maria-pon

お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

「エトワール・ガラ」Bプロ 7/30

2010-07-31 15:45:32 | BALLET
Bunkamura Orchard Hallにて開催中の「エトワール・ガラ」
Aプロ2日間の次のBプロ初日に行って参りました

正直、オーチャードホールという箱が好きではないので、実のところ、テンション低め・・だったのですが、リアブコ、アッツォーニ、ブベニチェクのハンブルグ組のハイレベルなパフォーマンス、また、OPERA座チームもちょっと小洒落たプログラムでいつもとは違った一面を見せてくれるであろう・・・という期待をこめて、3階正面B席を取って行って参りました。
・・・これが意外な正解で
いつも、S席なのにこの視界の悪さは何~とストレスだったのが嘘のように、遠いといえば遠いのですが、観切れることもなくステージ全体が見渡せて障壁物もないのでオペグラも使いやすく、堪能しました!
実は時間に間に合わず、最初の2演目は観られなかったのですが、オブラスツォーワはまだしも、マチューが結構マクミランの振りをこなせていなかったらしいので、まぁ良しとします^^
なんといっても今宵のBEST,イリの振付の日本初演のパ・ド・トロワを観ることができたのが大きいです。
素晴らしい才能に拍手

とりあえず、演目をUPしておきます。それぞれの感想はまた、時間を改めて詳しく書きますねv


エトワール・ガラ Bプロ
2010年7月30日(金) 19:00開演 21:40終演
 
<第一部>

■「コッペリア」第2幕より《日本初演》(振付:J.ギヨーム・バール、音楽:L.ドリーブ)
ドロテ・ジルベール、ジョシュア・オファルト
見逃しました;;

■「ロミオとジュリエット」よりバルコニーのシーン(振付:K.マクミラン、音楽:S.プロコフィエフ)
エフゲーニヤ・オブラスツォーワ、マチュー・ガニオ
見逃しました;;が、
普段ラブロフスキー版を踊っているゲーニャはこなしていたのに、ヌレエフ版を普段踊っているから、マクミラン版が楽しみ!と語っていたマチューの振り覚えが怪しかったから観なくて良かったかも?と友人に励まされ?ました。。。
マチュー、頑張って~^^;

■ 「フラジル・ヴェッセル」《日本初演》(振付:J.ブベニチェク、音楽:S.ラフマニノフ)
シルヴィア・アッツォーニ、イリ・ブベニチェク、アレクサンドル・リアブコ

はい、この作品から観始めました。
・・・素晴らしかったです!
ライトグレーのキャミのユニタードに金髪をシンプルに夜会巻きにしたアッツォーニと同色の足首までのタイツ姿のイリとリアブコの3人が流れるような複雑なリフトを3人で、また、2人と1人になって。。。と波が寄せては返すようにフォーメーションを変えながら進んでいく作品。
このVesselは器でもあり、船でもある、との解説。人間は弱さをたたえた器である、という解釈通り、ラフマニノフの音楽にキレイに乗った流麗なネオクラシック作品ながら、どんどん精神的な深みの淵に下りていくような静けさを与えてくれる作品。
3人のダンサーの心技ともに高いクォリティと相まって、他の作品とは一線を画する存在感で、この日のBEST,でした。

■「プルースト~失われた時を求めて」より囚われの女(振付:R.プティ、音楽:C.サン=サーンス)
エレオノラ・アバニャート、バンジャマン・ペッシュ

うーん、ハンブルグ組(イリは今はドレスデンでしたね)の素晴らしさにヤラレてあまり印象に残っていません・・・^^;
白いドレス姿のエレオノラが美しかったのと、シャツにベスト姿のバンジャマンがいつもよりもリフトがきれいに決まっていたのに感心しましたが。

■「ディーヴァ」(振付:C.カールソン、音楽:U.ジョルダーノ)
マリ=アニエス・ジロ

舞台中央にスポット。
帽子、黒い手袋、ショールのようなベストをサラリと脱ぎ捨てた黒いイブニングドレス姿の女性・・・
マリ=アニエスにピッタリのドラマチック・コンテンポラリー。
アメリカンスリーブのシンプルなドレスが、彼女の凛々しい肩のラインを際立たせていました。
C・カールソンの振り付けは、ピエトラガラに振りつけていた頃からあまり変わりませんね。

<第二部>

まずは~バレ・リュスへのオマージュ~と称した3作品。

■「薔薇の精」(振付:M.フォーキン、音楽:C.M.フォン・ウェーバー)
エフゲーニヤ・オブラスツォーワ、マチアス・エイマン

マチアスのバラの精、以前観たときにはゴムマリのような若い身体から繰り出される躍動感あふれる動きに感心すれども、この作品に求められる一抹のエロティシズム、頽廃などはどこを探しても見当たらず、ちょっとスポーティにすぎる!と思ったのですが、今回、躍動感はそのままで、動きがより洗練されて、進化したマチアス、と思いました。
オブラスツォーワの少女は小柄で愛らしい容姿がピッタリ!情感と清潔感、ちょっとお人形のような雰囲気もあってとても良かったです。ハマり役。

■「瀕死の白鳥」《日本初演》(振付:D.ウォルシュ、音楽:C.サン=サーンス)
マリ=アニエス・ジロ

パーティのざわめき、舞台下手側に小さなテーブル。
客席から現れるベージュサテンのドレスの女性。カクテルグラスのシャンパンを片手に、紫煙をくゆらす・・・
背中が大きくくれたドレスの肩甲骨がくくくっと動き、音楽がサンサーンスの瀕死・・・に。
彼は来ない・・・という女性の苦悩を翼をもがれた白鳥の名残のような背中と深いスリットからスッと出したハイヒールの片脚が雄弁に語るショートピース。
3作品のうちの1点なので、こういうものもアイデアとしてアリかも、と納得しましたが、もし、2作品しか踊らないうちの1つなら残念に思ったことでしょう。

