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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

Prix de Lausanne 2007 ②

2007-04-29 02:04:45 | BALLET
今回印象に残ったファイナリストは、嬉しいことに日本人、河野舞衣さん。


ミュンヘン・バレエ・アカデミー所属の17歳。
2年前にもローザンヌに挑戦されているとのことですが、今回の方が断然大人っぽくて踊りの質も内容も良く、表現力のあるきれいなダンサー。

クラシック・ヴァリエーション1ではグラン・パ・クラシックで絶妙のバランスを見せて、観客の拍手を受け、コンテンポラリーのキリアン作品では、他の参加者が選ばなかった「ワン・オブ・ア・カインド」を黒のホルターネックのレオタードと透けるスパッツでシックな雰囲気で踊り(大原さんは河野さんはクラシック向きでコンテンポラリーには向いていないとおっしゃっていましたが、わたくしはこの作品の河野さんも好きでした)。
この写真のクラシック・ヴァリ2の「ライモンダ」では緩急自在にアクセントと表情がつき、一つの作品として見せる力がある、と感じました。

彼女のとても好きなところは、手を遠くに伸ばすときにどこまでも果てしないところまで行ってしまいそうな表情とタメを一瞬つけるところ(しかも音に遅れない)。振付やポージングに心を砕く段階ではなく、明らかにそれらを租借して次の段階に行っている、ということですね。
観客賞を取ったのは嬉しい。スカラシップ賞2位でしたが、1位の韓国のパク・セウンさんよりも細部に心が行き届いていて良かったと思うのですけれども・・・。
まぁ、順位は視聴者が見ている決選だけでなく、前日の準決選の様子も含めての得点とのことなので、なんともいえませんが。

後は、同じく日本人(とフランス人のハーフ)でイングリッシュ・ナショナル・バレエ・スクールの吉山シャール・ルイ・アンドレ君、17歳。
最初のグランパはちょっとキメがない演技で、最後のドンキも客席に対しての角度が甘いと指摘を受けていましたが、キリアン作品、「27分52秒」より、では踊りに緩急があり、スリリングな演技で別人!コンテンポラリーの身体の使い方を知っているな!と感心。彼はやはり、というか、スカラシップは逃したものの、コンテンポラリーダンス賞を受賞していましたね。

ほとんどの参加者が17歳の中、一人だけ15歳のポルトガル人縮れッ毛のテルモ・モレイラ君も、技術力はこれから、と言う感じも残しながら、短い(としか言いようがない)ボディに長~い脚、チャーミングな笑顔で、観客の眼を惹きつける存在感のあるダンサー。無事、スカラシップ5位。

好感が持てる踊りは、イギリス人2人。
女性のディーリア・マシューズは16歳ながら落ち着き払った物腰とかっちりまとめた夜会巻(お団子でなく・・・結構好きかも。大人っぽくてキリッと見える)が印象的。クラシックヴァリではどちらもバヤデールを選んでいましたが、バランスが得意で、振りを省略することなく、きっちり踊りこんでいるところに見ていて安心感が。
コンテの「27分52秒」もメリハリと、語るべきものを持って臨んでいる感じで振り付けに振り回されていない確実性を感じさせ、バランスのとれたダンサーと見ましたが。スカラシップ6位。

イギリスの教育方針なのか、彼の性格なのか。男性のジェームズ・ヘイはとてもきれいな楷書体の踊り。最初のグランパクラシックもきれいだったし、最後のドンキもピルエットの速度も充分できっちりとした踊り。コンテは「27分52秒」で、黒一色のレオタードでこれまた楷書体の踊りながら、それはそれでアリかと。顔立ちがキチッと濃くて整っていてヘアスタイルが7・3っぽいので、サンダーバードの人形のよう(誉めてます)。クラシックヴァリ2、では衣装は稽古着指定なのですが、白のTシャツに黒の8分丈パンツ白のタイツとシューズで足元が軽やかできれいなバランス。センスも悪くないと。濃い顔だけれどもラテン系ではないので、ドンキというよりダンスール・ノ-ブル系の踊りが似合いそう。スカラシップ4位。

