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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

マニュエル・ルグリの新しき世界Ⅱ Bプロ ②(感想)

2011-07-24 04:49:38 | BALLET
2011年7月18日(月・祝)14:00公演
五反田 ゆうぽうとホールにて

この公演の楽日でした。
今回はA,Bプロ一度ずつの観賞としましたので、初日と楽で・・・。
ちょっと日があいてしまいましたが、海馬をたたいて、記憶をひねりだしてみます^^;



■「ビフォア・ナイトフォール」
ニーナ・ポラコワ、ミハイル・ソスノフスキー
高村順子-宮本祐宜、佐伯知香-松下裕次、吉川留衣-長瀬直義

タイダイっぽいグラデーションになったダークグレーの衣装がステキ。
男性は足首までのタイツ、女性はシンプルなロングのワンピースですが、ショルダーストラップが赤、というのが洒落ていました。
ウィーンのお二人、ポラコワは美人ですね。
小林幸子、撤回します(笑)。お団子ではなく夜会巻きにまとめたブルネットがシャープで大人っぽくて良かったです。
ソスノフスキ―も存在感あり。

東バの3組のカップルも踊れる&華のあるメンバーで、観ていて楽しかったです。
ちょっとAプロのホワイトシャドウに近い世界観。

■「ドン・キホーテ」
リュドミラ・コノヴァロワ、デニス・チェリェヴィチコ

ウィーン版のドンキの衣装はオリジナリティがありますね。
ブラウン~アプリコット系で凝ったデザインなのが新鮮。
モスクワ出身のコノヴァロワ、今回の公演では、クラシックバレエのヒロイン担当ですが、独得のお高くとまった感じ(?)、落ち着いたエレガンスが感じられるダンサーですね。
テクニックが安定していて、本人も余裕を持って踊っている感じがあり、観ていて安心して作品世界を楽しんでいられます。
対照的に、見せたいテクニックがたくさんありすぎて、前のめりになって必死な感じに見えるのがチェリェヴィチコ^^
それもまた若さゆえ・・のご愛嬌で。
お姉さまなキトリに一生懸命合わせてキザろうとする弟分バジルで微笑ましかったです。

■「モペイ」
木本全優

木本さんは本当にスタイルが良いですね。
そして、踊りの感覚がとても素直。
バッハのチェロ協奏曲イ長調に合わせて、舞台を左右に使って、腕や肩を痙攣させたり、背中で見せたり・・・の
異色作。
以前、フォーゲルで見たときに、その斬新さ、ユーモラスな感覚、軽快さに強い印象を持った作品で、
これをフォーゲル以外のダンサーで見ると、はたしてどうなるのだろう・・・とプログラムを観た瞬間からワクワクしていたのですが。
木本さん、若々しくて、しっかりと踊っていました。
ただ、あの飄々とした味を持ちながら、作品の輪郭をその背中の陰影ある美しいラインと同様に浮き立たせる緻密で力強い表現力は、やはりフォーゲルくんならでは、だったのだなぁと改めて、彼の舞台を思い起こしてしまいました。

■「椿姫」より第2幕のパ・ド・ドゥ
マリア・アイシュヴァルト、フリーデマン・フォーゲル

アルマンの愛に応えて、別荘で2人だけの短い幸福なひとときを過ごすマルグリット・・・の場面。
襟から肩に続いた白いフリルのドレスが、マルグリットの華やかな女らしさと時折見せる少女のようなはかなさを魅力的にみせる衣装なのだと、アイシュバルトで初めてわかりました。
いえ、この場面、バレフェスでルグリ&オーレリ・デュポンで観たときにはどうにもピンと来なくて。あんなに豪華な2人なのに。

小柄ながら陰影の深い小さな美しい顔立ちのアイシュバルトからは、愛の終わりを知っていてなお、目の前の若いアルマンの疑うことを知らない情熱と恋の歓びを受け止め、ときに歓喜におぼれ、ときに絶望し・・という心の動きを繊細に感じとることができました。
なぜなのでしょう?
どうも、ノイマイヤ―作品については、そのダンサーの格にかかわらず、シュツットガルトのダンサーのほうに一日の長があるような・・・。
まぁ、おひざ元なので当たり前といえばそうなのかもしれませんが、他の振付家の作品に比べて、その差が大きすぎるといいますか・・・^^;
「モペイ」でフォーゲルくんのことを思ったら出てきた(笑)フォーゲルくん、やはり素晴らしいダンサーですね!
高々とマルグリットを頭上高くリフトして走る場面が多いのですが、長いスカートに自分の顔が隠れないようにしつつ、女性の上体が倒れすぎてその表情が見えないようにならないよう、コントロールする、という難しいリフト。
男性ダンサーの力の見せどころが多いこのPDD、よく、男性ダンサーの顔部分がすっぽりと女性のスカートに隠れ、ただただ大きなスカートが右往左往しているように見える「椿姫」を何度もみせられてきたことを思うと・・・。
彼はしっかりとその点に留意して、顔にスカートがかからないように気をつけながらも、アルマンとして、疑うことを知らない疾走する恋の時間を生きていて。
切なくも甘美なひととき。堪能させていただきました。


