃないから・・」という女性に「嫉妬を覚えるよ」と熱く引き止めるダンスナンバーも・・・責任感はないのか!?などと野暮なことは言わないフランス流で・・・好きです(笑)

という、一筋縄ではいかないところ(?)がアメリカンミュージカルとは一線を画するところでしょうか。
美人姉妹と母、3人のそれぞれの恋とすれ違いに加えて、バラバラ猟奇殺人、政情不安と兵役などちょっぴりダークな隠し味もまた生命と恋を歌い上げる本作品のテーマをいやがうえにも盛り上げます。

何度もVIDEOなどで観てはいますが、きれいな映像と大画面の劇場上映はまた格別。
シネセゾン渋谷の他、銀座テアトルシネマでも。