■「牧神の午後」よりプレリュード≪世界初演≫(振付:D.ボンバナ、音楽:C.ドビュッシー)
エレオノラ・アバニャート、バンジャマン・ペッシュ

アブストラクトな筆描きっぽいプリントのモノトーンのキャミユニタードのエレオノ―ラが牧神。
しなやかなベージュのサテンTOPに黒のショーツのバンジャマンがニンフ?
男女を逆転させて、最後、残されたベージュのサテンを顔に載せて・・・がエレオノ―ラ、というアイデアもの。


■「幻想~“白鳥の湖”のように」第1幕より(振付:J.ノイマイヤー、音楽:P.I.チャイコフスキー)
シルヴィア・アッツォーニ、アレクサンドル・リアブコ

リアブコがすっかりルートヴィヒになりきっていました。
パセティックな演技は相変わらず素晴らしい・・。

■「プルースト~失われた時を求めて」よりモレルとサンルー(振付:R.プティ、音楽:G.フォーレ)
マチュー・ガニオ、ジョシュア・オファルト

肌色のウエストまで刳れたユニタードのふたり。
マチュ-は相変わらず美しいなぁ・・と観ていたら、オフォルトの洗練に驚かされました。
こんな端正な踊り方をするダンサーだったかしら?!
Openingの「コッぺリア」を見逃したのが悔やまれます。
ジャン・ギ―の古典的な振付ををドロテと・・・うーん、似合いそう!
作品に対するアプローチとしては、対立感が今一つ弱いかしら・・・
最近、ギョーム・コテとデヴィッド・ホールバーグで観ているのでつい比べてしまいますね^^;

■「アパルトマン」よりグラン・パ・ド・ドゥ (振付:M.エック、音楽:フレッシュ・カルテット)
マリ=アニエス・ジロ、イリ・ブベニチェク

舞台の上にドアがひとつ。
普通の男女の関係性、葛藤がユーモアを交えてちょっと切ない痛みと暖かさを交えて描かれる、マッツ・エックの傑作小品。
バレフェスでギエムとニコラが踊るのを2度観ていますが、もともとはマリ=アニエスに当てて振りつけられたものだそう。
グレーベージュのノ―スリチュニックの下にロイヤルブルーのロングフレアーのマリ=アニエスとターコイズのシャツをライトカーキのパンツの上に出したイリ。
キレイな色彩、ゆったりとした服装につつまれた二人の動きのダイナミズムと、こんなにギリシャ彫刻のような古典的な美形である二人なのにダンスから伝わる不器用な痛々しさのコントラストが凄い。
マッツ・エックの作品って自然な動きに見せてその実クラシックの語法と異なるところで大変なテクニックを要求すると同時にそのダンサーの内面をさらけ出すところがあるので、誰にでも踊れるものではないなぁと改めて思いました。
この二人は素晴らしかったです。

■「スターズ アンド ストライプス」(振付:J.バランシン、音楽:J.P.スーザ)
 ドロテ・ジルベール、マチアス・エイマン

割合と深い内面性を重視したコンテンポラリーが続いたBプロ、どう締めるのかな?と思っていたら
こう来ましたか!
バランシンのアメリカンな楽しさいっぱいの演目、これを表情豊かなドロテ、スポーティで弾力性の塊のようなマチアスというこれ以上望めない二人が、けれん味たっぷり、芝居っけいっぱいに演じます。
なんなの~というピルエット、高すぎるジュテ、それなのに二人とも余裕綽々、まだまだいけますけど、まぁ、こんな感じで楽しんで!というメッセージがまぶしすぎます
兵隊さんっぽい歩き方とか、今観るとレトロ感もいっぱいなのですが、二人とも、「ABTスタイルでやってみたけど、どう?」みたいなパロディ感があって、その臭みを感じさせないのがまた楽しい。
ミュリエル・ズスペルギ―が踊るのを見て、わぁ、わたしも踊りたい、と思った、とプログラムに書いていましたが、
確かに!ミュリエルでわたくしも観ています~あのときはお人形さんみたいでとっても可愛かった!!確か相手役はエルヴェ・クルタンだったような・・・彼は今、どうしているのかしら?

会場を興奮に巻き込んだままフィナーレ。
全員が横一列に並んで、拍手を受ける、というシンプルなもの。
最初のうち、音楽がスターズアンドストライプスだったので他の演目の衣装のダンサーたちにはちょっと違和感でしたが(笑)個性豊かな面々と演目を楽しんだ3時間でした
この分だとAプロも楽しみです




夏着物の会 2010

2010-07-29 06:43:35 | きもの
7月25日、日曜日、”お着物を愛でる会”のメンバーが六本木ミッドタウンに集結!?