■「クリアチュア」
上野水香、パトリック・ド・バナ

赤いロングドレスの水香さん、黒いボリュームパンツのド・バナさん。
個性的な容姿に長身の2人はバランスが良いペア。
エキゾチックなトルコの伝統音楽に載せて、深淵を覗きこむような作品世界・・・のはずなのですが、作品ゆえか、踊り手の無機的な個性ゆえか、VISUAL的には訴えるものがあるはずなのに、なぜか自分の中ではスル―してしまいました。
ド・バナさんはその個性的な容姿にもかかわらず踊りそのものは、こういうPDDのときには相手を踊らせ、語らせるパートに自らを置きますね。
日本、を強く意識して尊重しようとする姿勢が、レヴェランスの際の正座やきちんとしたお辞儀に観てとれました。

■「マノン」より第1幕のパ・ド・ドゥ
ニーナ・ポラコワ、マニュエル・ルグリ

Aプロでフォーゲルくんが演じたデグリュー。
ルグリ先生のデグリュー、若かったころの残像がちらつくと、今は・・・。いや、短髪、端正にして若々しい表情で、マクミランの超絶技巧を破綻なく丁寧に踊りこなす姿を、心の中で涙を流しながら観ておりました。

以前は、愛の疾走感を激しくめまぐるしいまでのリフトと回転にのせて走り切っていたこのPDD,
今はその疾走感をさえコントロールしているのだな、と思わせる丁寧な踊りで。
一瞬一瞬の振りとそこにこめられた意味をコマ送りで確認しながらたどっていけるような緻密さに、至芸を観ました。
ポラコワはルグリには少し大柄だったかもしれませんが、若々しく、愛に溢れたマノンで、しっかりとルグリ先生にぶつかっていっていました。
ただ、こんな役でのルグリを観るのは多分これが最後になるのだろうな・・・と、当たり前のように、彼の美しいクラシックや端正なコンテンポラリーを観賞出来ていたこの長い年月の幕が閉じようとしているのを感じて、舞台の2人の出来栄えの素晴らしさとは別のところでメランコリックな気分に陥ってしまっておりました・・・

((休憩))

■「サイレント・クライ」
パトリック・ド・バナ

振付家自身のソロ。孤独から湧き上がる沈黙の叫び、というテーマ。
彼独自の世界観を真摯に踊ってくれました。


■「グラン・パ・クラシック」
リュドミラ・コノヴァロワ、ドミトリー・グダノフ

ロシアペア。安定感ときれいなピルエット。
白に金のクラシック衣装に身を包んだこの2人の世界観を堪能しました。
グダノフはAプロの時よりは調子がよさそうで安心。

■「カノン」
デニス・チェリェヴィチコ、ミハイル・ソスノフスキー、木本全優

これは、今回のガラらしい演目となりました。
ウィーンの若手3人がそれぞれの個性を発揮してくれてとても楽しかったです。
フレッシュな木本さん、男っぽく個性的なソスノフスキー、まだまだ余力のありそうな、でもついつい前のめりに音をとってしまうチェリェヴィチコ。
こうして若手が普通にブベニチェク兄弟の作品を踊る、という状況に、改めて、ダンサー本人が踊る公演とはまた異なる目で作品を観られて。振付家としても、なかなか良いのではないでしょうか、イリ・ブベニチェク。

■「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」
バルボラ・コホウトコヴァ、フリーデマン・フォーゲル

今回のBEST ACTその壱。
フォーゲルに何が起こったのか!
もう、何かが降りていました。音楽の神かしら?
シンプルなスモ―キ―ブルーの胴着にアイボリーのブラウス。コホウトコヴァはサーモンピンクの薄手のシンプルなハイウエストのドレスで。
淡いブルーとピンクのフレッシュな2人がチャイコフスキーの未使用の「白鳥の湖」用の曲に合わせて軽やかに踊る・・・というコンセプトゆえ、テクニックのある若手がGALA公演で踊る、というイメージがありますが。
ベテランの域に達して、研ぎ澄まされたコントロールと裏腹の曲の内側に肉薄する作品理解を体現できるようになったコホウトコヴァも、ひとつひとつのフォルムをきれいに作り上げてきて、過不足のない演技が素晴らしい。
音楽に乗っているとつい走りすぎることの多いこのチャイコパですが、今回の2人は、丁寧に音の間の響きまですくい取って、踊りで丁寧に表現する余力がありながら、とにかく、音にピッタリと寄り添ったバランシンの振付を踊る歓びが炸裂していました。
ジャンプや回転の動きの躍動感が、普通じゃない、フォーゲルくん。

