18年前に始められたウラジーミル・マラーホフの座長公演、NBSの名物企画「マラーホフの贈り物」が
最終回を迎えました。
思えば、パリ・オペラ座のエトワールとしてバレエ界に君臨したマニュエル・ルグリの「ルグリと輝ける仲間たち」と並ぶ双璧と言って良いGALA企画でしたね・・・。
ABTのスターダンサーとして、それからウィーンの、ベルリンの芸術監督として、広い視野でバレエと接し、自身も妖精のようだった金髪の貴公子から指導・企画を手掛けるようになってからはコミカルな才能や温かな人柄でも知られ、「世界バレエフェスティバル」の常連にして、ファニーガラの番長?として大いにバレエ界を盛り上げてくれた名ダンサー。
そんな彼が芸術監督となってからもプレイング・マネジャーとして、舞台にも主役級・準主役級で立ち続けてくれたのですが、ついに、この名物企画は最終回を迎えると言うことになり・・・。
わたくし自身のバレエ鑑賞歴と彼の活躍がほとんど重なるので、非常に感慨深いものがあります・・・。
2013年5月26日(日)15:00
東京文化会館
<マラーホフの贈り物 ファイナル!> Bプロ
■「シンデレラ」
振付:ウラジーミル・マラーホフ 音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
ヤーナ・サレンコ、ウラジーミル・マラーホフ
Aプロでも踊りましたが、サレンコは本当にキレイになりましたね!
バレフェスに初登場したときの、この小娘ダレ?的な感じが一掃されて、華とチャーミングな表現力と確かな技術を感じさせる名バレリーナに成長されました。
そんな旬な彼女と、王子様・・・とはいっても往年の美青年の面影は記憶とMIXして・・のがっちり体型のマラーホフ。でも、王子様としてシンデレラにそっと手を差し伸べたり、サポートする姿の優しさ細やかさはこの人ならでは。
サレンコも麗しの王子様に向けるきれいな表情で、2人の間に心が見えました。
プロコフィエフのこの音楽が大好きなこともあり、初っ端から泣かされました;;
■「椿姫」より第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー 音楽:フレデリック・ショパン
マリア・アイシュヴァルト、マライン・ラドメーカー
社交界の華としてふるまうマルグリットに愛を告白する地方出身のおぼっちゃまアルマン・・・の場面ですね。
大きなフリルの襟をグッと落として肩を出した紫のタフタの衣装と胸元のバラがなんとも艶やかで美しいアイシュバルト様。
伸びやかな四肢の金髪の好青年ラドメーカーは、配役的にもぴったり。
いきなり、のドラマチックな場面(「椿姫」はいつもそう)ではありますが、もう、アイシュバルトの一挙手一投足が愛を受け入れるべきか悩む心の揺れを細やかに映し出していて、そのダイナミックなリフトからの流れの滑らかさも相まって素晴らしい舞台でした。
フェリとはまたちょっと違いますが、まぎれもない”女優バレリーナ”の系譜に位置する人ですね。
■「ジュエルズ」より"ダイヤモンド"
振付:ジョージ・バランシン 音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
オリガ・スミルノワ、セミョーン・チュージン
ゴージャス!なボリショイペア。
チュ―ジンのノーブルさが合っていて良かったです。
この作品は音楽も・・・ですが、至高の美しさにかすかな陰りのある抒情性が見え隠れするところが魅力なのですが、スミルノワは輝く鋭角なカットのダイヤモンドの美しさはありましたが、伝説のホープダイヤモンドのような数々の逸話を持つ石の神秘性・・・のようなものは感じさせてはくれませんでした。。。
衣装がとてもゴージャス。白のクラシックチュチュですが、胴着部分のラインストーンの装飾がとても華やか。
色々な意味で、”ボリショイの”ダイヤモンド、という感じでした。
■「レ・ブルジョワ」
振付:ヴェン・ファン・コーウェンベルク 音楽:ジャック・ブレル
ディヌ・タマズラカル
Aプロに引き続き2回目です。