左のmiwaさんはアンティークの小紋にピンクの格子の名古屋帯。
わたくしなら、こういう華やか小紋にはスッキリとした帯とバッグを合わせてしまいそうなのですが、敢えてカジュアル味の甘い帯にこっくりとしたバッグを合わせるところがmiwaちゃんらしいですね。
帯締めや鼻緒などの小物もピンクでラブリーに



左のどなさんは白地の小千谷縮に紫織庵の帯。
夏らしいとても爽やかな着物で涼しそう^^これもまた、あっさりとした帯でまとめてしまいそうなものですが、はんなりとした花帯を合わせるところが優しい風情のあるお着物姿がお得意のどなさんならではのコーディネートです



宮本さんでもう一枚!(このお写真、気に入っているのデス)
ご先祖さまの残されたお品、という宮古上布はとてもお品の良いもので、ほのかな光沢、薄いデリケートな強さのある生地がさりげなく素敵。
それにkosodeさんの白い水玉の散った麻の名古屋帯、赤白の組紐の帯締めがさりげなく可愛らしさも添えて・・・。
宮本さんと言えば、お会いするたびに新しいヘアスタイルを見せてくださるのもまた楽しみなのですが、今回はパッツン前髪に夜会巻きでオードリーのよう・・・
あ、あと半襟もスッキリとトンボの刺繍が入っているものをお使いで、細部に至るまでのお洒落、勉強になります



わたくしは、着物は 横森美奈子さんデザインのSmartPinkブランド。
黒地にクローバー模様のポリエステル素材で、一枚でも着られますが、このように半襟をつけて足袋をはいて、小紋のように着こなすのもアリ。
先月、RoyalBallet観賞の際に着用しました時には名古屋帯にお草履で単衣の着物として合わせましたが、この日は酷暑日、ということもあり、涼しく!をテーマに(笑)。
白い絽の半襟にライトグレーのチュールレースを重ね、帯は白の博多の半幅を片リボン結びに。
前帯がさびしいので、青い洋ナシとグリーンベリーの根付を帯飾りにあしらって、白い麻足袋にベージュのレース鼻緒がついたターコイズの下駄。
バッグは白のメッシュに。

4人それぞれのお着物姿、夏着物にも色々なバリエがありますよね!
途中ですが、続きは今夜UPします^^
続きです(笑)



LUNCHはミッドタウン内のガーデンテラスにあるBodegaSantaRitaで。
気軽なスパニッシュです。
実は、ワールドカップ後、サッカー愛好会?で必ず優勝国のレストランで集うのですが、今回はこちら指定ゆえ・・^^
ミッドタウンですし、ちょうどよいのでは?とご提案させていただきました
お写真は、ちょっと珍しいパスタのパエリアです。

銀座に移動して、アンティークモールから、1丁目のPOLAビルの隣のビルの2Fに移転した灯屋2へ。
こちらでは、白地にちょっとブルーベリー色を挿した墨絵の葡萄文の名古屋帯に心惹かれて購入。
秋にクールに装いたいです
どなさんは、ヒマワリをグラフィックにアレンジしたとても素敵なアンティークの夏着物に目を留めていらっしゃいましたが今回はご購入には至らず・・・
艶やかなアンティーク着物は素敵ですね^^観るだけでも眼福です



食べてばかりのようですが(笑)
こちらはとらやさんのあんみつ。白玉と杏をプラスするのが大好きです



忘れないように、どなさんとmiwaちゃんの素敵な帯を・・・
それぞれの個性にあった帯選び、お太鼓の形もとてもキレイですね!



夕暮れの銀座中央通りにて・・・
暑い一日ではありましたが、皆さまのお着物姿を存分に楽しませていただきました^^
観劇話のご報告会?も楽しかったですね!
次回は秋?またよろしくお願いいたします





「能の雅(エレガンス)狂言の妙(エスプリ)」展

2010-07-29 04:29:18 | ART
MID TOWNのサントリー美術館で、観たかった
「能の雅(エレガンス)狂言の妙(エスプリ)」開場25周年記念国立能楽堂コレクション

6月12日から7月25日まで、で途中で展示替えもありましたので、2回は観に行きたいと思っていたのですが、結局行くことができたのは最終日。



画像は17世紀江戸時代の能装束。
非常に保存状態が良く、やはり、日常着とは異なる作り、扱いによってのこのコンディション・・・と思いますが、それにしても緻密な仕事と大胆な意匠には力強ささえ漂ってくるようです。

「昭和58年(1983)に開場した国立能楽堂の貴重な能楽関係資料400点のうち、能・狂言面、能・狂言装束、楽器、謡本、絵画資料を精選して展示。室町から現代まで600年にわたる、幽玄という言葉で表現される能の雅な美と、その対極に位置する狂言のエスプリに富んだ魅力に迫ります」

というふれこみでしたが、やはりと言いますか、簡素な狂言の衣装などに比べて、圧倒的な存在感の能の衣装、驚くほど表情豊かな面の数々に魅了されました。

中でも、加賀前田家伝来の能装束、今回初公開の11領のうち、今回観ました後期展示の6領はいずれも
仕事の確かさとともに、なんともいえない趣味の良さが漂い、他の装束とは一線を画するコレクションであることだなぁと感心。
中でも心惹かれたのは、「鬱金地雲尾長鳥丸模様縫箔」の江戸時代 18 世紀の一領。
深いブルーグレーとブロンズの色合わせも美しく、地のぼかしと丸紋の中にアレンジされた花喰鳥の意匠がなんとも可憐で、素晴らしい作品でした。



上は、前田家のコレクションのうち、重要文化財「籠目柳模様縫箔」桃山時代 16世紀のもので、
非常に手の込んだ一領です。
緻密な籠目と伸びやかな柳のあしらいが、美しいコントラストを描き、職人のセンス、技術は今の時代が進めば進歩するばかりではないのだなと思わされました。



面白かったのが絵画や絵巻物。
上は、「百万絵巻一巻(十六紙)」室町時代 16世紀 国立能楽堂蔵の絵巻物ですが、
イキイキと能の場面場面を絵と文章で追った、絵入りのあらすじの台本のようなもの。
初期にはデッサンの様な筆致で描かれた簡略なものでしたが、時代がすすむにつれ、色鮮やかに華麗になり、保存の箱も漆塗りのものが用意されたり、で、能の内容・表現・意匠などがわかるのはもちろん、当時の大名の代々伝える調度品の作りの良さを今に伝える貴重な資料で大変興味深かったです。

お能は歌舞伎と違って、なかなか観賞する機会がないのですが、これを機に、実際に演じられる様も観てみたいという気持ちになりました









「バレエの神髄」 初日

2010-07-27 04:32:59 | BALLET
もう、観てから半月が経過・・・
時の経つのは早いもの・・・。
エトワール・ガラが始まってしまう前に、急いでUPです!

