maria-pon

お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

ローマ歌劇場2014来日公演「シモン・ボッカネグラ」

2014-05-28 05:58:48 | OPERA
2014年5月27日(火)18:30~
東京文化会館にて。

ある時代を牽引したイタリア人マエストロとしては最後の大物と言われる リッカルド・ムーティ率いるローマ・歌劇場来日公演。
ベルディの「シモン・ボッカネグラ」と「ナブッコ」。
ともに行きたかったのですが、スケジュール的に両方は無理・・・。
男声主要役4人プラスソプラノヒロイン全てにかなりの力量が求められるため、なかなかキャスティングが揃わない、という理由で上演される機会が少ないと言われる「シモン・ボッカネグラ」を今まで生の舞台で観たことがなかったのと、アメーリア役に大好きなバルバラ・フリットリが配役されていたので、こちらでムーティ御大のベルディを聴かせていただこうと赴いたほぼ満席の東京文化会館。



2014年5月27日(火)18:30開演/東京文化会館

ジュゼッペ・ヴェルディ作曲
「シモン・ボッカネグラ」プロローグと第3幕のメロドラマ
台本:フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ、アッリゴ・ボーイト

Giuseppe Verdi
Simon Boccanegra
Melodramma in un prologo e tre atti
Libretto di Francesco Maria Piave e Arrigo Boito

指揮:リッカルド・ムーティ
Direttore d'orchestra:Riccardo Muti
演出:エイドリアン・ノーブル
Regia:Adrian Noble
美術:ダンテ・フェレッティ
Scenografia:Dante Ferretti
衣裳:マウリツィオ・ミレノッティ
Costumi:Maurizio Millenotti 
合唱指揮:ロベルト・ガッビアーニ
Maestro del Coro:Roberto Gabbiani

シモン・ボッカネグラ:ジョルジョ・ペテアン
Simon Boccanegra:George Petean
マリア・ボッカネグラ(アメーリア):エレオノーラ・ブラット
Maria Boccanegra:Eleonora Buratto
ガブリエーレ・アドルノ:フランチェスコ・メーリ
Gabriele Adorno:Francesco Meli
ヤーコポ・フィエスコ:ドミトリー・ベロセルスキー
Jacopo Fiesco:Dmitry Beloselskiy
パオロ・アルビアーニ:マルコ・カリア
Paolo Albiani:Marco Caria
ピエトロ:ルーカ・ダッラミーコ
Pietro:Luca Dall'Amico
伝令:サヴェリオ・フィオーレ
Araldo:Saverio Fiore
侍女:スィムゲ・ビュユックエデス
Serva:Simge Büyükedes


ローマ歌劇場管弦楽団、ローマ歌劇場合唱団
Orchestra e Coro del Teatro Dell'Opera di Roma


◆上演時間◆

プロローグ、第1幕 Prologue, Act1 18:30 - 20:10
休憩 Inter. 30 min
第2幕、第3幕 Act2, Act3 20:40 - 21:40

※場面転換中はお席でお待ちいただきますようお願いいたします。
※アメーリア役で出演を予定していたバルバラ・フリットリに代わり、エレオノーラ・ブラットが全公演に出演いたします。なにとぞご了承ください。

そう、フリットリがこの公演のリハ―サル当日体調を崩して参加できなかったこと、彼女はこのプロダクションが初めてなので、このリハーサルなしに本公演で本番、ということは難しかったため・・というのが理由だそうで、フリットリ自体は現在復調し、6月のリサイタルは予定通り行われる、とのこと。で、ひとまず安心。

代役のブラットですが、輝く赤みがかったブロンドがブルーグリーンや山吹色の光沢のあるドレスに映えて美しく、若さもこの役にピッタリで、テノ―ルのフランチェスコ・メッリとの若い恋人並びが大層麗しくて良かったです。
声もフリットリの柔らかさ上手さはありませんが、やや硬いながらも透明感と伸びやかさのある声でヒロインとして充分。

作品についての解説は、NBSによると以下の通り。

「シモン・ボッカネグラ」は、ヴェルディが43歳のときに書いた20番目のオペラ。失敗に終わった初演から24年後の改訂により大成功を得た。14世紀のジェノヴァに実在したシモン・ボッカネグラを主人公とするこのオペラは、政治的な背景や人間関係が複雑に入り組んでいるうえ、男声低音3人とテノールとソプラノの5人の適役歌手が揃わなければならないことから、優れた上演を目指すのは難しいとされている。リッカルド・ムーティが、長くこのオペラを取り上げなかった理由も、そこにあった。今回の日本公演には、ムーティが満を持して臨んだローマでの初演キャストが揃う。海賊の豪快さと政治家としての器の大きさ、さらに父としての情愛という3つの個性を要求されるシモン役を演じるのはルーマニア出身のジョルジョ・ペテアン。宿敵フィエスコ役は「ナブッコ」、「マクベス」などでもムーティの信頼厚いイタリア人バス、リッカルド・ザネッラートが演じる。策略と裏切で最後には身を滅ぼす悪人パオロ役は、若手ながら世界の注目を集めているマルコ・カリア、さらにアメーリアの恋人ガブリエーレ役にはフランチェスコ・メーリという万全の布陣が組まれている。
 演出を手がけたのは、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの芸術監督を務めたエイドリアン・ノーブル。野村萬斎や野田秀樹が彼の演出を学ぶために英国留学をしたという演出家だ。このオペラには、権力闘争や策略とともに、父と娘の情愛も描かれる。歴史大河ロマンの登場人物の心情表現において、シェイクスピアの演出で精彩を放つノーブルの手腕が光る。

