今年のバレエ観賞始めは、
マラーホフ芸術監督率いる、ベルリン国立バレエ団
2011年日本公演の「シンデレラ」全2幕 から
実は、舞台鑑賞始めは、宝塚大劇場の雪組公演「ロミオとジュリエット」、
そして、東京宝塚劇場の宙組公演「誰がために鐘は鳴る」で、スタートしたのですが(また後日語ります^^)
東京文化会館の深紅のベルベットの幕が織りなすドレープの陰影を眺めながら、生オーケストラの演奏で、
プロコフィエフの「シンデレラ」のあの美しい前奏曲を聴いていると、
やはりこの劇場空間こそがホームグラウンドだわ、という気分に満たされます・・・
振付・演出: ウラジーミル・マラーホフ
音楽: セルゲイ・プロコフィエフ
装置・衣裳: ヨルディ・ロイク
シンデレラ: ポリーナ・セミオノワ
ゲスト・ダンサー/王子: ミハイル・カニスキン
甘いモノ好きのバレリーナ: ウラジーミル・マラーホフ
アル中のバレリーナ: フェデリコ・スパリッタ
元プリマ/仙女: ベアトリス・クノップ
芸術監督: バーバラ・シュローダー
バレエ・マスター: トマス・カールボルグ
衣裳デザイナー: エルフィ・グンプレヒト
そのアシスタント: マルツェナ・ソバンスカ
春の妖精: マリア・ジャンボナ
お付きの騎士: アレクサンドル・コルン
夏の妖精: エリサ・カリッロ・カブレラ
お付きの騎士: アルシャク・ガルミヤン
秋の妖精: ステファニー・グリーンワルド
お付きの騎士: ウラジスラフ・マリノフ
冬の妖精: セブネム・ギュルゼッカー
お付きの騎士: アルトゥール・リル
舞踏会の人々: ヤーナ・バローヴァ、マリア・ボムポウリ、アニッサ・ブリュレ、ソラヤ・ブルノ、エロディー・エステーヴ、ヴェロニカ・フロディマ、針山愛美、ヨアンナ・ヤブロンスカ、エリナー・ヤゴドニク、アナスタシア・クルコワ、ワレリア・マナコワ、ニコレッタ・マンニ、ナターリア・ミュノス、クリスティアーネ・ペガド、巣山 葵、ヴェレーナ・サーム、クセニア・ウィースト
マルチン・アロヨス、ゲヴォルク・アソヤン、タラス・ビレンコ、ミハエル・ファトゥラ、クリスティアン・クレール、マリアン・ラザール、エイメリック・モッセルマンズ、アレクセイ・オルレンコ、ハビエ・ペーニャ・バスケス、アレクサンドル・シュパク、デイヴィッド・シミック、ウリアン・タポル、メフメト・ユマク
指揮: ヴェロ・ペーン
演奏: 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
◆上演時間◆ 第1幕 13:30 - 14:15 休憩 25分 第2幕 14:40 - 15:35
ボリショイバレエ学校時代にマラーホフに見いだされ、その後スター街道まっしぐらのポリーナ・セミオノワがイメージソース。
主演も彼女です。
バレエ団のレッスン風景からスタート。
皆、素?と思うほど自然なレッスン風景。その中にポリーナも溶け込んでいます。
モノトーンメインのお稽古着の中に二人、やたらとデコラティブなダンサーが二人・・・
甘いもの好きのバレリーナ(=マラーホフ)とアル中のバレリーナ(=フェデリコ・スパリッタ)
淡いピンクとラベンダーのまさに夢見る女の子っぽいマラーホフ、お菓子の詰まったバスケットを持ちこんで、お稽古中に自由にチョコレートをつまんだり、くまのぬいぐるみに話しかけたり・・・華のある人の小芝居にはついつい眼を奪われますが、大したことをしているわけではないので、そんなところばかり見ていると、だんだんつまらなくなってしまいます(笑)
お話としては、オリジナルのシンデレラとほぼ同じ。
意地悪な姉ポジに先輩バレリーナ二人。女性のスーツ姿の芸術監督が出てきますが、それが二人をエコひいきするという継母設定。
シンデレラの見方は中年のバレエマスターと、お稽古場に現れるかつてのプリマバレリーナ。
このプリマがシンデレラをスターに導く仙女の役割。
お約束の四季のダンサーも現れて、カブレラなど、ソリストクラスの実力派が配されていますが、今一つ、華やかな見せ場のない一幕でした。
いえ、ポリーナの踊りそのものは素晴らしいのです。
簡素なお稽古着でも可愛らしい顔キラキラした大きな瞳、小さな頭と伸びやかな四肢にバランスの良いボディ。
でもそんなポリーナの素晴らしい素質は充分わかっているわけで。
シンデレラ・・・というと、ロイヤルなどの童話に沿った芝居心、パリオペの華やか極まるハリウッド読み変え舞台などがついつい脳裏に過り・・・。世界のバレエの一流どころが年中来日公演を行っているバレエ都市=東京のバレエファンならではの贅沢な気持ちですよね^^;
そういえば、姉二人の踊りも、ドロテとエミリー・コゼットは素晴らしかったなぁ。。。
別に男性が踊る、というところで、そこまで崩さなくても、もう少し、テクニックのあるところを残して見せてほしかったかも。
マラーホフはひたすら下手くそであるとみせつける演技。特上のテクニックを持つ人に少しだけ下手に・・・というコントロールは却って難しいのかも?