このガラ・タイトル、如何にも光藍社さんですね^^;
こちらのプロモーターさんには会員登録をしていないので、E-plusでとったチケットではありましたが、25列目のセンターブロック、とまずまずのお席。
この会場は前方が傾斜がなくて前後の席がほぼかぶっているので、良席かと思うゾーンが意外と見づらいので、このあたりが却って見やすいのかも?

「バレエの真髄」 2010年7月8日(木) 18:30開演

文京シビックホール

<第1部> 

■「眠りの森の美女」よりローズ・アダージョ
 ナタリヤ・ドムラチョワ
 セルギイ・シドルスキー/イーゴリ・ブリチョフ/ オクレシイ・コワレンコ/チムール・アスケーロフ
音楽:P.チャイコフスキー
振付: M.プティパ

いきなり4人の王子がでてきてローズ・アダージョ。
ドムラチョワのオーロラ姫はかわいらしくて素敵でしたが、バランスはあまりお得意ではないらしく、アラベスクのポーズのオーロラが次々と王子たちに手を預けるシーンでは、ほとんど自分でバランスキープする時間を作らずちょっと余裕がない感じで残念。
タマラ・ロホやシルヴィー・ギエムみたいに王子を必要としないほど自立しているのも、オーロラとしてはいかがなものかしら?とも思いますが、魅力のあるダンサーだけにもっと得意な演目が他にありそうなのに・・・と思わないでもありませんでした。

■「侍」
 岩田守弘
音楽: 鼓童
振付:M.ラブロフスキー
和太鼓の音が印象的でしたが、踊りとしては特に印象に残らず。

■「海賊」よりパ・ド・トロワ
 エレーナ・フィリピエワ
 セルギイ・シドルスキー
 ヴィクトル・イシュク
音楽: R.ドリゴ
振付: M.プティパ、V.チャブキアーニ

ヴィクトル・イシュクは金髪の少年。アリ、のイメージとは全く異なる個性のダンサーですが、膝を90度にして少しずつ低くなっていく4回転などテクニックの見せ場をふんだんに盛り込んでいる構成。
とても華奢なので、フィリピノワをリフトするときには大丈夫?^^;という感じに・・・。
フィリピノワは絶好調で、連続フェッテの安定感はさすがの一言。
シドルスキーはダイナミックで勇壮な感じ。マネージュもきれいでキレがありました。

■「阿修羅」
 ファルフ・ルジマトフ
音楽:藤舎名生
振付:岩田守弘

舞台中央に垂れ幕。
能の謡、笙、篳篥の、空間を引き裂くような音、に対し、最小の腕のムーブメントだけでそれを表現していくルジマートフ。
彼の、大人の成熟した男性としての厚みを増した身体とその存在感を上手く活かしていて、今のルジマートフにあっている作品だと思いました。

・・・が、何ですか?あの携帯の音!観客席から2回!・・・@@

■「ディアナとアクティオン」(”エスメラルダ”より)
 ナタリア・ドムラチョワ
 岩田守弘
音楽: C.プーニ
振付: A.ワガノワ
ドムラチョワのライトイエローグリーンの衣装がとても爽やか。
岩田さんはテクニックも優れていて、キレイに踊っていらしたけれども、この演目は全盛期のホセ・カレーニョがデフォルトになってしまっているので、この薄物の衣装の神話の世界の登場人物としては、もっと理想的な浮世離れした体型、雰囲気があればもっといいのに・・・とついつい思ってしまいます・・・。

■「ライモンダ」よりグラン・パ・ド・ドゥ
 吉田都
 セルギイ・シドルスキー
音楽:A.グラズノフ
振付: M.プティパ

当初予定されていたロバート・テューズリーが降板。急拵えのペアで心配していました。
やはりリフトではぐらぐらしてしまったり、観ていてハラハラするシーンもありましたが・・・。
あぁ、でもやっぱりグラズノフのあの音楽にぴったり合わせて踊る都さんの踊りの美しさと言ったら・・・
パのひとつひとつが丁寧で、パートナリングの不安を打ち消すような晴れやかな笑顔が最高!
エキゾチックなこの音楽が大好きなのですが、その音楽を体現するような踊りに陶酔してしまいました。
ああ、クラシック・バレエの主役をおどる都さんを全幕で観たいです~!

最初は4カップル、4人の男性の踊り、2人の女性の踊り、そして主役のPDDとソロ。
キエフバレエのソリストはスタイルが良くてとてもキレイ。
シドルスキーもPDDでは慎重でしたが、ソロではのびのびと、空中で一瞬ポージングの姿勢で止まって見える高いジャンプなど魅せてくれました!

