maria-pon

お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

「マラーホフの贈り物」Bプロ ④

2008-02-25 05:22:40 | BALLET
「バレエ・インペリアル」にも触れておきましょう。

第2部で披露された、東バのバランシンもののレパートリーで、マラーホフとセミオノワが主役、ソリスト役で田中結子さんが、トロワのシーンでは中島周さんと横内国弘さんが加わり、コールドが東バ、という布陣ですが・・・。
ちょっと微妙な演目でした。
光輝くばかりのマラーホフの美しい動き、ネコのような音のしない着地が美しい。
ポリーナはまさにバランシンバレリーナ!
ほっそりとして手足が長く、強靭な筋肉とフェミニンな持ち味。

今回の東バのコールドは本当にコールドの人たちだけだったのか、女性はともかく、男性がかなり見劣りしたのが残念。特に、左右に4組ずつ縦に並んだ男女がセンターに向かって女性をリフトしながら、別の女性ダンサーとすれ違う場面など、揃えば壮観なシーンのはずが、リフトが不十分な組が散見され、全体の統一感による美しさというものが見えてこなかったのがつらいところ。
バランシンものは演技や表情を要求しない。ただ、音楽と踊りだけなので、踊り手の純粋なダンサーとしての力量が浮き彫りにされてしまうところが怖い・・・と改めて思ったことでした。
ソリストの横内さんは多分抜擢なのでしょうが、ジャンプの際の開脚の角度などもプリンシパルの中島さんとは大きく差があり、残念でした。

あと一組、コンヴァリーナ、サレンコ組は・・・。

「グラン・パ・クラシック」

2人ともAプロのときよりもリラックスしている様子。
サレンコにはファンが付いた模様で、彼女の見せ場で大きな拍手が後方から聞こえる。
相変わらずバランスがすごい。
コンヴァリーナはAプロのときよりも、パートナーに対するケアがしっかりとしてきた様子。
サポートの上手さが目に付きました。
ただ、この演目は超絶技巧の連発を堂々たるクラシックの雰囲気の中で見せていくものなので、その堂々とした見せ方ができるかどうか、が意外と大切なのだなと気付かされ・・・。
バレフェスでのルグリとか、やっぱり風格があったもの・・・とよぎる記憶の引き出し。

「ドン・キホーテ」

Aプロと同じ。
本当はブルノンヴィルの「ゼンツァーノの花祭り」をどこかで踊ってくれるはずだったのに。
サレンコにはさぞ似合ったことでしょう。
キトリのバランスをサレンコのために強調する演出は、さすが見事なものだと感心しつつも、キトリとしては金髪で小柄で表情が今ひとつ硬い彼女はどうかなあと思うところも。
もっと似合う演目がありそうなのに・・・。
ジュリエットとかどうかしら?
コンヴァリーナが絶好調。初めてこの人を魅力的なダンサーと認識しました。
サレンコに向ける視線も暖かく、微笑を絶やさない。
演技も丁寧で回転の軸もしっかりとしていてキメのポーズもきれい。
今回のバジルは完璧だったのではないでしょうか・・・?とても良かったです。

最後はAプロと同じくマラーホフのソロ
「La Vita Nuova」
薄物の長袖長ズボンの衣装を着て登場。クラウス・ノミの素晴らしい歌唱に合わせてもがき苦しむ彼。
のたうちまわるうちに件の衣装を脱ぎ捨てて白いショーツ姿に”新生”するが、その後も苦しみ葛藤し続ける・・・。
それがダンサーの人生、とでも言うことなのでしょうか。
切々たる荘厳な音楽に合わせて綺麗なラインを描く踊りを見せながら苦しみ悶えるさまがこれほど昇華して見える存在も稀有。
やはり選ばれたダンサーなのだな、と再認識。