引用は以上です^^

ストーリーは、元海賊の平民シモンが密かに愛し合って子をなした貴族フィエスコの娘マリアが、この結婚に反対する父によって幽閉されて亡くなり、同時に平民派のパオロがシモンを担ぎあげてジェノヴァのド―ジェ(総督)選挙に打って出るがその勝利とともにシモンはマリアの死を知り、2人の間の娘は行方不明に。
その後数奇な運命で、その娘アメ―リアはグリマルディ伯爵夫妻にひろわれてその子として育ちその後、名を変えたフィエスコが引き取る。ふたりは血縁関係を知らない。
アメ―リアには貴族派の若き闘将ガブリエ―レと相思相愛の仲。
パオロは美しいアメ―リアとの結婚を望み、シモンに頼む。アメ―リアのもとを訪れたシモンはともにマリアの肖像画を身に付けていることから父娘の関係を知り、シモンはパオロに対してアメ―リアとの結婚を拒絶する。
怒ったパオロはロエンツィーノを使ってアメ―リアを誘拐。そのアメ―リアを救うべくガブリエ―レがロエンツィーノを殺害。黒幕がパオロと知るアメ―リアは総督シモンの前に引き立てられたガブリエ―レを擁護。
平民派と貴族派が騒然となる中、全てを知るシモンはひとまずガブリエ―レを収監し、パオロには真犯人への呪いをかけさせる。
自分自身を呪ってしまったと恐れるパオロ。
彼は保身のためにシモン殺害を企て、水差しに毒を仕込み、ガブリエ―レにアメ―リアがシモンの愛人であると吹き込み嫉妬をあおる。
毒入りの水を飲んで眠気がさしたシモンを切ろうとするガブリエ―レをアメ―リアがとめる。目覚めたシモンが父娘の関係を説明。和解する2人。
貴族派の反乱がおきるが平定され、シモンはいまわの際にアメ―リアとガブリエ―レの結婚を許し、幼いころから育てた孤児が離れるのを寂しく思うフィエスコに事の真相を告げる。25年ぶりに和解する2人。
人々の前で、アメ―リアに抱かれ、シモンは後継者にガブリエ―レを指名して息絶える。

貴族派と平民派の争い、嫉妬、誤解が最後に愛と平和を祈る和解へと終結する。
憎まれ役のパオロが暗躍するが、つねにリグ―リアの青い海が見守る中での大胆にして高潔な主人公が自らの命を引き換えに事を収める、という、実に良くできた構成で、長尺すぎもせず、後味も良い。
主要人物それぞれの聴かせどころのソロも重唱もバランス良く配置されていて、これはムーティがベルディの代表作として厳選しただけのことはあると感心。
演出も、最後、ド―ジェ(総督)宮の中でありながら回廊のむこうに青い海が煌めいているというセットがシモンの死、というラストを、海賊だった彼がまた、リグ―リアの海に還っていくようなそんな救いを感じさせて爽やかに締めてくれたと感じました。

イタリア人ムーティの指揮に応えて緩急自在のローマ歌劇場管弦楽団。キャストも、タイトルロールのバリトン、ぺテアンがル―マニア、フィエスコ役のバス、ベロセロスキーがロシア人ですが、テノールのメッリはまさにジェノヴェーゼ。ソプラノのブラットはマントヴァ生まれ。パオロのバリトンマルコ・カリアはサルデ二ア出身とほぼイタリア人CAST.

VISUUAL的にも役にぴったりの配役で、ムーティ御大の音で、イタリアオペラを聴いたという満足感に浸った一夜でした。



ミラノ・スカラ座来日公演2013「リゴレット」

2013-09-10 00:17:33 | OPERA
2013年、ミラノ、スカラ座OPERAのもうひとつの演目は「リゴレット」
スカラ座で最も多く上演されているオペラ、ということで、VERDI YEARにふさわしい、ヴェルディ中期の傑作、とのこと。

NHKホールか・・・と逡巡しつつも、タイトルロールがレオ・ヌッチ、マントヴァ侯爵がジョセフ・カレヤということで行くことに・・・したのですが、どうやら、カレヤがロンドンのプロムスとWブッキング??(という噂)原因不明のキャンセルで、CAST変更。イタリア人テノールとして注目されているフランチェスコ・デムーロはオペラファンの評価も押し並べて高く、悪くない変更かも。それにしても、スカラ座のステートメントでも、契約が成立していたにも関わらずの降版、という書き方で、どうもはっきりしませんね・・・。

2013年9月9日(月)18:30開演/NHKホール

ジュゼッペ・ヴェルディ作曲
「リゴレット」全3幕

Giuseppe Verdi
RIGOLETTO
Melodramma in tre atti

指揮:グスターボ・ドゥダメル
Direttore:Gustavo Dudamel
合唱監督:ブルーノ・カゾーニ
Maestro del Coro:Bruno Casoni
演出:ジルベール・デフロ
Regia Gilbert Deflo
再演演出:ロレンツァ・カンティーニ
Ripresa:Lorenza Cantini
美術:エツィオ・フリジェリオ
Scene:Ezio Frigerio
衣裳:フランカ・スクァルチャピーノ
Costumi:Franca Squarciapino 

マントヴァ公爵:フランチェスコ・デムーロ
Il Duca di Mantova:Francesco Demuro
リゴレット:レオ・ヌッチ
Rigoletto:Leo Nucci
ジルダ:エレーナ・モシュク
Gilda:Elena Mosuc
スパラフチーレ:アレクサンドル・ツィムバリュク
Sparafucile:Alexander Tsymbalyuk
マッダレーナ:ケテワン・ケモクリーゼ
Maddalena:Ketevan Kemoklidze

ジョヴァンナ:ジョヴァンナ・ランツァ
Giovanna:Giovanna Lanza
モンテローネ:エルネスト・パナリエッロ
Monterone:Ernesto Panariello
マルッロ:セルジョ・ヴィターレ
Marullo:Sergio Vitale
ボルサ:ニコラ・パミーオ
Borsa:Nicola Pamio
チェプラーノ伯爵:アンドレア・マストローニ
Conte di Ceprano:Andrea Mastroni
チェプラーノ伯爵夫人:エヴィス・ムーラ
Contessa di Ceprano:Evis Mula
廷吏:ヴァレリー・トゥルマノフ
Un usciere:Valeri Turmanov
小姓:ロザンナ・サヴォイア
Paggio:Rosanna Savoia