Aプロでは、やっぱりこの演目はシュツットガルトのフィリップ・バランキエビッチのアウトサイダーで骨太な男くささが欲しいなぁ~とないものねだりをしてしまいましたが、2度目になると、ディヌの人の良さそうな酔っ払い風情とか しなやかでいていきなりダイナミックなFiveFortyを披露してしまうところとか、彼独特の持ち味が、これはこれでこの作品にハマっているのかも?と思えてきました^^
白シャツの袖をまくりあげて黒の細身のネクタイにパンツ、というサラリーマンルック?がとてもお似合いでした^^
■「ライト・レイン」
振付:ジェラルド・アルピノ 音楽:ダグ・アダムズ
ルシア・ラカッラ、マーロン・ディノ
シャープで官能的なコンテンポラリー。
ダークブラウンのユニタードのディノとワインカラ―のラカッラ。
切れ味の鋭い長い脚の軌跡としなやかでダイナミックなリフトが印象的でした。
【 休 憩 】
■「バレエ・インペリアル」
振付:ジョージ・バランシン 音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
ヤーナ・サレンコ、ウラジーミル・マラーホフ
東京バレエ団
とても華やかなクラシックチュチュの衣装での、様々なフォーメーションで音楽に合わせてクラシックバレエの持つ抽象的な美しさを表現する・・・といった演目。
上野水香さんがマラーホフとセンターを務めるはずでしたが、故障で降板 。
で、再びのサレンコでしたが、とても良かったです。
東バの群舞はここ最近でソリストクラスがごっそり退団してしまったせいで、男性は梅澤さん宮本さんくらいしかわからない・・・。女性のソリストで、センターを奈良さん、トロワのときには、そこに高木さん、乾さんがいらしたのでホッとした次第です^^;
【 休 憩 】
■「ロミオとジュリエット」より第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・クランコ 音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
マリア・アイシュヴァルト、マライン・ラドメーカー
はぁ・・・・美しい。素晴らしい。もう、このレベルの高いGALAの中でも別格。
同じ演目をアイシュバルトで既に観ているので、その素晴らしさはわかっているはずだったのですが、やはり・・・素晴らしいの一言です。
生成色の絹にオレンジ系の細やかなボーダー刺繍の施された繊細な衣装と装飾的なヘッドドレスが、簡素な白のシフォンのドレスのイメージの強いジュリエットを異国情緒あふれる、ベネチアかどこか東方とつながりのある街の(ヴェローナですが^^まぁ当たらずとも遠からず)裕福な貴族の娘に見せています。この衣装が、小さなハッキリとした目鼻立ちのブルネットのアイシュバルトのエキゾチックな美貌に映えて、この異国の美しい小鳥に心奪われてしまった金髪の少年ロミオの気持ちがとても理解できる・・・そんな拵えです。
所謂「バルコニーのシーン」ですが、クランコ版は色々と違っていて面白い。バルコニーのジュリエットが降りてくるのを待ちきれないロミオはかなり一段が高い階段を一足飛びに一度踊り場まで飛んで(4~5段?)迎えに行き、ジュリエットが降りてくるそぶりを見せるとすぐに降りて、手を差し伸べてジュリエットが降りるのをエスコートするとか、動きの一つ一つにロミオのはやる心とジュリエットへの気遣いが観てとれて。
繊細なジュリエットで素敵なところの一つはロミオがキスをするとそのままつつつ・・・とパドブレで(とても細かくて早い!)彼から離れてそのまま後ろ向きに倒れる・・・を2回連続でするところ。勿論ロミオは彼女が倒れるところまですっとつき従って倒れたところをさっと支えるのですが・・・。
ジュリエットの恋に酩酊する様と初な感じがともに良く現れる振付だと。
難易度の高いリフトも体格差の大きい2人だと違和感なく流麗で、最後までウットリとさせてくれる異次元の舞台でした。
基本、カーテンコールの拍手は2回、でしたが、この演目だけ(あと、最後のマラーホフのソロも)3回の拍手が沸き起こりました。
■「タランテラ」
振付:ジョージ・バランシン 音楽:ルイス・モロー・ゴットシャルク
ヤーナ・サレンコ、ディヌ・タマズラカル