そしてフィナーレ。



これはリハの画像です(笑)
踊り終えたマラーホフが次々にペアを舞台上に呼び、(最後ポリーナを呼ぶときには舞台に倒れこんで瀕死を装って呼ぶ演技つき!)それぞれがレヴェランスをしたあと、皆が「さぁ、マラーホフさん!」マラーホフ「え、ぼく?」というシーン。
左端のマーシャの大きなポーズに注目です!
マーシャのカーテンコ-ルでのはじけぶり、お茶目振りはさすがマラーホフのお友達(?)と納得するものが・・・。
フィーリンに大きく投げキッスをするマーシャ、そしてそれをキャッチするフィーリン。
カーテンコールで先に幕に入ったマーシャがグイッと引っ張ったらしく、驚きながら引きずり込まれる(振りをしている?)フィーリンも最高。いいペアですね
最終日のNBSのお約束で何度かのカーテンコールの後、「SAYONARA」の大きな横断幕が降り、サーッと色とりどりの紙ふぶきとテープが天井から降ってくるのに、わざわざ、そのテープに絡まりに行くマーシャ。舞台袖にいるだれかをマーシャがやたらと手招きしているなぁと思ったら、最後にフィーリンに抱かれて出てきたのはフィーリンのお子さん?
子供好きなんだろうな・・・と優しい素顔を垣間見せてくれました。

最後、グラン・ジュテで幕から登場してくれたマラーホフのお茶目っぷりも、怪我をする前と変わらなくて嬉しく、でもちょっとヒヤヒヤしたりして。
グループ公演としては昨年最後とされたルグリ・ガラと比肩する長寿企画。
これが毎回成功裡に幕を閉じるのも、プログラムの面白さとともに、マラーホフの人を惹きつけるチャームが大なのでしょう。
復帰が嬉しいガラでした。





「マラーホフの贈り物」Bプロ ③

2008-02-25 04:46:55 | BALLET
Aプロで圧巻の存在感を見せつけたボリショイ・ペアは、Bプロでは渋い演目で攻めて来ました。

「ハムレット」

エイフマン振り付け、ということで、かなり翻案されたバージョン。
事前に情報を仕入れていたのでしかと見届けることができたのですが、初見の方にはどのシーンやら・・・と思ってしまうかも。
ハムレットを女帝エカテリーナ2世の愚息、パーヴェル大公に見立てて、この2人のドラマを見せる趣向。長い光沢のあるブラウン系のロングドレスを纏ったエカテリーナ=アレクサンドロワが圧巻の迫力。
息子に対する愛と厳しさをドラマチックに演じてぐいぐいと観客を惹きつける求心力は息を呑むばかり。
対するフィーリンが・・・。
あの端正なフィーリンが表情からして抜けたパーヴェルになりきりながら、母に向かってほとんどえびぞった状態で身を投げ出す難しい動きを何の破綻もなく繰り返す・・・。
いや、この作品、とてもとても面白そうです。
願わくはこの2人で全幕通して見てみたい・・・と強く思ったことでした。

「シンデレラ」

フィーリンが甘い白王子で登場すると聞いていたのでワクワクして見ました!
ん?情報と違うのは髪形。あのカルメンのホセのときの”変形フォワードボブ・マッシュルームカット”を期待していたら、いつもの王子様使用の後に流したレイヤーでした。
衣装は大きく胸をはだけた白ブラウスに白タイツ白ブーツ、で白王子。
アレクサンドロワは、家で王子を迎えるシーンなのか、簡素なブルーグレーのワンピース姿で。
先ほどの苦悩する女帝とは打って変わって恋する乙女の感情の高ぶりが心を打つ、ステキなPDD.
でも、あっという間(に感じただけ?)に終わってしまい、これもまた「もっと見たい~」気分にさせられたまま。
所謂ガラ向きのグラン・パ・ド・ドゥですと、それぞれのソロも堪能して最後大団円、で落ち着くのですが、こういう全幕の抜粋は、興味を掻き立てられて終わってしまうので、良かったけれどもちょっとツライものがありますね(笑)