ミラノ・スカラ座管弦楽団、ミラノ・スカラ座合唱団、ミラノ・スカラ座バレエ団
協力:東京バレエ学校
Orchestra, Coro e Corpo di Ballo del Teatro alla Scala
Cooperation:The Tokyo Ballet School

*当初発表いたしました出演者から、下線で示したキャストに変更が生じております。何卒ご了承ください。また、出演者、その他に急な変更が生じることがありますので、あらかじめご了承ください。


◆上演時間◆

第1幕 Act 1 (with pause) 18:30 - 19:35(舞台転換あり)
休憩 Inter  30 min
第2幕 Act 2 20:05 - 20:35
休憩 Inter  30 min
第3幕 Act 3  21:05 - 21:40

スカラ座公演「リゴレット」初日。
なんと言いますか・・・・素晴らしい舞台でした!!

もう、とにもかくにもまずヌッチ!
公式だけでも493回、非公式を含めると600回はリゴレットを歌っているという70すぎたバリトンの自在な演技と完全なる歌唱。
「エル・システマ」出身の1981年生まれの新進大注目指揮者のドゥダメルの活き活きとした指揮に導かれる演奏を楽しみつくしているようなヌッチは圧巻。世界の人間国宝とでも言うべき歌唱と存在感でした。
このドゥダメルの生まれた1981年がスカラ座の初来日で、その時にもヌッチは帯同していたとか。



印象的な歌は、ジルダ役のエレーナ・モシュクの艶やかなソプラノ。
フランカ・スクァルピチャ―ノの重厚な金糸銀糸の織物で作られたバロック調の宮廷服の人々の中にあってひとりシンプルなアイボリーホワイトのドレスに身を包み、ウェーブの入った長い黒髪で、VISUAL的にも可憐で純粋な乙女。

今日は初日ということもあってか、アリア毎に拍手が入る客席の熱狂ぶりでしたが、幕ごとにある幕前のカーテンコールで、2幕最後のアリアをBIS!の声に応えて、ヌッチが指揮者に合図して、2幕最後の父娘の2重唱を再び歌ってくれたのには感動!
なんだかんだで、3幕のスタートは25分の遅れで始まり・・・。

ドゥダメルもインタビューで言及しているのですが、「リゴレット」はストーリー自体はもう暗くて救いようがないプロット。それに美しすぎる音楽をつけたオペラで、このパラドックスが魅力である、というようなことだったかと思うのですが、今夜の舞台はまさに、悲劇のオペラをこの上なく幸せで爽快な気分で味わう、というパラドックス・ワールドだったかと。

幕ごとに個別に・・・

【第1幕】

好色なマントヴァ公爵は夜会に集まった婦人たちを〈あれかこれか〉と品定め。そこに現れたモンテローネ伯爵は、娘がマントヴァ公爵に弄ばれたと訴える。伯爵をからかったマントヴァ公爵に仕える道化リゴレットは、呪いの言葉を浴びせられる。
夜、家路につくリゴレットは殺し屋スパラフチーレから“商売”をもちかけられる。取り合わずにやり過ごしたリゴレットだが、1人になると「あいつは剣で、俺は舌で人を殺す」と〈おれたちは同じ穴のむじな〉と歌う。家でリゴレットを迎える娘ジルダ。〈娘よ、お前は私の命〉は父娘の深い情愛が歌われる二重唱。リゴレットが去ると、学生姿に変装したマントヴァ公爵がジルダの前に現れる。教会で会ったこの学生に恋心を抱いていたジルダは驚き、公爵の情熱的な告白で夢見ごこちに。2人の素晴らしい愛の二重唱〈あなたは私の心の太陽だ〉は、全曲中最大の聴きどころのひとつ。
1人になったジルダが、「なんて素敵な名前!」と歌う〈麗しい人の名は〉は、華麗なコロラトゥーラが心のときめきを表す名アリア。このアリアの終盤で、ジルダをリゴレットの情婦と勘違いした廷臣たちの合唱〈静かに、静かに〉とともに彼女はさらわれて行


夜会の場面、バレエが挿入され、とても華やか。
スパラフチ―レは美男バスで売り出し中(今シーズンバイエルンで「ボリス・ゴドゥノフ」のタイトルロールを歌っています)のツィムバリュク。
マントヴァ公爵のデムーロは久方ぶりのイタリア人本格派テノールとして、活躍中の若手。
今回、ツィムバリュクもデムーロもそして指揮者も含めて、30代半ば~40代の若手で固められ、全体に若々しく華やいだ雰囲気が漂います。演出・衣装などがこの上なく重厚な本格派で、タイトルロールがヌッチ御大という重厚感に清々しく活き活きとした風が通っているような、絶妙なバランスのCASTING。
ジルダと学生のふりをしたマントヴァ公爵の愛の2重唱は素晴らしくロマンティック。

【第2幕】
宮殿で、公爵はジルダが誘拐されたと知って〈あの女が誘拐された~ほおの涙が〉と歌う。心配と犯人への復讐、そしてジルダへのひたむきな愛が表されるこの歌は、公爵の真の愛を垣間見せる聴きどころ。しかし、ジルダが宮廷にいると知るや一転、好色な公爵に戻り、浮き浮きとジルダのもとへ。リゴレットは心配極まりないが、道化らしく装い〈ララ、ララ〉と鼻唄を歌いながらジルダの行方を案じる。やがて廷臣たちの素振りからジルダが公爵の手にかかったことを嗅ぎつけたリゴレットは「俺の娘だ!」と叫び廷臣たちを驚かせる。娘を取り戻そうと歌う〈悪魔め、鬼め〉は、憤怒から悲痛な訴え、やがて絶望までを表す悲痛で劇的な名アリア。走り出て来たジルダは、父に事情を訴える。二重唱〈いつも日曜日に教会で~娘よ、お泣き〉。娘をなぐさめながら、リゴレットは公爵への復讐を決意する。