韓国からの女性2人はともにプロポーション抜群で、長い手足をダイナミックに使って伸びやかに踊るタイプ。
スカラシップ3位のキム・チェリはアップになったときのゴールドラメのアイシャドウに一瞬引いたのですが16歳ということで伸び代も加算されたか?最後のライモンダのときの表情、ちょっと泣き顔で眉間に皺っぽくあまり好きではなかったのですが・・。

スカラシップ1位のパク・セウン17歳は、最初のジゼルで最後のキメのポーズで崩れるが、伸びやかな演技とキレイな姿、最後のバヤデールで長い脚をダイナミックに使う様は印象的なれど、2人とも選んだコンテの「ブラックバード」はあまり響くところのない演技だったかしら。

というより、わたくしが作品として「27分52秒」(好きなダンサーは皆これを踊っている!)が好きで「ブラックバード」が嫌い、ということなのでしょうか

勝手なことを言っていますが、本当に楽しい番組!
できればフランス版の解説付きバージョンを地上波でなくても良いので復活してもらいたいものです








Prix de Lausanne 2007

2007-04-28 23:58:32 | BALLET
28日(土)の午後3時から2時間、2月4日にスイスのボーリュー劇場で開催された第35回ローザンヌ国際バレエコンクール決選の模様がNHK教育で放映されました。



毎年楽しみにしているこの番組、いつも連休中の午後にひっそりと放映されているので見逃さないようにするのが大変!
とはいえ、未来のスターダンサーの若き日の才能の芽を見つけるチャンスでもあり、世界のバレエ地図を占う意味もあり、とても興味深い番組です。
惜しむらくは、以前は解説がフランス(スイス?)の放送の翻訳だったので、当時のパリオペラ座バレエ学校校長のクロード・ベッシーさんや、元オペラ座エトワール、クロード・ド・ヴォルピアンさんの辛口コメントがもれなくついていたのが、今は新国立劇場バレエミストレス大原永子さんと黒崎めぐみアナウンサーの至って真っ当な解説にかわってしまったことでしょうか・・・。

以前はクラシック、コンテンポラリー、フリーという3部構成だったのが、去年からクラシック1、コンテンポラリー、クラシック2と変化。フリーの場合、いい作品を選べるかどうかという選択眼がダンサーの資質以上に結果を左右されることが問題になったから、だそう。
確かに・・・。
でもロシア方面からの参加者の謎の(時代錯誤のロックテイストやアリーナ・コジョカルの伝説の?!ダルタニヤンなど)フリー作品に驚いたり、自作の作品が意外とアイデアに満ちて面白いものだったり、というサプライズがなくなってちょっとまじめなコンクールになってしまったのは残念なところ。まぁ、元来まじめなコンクールなのでそれで良いのでしょうが。

さて、今回の決選参加者は168人の応募からビデオ審査で絞られた、準々決選参加者65人から更に絞られた12人。国籍性別は、多い順に、日本男2女1、韓国女2、中国男2、英国男女各1、ポルトガル、スペイン各男1、ベラルーシ女1.
ローザンヌの賞は、基本的にスカラシップで、ヨーロッパの名門バレエスクールに留学するチャンスを与えることにあるので、アジア勢が多いのは自然の成り行き。以前はキャッシュプライス賞があって、賞金狙いのロシア名門バレエスクール在学生が素晴らしいクラシックバリエーションを見せてくれていたものですが、この賞が廃止されて一層アジア色が強まったのもまた納得。
只、ここ数年のアジアからの参加者の身体的ディスアドバンテージの消滅ぶりは朗報。中国などは選びに選らんだ人材を投入しているので、スタイル抜群(シンクロみたいですね)はあたりまえ。広い国土ゆえ、厳選されたと見え、かなりの美女が参加していたのですが、今回は男の子だけでちょっと残念?