打って変って、クラシック・バレエの全幕物で、ディベルティスマンの各国のエキゾチックなフォークロアダンスご紹介コーナーに必ず出てくる「ナポリ民謡」コーナーの踊りをバランシンが味付けしてみましたよ、という演目。
赤と白と黒の簡素な衣装で、タンバリンを片手に、リズミカルに踊る・・・というものですが、これって片手にタンバリンを持っているだけでバランスが難しいし、音を立てるにも、キチンと踊りと強弱が合っていないと盛り下がるし、なかなかに難易度が高い演目ですが、さすがは技術力・演技力に秀いでたお二人、とても明るく楽しげにリズミカルに踊って良いアクセントをつけてくれました。
GALA演目は涙ボロボロの大感動演目ばかりでも疲れますしね
■「椿姫」より第2幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー 音楽:フレデリック・ショパン
ルシア・ラカッラ、マーロン・ディノ
で、こちらは大感動演目ですが・・・^^
第2幕の白いドレスのマルグリットが、パトロンを捨てて、アルマンとの恋に身を投じることを決意してから・・・の2人の愛のPDD.
ラカッラは長身で脚がとてもとても長いのですが、ディノは多分190超の偉丈夫ですので、リフトに安定感があり、高く掲げられたラカッラが更にその高さでポジションチェンジをするだけの余裕があるので、今までに椿姫で観たことがないほどの華麗なリフトとそこからの降りる過程が複雑に織り上げられたタペストリーのような振付であることがわかる踊り。
実生活でもパートナーである2人、交わす視線にも愛があり、これもまたウットリ・・・な作品でした。
■「白鳥の湖」より"黒鳥のパ・ド・ドゥ"
振付:マリウス・プティパ 音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
オリガ・スミルノワ、セミョーン・チュージン
これもAプロから引き続きで2度目の黒鳥。
長身ペアで華やかですし、スミルノワは自信に溢れた均整のとれた力強いプロポーションを持つダンサーですので、とてもこの演目にあっている・・と思いました。
ただ、王子を翻弄する悪女っぷり・・・というところはあまり策を弄せず(?)その堂々たる姿でちょっと気弱な上品な王子が自分にない強烈なエネルギーに磁場を感じて引き寄せられてしまった・・・という感じ。
でも、王子チュ―ジンはうつくしいグラン・ジュテで、180度以上の開脚を見せて、そのしなやかさもアピール。
これからが楽しみな2人です。
■「ヴォヤージュ」
振付::レナート・ツァネラ 音楽:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
ウラジーミル・マラーホフ
楽しく充実したGALAはあっと言う間・・・
今まで何度も観たことのある、お馴染みのオフ白のスーツをゆったりと着こなしたマラーホフが現れると万感胸にせまる思いが。
様々な舞踊作品で使われているモーツァルトのピアノ協奏曲23番イ長調K.488.
マラーホフのために1992年に振りつけられたこの作品、人生という旅を人はたった一人で様々な思いを感じ、受け止め、そしてまた旅立っていく・・・というテーマを表現しているこの作品。
18年間の間、そのキャリアの人脈・バレエへの見識など彼の持つもので最良のものを常に日本の観客に向けて見せてくれたまさに、タイトル通りの「マラーホフの贈り物」それを受け取れるのもこの日限りか・・・と思うと何とも言えない気持ちがしますね。
8回渡る公演を全て見ている・・・と思います。
プログラム巻末に今までの記録が乗っていて、あぁ、あの時はこう思った、そうそう、などと暫し思い出に浸ってしまいました。若々しい身体を白いショーツひとつで、照明を上手く使ってグランジュテの頂点の場所で平行に空間移動しているように見せた異色作「コ―ト」や、ABTの同僚ジュリー・ケントとの絶妙なコンビネーション、愛弟子ポリーナ・セミオノワとの男女を超えた美しいシンクロ加減など、様々な場面を思い出しました。
大きな拍手が続く中、感傷に浸る間もなく、グランフィナーレに。
サレンコとタマズラカル、スミルノワとチュ―ジン、アイシュバルトとラドメーカー、ラカッラとディノ・・・そしてマラーホフ!