イキイキとしたダイナミズムに息を呑みっぱなし、そして観ている間中、ずっと顔が緩むのを止められないくらい・・・
あまりに嬉しくて!いや~清々しいまでの疾走感とハーモニー。
2人のクリアな演技と表情が美しくて。
踊りでヒトに歓びを与えるってこういうことだな、と心底思ったひとときでした。

■「オネーギン」より第3幕のパ・ド・ドゥ
マリア・アイシュヴァルト、マニュエル・ルグリ

Aプロと同じで、この二人でのドラマチックバレエ。
音楽がチャイコフスキーで、先のチャイコフスキーPDDでは抽象的な明るさが、こちらでは感情をかき乱す愛の葛藤をドラマチックに盛り上げて、チャイコフスキーという作曲家の全く異なる側面を続けて楽しむことのできる演目設定もまた、良きかな・・・と^^

とはいえ、アイシュヴァルトが手紙を読んで動揺しているところに走り出るルグリの姿を見たとたん、そんな客観的な余裕はなくなり、ひたすらに舞台の上で繰り広げられる愛の苦しみに引き込まれていくのみ・・・・。

やはり、今のルグリにとっても無理のない、そして全身全霊で打ち込める役なのだなぁと。
アイシュヴァルトのタチアナは、演じる、という域を遥かに超えて、もう、彼女は役が血肉となって入りこんでいると思わせる名演でした。

全体に楽しいGALAでしたが、ルグリ&アイシュバルト、そしてフォーゲル&コホウトコヴァは別格でした




マニュエル・ルグリの新しき世界Ⅱ Bプロ ①

2011-07-20 04:31:05 | BALLET
ルグリ・ガラ、Bプロは千秋楽である、7月18日の14:00公演に行って参りました。

日本の暑さにも慣れたのか、押し並べて好調。
そしてフリーデマン・フォーゲルくんの充実、アイシュバルトの別格ぶり、コホウトコヴァの踊りとフォルムの美しさ、ルグリ先生については・・・いやいや万感胸に迫るものがありました。

<マニュエル・ルグリの新しき世界II>Bプロ


◆プログラム&出演者◆

「ビフォア・ナイトフォール」
振付:ニル・クリスト 音楽:ボフスラフ・マルティヌー
ニーナ・ポラコワ、ミハイル・ソスノフスキー
高村順子-宮本祐宜、佐伯知香-松下裕次、吉川留衣-長瀬直義


「ドン・キホーテ」
振付:マリウス・プティパ/ルドルフ・ヌレエフ 音楽:レオン・ミンクス
リュドミラ・コノヴァロワ、デニス・チェリェヴィチコ


「モペイ」
振付:マルコ・ゲッケ 音楽:C.P.E.バッハ
木本全優


「椿姫」より 第2幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー 音楽:フレデリック・ショパン
マリア・アイシュヴァルト、フリーデマン・フォーゲル


「クリアチュア」
振付:パトリック・ド・バナ 音楽:デム・トリオ(トルコの伝統音楽)、マジード・ハラジ、ダファー・ヨーゼフ
上野水香、パトリック・ド・バナ


「マノン」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン 音楽:ジュール・マスネ
ニーナ・ポラコワ、マニュエル・ルグリ


【 休 憩 】


「サイレント・クライ」
振付:パトリック・ド・バナ 音楽:J.S. バッハ
パトリック・ド・バナ


「グラン・パ・クラシック」
振付:ヴィクトール・グゾフスキー 音楽:フランソワ・オーベール
リュドミラ・コノヴァロワ、ドミトリー・グダノフ


「カノン」
振付:イリ・ブベニチェク 音楽:オットー・ブベニチェク、ヨハン・パッヘルベル
デニス・チェリェヴィチコ、ミハイル・ソスノフスキー、木本全優


「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」
振付:ジョージ・バランシン 音楽:P.I. チャイコフスキー
バルボラ・コホウトコヴァ、フリーデマン・フォーゲル


「オネーギン」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・クランコ 音楽:P.I. チャイコフスキー
マリア・アイシュヴァルト、マニュエル・ルグリ


ピアノ:三原淳子(「椿姫」)

※音楽は特別録音によるテープを使用します。(「椿姫」のみピアノ伴奏)