第一部の終わりで一旦カーテン・コール。
確かに、第2部とは別物ですものね。
2つの公演を連続してパッケージにしたような今回のGALAとしてはこの進行のほうが自然なのかも。

<第2部>

■「シェヘラザード」
 エレーナ・フィリピエワ
 ファルフ・ルジマトフ
 オレグ・トカリ
 ルッスラン・ベンツィアノフ
 ヴォロディミール・チュプリン
 キエフバレエ
音楽: A.グラズノフ
振付: M.プティパ

この演目については昨年、マリインスキーでロパートキナとヴィシニョ―ワという究極のバ-ジョンで観ているので
今後どのバレエ団で観ても、あの舞台と脳内比較してしまうのだろうなぁ・・とちょっと満足できないのでは、と心配していたのですが・・・。

いや、さすがはロシアのバレエ団。衣装や装置がマリインスキーと比べると心持ちキッチュな感じがしないでもありませんが、極彩色の舞台の中央でスタイル抜群のオダリスクたちが腰をくねらせるのを観た瞬間、あぁ、この演目はこのバレエ団にとっては もう身に染み付いた掌中の作品、得意中の得意と言ってよいものなのだろうなぁということがすぐに伝わってきました。
あとはもう、エキゾチックな作品世界にゆったりと浸るだけです・・・^^

お話は・・・。
舞台は中東のハーレム、寵愛する美姫と金の奴隷との密通、狩りに出て留守にしている間の獄中の男奴隷とハーレムの女性たちとの乱痴気騒ぎの噂を弟から聞かされた王は、それを確かめるために、狩りに出る振りをします。
早速宦官を買収して鍵を手に入れ奴隷たちを解き放つ女性たち。
繰り広げられる官能的な饗宴・・・
そこに踏み込む王の一団。殺戮、寵姫の自殺。

フィリピノワのゾベイダは真っ赤な薄物を身にまとい、とても美しくて妖艶。
王を籠絡する愛撫、解放した金の奴隷に対する誘惑、ともに自らの意思で獲物を捕らえるように真っすぐな情熱を男たちに向ける、気性の激しいきっぱりとした造型が良く似合う。
最後も、王弟が金の奴隷を手にかけたのを見るや、彼に斬りかかろうと短剣を手にして止められ、王に対して自分が死ぬのとどちらを選ぶのか?という仕草をし、顔をそむける王を見て状況を悟り、潔く自害する。
迷いのない炎のようなゾベイダでした。

ルジマートフの金の奴隷は、以前、ユリア・マハリナとの黄金コンビでこの演目を観たときの印象と変わらず、 けれん味たっぷりな見えの切り方といい、うっすらと脂ののった筋肉質の身体と言い見た目がこの役どころにピッタリ。
ジャンプの高さ、ダイナミズムは若手に道を譲った感がありましたが、回転技での鋭さと迫力は健在。

大きな拍手に包まれたカーテンコール。
花束を抱えた観客がルジマートフとフィリピノワに手渡すのが見えると、わらわらといつの間にか、大きな花束を抱えた方々が舞台の前に列をなしていて・・・。
はい、全員、ルジ様お目当てです@@
普通はどんなに男性ダンサーのほうが格上だったり人気があったりしても、一応はパートナーの女性を立てるのがお約束ではありますが、今回は明らかにファンの熱視線がルジマ―トフ一人をめがけていたせいか、さくさく受け取り、そして何度も眼の前でサッと腕を滑らせて見えを切る、独得のポーズでのレヴェランスが延々と繰り返され、さぞかしファンの方々もご満足なさったのではないでしょうか・・・。

「ライモンダ」と「シェへラザード」
都さんとルジ&フィリピノワ。
エキゾチックな演目で、全く異なる個性を堪能した、まさに真夏の夜の夢・・・のような夜でした


ロイヤルバレエ「ロミオとジュリエット」FINAL 6/29

2010-07-18 18:40:38 | BALLET
すっかりあれから月日がたってしまいましたが、
吉田都さんのロイヤルバレエ団での素晴らしいキャリアの最後を飾る公演、
英国ロイヤルバレエ団、2010年日本ツアーの東京公演最終日、2010年6月29日(火)、東京文化会館にて18:30からのソワレに向けて会社を休んで(^^;)行って参りました。
会員席とはいえ、7列目センターって嬉しすぎます。NBSさんありがとう!

もちろん、会場は「満員御礼」の札が入口に・・・。
平日の早めの夕方とも思えない、いつもよりテンション高めの会場には、フィギュア・スケートの浅田真央ちゃん、Kバレエの清水健太くん、もと宝塚のスター、和央ようかさんと花總まりさんのお姿も・・・。
そして、NHK「プロフェッショナル」の撮影クルーが会場のそこここでインタビューをされていましたので、きっとそのうち番組として放映されるのでしょうね。

キャストは27日の日曜日と全く変わらず。
27日の終演後、楽屋口で相手役のスティーブン・マックレーに、都さんのサポートも素晴らしいし、心のこもった演技をありがとう、と申し上げたら、都さんのFINAL STAGEでの相手役をおおせつかるのは光栄なことだし、彼女と一緒の舞台を心から楽しんでいる、とのことでした。
連日大盛況の今回のロイヤルの日本公演、ダンサーひとりひとりが、ファンとの交流を楽しみ、最終日に向けて舞台への意気込みを気軽に語ってくれた様子からも、最終日への期待が高まります。

<第1幕>

冒頭のロザラインへのマンドリンのシーン、ロミオはやんちゃ、というよりも夢見がちな青年。
まだ恋に恋しているような内気さも漂わせています。
ですが、ピケピルエットから始まるソロでその印象が一変。
スピーディでキレキレで・・・うーん、今夜のスティーブンは やってくれそうな予感。