デムーロの歌唱は容姿も含めて、誠実な若者、という感じのどこか堅実さを感じさせる手堅いもの。
それだけに、冒頭のアリアはピッタリで、彼があの(笑)女たらしのマントヴァ公であることを忘れそうに。
女たちが真心尽くして愛をささげ、裏切られても彼を救おうと奔走するのがなんとなくうなずけてしまいます・・・。

モンテローザに呪いの言葉を投げつけられ、ジルダの誘拐に身も世もなくショックを受け心労に打ちのめされたリゴレットの嘆きと復讐への決意。
対する娘の赦しを願う清らかな声との2重唱は絶品。最終幕での悲劇を知りつつもわくわくしていたら・・・・
鳴りやまぬ拍手に、なんと!アンコールに応えてオケ・字幕つきでの再度の父娘の2重唱のご披露を
よく字幕が間に合ったなぁと感心していたのですが、どうやら、ゲネプロの段階で、ヌッチが「BIS(アンコール)が出たら歌うと言っていらしたらしく・・・。

【第3幕】
 スパラフチーレの酒場兼安宿で、「風のなかの羽のように」と歌うマントヴァ公爵の明るい声が聞こえる。〈女心の歌〉として有名なアリアだ。リゴレットはジルダを連れて来て、恋をあきらめさせようと、スパラフチーレの妹マッダレーナと公爵との情事の様子を覗かせる。宿の外で苦悩する父娘、宿のなかで情事をすすめる公爵とマッダレーナによる四重唱〈あなたにはいつか会ったことがある〉は、それぞれの心情が吐露される四重唱の傑作。
 父からヴェローナへ行けと命じられたジルダだが、公爵の身を案じて宿の外に戻って来る。ジルダは、スパラフチーレがリゴレットからマントヴァ公爵殺害を依頼されていることを知り、自分が身代りになろうと決意する。三重唱〈嵐が来るな〉は、死を覚悟し父への許しを願うジルダと緊張するスパラフチーレ、マッダレーナ兄妹による緊迫感に満ちている。
 スパラフチーレから死体の入った袋を受け取ったリゴレット。しかし沈黙のなかに公爵の歌う〈女心の歌〉が聞こえる。愕然としたリゴレットが袋を開くと、中には瀕死のジルダが! フィナーレの二重唱〈ついに復讐のときがきた~おお、わたしのジルダ〉が始まり、父に許しを請いながら息絶えるジルダの傍らで、リゴレットは「あの呪い!」と悲痛な叫びを上げる。



デムーロの「女心の歌」はあくまでさりげなくライトな歌唱。朗々と歌い上げる系や艶やかな美声・・・でと言う感じではなく、ちょっとした鼻歌程度のつい出てしまった歌、という感じの方が、物語の流れ的には合うので、そういう解釈なのかも。
マッダレ―ナのケモクリーゼが遠目でも美女で驚く。カルメンのような黒髪に紅バラを飾り、スカートを引き上げて膝上からさっくりと見せる美脚に赤い靴がなまめかしい。
スパダフチ―レ役のツィムバリュクと並んで美男美女の兄妹。いつものように愛している結婚したい!と迫る公爵に口説かれるのには慣れてるわといなしつつもしっかり誘惑するマッダレ―ナ。
これが奴の正体だ!と物陰からジルダに見せるリゴレット。もう、こんなところからは離れて、ヴェローナへ行こう。
復讐を完結させるためにまだ残っている必要があるが、お前は先にヴェローナへ向かいなさい。男装して。
ショックをうけつつも、でも彼への愛が消えることのないジルダ。
殺し屋家業の兄に協力する妹なれど、あのアポロのような若者を殺すのは惜しいわ、なんとかならないのかと兄に談判するマッダレ―ナ。
通りかかった人間を身代わりに。こんな嵐の夜に通りかかるものはいまい。だったら金を受け取って依頼人を殺してしまえばいい。
ジルダは決断します。彼の命か父の命か。どちらも救うためには・・・。と敢えて自らがその身代わりにと。

受け取ったズタ袋を足元に、一瞬の主従関係の逆転に心が高揚するリゴレット。
顔を見てみたい・・・と開けるとまだ息のあるジルダ。先程の全能感による高揚から一転、手から滑り落ちようとする宝物を慈しみ、嘆き、神に命乞いする父リゴレット。
公爵への赦しを求め、天国で亡き母とともに父のために祈るとジルダ。
最後の最後まで、見事な舞台でした。



惜しむらくは、歌が終わってすぐに、オケの演奏が続いているのに入るフライング拍手。
配役表に異例の記載「各幕切れの拍手は上演効果を損なわないよう、音が完全に終わりきるまでお控えくださいますよう、ご協力をお願い致します」があるにも関わらずxxx

それはともかく、何度も続くカーテンコール、会場と舞台の充足感がNHKホールいっぱいに広がる名演でした。
ヌッチ出演のリゴレットは11日、15日とあと2回。
これから行かれる方は堪能されますように・・・




ミラノ・スカラ座来日公演2013「ファルスタッフ」

2013-09-09 06:08:50 | OPERA
9月はスカラ座月間。
東京文化会館での「ファルスタッフ」を観て参りました。

2013年9月6日(金)18:30開演/東京文化会館

ジュゼッペ・ヴェルディ作曲
「ファルスタッフ」全3幕

Giuseppe Verdi
FALSTAFF
Commedia lirica in tre atti

指揮:ダニエル・ハーディング
Direttore:Daniel Harding
合唱監督:ブルーノ・カゾーニ
Maestro del Coro:Bruno Casoni
演出:ロバート・カーセン
Regia:Robert Carsen
再演演出:ロレンツァ・カンティーニ
Ripresa:Lorenza Cantini
美術:ポール・スタインバーグ 
Scene:Paul Steinberg
衣裳:ブリギッテ・ライフェンシュトゥエル
Costumi:Brigitte Reiffenstuel 
照明:ロバート・カーセン、ピーテル・ヴァン・プレート
Luci:Robert Carsen e Peter Van Praet