そういえば、今回は男の子の方が決選参加者、多いのですね。
サポート役から、主役の一端として時としてプリマバレリーナ以上の存在感を見せる男性バレエダンサーには、女性の多いバレエファンがなびき、そういう現状を見て、バレエ界を目指す男子が増えている・・・という状況が投影されているのだとか・・・






コンサート「ペール・ギュント」グリ-グ尽くし

2007-04-28 03:01:46 | MUSIC
26日、木曜日、王子の北とぴあさくらホールにて、
東京ニューシティ交響楽団第50回定期演奏会に行き、グリーグの4つのノルウェー舞曲、ピアノ協奏曲、そして組曲「ペール・ギュント」を聴いて参りました。


ノルウェーの作曲家、グリーグの今年は没後100年にあたる年らしく、珍しくグリーグ尽くしの演目。
レアな試みだ・・・と思いきや、曲は耳にすると、あぁ、この曲!と膝を打ちたくなるような親しみ深いメロディーの数々。
ピアノ協奏曲は、病弱だったグリーグが結婚し娘が生まれて幸せ一杯の時期に書いたという、ロマンチックかつドラマチックなもの。”北欧のショパン”と言われていたのも納得で、今回のピアニスト三輪郁さんもしっかりとした演奏で良かったのですが、これはルイサダやブーニンのような、やや硬質の華麗な音を出すショパン弾きで聴いてみたいかも・・・と思わせる曲でした。

また、「ペール・ギュント」と言えば、小学生の音楽の教科書にも出ていたのでだれもが思い浮かべる「朝」の旋律が有名ですが、聞いていると他にも名曲がいっぱいで楽しい!
「アニトラの踊り」って5年ほど前のローザンヌでマリナ・シトロヴァというウクライナからたった一人で来たという15歳の女の子が(この年スカラシップと視聴者賞を取った)自作の「蜘蛛」という作品で使っていた曲ですね!(と、こんなところでもワクワク

今回、珍しい試みがありました。舞台上で、「ペール・ギュント」の物語のモノローグが俳優の柄本明によって演奏の合間に挿入されたのです。
原作はイブセンですが、もともと民話を採取して再構成したハナシでとても奇想天外で面白い。


おちぶれた豪農の息子ペールは母オーセに溺愛されている。
ある日、良い仲だったこともあるイングリが結婚すると聞き、式に赴きそこで純真な娘ソールヴェイと出会う。彼女に惹かれながらも酒のいきおいでイングリをさらって山に逃げるが飽きて捨て、緑の衣の美女に出会う。「山の魔王の宮殿にて」
豚に乗って美女の宮殿に行くとそこはトロルのドブレ王の地。美女は王女であった。
仲間にされそうになり抵抗するペール。すんでのところでオーセが鳴らした教会の鐘の音でトロルは消え去る。
イングリ誘拐の罪で財産を没収され森に小屋を建てるペール。そこに現れたのはペールと人生をともにする決心をしたソールヴェイ。しかしトロルの娘がペールとの息子を連れて登場。逃げるぺール。
逃亡の前に母を訪ねるが、オーセは病床にありペールの腕の中で息絶える。「オーセの死」
故郷を離れた彼は、奴隷貿易を始め、長い年月の間にあこぎな商売で財をなす。
仲間の裏切りで一文無しになるが、砂漠で貴族の馬と衣装を手に入れ、族長の娘アニトラを誘惑しようとするが、だまされて身包みはがれ、故郷に帰る。「アニトラの踊り」彼を柄杓に入れて溶かし、ボタンにしてしまうと言う死神が現れる。ペールは、自分を十把一絡げにチンケな悪党と一緒にされては困ると去勢を張るが、彼が偉大な悪人であるという証人は現れない。
山に帰ると老女になったソールヴェイが彼を信じて待っていた・・・・。「ソールヴェイの唄」



(曲名をクリックするとMIDIでメロディーを確認出来ます)

とまぁ、なんというお話なのでしょう。・・・突っ込みどころ満載です~
これを柄本氏の絶妙の語り、そして山瀬理桜による珍しいハルダンゲル・ヴァイオリンの演奏も挿入され、しばしノルウェーの山野をそして七つの海を駆け巡る海の民、バイキングの子孫、ノルウェー人の心の故郷にふれる思いのひと時でした。

今回はA氏のお誘いで、この演奏会を知ったのですが、A氏の高校時代の同級生でいらしたという指揮者の曽我大介氏がこのオーケストラの首席指揮者であり、今回の演奏会の企画・脚本作りも なさったとか。