◆タイムテーブル◆

第1部 14:00 - 15:00
休憩  20分
第2部 15:20 - 16:20






マニュエル・ルグリの新しき世界Ⅱ Aプロ ② 

2011-07-15 05:33:52 | BALLET
2011年7月13日(水)  ゆうぽうとホールにて

「マニュエル・ルグリの新しき世界Ⅱ」 Aプロ 初日の感想です。



今回、長く籍をおいているNBSの「バレエの祭典」会員として初めて1列目の席が割り当てられました
音楽はほとんどが録音なのですが、オーケストラピットの空間分の距離はあるので、足元も観切れることがなく、
存分に細部に至るまで(カーテンコールでは肌の調子まで・・・^^;)肉眼で確認することが出来、
なかなか面白いViewでした^^

個々の作品について・・・。

■「ホワイト・シャドウ」
振付:パトリック・ド・バナ 音楽:アルマン・アマー

「マニュエル・ルグリの新しき世界Ⅰ」のときに、ルグリと東京バレエ団のコラボレーションのために、宛書きされたオリジナル作品が、今回再演の運びとなったのは実に喜ばしいことだと思います。
初演CASTが揃っての再演、ということで、表現が深化して、前回違和感を感じたところには修正が入ったのか、今回は、作品自体が、より、磨きあげられていると感じました。

吉岡美佳さんが演じる苦悩する女性(バレエというより舞踏のような動き)が0地点とされていて、
対峙するのが、ルグリ&西村さん、ド・バナ&上野さん。
それに松下さんをセンターとする5人の力強い男性群舞、ブルーからグリーンのフラメンコのようなフリルの衣装をつけた3人の女性、周辺部に長く地面にとどくほどに延長された袖のシンプルなグレーベージュのプルオーバーとパンツをつけた群舞、という構成。

抽象的なモダン作品で、特にそれぞれのダンサーが具体的な何かを表しているわけではない、とされており、解釈は観る側に委ねられているのですが、なんとなく、今回の震災、そして原発事故で傷ついた日本、そしてその自然の状況と、未来を示すメッセージが読み取れて、観ていてなんとも不思議な感覚に襲われました。
今、この時期に、あえてルグリがこの作品を日本で演じる意味、という、時と場と人がピタリと運命づけられた瞬間に立ち会っているような・・・。

なんといっても圧倒的なのは、ルグリの流麗な、ブレスの部分を感じさせない端正な踊りの美しさ。
今は芸監としての仕事が日々のメインで、ダンサー本職ではないことから、多少は変化があるのでは、と覚悟していたのですが、全くの杞憂でしたね。
ド・バナさんが、うつむいた顔を音楽のアクセントでパッと上げたり、といった、演劇的な要素で踊りにアクセントを付けて行くのに対し、ルグリ先生の踊りは、例えば頭の位置は基本の場所で、常にスッとやや上を見た状態に固定されている、ある意味大げさなアクセントを敢えて排除している禁欲的な表現であるにも関わらず、後ろに振り上げた脚の動きが思いがけず華やかだったり、ド・バナさんとはまた違った場所に踊りのクライマックスが来る感じ。
それぞれにしっかりと踊りが自分の身体に入ったうえで表現している2人の個性が如実に感じられて、非常にスリリングでした。
衣装の着こなしも、素肌に黒革のベストと黒い袴で場面によってはベストは着用せず、袴のみ、(確か初演では黒いパンツだったような・・・? 袴、素敵でした!)なのですが、ベストをルグリ先生は前ボタンをピタリと止めて、ド・バナさんは全開でタトゥーを敢えて見せて、と。

前回はルグリ先生の相手役に抜擢された西村さんに注目していたのですが、今回、上野水香ちゃんの身体の表現力に釘付けに。
日本人離れした、という言葉をすでに飛び越え、バレエダンサーとして非常に恵まれた特別なラインを持った有名な脚だけでなく、彼女の魅力は背中にもあると今回再認識。
肩甲骨からウエストにかけて、とても立体的なんですよね・・・。すっと平らな日本人女性の背中、丸みがあって体幹がしっかりしている欧米人女性の背中とも違い、鍛えられた男性のように肩甲骨からウエストにかけてクッと入り込んでいて、それでいて、男性とはちがって、肩に筋肉の盛り上がりはなく、長く優美な首と小さな頭にスッとつながっているという・・・。
その身体で作り上げるポーズのひとつひとつのフォルムの美しさに改めて、この人のダンサーとしての華に圧倒されました。
クラシック・バレエのヒロインですと、演技にとらわれすぎるのか、動きのエレガントさや流麗さに難を感じて居心地悪くなることすらある上野さんの踊りですが、こういったコンテンポラリー系では、彼女のもつ美質がいかんなく発揮されてとても良いなぁと改めて感心しました。
女性2人の衣装はタンクトップを延長したようなシンプルなダークカラーのロングドレス。水香ちゃんは紫、西村さんはブロンズのラメ入りで深いサイドスリット。後ろで一本に編み込んだ三つ編みのロングヘアーに前髪はボブでスタイリッシュです。