ピアノの青柳さんも素晴らしかったですし、こうして並んだダンサーたちを観て、本当にバレエの本質をつかんでそれを表現してきたマラーホフの審美眼・見識の確かさを改めて感じ、彼の芸術監督としてのウィーン、ベルリンそれぞれの場所での活躍を思うにつけ、今の状態(ベルリンで政治的な意図?から彼を芸監からはずしてコンテンポラリー偏重のラインナップにかじ取りをしようとする動きがあるそう)が歯がゆくもあるのですが・・・。
千秋楽恒例の、NBSからの大きな垂れ幕とブルーと銀のキラキラのコンフェッティが・・・。
「18年間、ありがとうございました。またお会いしましょう。」という文面だったかと記憶しています。
座長公演としての「贈り物」はFINALでも、また、違った形で日本に来てくれるときを楽しみにしています。
わたくし自身はマラーホフのすごいファン、というわけではなかったのですが、大きな存在だったことには違いないですね。
やはり寂しい気持ちは・・・あります
ピアノ:青柳 晋(「椿姫」より第2幕のパ・ド・ドゥ)
※音楽は特別録音によるテープを使用します。(「椿姫」より第2幕のパ・ド・ドゥのみ、ピアノ伴奏)
◆上演時間
第1部 15:00 - 15:55 (休憩 15分)
第2部 16:10 - 16:50 (休憩 15分)
第3部 17:05 - 18:10
最終回を迎えました。
思えば、パリ・オペラ座のエトワールとしてバレエ界に君臨したマニュエル・ルグリの「ルグリと輝ける仲間たち」と並ぶ双璧と言って良いGALA企画でしたね・・・。
ABTのスターダンサーとして、それからウィーンの、ベルリンの芸術監督として、広い視野でバレエと接し、自身も妖精のようだった金髪の貴公子から指導・企画を手掛けるようになってからはコミカルな才能や温かな人柄でも知られ、「世界バレエフェスティバル」の常連にして、ファニーガラの番長?として大いにバレエ界を盛り上げてくれた名ダンサー。
そんな彼が芸術監督となってからもプレイング・マネジャーとして、舞台にも主役級・準主役級で立ち続けてくれたのですが、ついに、この名物企画は最終回を迎えると言うことになり・・・。
わたくし自身のバレエ鑑賞歴と彼の活躍がほとんど重なるので、非常に感慨深いものがあります・・・。
2013年5月26日(日)15:00
東京文化会館
<マラーホフの贈り物 ファイナル!> Bプロ
■「シンデレラ」
振付:ウラジーミル・マラーホフ 音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
ヤーナ・サレンコ、ウラジーミル・マラーホフ
Aプロでも踊りましたが、サレンコは本当にキレイになりましたね!