In coproduzione con Royal Opera House, Covent Garden, Londra; Canadian Opera Company, Toronto
The Metropolitan Opera, New York; The Nederlandse Opera, Amsterdam

サー・ジョン・ファルスタッフ:アンブロージョ・マエストリ(バリトン)
Sir John Falstaff:Ambrogio Maestri
フォード:マッシモ・カヴァレッティ*(バリトン)
Ford:Massimo Cavalletti
フェントン:アントニオ・ポーリ(テノール)
Fenton:Antonio Poli 
医師カイウス:カルロ・ボージ
Dr. Cajus:Carlo Bosi 
バルドルフォ:リッカルド・ボッタ
Bardolfo:Riccardo Botta 
ピストラ:アレッサンドロ・グェルツォーニ
Pistola:Alessandro Guerzoni 
フォード夫人アリーチェ:バルバラ・フリットリ(ソプラノ) 
Mrs. Alice Ford:Barbara Frittoli
ナンネッタ:イリーナ・ルング(ソプラノ)
Nannetta:Irina Lungu 
クイックリー夫人:ダニエラ・バルチェッローナ(メゾ)
Mrs. Quickly:Daniela Barcellona 
ページ夫人メグ:ラウラ・ポルヴェレッリ
Mrs. Meg Page:Laura Polverelli

ミラノ・スカラ座管弦楽団、ミラノ・スカラ座合唱団 
Orchestra e Coro del Teatro alla Scala

◆上演時間◆

第1幕、第2幕  18:30 - 20:00 (舞台転換3回あり)
Act 1, Act 2 (with 3 pauses)
休憩  30 min
第3幕 20:30 - 21:15
Act 3

ヴェルディ生誕200年にあたる今年のスカラ座引っ越し公演、ということで、ヴェルディの最後の作品となった「ファルスタッフ」を持ってきました。初演が1893年スカラ座、だったのですね^^

シェイクスピアの「ウィンザーの陽気な女房たち」を下敷きにしたこの作品。
ヘンリー5世に仕えた老年にさしかかったふとっちょ騎士ファルスタッフ。
彼はエピキュリアンで美食と女性に目がなく、全く枯れたところのない人物。
お金目当てで女性を誘惑するものの、二股がばれてお灸をすえられるのですが、その騒動が若者2人の結婚を後押しする結果となり、最後は「世の中全て冗談だ」と大団円に・・・。
重厚な歴史ものが多いヴェルディの作品には珍しくオペレッタのように軽快で、でも老年に差し掛かった騎士の人生の秋、という風情もあり、深い作品で実はとても好きな演目です。

今回は主役がこの役を最大の当たり役としているアンブロージョ・マエストリ。
肉布団いらずの天然ファルスタッフ体型で、伸びやかな声と体型に関わらずどこか貴族的な雰囲気も醸し出せるところがとても良いです。
浮気相手として目をつけられた美しい主婦アリ―チェに、世界のソプラノ、安定した実力と落ち着いた美貌のバルバラ・フリットリ。
今回の演出では狂言回し的な役どころも担うクイックリー夫人にダニエラ・バルチェッロ―ナ。
ファルスタッフをこらしめるための策略で、彼をその気にさせる場面、大げさでコミカルな演技力が光っていました。お花を盛り上げた帽子やデコラティブなブロケ―ドなど豪華な織の素材を使った衣装がキャラクター設定を上手に暗示していて、衣装もセンスあり。
ちなみにアリ―チェ親子はシルクタフタなどの上品パステルの無地で仕立てられたDiorのニューライン的なフォルムのドレスで、対比を。
小柄なメグは白黒の千鳥格子など・・と50年代調のワンピースの中にそれぞれの個性を際立たせるデザインがとても可愛い。
アリ―チェの娘ナンネッタには注目の若手イリ―ナ・ルング。伸びの良いソプラノでこれからスターになりそう!
黒髪のポニーテールにドレスとお揃いのカチューシャをしているのがとてもCUTE.
彼女の恋人、父親の反対を乗り越えて最後結ばれるお相手フェントンのアントニオ・ポ―リもチャ―ミング。
アリ―チェの夫、嫉妬深いフォードのマッシモ・カヴァレッティもハマっていて、CASTはVISUAL.歌ともに最高に役に合っていて、とても満足。

3幕ものですが、舞台転換を休憩を取らずに幕内で行い、全体を3時間という、オペラ公演にしてはコンパクトな時間にまとめて、その分大休憩を30分にした構成も良かったと思います。
これなら終演後食事に行けますね^^
東京文化会館のホワイエはソワレのオペラ公演らしく、華やかなワンピ―ス姿の女性が多く、ロングドレスの方もお見受けしました。

指揮のダニエル・ハーディングは律動感のあるきびきびとした音作り。
英国ロイヤル・オペラと共同制作のロバート・カーセン演出は、ファルスタッフをイギリス貴族とした設定。
1950年代風のブルジョワ(アリ―チェたち、フォード家)対旧貴族文化(ファルスタッフを)の対比を場面設定の舞台美術で強調した演出でとても好み。

ファルスタッフをがねぐらにしているガ―タ―亭が、オーク材を象嵌細工にした壁面に整然と並んだ白いテーブルクロスに黒いお仕着せの給仕たち・・・と英国のクラブのような壁面に馬術の銅版画?が飾られている重厚なもの。


対するドタバタ喜劇の舞台となるフォード家のキッチンはパステルカラーで、「奥様は魔女」の世界。
川に落とされたファルスタッフを表現するのに大騒ぎの末に窓の外をのぞきこんだフォードが大量にはねた水を浴びる・・・というのが2幕最後のビックリ演出。



対して第3幕1場は、川に落ちたファルスタッフがたどりついた厩で、干し草にくるまって暖をとる彼の向かいには干し草を食むリアルなお馬が!