麗しのABTペアは・・・。

「黒鳥のPDD」

実は、わたくしこの一つ前の「ハムレット」のあまりの凄さに膝からオペラグラスを取り落とし・・・。慌てて椅子の下を探ったものの見当たらず、この演目はオペグラなしで見たのですが、イリーナの表情が素晴らしい。
美人な彼女が悪巧みをする様は本当に見ていてワクワクさせられます。
あぁオペグラを落としたのが悔やまれる・・・。
テクニックもこれ見よがしなところはないものの万全。フェッテはシングルでしっかりと音にあわせていて好感が持てました。ソロのシェネの最後の最後でグラッと来てヒヤッとさせられましたが、その後の建て直しが素晴らしかったので帳消しです。
マキシムの王子振りはやはりステキ・・・。この人の指先まで常に美しくあろうとする意志とあくまで女性を立てる身に付いたジェントルなマナーの良さは大きな魅力です。
ちなみにオペラグラスは座席の横に嵌っていましたxxx

「アポロ」

あぁ、イレールの引退公演以来だわ・・・とちょっと身構えてしまいましたが、この2人にはとても似合った演目でした。
テレプシコーラのイリーナが女性らしさの魅力を見せつつバランシンのパはきっちりと決めてメリハリのある演技。端正なマキシムにアポロはとてもお似合い。
音の取り方も良く、太陽神に相応しい均整のとれた容姿が映えて、これまた抜粋でなく、通しで見たくなりました。



「マラーホフの贈り物」Bプロ ②

2008-02-25 04:20:44 | BALLET
まずはロビンス版の「牧神」



青空を思わせる空間の中、風にはためきそうな簡素な布で作られたバレエスタジオ。
左右にバーがあるのでそれとわかり、客席側が鏡、という設定のよう。
ダンサー、マラーホフが登場。
白い肌に舞台メイクかアイラインと赤みを帯びた唇、金色に輝く髪。怪我のためかいつにも増してほっそりとして見える彼が実年齢を軽く裏切る少年のような美しさ。このところ、王子役が年齢的に少し厳しく思われるときもあったのだが、この場面のマラーホフはダンサーとして変わらぬ透明感溢れる美しさを見せて、ドビュッシーの耽美的な音楽に溶け込んでいる。
物思いつつレッスンをしていると、バレリーナ、ポリーナが登場。
藤色の薄物をまとい、神話の女神のよう・・・。そう、彼女は「牧神」のニンフなのだから。
それにしても、波打つ黒髪、マラーホフよりも更に小さな顔、筋肉質ながらも滑らかな長い手足の肢体。
身長差もさほどなく、バランスが双子のような2人。



動揺しつつも彼の邪魔にならないように自分のレッスンを始めると彼がスッとよりそってウエストをホールドし、2人で踊りだすが、視線は交わらない・・・いや、もしかすると鏡の中のお互いを見つめているのかも・・・。その交わるようで交わらない視線の揺らぎと2人のつかず離れずのPDDがほのかに官能的でドキドキしてしまいます。
踊り終わって正座のように座るポリーナの頬にスッとキスをするマラーホフ。
彼女はゆっくりとスタジオを出て行く。
一人残されたマラーホフが見せる彼女を思っての官能的な仕草は極々控えめな表現。
清潔な色香がこの2人に良く似合う、美しい一幕。



マラーホフの贈り物 Bプロ ①

2008-02-25 04:04:08 | BALLET
マラーホフの贈り物、 Bプロは最終日に行って参りました。

2008年2月22日(金) 東京・有楽町・東京国際フォーラム ホールCにて。

第1部

「牧神の午後」
振付:ジェローム・ロビンズ
音楽:クロード・ドビュッシー

ポリーナ・セミオノワ  ウラジーミル・マラーホフ

「グラン・パ・クラシック」
振付:ヴィクトール・グゾフスキー
音楽:ダニエル・オーベール

ヤーナ・サレンコ  ズデネク・コンヴァリーナ

「ハムレット」
振付:ボリス・エイフマン
音楽:ルートヴィヒ・V.ベートーヴェン

マリーヤ・アレクサンドロワ セルゲイ・フィーリン

「白鳥の湖」より“黒鳥のパ・ド・ドゥ”
振付:マリウス・プティパ
音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー

イリーナ・ドヴォロヴェンコ  マクシム・ベロツェルコフスキー

第2部

「バレエ・インペリアル」
振付:ジョージ・バランシン
音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー

ポリーナ・セミオノワ ウラジーミル・マラーホフ
田中結子、中島周、横内国弘ほか東京バレエ団

第3部

「シンデレラ」
振付:ロチスラフ・ザハーロワ
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ

マリーヤ・アレクサンドロワ  セルゲイ・フィーリン

「アポロ」
振付:ジョージ・バランシン
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー

イリーナ・ドヴォロヴェンコ  マクシム・ベロツェルコフスキー

「ドン・キホーテ」
ヤーナ・サレンコ  ズデネク・コンヴァリーナ

一番、印象に残ったのはロビンス版の「牧神」。
もっと見たい・・・と渇望するのはボリショイの2人の2演目。
ABTの2人はとても似合った演目を踊ったと思います。
サレンコ、コンヴァリーナはここに来て、急造ペアの違和感がなくなり、お互いの良いところが出てきた感じ。

Aプロのときのように、わ~と興奮させられるような演目は少なくある意味華やかさでは一歩譲るものの、しみじみと味わい深く思うところの多いBプロでした






「マラーホフの贈り物」Aプロ ④

2008-02-21 04:41:15 | BALLET
ボリショイペアの次に印象に残ったのは、ABTのロシア人ペア。
美形の2人、イリーナ・ドヴォロヴェンコとマクシム・ベロツェルコフスキー。
確か実生活でもパートナーなんですよね。



第一部での「くるみ割り人形」のGPDDは、砂糖菓子のピンクのふわっとした衣装がカワイイ、美しいイリーナ。彼女を大切に心からの愛と忠誠を誓う視線を向け続けるマクシム。
テクニック的にも申し分なく、クラシックダンサーとしての華があり、幸せな気分にしていただけました

第3部の「スプレンディッド・アイソレ-ション」は面白い作品。



直径3mはあろうかというサーキュラースカートの白のイブニングドレスの真ん中に佇むイリーナが女神のよう。彼女の動きにつれてスカートが小さくなっていき、たくし上げたりスカートの造形を利用して様々な美しいフォルムを見せて・・・。マーラーの曲も影響しているかと思いますがちょっと耽美的。

あとは・・・
ポリーナの「アレス・ワルツ」は・・・。

黄色い薄い生地のパンツスーツでコケティッシュに切れよく踊ってくれましたが、作品自体がちょっと単調?彼女の長い手足と表情豊かな小さなお顔は堪能できましたが、もっと彼女の良さがでる演目が他になかったのかしら。少し残念。

テクニシャンペア、ヤーナ・サレンコとズデネク・コンヴァリーナは・・・・。


ヤーナ・サレンコは初見。小柄ながら、バランスが非常に得意でドンキのグラン・フェッテなんて3回転当たり前と涼しい顔、小さな身体をキレイに見せるポジショニングも万全で「エスメラルダ」「ドン・キホーテ」という見せ場の多いクラシックPDDでそのテクニックをしかと東京の観客に印象付けてくれました。
コンヴァリーナは、バレフェスのときに、テクニックは申し分ないのに、スター軍団に囲まれると今ひとつパーソナルな魅力に乏しく思えてしまう気の毒なダンサーという印象を持っていたのですが、今回もそんなところ、でしょうか。ひたむきさは好感が持てます。

最後のカーテンコールで。総勢8名のダンサーが並んだところを眼にして、これだけの充実したプログラムをたった8人のダンサーが(東バの応援はありましたが)見せてくれたのかと感慨深いものがありました。
まだ、本調子ではないのかもしれませんが、マラーホフの復帰を目にすることが出来ただけでも嬉しい公演。
全国ツアーを間に挟んで、20日からは国際フォーラムでBプロが始まります。
また楽しみです