バレフェスに初登場したときの、この小娘ダレ?的な感じが一掃されて、華とチャーミングな表現力と確かな技術を感じさせる名バレリーナに成長されました。
そんな旬な彼女と、王子様・・・とはいっても往年の美青年の面影は記憶とMIXして・・のがっちり体型のマラーホフ。でも、王子様としてシンデレラにそっと手を差し伸べたり、サポートする姿の優しさ細やかさはこの人ならでは。
サレンコも麗しの王子様に向けるきれいな表情で、2人の間に心が見えました。
プロコフィエフのこの音楽が大好きなこともあり、初っ端から泣かされました;;
■「椿姫」より第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー 音楽:フレデリック・ショパン
マリア・アイシュヴァルト、マライン・ラドメーカー
社交界の華としてふるまうマルグリットに愛を告白する地方出身のおぼっちゃまアルマン・・・の場面ですね。
大きなフリルの襟をグッと落として肩を出した紫のタフタの衣装と胸元のバラがなんとも艶やかで美しいアイシュバルト様。
伸びやかな四肢の金髪の好青年ラドメーカーは、配役的にもぴったり。
いきなり、のドラマチックな場面(「椿姫」はいつもそう)ではありますが、もう、アイシュバルトの一挙手一投足が愛を受け入れるべきか悩む心の揺れを細やかに映し出していて、そのダイナミックなリフトからの流れの滑らかさも相まって素晴らしい舞台でした。
フェリとはまたちょっと違いますが、まぎれもない”女優バレリーナ”の系譜に位置する人ですね。
■「ジュエルズ」より"ダイヤモンド"
振付:ジョージ・バランシン 音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
オリガ・スミルノワ、セミョーン・チュージン
ゴージャス!なボリショイペア。
チュ―ジンのノーブルさが合っていて良かったです。
この作品は音楽も・・・ですが、至高の美しさにかすかな陰りのある抒情性が見え隠れするところが魅力なのですが、スミルノワは輝く鋭角なカットのダイヤモンドの美しさはありましたが、伝説のホープダイヤモンドのような数々の逸話を持つ石の神秘性・・・のようなものは感じさせてはくれませんでした。。。
衣装がとてもゴージャス。白のクラシックチュチュですが、胴着部分のラインストーンの装飾がとても華やか。
色々な意味で、”ボリショイの”ダイヤモンド、という感じでした。
■「レ・ブルジョワ」
振付:ヴェン・ファン・コーウェンベルク 音楽:ジャック・ブレル
ディヌ・タマズラカル
Aプロに引き続き2回目です。
Aプロでは、やっぱりこの演目はシュツットガルトのフィリップ・バランキエビッチのアウトサイダーで骨太な男くささが欲しいなぁ~とないものねだりをしてしまいましたが、2度目になると、ディヌの人の良さそうな酔っ払い風情とか しなやかでいていきなりダイナミックなFiveFortyを披露してしまうところとか、彼独特の持ち味が、これはこれでこの作品にハマっているのかも?と思えてきました^^
白シャツの袖をまくりあげて黒の細身のネクタイにパンツ、というサラリーマンルック?がとてもお似合いでした^^
■「ライト・レイン」
振付:ジェラルド・アルピノ 音楽:ダグ・アダムズ
ルシア・ラカッラ、マーロン・ディノ
シャープで官能的なコンテンポラリー。
ダークブラウンのユニタードのディノとワインカラ―のラカッラ。
切れ味の鋭い長い脚の軌跡としなやかでダイナミックなリフトが印象的でした。
【 休 憩 】
■「バレエ・インペリアル」
振付:ジョージ・バランシン 音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
ヤーナ・サレンコ、ウラジーミル・マラーホフ
東京バレエ団
とても華やかなクラシックチュチュの衣装での、様々なフォーメーションで音楽に合わせてクラシックバレエの持つ抽象的な美しさを表現する・・・といった演目。
上野水香さんがマラーホフとセンターを務めるはずでしたが、故障で降板 。