そして驚かされたのは、マキューシオ。
ブライアン・マロニー、おとといはプリンシパル二人と並ぶと見劣りする・・・などと言ってゴメンナサイ!
いえ、びっくりするほど良かったです。
むしろ、ベンヴォーリオのポルーニンのほうが、この日はちょっと重く感じたところあり。
それにしても、この3人の並びはいいですね。
色彩的にも、赤毛がかった金髪のほっそりとしたロミオに、明るい金髪にオレンジの衣装のマキューシオ、褐色の髪と衣装のベンヴォーリオとバランスがキレイ。

ティボルトは荒くれ者な役作り。登場するなり、仲の悪いモンタギュー家の面々にくってかかります。
そのまま剣でのつつき合い、チャンバラシーンへと突入。
一昨日もスゴイ迫力でしたが(ロミオがけがをしてしまったくらい・・・;;)剣さばきが上手く、とりわけマロニーのスピード感は冴えていました。
気がつくと当主どおしまでが・・・。広場は騒然。
ヴェローナ大公がお出ましになり、その場を収めますが、ギャリーのキャピュレット公は憤懣やるかたない、といった風情です。
大公に言われて剣を置くも、反省の色なし(笑)
まだアラステア・マリオットのモンタギュー公のほうが聞きわけが良さそうでしたが・・・・
両陣営、ふんっとマントを翻して左右に掃けます。

第2場 ジュリエットの部屋

乳母とはしゃぐジュリエット。まだまだ子供な無邪気さに溢れています。
婚約者?なぁに、それ?

ステパネクのパリスは、日曜日にご本人に「ぼくの考えでは、パリスは本当にジュリエットのことが好きだったんだと思うな」と印象通りの返答をもらったこともあり、優しさエレガントさがまぶしいほど。
スラリとした長身で、白い衣装がいかにも王子様然としています。
よくある金持ちの気取りやパリスとは全く違います。
ギャリーの父親も、なんだか良いお父さん。
封建君主の絶対的な家長として命令を下す・・というよりは、寧ろ愛娘と未来の婿に気を使っている様子。
お互いに気に入っているようだ、良かった、という目線が温かい。
にっこりと近づくパリスに気後れするのと恥ずかしいのでジュリエットはす~っと後ずさりするようにパドブレ(お見事!)で逃げるのですが、これがなんともユーモラス。
ひとつひとつの動きに少女ジュリエットのフレッシュな可愛らしさが匂い立つようです。
でも、このとき、好意さえ感じていたパリスに、3幕でロミオの妻になった後は完全に心を閉ざして同じようにパドブレで逃げる・・・同じ動きで真逆の心情とシチュエーションを描く構成が巧みです。
このあと、乳母に、胸に手を当てて御覧なさい、もう大人の女性になろうとしているのですよ、という気づきで驚く場面が続きますが、これもまた、2幕のバルコニーのロミオとのシーンにつながり・・・
色々な伏線があるシーンです。

第3場  キャピュレット家入口
 
お客を迎えるのは今夜はティボルトではなくキャピュレット公御自らのお出ましです。
なぜ?でもギャリーファンとしてはたくさん見られて嬉しい

ここに麗しのロザラインを追いかけて忍び込んでやろうとするロミオたち3人。
ここで、3人揃い踏みの踊りがあるのですが、この場面、3人ともステキ。イキイキとした躍動感にあふれ、観ていてワクワクします。

第4場 舞踏会場

重厚感溢れる有名なテーマ音楽に乗っての貴族の踊り。
上手からティボルト、キャピュレット公、パリスが前面に出て、豪華な衣装を身にまとった貴族たちと宮廷の踊りを典雅に重々しく踊ります。
は~、やっぱりステキ!
このシーンも大好き。
ロミオたちもその場にいます。

ジュリエットが登場。
まるで眠りの森の美女のオーロラ姫16歳の誕生日、の登場シーンのように、そこだけパッと明るくスポットライトが当たったような存在感。
可憐で初々しい。
パリスと二人でセンターで踊りますが、もう、この場面だけでうっとり。
可愛らしくはにかむジュリエットと優しく微笑みをたたえて見つめるパリスとの、とても品のある美しいパ・ド・ドゥ。

マンドリンを膝にのせてつま弾くジュリエット。少女たち6人がバロック調の音楽に合わせて踊りますが、そこにロミオが乱入します。驚きながらも、見事な踊りにそのまま踊らせる人々。

ジュリエットがお返しにソロを踊ります。
音楽にも踊りにも才能がある、イキイキとした魅力たっぷりの少女ジュリエット。

パリスとジュリエットの間にロミオが乱入し、空気がこわばります。

そこにすかさず、マキューシオが踊り始め、その場の空気を変えて自分の方に注目を集めようとします。
うーん、ここでのマキューシオには何かが下りていました。
日曜日とは別人かと思うほど・・・。驚くほどのスピード感と小気味よさ。素晴らしかったです。

続きの間にひとり佇むジュリエット。そこに入ってくるロミオ。
びっくりして逃げ出そうをする とっさの反応が如何にも少女らしくてナチュラルですね。
あの人だわ!乳母を下がらせて、一瞬二人きりになりますが、そこにキャピュレット公とパリスが現れます。
ご一緒に、と誘うパリスにお断り。
とまどうパリスにパパがフォローを入れながら立ち去ります。
ようやく二人きりに。仮面を取るロミオ。見つめ合う二人。
しかし、ここで天敵登場。
ティボルトです。片手で顔を隠すロミオ。その周りを怪しみながらグルグルとつけまわすティボルト。
怪しい奴、顔を見せろ。手を払いのけられ、もう隠れられません。
おまえか・・・!失せろモンタギューめ!!
出口を指し示します。