まだ、スパリッタのほうが、男が演じる女性ならではのダイナミズムが見せ場に通じていて楽しかった。
赤と紫の配色のアメリカンスリーブのホルターネックの衣装もお似合い。でも、このヒト、せっかくゴージャスなのだから、胸の詰め物、ここまで下につけなくても良かったかも(笑)
笑いはいいから(かといってホントに笑えるほどでもない)、もうすこし、キレイなものをキレイなものとして観たかった・・・という一幕でした。
第2幕。
先程、レッスン中に現れたスターダンサーを囲んでの舞踏会。
ここで、相手役を抜擢する・・・という趣向らしく、芸監お気に入りの二人が張りきります・・・が自滅。
そこに登場するシンプルな美しいドレス姿のシンデレラ。
スターダンサーは彼女に釘付け。
二人のPDDは美しく、ミハイル・カニスキンの踊りもノーブルで好感が持てるのですが、身長バランスは悪くはないものの、顔の大きさが違いすぎてちょっと違和感。
まぁ、ポリーナの小顔っぷりがちょっとありえないほどのバランスなので、難しいとは思うのですが・・・。
周りの招待客たち(=ダンサー仲間)もオレンジをポリーナから手渡されて彼女を祝福します。
招待客の服装が、アイボリーからサテンのベージュ、オレンジ、イエローオ―カ―に至るグラデで一人ひとり、少しずつ異なるデザインでとてもステキ。男性はなぜかフォーマルなのにノースリーブなのが、不思議。
女性は皆、プラチナブロンドのボリュームのあるショートのグラデーションボブのウィッグをつけていてとても可愛らしく見えました。
セットの中央に時計と思しき数字の9から始まり、折に触れて刻まれていくのですが、それが12に変わった瞬間、シンデレラは慌ててその場を立ち去ります。
セットは、階段があるものの、簡素で、そこに3方向から壁が迫ってきてお稽古場になる、という趣向。
ちなみにお稽古場の時計は、劇場のリアルタイムにセットされているので、ちょっと不思議な感じ。
いつものように、意地悪な2人のダンサーが現れ、他の団員も揃い、シンデレラがいるのに気がつきますが、いつもどおりの日常がまた始まろうとします。
そこにスターダンサー登場。芸監お気に入りの二人と組まされて悲惨なデュエットダンスに辟易したスターのもとにポリーナが進み出て踊ります。君はあの!
というわけで、芸監と二人の先輩は退場、バレエマスターと元プリマと皆の祝福。
壁が後退してあの舞踏会の場面を背景に踊るスターとシンデレラ。
最後、舞台に一人残ったシンデレラ。
夢じゃないかしら?
でもピアノの上には契約書(?)と花束が。契約書(配役表?)を確かめて、花束を抱きしめて、これからのバレエ人生に希望に輝く瞳を向けるポリーナに、現実がかぶります。
これは、マラーホフがポリーナに贈った物語、だったのですね。
そう思えば、レッスン場の時計が会場の時計と同じ=リアルタイムであることにも納得です。