で、再びのサレンコでしたが、とても良かったです。
東バの群舞はここ最近でソリストクラスがごっそり退団してしまったせいで、男性は梅澤さん宮本さんくらいしかわからない・・・。女性のソリストで、センターを奈良さん、トロワのときには、そこに高木さん、乾さんがいらしたのでホッとした次第です^^;
【 休 憩 】
■「ロミオとジュリエット」より第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・クランコ 音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
マリア・アイシュヴァルト、マライン・ラドメーカー
はぁ・・・・美しい。素晴らしい。もう、このレベルの高いGALAの中でも別格。
同じ演目をアイシュバルトで既に観ているので、その素晴らしさはわかっているはずだったのですが、やはり・・・素晴らしいの一言です。
生成色の絹にオレンジ系の細やかなボーダー刺繍の施された繊細な衣装と装飾的なヘッドドレスが、簡素な白のシフォンのドレスのイメージの強いジュリエットを異国情緒あふれる、ベネチアかどこか東方とつながりのある街の(ヴェローナですが^^まぁ当たらずとも遠からず)裕福な貴族の娘に見せています。この衣装が、小さなハッキリとした目鼻立ちのブルネットのアイシュバルトのエキゾチックな美貌に映えて、この異国の美しい小鳥に心奪われてしまった金髪の少年ロミオの気持ちがとても理解できる・・・そんな拵えです。
所謂「バルコニーのシーン」ですが、クランコ版は色々と違っていて面白い。バルコニーのジュリエットが降りてくるのを待ちきれないロミオはかなり一段が高い階段を一足飛びに一度踊り場まで飛んで(4~5段?)迎えに行き、ジュリエットが降りてくるそぶりを見せるとすぐに降りて、手を差し伸べてジュリエットが降りるのをエスコートするとか、動きの一つ一つにロミオのはやる心とジュリエットへの気遣いが観てとれて。
繊細なジュリエットで素敵なところの一つはロミオがキスをするとそのままつつつ・・・とパドブレで(とても細かくて早い!)彼から離れてそのまま後ろ向きに倒れる・・・を2回連続でするところ。勿論ロミオは彼女が倒れるところまですっとつき従って倒れたところをさっと支えるのですが・・・。
ジュリエットの恋に酩酊する様と初な感じがともに良く現れる振付だと。
難易度の高いリフトも体格差の大きい2人だと違和感なく流麗で、最後までウットリとさせてくれる異次元の舞台でした。
基本、カーテンコールの拍手は2回、でしたが、この演目だけ(あと、最後のマラーホフのソロも)3回の拍手が沸き起こりました。
■「タランテラ」
振付:ジョージ・バランシン 音楽:ルイス・モロー・ゴットシャルク
ヤーナ・サレンコ、ディヌ・タマズラカル
打って変って、クラシック・バレエの全幕物で、ディベルティスマンの各国のエキゾチックなフォークロアダンスご紹介コーナーに必ず出てくる「ナポリ民謡」コーナーの踊りをバランシンが味付けしてみましたよ、という演目。
赤と白と黒の簡素な衣装で、タンバリンを片手に、リズミカルに踊る・・・というものですが、これって片手にタンバリンを持っているだけでバランスが難しいし、音を立てるにも、キチンと踊りと強弱が合っていないと盛り下がるし、なかなかに難易度が高い演目ですが、さすがは技術力・演技力に秀いでたお二人、とても明るく楽しげにリズミカルに踊って良いアクセントをつけてくれました。
GALA演目は涙ボロボロの大感動演目ばかりでも疲れますしね
■「椿姫」より第2幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー 音楽:フレデリック・ショパン
ルシア・ラカッラ、マーロン・ディノ
で、こちらは大感動演目ですが・・・^^
第2幕の白いドレスのマルグリットが、パトロンを捨てて、アルマンとの恋に身を投じることを決意してから・・・の2人の愛のPDD.