この、水と馬、というのがカ―センの驚き演出と言われていましたが、思ったほど違和感なく物語に溶け込んでいました。
再び夫人たちにだまされて、ファルスタッフがシカの角の扮装をして出かけるのが2場の夜の森の場面。

暗いブルーの照明に浮かび上がるシルエットが幻想的。
彼はここで、美しいエウロペを手に入れるためにゼウスも牛に姿を変えたのだ・・・と独白。
こっけいな役どころではめられるシーンですが、女性に夢中で目がくらみつつも、教養がにじみ出る老騎士が味わい深いところです。
3場での大団円の祝宴ではシャンデリアの下、白いテーブルクロスが黒と赤で正装した男女との対比で鮮やかな場面・・・と舞台上の場面毎のテーマと色彩設計が明確でセンス良く、目にも耳にも心地よい舞台。



だまされて、人々に人妻に手を出す肥った欲深い男として糾弾されるも、平謝りに謝って、やれやれ・・・と人生全て冗談・・・と、この騒動に乗じて結婚を認めてもらえた若いカップルを祝福する余裕とエスプリに満ちたファルスタッフ。
食べ散らかした食卓が並んだ部屋の中央、大きなベッドにオールインワンのグレーの下着姿で飽食後の昼寝をむさぼる冒頭やみじめな厩、ご婦人がたとの密会に心躍らせてお洒落して出かける赤いジャケットにステッキ小脇の小粋な姿・・・の対比といい、実に緩急のタズナの取り方を心得た、と言わんばかりの演出と演技、でした。


バイエルン国立歌劇場日本公演「ローエングリン」 ②

2011-10-30 09:09:04 | OPERA
2011年9月29日
NHKホールでの バイエルン国立歌劇場東京公演。
「ローエングリン」



演出はリチャード・ジョーンズ。

始まる前から後ろ姿のオーバーオール?姿の人が、図面を引いている模様・・・
舞台には煉瓦で土台が組まれています。
この「家」がブラバント王国建設のメタファーとなっていて、
1幕の間、皆で煉瓦を運んでは積み重ね、なんと休憩時間にも作業が続き終幕では家として
完成している・・・という構図。
エルザ姫も、結婚式の白いドレス姿になるまではこのオーバーオールに三つ編みヘアーの
田舎の子供みたいな姿ですし、白鳥の騎士もブルーのシャツを裾出しで着ていて一緒に
家の建設に軽作業で参加しているし・・・。
ドイツ系の歌劇場では主流派の、現代版の衣装、簡素なセットでのモダン演出。
まぁ、今堂々と王子様として白鳥の張りぼてボートに乗って現れるのも厳しいかとは思うので、
これはこれでありかもしれません。
それにしても、合唱の国民たちが、みな、ボトムスは男性チノパンかスラックス、女性はグレーのプリーツスカートなどの普段着に揃いの青いTシャツとはどこまで衣装代がかかっていないのか!と。
・・・ここまで徹底されるといっそ清々しいですけれどもね^^;


【第1幕】

舞台上にはすでにエミリー・マギーが。
延々と後ろ姿で製図し続けています・・・。

いきなり、ケント・ナガノが現れて序曲演奏。
あれ、これってもっと美しいワクワクするような曲ではなかったかしら?
ちょっと思っていた曲とはテンポが違うのか、なんとなく入り込めない演奏でした。

舞台の上では、家(=国?)の建設に携わる人々。
事務職らしいかっちりした服装の、テルラムント率いるホワイトカラー、
オーバーオールを着たエルザ側に立つブルーのラフな服のひとがブルーカラーという位置づけか。

行方不明の弟、父公亡き後のブラバントの後継ぎの殺害の嫌疑をかけられているのは姉娘エルザ。
追求するのは、番頭役であったテルラムント伯爵。
彼はエルザに求婚して拒絶の憂き目に合った過去を持ち、今は魔術を使える家柄の良いオルトルートを妻としています。
裁判をつかさどるのは国王フリードリヒ。
彼は、徴兵に協力してもらえるブラバント公国の行方に関心を持っている模様。
テルラムントは、武勲をあげていて、一定の信頼を国民からも得ている人物なので、
頼りなげなエルザには不利な状況。

エルザがかけられようとしているのは火あぶりの刑。
着々と準備が進められている中、彼女のために動く騎士はいないのか?との呼び掛けに応えてきたのは
エルザが夢で見たと歌った騎士。

・・・。上手から、白鳥を小脇に抱えてとことこ歩いて

白鳥の労をねぎらい、オルトルートの前で一瞬視線を合わせて対決の構図。
まさにこのオペラの善悪の象徴が一瞬火花を散らす瞬間ですね。

エルザに問う騎士。
わたしが誰で、どこから来たのか問うてはなりません。その誓いをあなたは守れますか?
守ります。ではあなたを愛し、あなたのために闘いましょう。

明らかに強そうなニキーチンですが(彼は、刺青をたくさん入れていますね^^;これは素で入っているものだと思いますが敢えて消していませんでした)ほとんど不動でポーズをとる穏やかな巨漢ボータに向うと、勝手に剣から火花が出て、取り落してしまいます。
勝負あり。
命は預かろう、ということで訳の分らぬままに追放の憂き目にあうテルラムント。
ニキーチンは声質はキレイだと思いますが声量がやや足りないか。
妻の尻に敷かれる男(え?)の役なので、違和感ありませんでしたが^^;