そこにキャピュレット公が登場。
険悪な状況を見てとって、大人の対応。ティボルトを収め、ロミオを客として改めて迎えるジェスチャーを。
それに応えて、いとまごいの挨拶をするロミオたち。

第5場 キャピュレット家の外

第6場 ジュリエットの部屋のバルコニー

ジュリエットがバルコニーに姿を現します。
今日は色々なことがあったけど・・・あの人・・・胸一杯になって星空を見上げるジュリエット
もうこの都さんの恋する表情を見ただけで涙がでそう。

ロミオがマントを翻して現れます。
舞台の上手からジュリエットの姿を認め、そして下手に走ってまた見つめます。

眼と眼が合い、ジュリエットが外階段を中庭に下りてきます。

マントを置いて、ジュリエットを迎えるロミオ。
手に手を取り、そしてジュリエットが彼の手を、胸に導いて気持ちを伝えます。

ロミオのソロ。歓喜に満ちあふれた踊り。
ジュリエットのソロ。
今日はリフトもバッチリです。
精一杯高々と掲げられた都さんの空中ポーズの美しいこと!
そっと口づけをかわし、階段を駆け上るジュリエット。

再び、中庭のロミオを見やると、二人ともいても立っていられなくなり、
バルコニーの上と下でお互いに向かって手を伸ばします・・・。

<第2幕>

第一場 市場

町の喧噪。娼婦の一団と一般人の女性たちとがいがみ合っています。
そこにロミオ登場。いつにも増して夢見心地。

ジュリエットの乳母が登場。ロミオを捜している模様。
3人は乳母をからかいます。
ロミオがキスするとパタンと倒れたり、なかなかコミカルな乳母の反応。
乳母から受け取ったのはジュリエットからのラブレター。
この日の高速シェネも凄かった!
恋する男は手がつけられませんね。乳母の回りをシェネで一周、場内大喝采!

第2場 教会

神父はアラステア・マリオット。
モンタギュー公と2役です。
恋する若者の実行力を侮ってはいけませんね。素早い展開。
対立する両家の和解の助けになるのでは・・との判断で協力者となった神父による小さな結婚式。
神に誓う二人の真剣な表情に、これからの試練を思われて・・・。ちょっと切ない気分です。

第3場 広場

マンドリンダンス。ソリストはホセ・マルティン。
「リーズの結婚」ではアラン役が印象的だった彼、ここではテクニシャンの一面を見せて
ピルエットと豪快なジャンプで達者なテクニックを披露してくれました。

ティボルト登場。
楽しい雰囲気だったのに、空気が重く変わります。
マキューシオが挑発します。
ティボルトは教会から戻ってきたロミオをご指名。
胸に剣を突き付けてさぁ、と促しますが、ロミオはそんな気分ではありません。
手でその剣先をすっとはずしてしまいます。

皆がガッカリ。
じゃあ、代わりに俺様が相手だぞ、とマキューシオが剣を構えます。
ブライアン・マロニーここでもキレキレの剣さばき。
素晴らしい手首の返し技。
一度は勝負がついたのに、おさまらないティボルト。
たたき落とされた剣を手に背を向けたマキューシオの方に進みます。
それとは知らぬマキューシオが一歩後ずさりしたときに剣が脇腹を貫きます。
一瞬何が起こったのか双方気がつきません。
平気なふうを装うマキューシオ。しかし身体の自由がきかなくなり死を悟ります。
平気な顔のマキューシオに落ち着いた風情のティボルト。しかし、剣先を確かめると・・・。
刺さっている?
マキューシオはロミオとティボルトを指さしてこと切れます。続きは二人で、とのご指名か。
応えるように、ティボルトは剣でロミオを指し示します。

マキューシオの亡骸に取りすがり泣くロミオ。
突如、胸に湧きおこる感情がロミオに剣を取らせます。
その感情のまま激しく攻め立てて、間もなく、ティボルトはロミオの手にかかって命を落とします。

そんなつもりではなかったのに・・・
がっくりと膝をつくロミオ、ベンヴォーリオがロミオを抱きかかえます。

広場の中央で激しく嘆くキャピュレット夫人。ロミオは義理の母に許しを請いますが彼女は聞き入れません。

ベンヴォーリオはロミオをその場から連れ出します。

キャピュレット公が現れ、状況を見てとって驚き、ともに嘆きます。

<第3幕>

第1場 ジュリエットの寝室

夜明け前に立ち去らなくてはならないロミオ。
初夜を過ごしてすぐに別れなくてはならない二人。
一人残されるジュリエット。

そこに間もなく、乳母と両親、そして婚約者パリスがやってきます。

ティボルトの死をキャピュレット夫人の黒いヴェールが示しているものの、この縁談は
予定通り取り運ぼうというお話。

今のジュリエットにとって、夫であるロミオ以外の男性から触れられるのは我慢のできないほど嫌なこと。
昨日まではどうということもなかったパリスの手へのキスに飛びのき、肩に触れる手にビクッとし・・・。
パドブレで後ずさり。
優しくする全ての動作にジュリエットは過敏に嫌悪の情を示します。

傷ついた表情のパリス。
わがままと気まぐれもイイ加減にしなさい!と癇癪玉を破裂させるキャピュレット公。
従兄を殺した敵の家の息子と結婚したのよ、とも言えず、どうすることもできないジュリエット。

