第2幕。
漆黒のベルベットのマントに白百合・・・。
マラーホフのそれがややロマンティックで耽美的な印象だったのに対し、ルグリの出はまた違った、貴族的な佇まいに深い内省を感じさせます。
数分前ヒラリオンが墓参りに来たときに出た人魂は姿を現さず、ウィリーの仲間に叙せられたジゼルがそっとその姿を現します。
フワリとその小出さんを空気のようにリフトするルグリ。
小出さんの 一幕の村娘とは打って変わったしっとりと大人びた、でも現世感のないウィリは深い絶望の中にあるアルブレヒトの心が映し出した空蝉か、それとも霊か・・・
舞台はすでに夜の墓場、生身の人間が立ち入る領域ではありません。
木村さんのヒラリオンが下手奥から上手手前の女王ミルタまで、にズラリと並ぶウィリの前に突き出されます。
踊らされる木村さんの演技がスゴイ。
美しい脚のラインが描くジャンプのきれいなこと。でも表情は怯え、すがり、あくまで苦しげ。
ミルタに命乞いするも、高木さんミルタはどこか淋しげなお顔立ちながら、冷酷に拒絶。
(高木さんと言えば、東バ若手ソリスト衆の中でも、品の良いおおらかさを感じさせる優しいお顔立ちのイメージがあったのですが、この公演ではミルタの役作りのため(?)、少しウエイトを落とされたのかお化粧法を変えたのか、シェーディングが施されたかのように頬がそげて面変わりされているように感じてちょっと驚きました。)
散々踊らされた後一番末席に位置する2人のウィリが両側から腕をつかんで一回転させ、沼に突き落とすダメ押しつき。
愛するジゼルを悼んでそっとお参りに来たヒラリオンには申し訳ないのですが、どんどんエスカレートする死の舞踏のテンポの良さ、音楽の高揚感に、キチッと揃ったウィリ軍団、で妙にワクワクしてしまいました。
次の獲物は・・・アルブレヒトが。
一人では踊らせないわ。ジゼルが間に入り、折々にミルタへの命乞いをしながら、アルブレヒトと踊ります。
ルグリの端正な姿を小出さんの小柄な身体が十字架の形で盾になってミルタの視線から守る場面、小出さんからなんともいえない慈愛と慈悲を希う心が広がり出て、一幕で少し緊張されていた感じがこのときはすっかり解き放たれたよう。
PDDの後はジゼル、そしてアルブレヒトのヴァリ。
ローザンヌなどのコンクールでここだけ踊られることも多いこの有名なヴァリエーション、平素過剰なことをしないルグリがオッと驚くほど脚を高く上げ、大きく踊ります。
でも音楽から逸脱することなく、でも自身の限界を超えた踊りをしている、と思わせるこれは、やはり超自然の力で踊らされている、という設定に対する答えなのか・・・
圧巻でした。
続くブリゼ、マラーホフの空中浮遊(?!)に対してさて、と身を乗り出すと??
振りを変えてきたのか、ルグリは走ってミルタに命乞い、を繰り返します。
その後の踊りはさすがの演技力でわたくしは気がつかなかったのですが、注意深く見ていた友人によると右足だけでジャンプをしていたそう・・・
朝の鐘。去っていくウィリたち。
ジゼルの墓の前、再び捧げた白百合を手にするアルブレヒトに、墓に消え行く寸前そっと小さな白い花を手渡すジゼル。
ハラハラと百合を落としながら、その花を夢を見るように眺めてそっと手にしながら、ルグリは墓に突っ伏してはおらず、舞台中央に膝で立ちながらそっとその花を掲げて胸に当て、朝日が当る顔を上げて・・・という、アルブレヒトの一夜の冒険(?)が静かな死と愛による再生で幕を閉じようとする瞬間、涙が一筋だけ流れました。
マラーホフの時は一幕から折りに触れて泣けて仕方がなかったのですが、この時はラストだけ・・・
どちらが深い、ということではないのですが、我ながら不思議です。
熱心な拍手が続く何度にもわたるカーテンコール、ルグリ先生は笑顔で応え、小出さんの初役成功を讃えて、何の異変も感じさせず。
楽屋口でも特に足取りが重いということもなく、待たせてあるタクシーに向かいながら取り巻くファンのためにサインをし、次には10月5日、Trevisoでお会いしましょう、と声をお掛けすると、ちょっと驚きつつ満面の笑顔で応えてくださったのですが。
翌日の大阪公演、一幕を素晴らしい貴公子ぶりで勤めて、2幕をキャンセル。
2幕は上野水香さんとのペアでこのジゼルウィーク中、アルブレヒトを一日だけ務めた東バの高岸直樹さんが立派にその穴を埋め、公演自体は滞りなく行われたそうですが、NBSのHPによると左太ももを痛めてしまわれたそう。
8月上旬のエトワール・ガラ、ハンブルグでの教え、連日のジゼル公演に加え、今回特別企画で舞台を終えた後、「スーパー・バレエ・レッスン」と称した東バ若手3人への1時間半の教えの公開、となかなかのハードスケジュールが続き、さすがの鉄人ルグリ先生といえどもお疲れだったのかもしれません。
ご無理はしていただきたくありませんが、早いご回復を心よりお祈りいたします。