【第2幕】

騎士は自然に人々の輪に入り、テーブルにニスを塗ったり溶け込んでいます。
家の建設が再開されました。

前景の上手の椅子にはその様子を眺めて次の手を考えるオルトルート。
マイヤー様はショートカットで、地味な色の襟もとが深いシャープなワンピース姿。
突出した知性を感じさせるキャリア女性的な趣でカッコいい。

短絡的なテルラムントはピストル自殺を図るが、オルトルートに止められます。
舞台を前後に仕切る壁が降りてきて、2人の部屋の情景に。
魔女であるオルトルートは、騎士の勝利が魔術によるものだと喝破。
名を秘すのは魔術が溶けてしまうのを防ぐ意味。
エルザに禁断の問いを発せさせましょう。

建設途中の家から出てきたエルザにオルトルートが近づきます。
「不幸な女(ひと)」と呼びかけるエルザ。
その高慢さに内心の苛立ちを押さえつつ取りいるオルトルート。
エルザのエミリー・マギーは無難に歌いこなしていて演技もしていますが、声に心が繊細に反映されるところまでは行っていないかも。
オルトルートの表と裏の顔を使い分ける達者さはマイヤーが上手ですね。
(設定もそうなので違和感ありませんが^^;)



朝が来て、家は完成間近。

人々が家の中を整え、結婚式の準備をします。

奥の部屋は寝室。
手前の部屋にテーブルと十字架がおかれ、教会も兼ねて、ここで式が執り行われます。

白い婚礼衣装のエルザが登場。
つき従うのはダークグリーンのドレスのオルトルート。

天井から屋根が降りてきて家は完成。
なんとソーラーパネル付(ドイツらしくて笑えました^^)。

オルトルートが言葉巧みにエルザを追いこみ、騎士への疑念を植え付けます。

騎士と国王が登場。

ベランダにテルラムント。
なぜこの男が!
皆の前で、問いを発するテルラムント。
その男の名前を聞きたい。
その男に応える義務はない。わたしに問えるのはエルザだけだ。
でも、そのエルザは、出会いの場面ですでに問うことを放棄させられています。

それぞれが心の内を歌う重唱。
はっきりと聞こえてくるのはボータとマイヤー。

テルラムントに詰め寄られながら、エルザは結婚誓約書にサインをします。
ローエングリンはチェックマーク。
その手もとが、舞台天井近く中央の丸いお知らせマーク(朝が来たら鶏とか)に映し出される趣向。

ここで、あの有名な結婚行進曲が鳴り響きます。

この曲って微妙ですよね・・・。しごく当然のように結婚式に使われていますけれど、このオペラの文脈の中では、秘密があるがために直後に破綻する絆の流れが見えているだけに、末永くの幸せを願う結婚式にふさわしいのかどうか・・^^;
それを言うなら、椿姫の乾杯の歌が披露宴などで歌われるのも微妙ですが^^;

それはさておき、無事に式を見届けた人々が手を振りながら掃けていき、ようやく2人きりになるエルザと騎士。

【第3幕】

さて、ここからが聴きどころ!
ふたりきりだね。甘い二重唱。
あなたの名を呼びたいわ、愛しい人。
信頼があるのだから、光の国から来たのだと信じてほしいと諭すローエングリン。
あなたがどこから来たのかがわからないわたしは、いつあなたがそこに戻らないともわからない心配に常に苛まれるのです。
自分だけには打ち明けてほしいと懇願をはぐらかされて、エルザは止まらなくなります。

約束しただろうと言われても、そもそも真の愛は相互理解なくしては生まれないもの。
もともとの縛りが無理だった、ということなのですが・・・。

遂には、白鳥が彼を連れ戻しに来る妄想が始まり、2人の甘い初夜は幻となるという場面までの心理戦。

そこに隙をついて騎士を倒そうと機をうかがっていたテルラムントが駆け込み、そして倒されます。
・・・沈黙。エルザ退場。
寝台に傍らのベビーベッドを載せてガソリンを撒き、火をつけるローエングリン。

幕が降り、幕前で憤慨した様子で剣を突き立て去っていくローエングリン。

ここで、パイプオルガンの辺りに、出現したトランペット隊が・・・。
金管BRAVI!
素晴らしい演奏でした。
彼らは王の伝令が何かを伝えるたびにも登場するのですが、伝令と揃いの衣装が可愛い^^

再び、広場に集う人々。
英雄が現れるのを待っています。
テルラムント以上の勇者ゆえ、さぞ頼りになる騎士団を取りまとめてくれるであろう。
国王も期待を持って、待ちます。

そこに思いがけない、騎士の告発。
エルザが誓いを破りました。
テルラムントの屍が引き出されます。

ここから、名と出自を明かす騎士、ローエングリンの独唱が延々と・・・
ボータ、素晴らしい。

これぞワーグナー、これぞ聖杯の騎士。
栄光に満ち溢れた聖なるモンサルヴァ―ト。

白鳥が迎えに来た。

別れの時だ。エルザに指輪を渡して去る騎士。
行ってしまえと毒づくオルトルート。手先は鉄砲となって命を落とすも、本当の巨悪は残るのですね。
コワいわ・・・。

ローエングリンは白鳥を抱えて現れ、一度はけて、今度は男の子を連れてきます。
弟です。正当な領主が戻ってきました。

凍りつく人々を残して、ローエングリンは去ります。
残された人々は互いに銃を向けあい、アナウンスの映像には向かい合った銃の絵が。。。

え、これってまた殺戮の場に?それとも集団自殺?