フリルのスカートがフラメンコ衣装のような女性のトロワ、前回は、モダンな舞台に突然お姫様ルックか?と違和感を感じたパートでしたが、今回は高木さんがいい意味で土臭い味を出して地に足のついた感じの踊りを見せてくれたので、この衣装がベテランフラメンコダンサーのラテンで土着的な味を彷彿とされる装置と感じられ、グリーン、深いブルー、ターコイズの色合いが、水や木々といった自然を暗示させるものと素直に受け取れた今回でした。

それぞれに少しずつデザインの違う黒革ベストとパンツの5人の男性の群舞は、バレエというよりもショーダンサーの趣。と思えるほど、「カッコいい」振り付けで(笑)
若手の踊れるメンバーで揃えてきているので全体に良かったのですが、やはりセンターを務める松下さんは別格の趣。
疾風怒涛の激しい動きの中にもタメと重みがあり、厚みのある表現で一際目を惹くのはある意味想定内でしたが、クールビューティ―担当の(笑)長瀬さん(→と、観ている間は思い込んでいましたが、実は岡崎さんでした!!お二人に失礼してしまいました^^;)が、今回、いつものナルシスティックな味から一皮剥けた感じがあり、目立っていました。この二人の個性の違いを同時に視界に入れるのが楽しかったです^^
長瀬岡崎さんはひとり、ワンショルダーのベストで衣装からしてちょっと色っぽいんですよね^^
それにいつもの長めの前髪ではなく、マチューのような上品な短髪にしていてそれが似合っていました^^

改めて観て、これはやっぱりいい作品だなぁと思ったことでしたが、例えば他のバレエ団でも上演出来るか、といえば・・・。
面白いかも!
ただ、1人だけ動かせない人がいますが。
吉岡美佳さん。
やや透け感のあるダークグレーのラメストレッチのタートルネックに長袖のロングドレス。腰のあたりでラップスカートのようになっていてスリットが入ってはいるものの禁欲的な衣装にロングボブのダウンヘア。
ほとんど出ずっぱりで苦悩の表現をし続ける・・・
それはジュリエット・グレコを彷彿とさせるようなひりひりとした感情の吐露でありつつも、吉岡さんの持ち味である透明感、いい意味での生活感のなさがプラスに作用して、絶妙な存在感、でした。
吉岡さんは東バの中でも特にベテランのプリンシパルで、ほっそりとした長身と繊細な美少女のような風貌が魅力的なダンサー。ロマンティックバレエの主役がはまるタイプでありながら、意外とドンキホーテのジプシー女のソロなどではパセティックな感情の爆発を見せることも出来る一面が面白いなぁと。
これは、ホントにハマり役ですね。
この作品を他のバレエ団で上演する際には洩れなく吉岡さんが客演されると良いと思います
(蛇足ですが、吉岡さん、いつも80年代に青春を過ごした人特有の薄く降ろした前髪が気になっていたのですが、今回その前髪に程よいボリューム感が観られて、担当美容師さんGoodJob!と密かにこぶしを握ったわたくしでした・・


■「海 賊」
振付:マリウス・プティパ 音楽:リッカルド・ドリゴ
リュドミラ・コノヴァロワ、デニス・チェリェヴィチコ

ウィーンのダンサーご紹介コーナー。
数々の名ダンサーで観てきたこの演目。この場面。
今更若手で観てもね~とまったりモードで、上品で良いのでは?と眺めていたら、チェリェヴィチコ、いきなりファイブフォーティ連続技など勝負をかけてきてびっくり!
薄味の金髪少年ですが、やるときはやります!な人でした^^
コノヴァロワはライトピンク&ラヴェンダーの衣装で、上品、手堅い踊りのメドゥ―ラ。


■「マノン」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン 音楽:ジュール・マスネ
バルボラ・コホウトコヴァ、フリーデマン・フォーゲル