漆黒のベルベットのマントに白百合・・・。
マラーホフのそれがややロマンティックで耽美的な印象だったのに対し、ルグリの出はまた違った、貴族的な佇まいに深い内省を感じさせます。
数分前ヒラリオンが墓参りに来たときに出た人魂は姿を現さず、ウィリーの仲間に叙せられたジゼルがそっとその姿を現します。
フワリとその小出さんを空気のようにリフトするルグリ。
小出さんの 一幕の村娘とは打って変わったしっとりと大人びた、でも現世感のないウィリは深い絶望の中にあるアルブレヒトの心が映し出した空蝉か、それとも霊か・・・
舞台はすでに夜の墓場、生身の人間が立ち入る領域ではありません。
木村さんのヒラリオンが下手奥から上手手前の女王ミルタまで、にズラリと並ぶウィリの前に突き出されます。
踊らされる木村さんの演技がスゴイ。
美しい脚のラインが描くジャンプのきれいなこと。でも表情は怯え、すがり、あくまで苦しげ。
ミルタに命乞いするも、高木さんミルタはどこか淋しげなお顔立ちながら、冷酷に拒絶。
(高木さんと言えば、東バ若手ソリスト衆の中でも、品の良いおおらかさを感じさせる優しいお顔立ちのイメージがあったのですが、この公演ではミルタの役作りのため(?)、少しウエイトを落とされたのかお化粧法を変えたのか、シェーディングが施されたかのように頬がそげて面変わりされているように感じてちょっと驚きました。)
散々踊らされた後一番末席に位置する2人のウィリが両側から腕をつかんで一回転させ、沼に突き落とすダメ押しつき。
愛するジゼルを悼んでそっとお参りに来たヒラリオンには申し訳ないのですが、どんどんエスカレートする死の舞踏のテンポの良さ、音楽の高揚感に、キチッと揃ったウィリ軍団、で妙にワクワクしてしまいました。
次の獲物は・・・アルブレヒトが。
一人では踊らせないわ。ジゼルが間に入り、折々にミルタへの命乞いをしながら、アルブレヒトと踊ります。
ルグリの端正な姿を小出さんの小柄な身体が十字架の形で盾になってミルタの視線から守る場面、小出さんからなんともいえない慈愛と慈悲を希う心が広がり出て、一幕で少し緊張されていた感じがこのときはすっかり解き放たれたよう。
PDDの後はジゼル、そしてアルブレヒトのヴァリ。
ローザンヌなどのコンクールでここだけ踊られることも多いこの有名なヴァリエーション、平素過剰なことをしないルグリがオッと驚くほど脚を高く上げ、大きく踊ります。
でも音楽から逸脱することなく、でも自身の限界を超えた踊りをしている、と思わせるこれは、やはり超自然の力で踊らされている、という設定に対する答えなのか・・・
圧巻でした。
続くブリゼ、マラーホフの空中浮遊(?!)に対してさて、と身を乗り出すと??
振りを変えてきたのか、ルグリは走ってミルタに命乞い、を繰り返します。
その後の踊りはさすがの演技力でわたくしは気がつかなかったのですが、注意深く見ていた友人によると右足だけでジャンプをしていたそう・・・
朝の鐘。去っていくウィリたち。
ジゼルの墓の前、再び捧げた白百合を手にするアルブレヒトに、墓に消え行く寸前そっと小さな白い花を手渡すジゼル。
ハラハラと百合を落としながら、その花を夢を見るように眺めてそっと手にしながら、ルグリは墓に突っ伏してはおらず、舞台中央に膝で立ちながらそっとその花を掲げて胸に当て、朝日が当る顔を上げて・・・という、アルブレヒトの一夜の冒険(?)が静かな死と愛による再生で幕を閉じようとする瞬間、涙が一筋だけ流れました。
マラーホフの時は一幕から折りに触れて泣けて仕方がなかったのですが、この時はラストだけ・・・
どちらが深い、ということではないのですが、我ながら不思議です。
熱心な拍手が続く何度にもわたるカーテンコール、ルグリ先生は笑顔で応え、小出さんの初役成功を讃えて、何の異変も感じさせず。
楽屋口でも特に足取りが重いということもなく、待たせてあるタクシーに向かいながら取り巻くファンのためにサインをし、次には10月5日、Trevisoでお会いしましょう、と声をお掛けすると、ちょっと驚きつつ満面の笑顔で応えてくださったのですが。
翌日の大阪公演、一幕を素晴らしい貴公子ぶりで勤めて、2幕をキャンセル。
2幕は上野水香さんとのペアでこのジゼルウィーク中、アルブレヒトを一日だけ務めた東バの高岸直樹さんが立派にその穴を埋め、公演自体は滞りなく行われたそうですが、NBSのHPによると左太ももを痛めてしまわれたそう。
8月上旬のエトワール・ガラ、ハンブルグでの教え、連日のジゼル公演に加え、今回特別企画で舞台を終えた後、「スーパー・バレエ・レッスン」と称した東バ若手3人への1時間半の教えの公開、となかなかのハードスケジュールが続き、さすがの鉄人ルグリ先生といえどもお疲れだったのかもしれません。
ご無理はしていただきたくありませんが、早いご回復を心よりお祈りいたします。