演出の意図は今一つ不明なれど、ボータの絶頂期の歌唱を聴けたこと、マイヤーの必ずしもBESTコンディションとはいえなかった声ではありつつ、それを凌駕する存在感と演技力でとにかく満足。
善悪両巨頭?の歌唱が全てを牽引して見せ切ったこの日の「ローエングリン」でした。






バイエルン国立歌劇場日本公演「ローエングリン」 ①

2011-10-29 09:37:53 | OPERA
すっかり一月も前のお話になってしまいましたが^^;
記録に残しておきたいので、9月のバイエルン歌劇場日本公演について・・・。



「ロベルト・デグリュー」「ナクソス島のアリアドネ」と「ローエングリン」の3本を持っての来日公演。
この中では、グルヴェロ―ヴァの鉄壁のソプラノを堪能できる「ロベルト・デグリュー」にも少し惹かれたのですが、今までキャスティングが難しそうだなぁ・・・と観賞を控えていた「ローエングリン」にヨナス・カウフマンが!しかもオルトルートにワルトラウト・マイヤー様が!という時点で決めておりました
しかし・・・震災後の日本に全く来る気がないのかどうなのか、カウフマン、METに続いてバイエルンもCANCEL・・・。
いえ、もちろん、手術の必要があるため、という理由により、「残念ながら」のスタンスではありますが。
今回の来日公演も、スター歌手、合唱団、オーケストラに至るまでかなりの参加拒否があったとか・・・;;
舞台裏は相当大変なことになっていた模様ですが、「ローエングリン」に関しては、カウフマンの代わりになんとヨハン・ボータという実力では凌駕している名歌手が参加してくれました。

「ローエングリン」といえばワーグナーに貢いで現実逃避、白鳥城で有名なノイシュバンシュタイン城の城主、バイエルン公ルートヴィヒ2世を思い起こさずにはいられませんが・・・。



ヴィスコンティの映画「ルートヴィヒ」でのヘルムート・バ―ガ―の名演、エリザベート役のロミ―・シュナイダ―の美しさを思い起こすまでもなく、この耽美な物語と音楽にハマったルートヴィヒがお城の中に池を作り、白鳥のボートを浮かべて乱痴気騒ぎを・・・というあの場面、それはこういうイメージから来るのですよね。

弟殺しの裁判にかけられた、親を亡くした公爵令嬢エルザ・フォン・ブラバント。
告発したのは、賢い野心家の妻、オルトルートにけしかけられたテルラムント伯爵は、亡き公爵に娘に求婚する権利を与えられたにも関わらず、エルザの拒否にあったという恨みもあるとはいえ、勇猛な武人。
夢遊病者のような頼りないエルザは圧倒的に不利な立場に追い込まれています。
彼女を救うものはいないのか。
裁判をつかさどるのはハインリッヒ王。
そこに湖の彼方から白鳥の曳く小舟に乗って現れたのは美しい騎士。
彼の魅力に取りつかれた一同は、彼が擁護するエルザを即座に許し、彼の妻になるというエルザともども、ブラバントの新しき王として歓迎します。
当初の問題は何も解決していないのに、この憂いに満ちた高貴な騎士に疑いを持つのはオルトルートのみ。
名前と身分についての質問を封じることを謎の騎士から命じられた新妻エルザに、オテロのイア―ゴの如くとりいって、ついに禁断の問いを口にさせてしまいます。

初夜を前に、結婚の契約は破綻。
騎士は、皆を集めて、自らを聖杯の騎士と名乗り、もとの聖なる国に帰りニ度と戻らないと宣言。
白鳥が騎士を迎えに来て、行方不明の弟が姿を現します。
魔術を使えるオルトルートが弟を白鳥に変えていたのでした。。。。

なんとも不思議な味わいのこの作品。
白鳥の騎士に皆が魅入られてしまう・・・というこの場面を納得のいくものにするためには
美しい音楽はもとより、説得力のあるVISUALが必要では・・・と常々思っていたわたくしが、これだと膝を打ったのがカウフマンの騎士ローエングリンだったのですが。

ヨハン・ボータですと・・



こうなりますから^^;
あ、いえ、声と表現力はもう、超一流のヘルデンテノールで、ワーグナーものにピッタリですので、
何の問題もないのですが^^;

でも、出来れば「白鳥の力士」ではなく「白鳥の騎士」を見て観たかったデス・・・




2011年9月29日(木)16:00開演(会場:NHKホール)


リヒャルト・ワーグナー作曲
「ローエングリン」 全3幕

Richard Wagner
LOHENGRIN  
Oper in drei Akten


指揮:ケント・ナガノ
Musikalische Leitung Kent Nagano
演出:リチャード・ジョーンズ
Inszenierung Richard Jones
美術・衣裳 :ウルツ
Bühne und Kostüme Ultz
照明:ミミ・ジョーダン・シェリン
Licht Mimi Jordan Sherin
合唱指揮:ゼーレン・エックホフ
Chöre Sören Eckhoff


ハインリッヒ王:クリスティン・ジークムントソン
Heinrich der Vogler Kristinn Sigmundsson
ローエングリン:ヨハン・ボータ
Lohengrin Johan Botha
エルザ・フォン・ブラバント:エミリー・マギー
Elsa von Brabant Emily Magee
フリードリヒ・フォン・テルラムント伯爵:エフゲニー・ニキーチン
Friedrich von Telramund Evgeny Nikitin
オルトルート:ワルトラウト・マイヤー
Ortrud Waltraud Meier
王の伝令:マーティン・ガントナー
Heerrufer des Königs Martin Gantner

ブラバントの貴族:
フランチェスコ・ペトロッツィ、ケネス・ロバーソン、ペーター・マザラン、タレク・ナズミ
Brabantische Edle Francesco Petrozzi, Kenneth Roberson, Peter Mazalán, Tareq Nazmi
4人の小姓:バイエルン国立歌劇場合唱団ソリスト
4 Edelknaben Solistinnen des Chores der Bayerischen Staatsoper

バイエルン国立管弦楽団/バイエルン国立歌劇場合唱団
Bayerisches Staatsorchester/Chor der Bayerischen Staatsoper


◆上演時間◆

第1幕 Act 1 16:00 - 17:05(休憩 35分)
第2幕 Act 2 17:40 - 19:00(休憩 35分)
第3幕 Act 3 19:35 - 20:40