ウィーンを拠点に、ルーマニアの国立オーケストラの指揮を長年されているそう。中々の才人ですね。HPにてほぼ毎日更新されているブログも面白いですよ。



吉田都さん「Professional」に出演

2007-04-24 19:48:09 | BALLET
ロイヤルバレエのゲストプリンシパルであり、熊川哲也のKバレエ・カンパニーのプリマとしても新作「海賊」の初日(5月11日)が待たれるバレリーナ吉田都さんが、
NHK総合今夜(4月24日)10時からのドキュメンタリー「プロフェッショナル~仕事の流儀」に取り上げられ、その華麗にして過酷な日々をレポートされるとか・・・。


必見!!ですね。
わたくしも風邪をこじらせて寝込んでいる場合ではなく、これは観なくては!です

NHKのHP

取り急ぎお知らせまで・・・

観ました!
ロイヤルでの「ラプソディ」の公演準備の緊迫した状況から始まり、(舞台もちょっと映って嬉しい)、9才でバレエを初め、17歳でローザンヌで賞を取り、29歳でロイヤルバレエのプリンシパル、34歳で腰を痛める故障で人生観が変わり41歳の現在まで、未だ到達できない地平を目指して踊り続ける・・・・という彼女のキャリアと人生を振り返る前半。
後半は2月のKバレエでの「白鳥の湖」公演のリハーサルをレポ。

彼女自身、腰を痛めてから、大きく上体をそらす、腰に負担のかかるポーズの多い白鳥を封印してきたのを、熊川の若手男性舞踊手を育てて欲しいとの依頼もあって出演を承諾。
輪島拓也の稽古中の怪我で急遽公演まで余すところ9日で芳賀望に相手役が変更。
ロイヤルの「ラプソディ」では、リフトから降ろす少しの角度でも細かく指示していた彼女が、最も基本的な部分の確認(白鳥が身の上話のマイムをしている間は聞いていなさい、というのはウケましたxxx)から始めなくてはならないのはどんなにヤレヤレ・・・という気持ちだったかと推測するのも気の毒な状況ではありましたが、公演は成功。
ロイヤル時代の彼女の白鳥の相手役ってブルース・サンソムをはじめ、錚々たる面々だったはず・・・。
その芳賀くんが、最後に笑顔で「吉田さんは自信を与えてくれる」と語っていたのには、都さんの人間力を感じました・・・。

腰の故障までは、周囲のイギリス人ダンサーに囲まれて容姿に関するコンプレックスで一杯、その裏返しでひたすらにバレエの練習に打ち込んできた彼女。
故障時に周囲の友人に支えられていることを実感したことから視野を広げ、人生に目を向けそれがバレエの表現を豊かにすることに気づき、また、踊れる、というそのことが尊いとわかったときから今までのコンプレックスが小さなものになったという・・・。プリンシパルになった当初、イギリスのクリティックから
”no emotion"と書かれたのが嘘のように、繊細で情感溢れる彼女の今の踊りは、このときの転機が大切な役割を果たしていたのですね・・・。
ロイヤルの楽屋(ダーシーと同室)で、バッセルが「今のレベルを維持していくためには精神的・肉体的負担が大きすぎる(ので引退する)」と都さんに語るシーンも。ダーシーも37歳で引退なんて勿体無い、まだまだ・・・とファンとしては思いますが、今のレベルを維持、ということがどんなに大変なことか、ということの裏返しなのでしょうね。
リハを見つめるロイヤルの団員たちの真剣なまなざしに、「後輩がどんどん追い上げてくるので一日たりとも気が抜けない」と語る都さんの言葉がリフレインします。

厳しくも美しい世界。45分弱の中にみっちりと中身の詰まった、よくできたドキュメンタリーでした

ちなみに再放送の予定を貼っておきます。

<NHK総合>
4月 30日 (月) 翌日午前1:55~翌日午前2:40
5月 1日 (火) 午後4:05~午後4:50

<BS2>
5月 2日 (水) 午後5:15~午後6:00



QUEEN

2007-04-23 00:39:50 | FILM
21日土曜日、日比谷のシャンテ・シネにて、最終回で、「クイーン」を観ました。



「マイ・ビューティフル・ランドレッド」「マイ・フィディリティ」などで知られるイギリス人監督スティーブン・フリアーズによる2006年作品。
ダイアナ妃の悲劇的な事故死に際しての、王室の対応、世論の流れ、その乖離を埋めるべく奔走する若きトニー・ブレア、そして渦中にあるエリザベス2世の戸惑いと決断を描く、王室ヒューマン・ドラマです。