この2人って??と観る前にはかなりドキドキ(心配で^^;)していたのですが、コホウトコヴァ、きれいでした!(そこ?!)
いや、2000年のバレフェスで彼女を見たときには若手ながらも物堅いテクニックのしっかりとした金髪の良いクラシックダンサー、としての認識が、3年後に来日した時に急成長していて(体幹の太さが^^;)パートナーの男性ダンサーが細身の人だっただけに強烈な印象が・・・
すっかり戻されていました!しかもあのテクニックの確かさにベテランならではの表現力も加わり、素敵なマノン。
女性って、年齢じゃないんだなぁ・・と勇気をもらいました^^;。
フリーデマンは、この人現代の青年、というところが持ち味&魅力なので、幕が開いて机で手紙を書く貴族のおぼっちゃま・・・のはずが、このキノコ頭に小さなテ―ルをつけた不思議なデグリューって誰だっけ?@@と一瞬思ってしまいましたが、笑顔でマノンに振りむくところからは素敵な恋人で・・・。あぁ、フォーゲル君だったのね、と。
2人とも、顔だけでなく、踊りそのものも表情豊かでとても良かったです


■「アレポ」
振付:モーリス・ベジャール 音楽:ユーグ・ル・バル
ミハイル・ソスノフスキー

ウィーンのソリスト、ソスノフスキー。美男ですね。そしてテクニックもしっかりしている。
赤いワンショルダーのユニタードです。
ベジャールバレエ団以外のダンサーが踊るベジャール作品を観ると、振りのそこここにベジャール独得のポーズ、動きがあって、あぁ、ベジャール作品だ、と思うとともに、ちょっとしたアクセントやテンポの違いに、随分と違ってしまうものなのだなぁ・・・と改めて思ったり。
そう考えると、舞台芸術の継承ってとてつもなく難しいことなのだなぁと改めて思いました。
直接薫陶を受けた世代が伝えることのできる内はまだしも、その後は・・・。
古典としてあたりまえのように観ているプティパ作品なども本人が観たら全然違う!と思ったりするのかしら・・と、しっかりと踊っているソスノフスキーには申し訳ないのですが、観ながら色々と考えさせられてしまいました。

■「ラ・シルフィード」第2幕 より
振付:ピエール・ラコット(タリオーニ版に基づく) 音楽:ジャン=マドレーヌ・シュナイツホーファー
ニーナ・ポラコワ、木本全優
東京バレエ団

ウィーンのダンサーご紹介コーナー。東バのシルフィード付き。
ニーナ・ポラコワ、一瞬エリザベット・プラテル様かと思った面長で目元の彫の深い美人。でも、シルフィードとして踊り始めると、眉を優しく下げて、愛きょうのある笑顔で頬骨が高くなると、・・・小林幸子になってびっくり。(スミマセン)
それからはどうしても、美人な小林幸子にしか見えなくて・・・^^;
あ、でも、踊りは軽やかで、ポワントの音もせず、ロマンティックチュチュのあしらいも上手で(跳躍するときにスカートの表面をスッと撫でてシフォンの重なりをフワッと持ちあげて浮遊感を出していました)シルフとしてはとても良かったかと。
木元さんは(名前の読み方が難しいのですが、Masayuくんだそうです)田舎の中学生のような(こら)お顔立ちと小顔で手足の長いきれいなプロポーションのダンサー。とにかく身体のラインがキレイで、ジェームスの足さばきもまあまぁこなしていました。
今年、準ソリストに昇進したばかりの勢いのある若手。
ルグリ芸監のもと、これからも成長していかれることでしょう。
海外で活躍する日本人ダンサーをこういう機会に観られるのは嬉しいですね。

パ・ド・トロワ、田中さん、吉川さん、乾さんと、わたくしの好きな並び。なんと最年少ポジの吉川さんがセンターでちょっとびっくり。吉川留衣さんは入団当時から、井脇さんにちょっと似ている美女として注目されていて、小顔でほっそりとした、バレリーナらしいバレリーナさん。大事に育てられている感じがありましたが、これから上げてくるのかしら?ちょっと楽しみでもあります



■「白鳥の湖」より"黒鳥のパ・ド・ドゥ"
振付:マリウス・プティパ/ルドルフ・ヌレエフ 音楽:P.I. チャイコフスキー
リュドミラ・コノヴァロワ、ドミトリー・グダノフ、ミハイル・ソスノフスキー

ヌレエフ版の黒鳥のトロワ、大好きです。演劇的色彩が深くてロットバルトが暗躍して・・・。
忘れられないのが、マリ・アニエス・ジローがオディール、ロベルト・ボッレが王子、リオネル・ドラノエのロットバルト。
大きくてゴージャスなマリ・アニエスが、まだお尻もぷりぷりして純真そうで美しい若きボッレをいともたやすく誘惑。
その周囲で羽のようにマントをバッサバッサと振りながらやたらと暗躍するドラノエ。ドラノエとマリ・アニエスの悪者通しの密談。全く気付かず目に星がキラキラして愛を誓おうとするボッレ・・・。
いや、あれは観ものでした!!