追い詰められて一人ぼんやりとベッドの上で絶望しているジュリエット。
最初は泣いているのですが、次第にロミオとの未来に向けて強くならなくては、と気持ちを切り替えて。
そうだわ、と笑顔になり、神父に相談するために走りだします。
夜明け前の薄暗いライトから一転して朝の光が差すような都さんの表情の変化がすばらしい。

第2場 教会

神父から銀の薬入れを手渡されるジュリエット。

第3場 寝室

戻ってすぐに薬を枕の下に隠したら、すぐにまたパパ達がやってきます。
ジュリエットは先程厳しく叱責された父親の手をすり抜けて母親にすがります。
お母様、助けて!
頭にきたキャピュレット公。
パリスもわけもわからず拒否されてちょっと意固地になってしまいます。

二人のパ・ド・ドゥ。
あの舞踏会の冒頭での完全なる調和と対極なこのPDD.
ジュリエットをねじ伏せているようになってしまっているパリス。
完全に顔をそむけていやいや踊るジュリエット、ともに哀れなり・・。

ジュリエットはこの結婚に承諾する意思を示します。
ホッとするキャピュレット公。パリスも笑顔で手にキスをしようとすると、またもやサッと手を引かれ・・・
ジュリエットのわがままにまたもやカッとしつつも、とまどうパリスをなだめて立ち去るキャピュレット公。
女性たちも続きます。

一人になったジュリエット。
意を決して薬を飲みます。苦しい・・・。
意識が遠のく前に、ベッドに戻って横たわり、じきに薬がまわります。

花束を持ってさんざめきながら、6人のお友達が花嫁の付き添いとして現れます。
おめでとう!花嫁さんはお寝坊ね!起きて、ジュリエット!
・・・死んでいる?!
乳母とパパもお友達に続いてやってきますが、どうも皆の様子がおかしい。
ジュリエットが死んでいる!妻を呼ぶキャピュレット公。
ギャリーの泣き顔に胸がふたがれます。

第4場 キャピュレット家の墓室

暗い石室。家族が付き添い、最後に一人残って、パリスは夭折した婚約者のために祈り、十字を切ります。
伝え聞いて忍び込んできたロミオが、パリスを刺し、なにが起こったのかわからないままに息を引き取ります。
あぁ、なんて悲しい人生なのでしょうか、パリス・・・。

気の毒なパリスを一顧だにせず、ロミオはジュリエットの亡骸に涙して、墓石から降ろしてその亡骸を抱きつつ、ともに踊ろうと試みます。涙のパ・ド・ドゥ。
ふたりで生命のキラメキを確かめあうように踊ったそれまでのシーンがだぶり、必死のロミオと力なくだらりと垂れるジュリエットの腕と身体がなんとも残酷な・・・。
悲しみをいやがうえにも増すシーンです。

どんなに踊っても、もうジュリエットは蘇らない。
死後の世界でまた出会うしかない。
意を決してロミオはいざという時のために懐にしていた毒薬を飲み干し、こと切れます。

直後にジュリエットが眼を覚まします。
あぁ、あと10秒早ければ・・・と思ってしまいます。

上手に倒れたパリスを見て、死んでいる・・・?と思いながら次に逆側の傍らを見やるとそこにはロミオが!!
もうパリスのことは頭から消えています。

でもロミオは・・・死んでいる!
声にならない鋭い叫び。
瞬きも出来ずに見つめるわたくしも思わずハッと心がえぐられるように感じました。
それだけ激しいジュリエットの驚きと嘆きがその一瞬に伝わってきたのです。
パリスの近くにく転がっている短剣を手に、ひと思いにみぞおちに突き立てるジュリエット。
ロミオの近くで・・・と虫の息で墓石に戻り、ロミオに手を伸ばして触れ、安心したようにフッと命の炎が消えていきます・・・。

終わりました。
会場から割れんばかりの拍手が。

そのまま、カーテンコールが延々と15分ほど、だったでしょうか。
惜しみない拍手が送られ、
最後、幕が上がり、そこには大きな「SAYONARA」の横断幕が。
金色のコンフェッティが果断なく降り注ぎ、背後には出番を終えて私服になった人も多いダンサーたちとスタッフが。

挨拶を続ける都さんとスティーブン。
そこに次々と現れて舞台袖に並ぶのは、モニカ・メイソン芸術監督をはじめとするロイヤルの重鎮たち、そしてジョナサン・コープをはじめとするパートナーを務めた名ダンサーたち!
そう、それは、桟敷席のファンから降り注ぐフラワーシャワーこそありませんが、YouTubeで観たあのコヴェントガーデンでのフェアウェル公演の再現のよう!

降り注ぐ金のコンフェッティがスティーブンの頭に積り、彼が都さんにお辞儀をすると同時にミニ紙吹雪状態に
都さんのフェアウェル公演を守護する天使のようでした・・・

音楽、一つ一つの場面でのそれぞれのソリストたちの演技の濃さ、そして何より、この日が引退公演とは信じられない都さんの初々しいジュリエット!
このロイヤル・バレエという濃密な完成度の高い舞台の中央で、伸び伸びと演技する都さんを観られるのはこれが最後か・・と思うと泣けてきますが、
これからもダンサーとしての活躍は続けていただける、というのが何よりありがたいこと。

それにしてもこの日の公演をじっくりと観ることの出来た幸せに感謝します・・・
Bravi! Royal Balletよ永遠に。
都さん、素晴らしい舞台をありがとうございました!