公式な伝記作家の記述に基づくとはいえ、あくまで憶測に基づいた10年前の事件の再現であり、その時点での登場人物の心の動きは全くのフィクションであるとは知りながら、さもありなん・・・と納得させる流暢な語り口。

女王に首相に任命されるに当って、王政廃止派の弁護士シェリー夫人とともに謁見する、それでも緊張してしまう若きブレア首相と、対照的に若き日にチャーチルと謁見して多くを学んで以来、歴代首相と対峙してきたエリザベス女王の余裕ある対応を見せる冒頭。

そして1997年、パリでチャールズ皇太子とはカミラ夫人問題で離婚後のダイアナ妃が、婚約者と目されるドディ・アルファイド氏と事故死。

離婚後の事故、ということで慣例にのっとって、生家の意向にそった個人葬を基準に考える王室メンバーと、地雷撲滅運動など、持ち前の美貌とナイーブな魅力と相まってその活動で王室メンバーを超えた影響力を持つようになったダイアナに対する世間の評価の高さとのズレが次第に深まり、王室の対応の冷淡さに世論が攻撃の矛先を向けるようになります。

このあたり、王室には王室の基準があることを理解させるとともに、挿入される生前のダイアナのシャイな笑顔、マスコミに流された多くのイメージ画像が国民の期待を反映しており、明確な対比が女王の置かれるアンビバレンツな状況を良く現していると言えましょう。
国民の愛情がダイアナに注がれ、自分の人生を捧げた仕事の対象である国民からむしろ憎まれている?という現状認識がTVのニュース、新聞の一面(これらを女王は実にしっかりと見ている)から感じとられ、正しい判断を行うための基礎資料として冷静にチェックしつつも、その状況に密かに傷つき、またそれを乗り越える強い克己心を見せる、人間としての女王が、この作品で今年アカデミー主演女優賞を受賞したヘレン・ミレンからしっかりと伝わります。

その女王に適切なタイミングで助言を行い、少しでもその乖離を埋めようと奔走するブレア首相。
シェリー夫人が、初めに、女王とブレア首相の母親世代の共通項、”戦争を体験してきた世代・・・我慢強く不平不満を口にしない、背筋が伸びていて凛としている”ことからあなたマザコン?と揶揄するところから、後半「歴代の労働党党首の首相が、最後には女王にメロメロになってしまうのよね」といみじくも言ったように、女王の最大の理解者であり、賛美者として描かれているのは・・・実際のところは果たして?とも思われますが。
しかし、これも、朝晩ニュースを見、あらゆる緊急の知らせを受ける寝室でのアンゴラのガウンを羽織ったプライベートルック、ロンドンを離れて田園生活を行う際のアウトドアルック(必ずスカーフを頭に巻くのがポイント)、そして謁見の場でのフォ-マルなシンプルワンピースに真珠のネックレス、ダイヤのブローチの3点セットのオフィシャルスタイルの3パターンのみで、女性として、言動の全てを周囲の意見に惑わされることなく常に明瞭な判断力で選択していくことを迫られる人生を着実に歩んできた女王として、その魅力を最大限に発揮している往年の(今でもスタイル抜群で美人!)グラマー女優、ヘレン・ミレンの持ち味と演技力に負うところ大ですね。
ピーター・グリーナウェイの「コックと泥棒、その妻と愛人」で泥棒の妻を演じていたときの、愛人と食肉運搬トラックの中にいる肉感的なお姿に、あぁ、肉食人種は違う・・・としみじみ思った覚えが(笑)。あれはグリーナウェイ演出の濃厚さゆえ、というハナシもありますが。
同じアカデミー女優でもジュディ・デンチでは、傷ついた女王の思わず手を差し伸べたくなるようなはかなさは出なかっただろうな~と。

かなり、王室寄りのバイアスがかかっているのですが、皇太子チャールズは同年代として共感のTELを入れたブレア首相から、「気味悪い」とコメントされてしまうトホホな役どころ。
国民の母として敬愛されているエリザベス女王の偉大さを感じさせるとともに、将来のイギリス王家の地位の不安定さに思いを馳せずにはいられませんでした・・・。

外国人のご年配のカップルが中心、という珍しい観客層のこの日のシャンテでありました。