ラカッラは長身で脚がとてもとても長いのですが、ディノは多分190超の偉丈夫ですので、リフトに安定感があり、高く掲げられたラカッラが更にその高さでポジションチェンジをするだけの余裕があるので、今までに椿姫で観たことがないほどの華麗なリフトとそこからの降りる過程が複雑に織り上げられたタペストリーのような振付であることがわかる踊り。
実生活でもパートナーである2人、交わす視線にも愛があり、これもまたウットリ・・・な作品でした。
■「白鳥の湖」より"黒鳥のパ・ド・ドゥ"
振付:マリウス・プティパ 音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
オリガ・スミルノワ、セミョーン・チュージン
これもAプロから引き続きで2度目の黒鳥。
長身ペアで華やかですし、スミルノワは自信に溢れた均整のとれた力強いプロポーションを持つダンサーですので、とてもこの演目にあっている・・と思いました。
ただ、王子を翻弄する悪女っぷり・・・というところはあまり策を弄せず(?)その堂々たる姿でちょっと気弱な上品な王子が自分にない強烈なエネルギーに磁場を感じて引き寄せられてしまった・・・という感じ。
でも、王子チュ―ジンはうつくしいグラン・ジュテで、180度以上の開脚を見せて、そのしなやかさもアピール。
これからが楽しみな2人です。
■「ヴォヤージュ」
振付::レナート・ツァネラ 音楽:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
ウラジーミル・マラーホフ
楽しく充実したGALAはあっと言う間・・・
今まで何度も観たことのある、お馴染みのオフ白のスーツをゆったりと着こなしたマラーホフが現れると万感胸にせまる思いが。
様々な舞踊作品で使われているモーツァルトのピアノ協奏曲23番イ長調K.488.
マラーホフのために1992年に振りつけられたこの作品、人生という旅を人はたった一人で様々な思いを感じ、受け止め、そしてまた旅立っていく・・・というテーマを表現しているこの作品。
18年間の間、そのキャリアの人脈・バレエへの見識など彼の持つもので最良のものを常に日本の観客に向けて見せてくれたまさに、タイトル通りの「マラーホフの贈り物」それを受け取れるのもこの日限りか・・・と思うと何とも言えない気持ちがしますね。
8回渡る公演を全て見ている・・・と思います。
プログラム巻末に今までの記録が乗っていて、あぁ、あの時はこう思った、そうそう、などと暫し思い出に浸ってしまいました。若々しい身体を白いショーツひとつで、照明を上手く使ってグランジュテの頂点の場所で平行に空間移動しているように見せた異色作「コ―ト」や、ABTの同僚ジュリー・ケントとの絶妙なコンビネーション、愛弟子ポリーナ・セミオノワとの男女を超えた美しいシンクロ加減など、様々な場面を思い出しました。
大きな拍手が続く中、感傷に浸る間もなく、グランフィナーレに。
サレンコとタマズラカル、スミルノワとチュ―ジン、アイシュバルトとラドメーカー、ラカッラとディノ・・・そしてマラーホフ!
ピアノの青柳さんも素晴らしかったですし、こうして並んだダンサーたちを観て、本当にバレエの本質をつかんでそれを表現してきたマラーホフの審美眼・見識の確かさを改めて感じ、彼の芸術監督としてのウィーン、ベルリンそれぞれの場所での活躍を思うにつけ、今の状態(ベルリンで政治的な意図?から彼を芸監からはずしてコンテンポラリー偏重のラインナップにかじ取りをしようとする動きがあるそう)が歯がゆくもあるのですが・・・。
千秋楽恒例の、NBSからの大きな垂れ幕とブルーと銀のキラキラのコンフェッティが・・・。
「18年間、ありがとうございました。またお会いしましょう。」という文面だったかと記憶しています。
座長公演としての「贈り物」はFINALでも、また、違った形で日本に来てくれるときを楽しみにしています。
わたくし自身はマラーホフのすごいファン、というわけではなかったのですが、大きな存在だったことには違いないですね。
やはり寂しい気持ちは・・・あります
ピアノ:青柳 晋(「椿姫」より第2幕のパ・ド・ドゥ)
※音楽は特別録音によるテープを使用します。(「椿姫」より第2幕のパ・ド・ドゥのみ、ピアノ伴奏)
◆上演時間
第1部 15:00 - 15:55 (休憩 15分)
第2部 16:10 - 16:50 (休憩 15分)
第3部 17:05 - 18:10