さて、今回は(笑)。
コノヴァロワ、妍高い感じが出ていて、フェッテも安定。
グダノフ、お年は召していても、気弱で上品なボリショイの王子っぷりはさすが・・・と思ったら、ソロでの不調に驚かされ・・・。
まぁ、涼しいモスクワから酷暑の東京で初めての相手役で・・・急な代役で・・・。と条件が悪かったかも。
後日には盛り返すことでしょう!
ソスノフスキーはとても良かったです。
腕に巻きつけるマントさばきも巧みで。
ただ、マントがあると、タイツの上にハイレグのレオタードを着ているようなデザインの衣装の違和感が半端なく・・・。^^;
全体がダークグリーンなのですが、バランスが微妙で・・・。
ソロを踊るときにマントをはずすと、それはそれで変ではないのですが。
素敵なダンサーだと思うので、もっと違う衣装の役で、改めて観てみたいと思いました^^;

■「ファンシー・グッズ」
振付:マルコ・ゲッケ 音楽:サラ・ヴォーン
フリーデマン・フォーゲル
東京バレエ団

ゲッケはシュツットガルトの振付家で、この作品はフォーゲルくんへの宛書きなのですね。
JAZZのメドレーに振付たコンテンポラリー。痙攣するような動き、背中で語らせる部分の多用など、ゲッケ作品では他にも観たかも・・とはいえ、やはり、こういうソロを楽しく見せるのはフォーゲル君ならではで、彼の等身大で現代的な魅力がいかんなく発揮されていたと思います。
ヘアスタイルも現代の若者風ですが、黒パンツのみの衣装も、やや腰穿き気味でフィッティングが完璧(背中のラインとパンツのウエストラインの流れがきれい)で、こういうところに隙がないのが、シンプルな衣装ほど大事なところ。
ジャストウエストでタックがあるような太めのパンツだったりすると与える印象が変わるかも。
この作品、途中でローズピンクの羽根扇を持った5(6?)人の黒子が出てくるのが、ジジ・ジャンメールのショーを連想させたのですが、丁度、10日にローラン・プティの訃報が届いた直後で観たせいか、プティへのオマージュのように思えたことでした・・・

■「オネーギン」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・クランコ 音楽:P.I. チャイコフスキー
マリア・アイシュヴァルト、マニュエル・ルグリ

ルグリが熱望して実現した「オネーギン」の初演の相手役がアイシュヴァルトだったそう。
最後の手紙のシーンは、全幕でも、GALAでも何度も観ているので、この音楽が流れるだけでもう、胸がいっぱいになりますね・・・;;
小柄ですがシックなブラウンの衣装にセンターパーツで耳隠しのアップがタチアナの大人の魅力を高めていて、髭にタキシード風の衣装のルグリとの並びは本当に素敵。
前後なくいきなりのクライマックスに圧倒されます。
何度もひざまずき愛を乞うオネーギン、引き裂かれるような強い衝動に身を任せたくなる自分を律するタチアナ・・・
ルディエールとの魂の名演が、ルグリのオネーギンのBEST ACTだと思っていますが、アイシュヴァルトもさすがの一言。
この演目の完成度の高さで、急拵の今回の公演のレベルの不揃いさが一気に帳消しにされたような・・・^^;

カーテンコールでは、NBSの御約束、スーツ姿の女性2人が大きなフラワーバスケットを運んでセンターの床置きにした後、ルグリ先生が舞台袖で、一本ずつの個包装にしたバラを、素早く下手から順に出演者全員に手渡しをし、最後皆がそれを手にした状態で手をつないでの挨拶に。
花をもらった男性ダンサーは微妙な心持でいらしたかと想像しましたが、出演してくれた皆への感謝の気持ちを表したかったのでしょう。ほのぼのとした温かみのある公演でした






マニュエル・ルグリの新しき世界Ⅱ Aプロ ①

2011-07-14 05:01:22 | BALLET
2011年7月13日(水)18:30
ゆうぽうとホールにて.

元Parisオペラ座の比類なきエトワール、現在、ウィーン国立バレエ団の芸術監督として活躍中のマニュエル・ルグリ。
エトワール時代は「ルグリと輝ける仲間たち」そして、新しいステージにたってからは「ルグリの新しき世界」として、配役・演目ともに、常にレベルの高い座長公演を行ってきた彼が、今回、オペラ座のスターダンサーとウィーンの俊英を引き連れての公演・・・のはずが、震災及び、その後の福島の原発事故の影響を憂慮しての出演辞退が相次ぎ、一時は延期・中止も危ぶまれたのですが、なんとか、新たなメンバーで演目も組み直して上演にこぎつけた、という今回。

8月のニコラ・ル・リッシュの座長公演が結局中止となったのを考えると、粘り強い実行力、日本のバレエファンに対する誠実さ、ともに抜きんでたルグリならでは、と感謝に耐えません。

期待半分、不安半分で迎えた初日、内容は以下の通りです。


<マニュエル・ルグリの新しき世界II>Aプロ


◆プログラム&出演者◆

「ホワイト・シャドウ」
振付:パトリック・ド・バナ 音楽:アルマン・アマー

マニュエル・ルグリ、パトリック・ド・バナ
吉岡美佳、上野水香、西村真由美

松下裕次、氷室 友、小笠原亮、宮本祐宜、岡崎隼也
高木 綾、奈良春夏、川島麻実子
梅澤紘貴、谷口真幸、井上良太、杉山優一、中村祐司
吉川留衣、矢島まい、渡辺理恵、河合眞里、河谷まりあ


【 休 憩 】


「海 賊」
振付:マリウス・プティパ 音楽:リッカルド・ドリゴ
リュドミラ・コノヴァロワ、デニス・チェリェヴィチコ


「マノン」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン 音楽:ジュール・マスネ
バルボラ・コホウトコヴァ、フリーデマン・フォーゲル


「アレポ」
振付:モーリス・ベジャール 音楽:ユーグ・ル・バル
ミハイル・ソスノフスキー


「ラ・シルフィード」第2幕 より
振付:ピエール・ラコット(タリオーニ版に基づく) 音楽:ジャン=マドレーヌ・シュナイツホーファー
ニーナ・ポラコワ、木本全優
東京バレエ団


「白鳥の湖」より"黒鳥のパ・ド・ドゥ"
振付:マリウス・プティパ/ルドルフ・ヌレエフ 音楽:P.I. チャイコフスキー
リュドミラ・コノヴァロワ、ドミトリー・グダノフ、ミハイル・ソスノフスキー


「ファンシー・グッズ」
振付:マルコ・ゲッケ 音楽:サラ・ヴォーン
フリーデマン・フォーゲル
東京バレエ団


「オネーギン」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・クランコ 音楽:P.I. チャイコフスキー
マリア・アイシュヴァルト、マニュエル・ルグリ



宙組「美しき生涯」「ルナ・ロッサ」東京初日

2011-07-09 05:14:20 | TAKARAZUKA
そういえば、星組のお芝居の感想もまだでしたね^^;
順番入り乱れていますが、行って参りました、待ちに待った宝塚宙組、東京公演初日。
7月8日(金)15:30公演。
「美しき生涯」「ルナ・ロッサ」
宝塚100周年カウントダウン企画で、入り口できれいな写真入りチケットが渡されるのですが、今日がちょうど100周年から998日前ということで、500日前に結果がわかる抽選チケットです、とのこと。
忘れないように保管しなくては^^

贔屓の2番手男役スター、凰稀かなめさんが、星組から宙組に組替えして最初の作品なので、かなりドキドキワクワクしながらの初日でございました

なんだか、組が変わると新鮮ですね、色々と。
忍びの疾風は、台詞声が力強く、ショーでは色々な顔を見せてくれて、展開も早いので目が足りない~という感じ。
噂の女役、「月下美人」の場面では、5種類あるという鬘の中で、金髪のストレートロング。
前髪パッツンサイドグラデで、悠未ひろさんたち、宙の長身男役さんたちにリフトされつつ踊る姿はまさかのシルヴィー・ギエムでした
いや、バレエではありませんし、もちろん踊りのクォリティが、ではなく・・・
身長173cmで細身小顔さんなので、 ヘアスタイルもあってか、踊っていると舞台姿のバランスと男役が踊る女役としての強さ加減がまさにギエム様・・・@@。

その他、ショーはダンスシーンの展開が早く、長身でダンサー揃い(に見えた)の組子たちがガンガン踊り、センターの大空祐飛さまのアダルトな魅力もまた新鮮で、星とはまた違った味。
歌ウマさんが多いのもまた新鮮。
宙組、今までも祐飛さん主演作をいくつか観てきましたが、1本もののお芝居(「カサブランカ」「誰が為に鐘は鳴る」が続いていたので、ショー付はまた組の個性がよりはっきりと見えてきますね。
凰稀さんも楽しげに伸び伸びとしているように見え、まずは安堵・・・・

客席に、もと宙組TOP男役の和央ようかさんがいらしていて、客席が浮き立っていました^^
もと娘役TOPの陽月華ちゃんもいらしていたそう。

初日ならでは、のTOPのご挨拶、祐飛さんの「節電で電力は節約しても体力は節約しません。」とか、「舞台で携帯は充電できませんが、心の充電はできます」などの個所で拍手が
カーテンコール3回で最後はスタンディング・オベーションでした^^

公演そのものの感想はまた改めて・・・