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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

ル・テアトル銀座「8人の女たち」

2011-12-15 07:16:22 | その他ステージ
2011年12月12日(月)18:30~
ル・テアトル銀座にて

「8人の女たち」を観ました。



友人の誘い・・で、10年前に観たフランソワ・オゾンの映画が面白かったのと、
今回の舞台化で配役された女優陣の顔ぶれに興味があったので、行くことに。

結果、映画版よりも、よりスリリングで、ミステリーものらしいタッチの面白い舞台という印象。
とても楽しめました。

劇場のセンターに一段高くなった床の上にしつらえられたリヴィングルームのセット。
その上手側に青いペンキで塗られたような2階に続く階段とドア。
セットの上手と下手には向かい合うように数脚の簡素な椅子が置かれている。
舞台には背景がなく、手前も奥も、同様に向かい合うように客席が階段状に作られている。

という、ちょっと変わった設定の舞台。
入りと出はどうするのだろう、役者はどちらを正面に演技を?などとの疑問が浮かびます。

実際に物語が動き始めると、部屋のあちこちで自由に過ごしている役者が自然にふるまっている様を
色々な場所から観客は眺めているような状態になり、それはそれで、違和感なし。
只、セリフを言う役者を正面から観ることになるのか、その背中を観ながら声を聞くことになるのか、
というのは座席の位置次第。
こういうことも滅多にない経験ゆえに面白い。
入りと出は、ちょっと様子をみてくるわ、などと、部屋を示す壇上から下りた役者は椅子に無表情に腰掛ける。
それが、舞台の上に存在していない、という記号となって、出入りが煩雑にならない。
これもまた演出上のアイデアとして上手く機能していました。

1950年代、という時代設定を意識して、パステルカラーのPOPな色遣いが前面に出た演出が特徴的だった映画版は、監督フランソワ・オゾンの、ジャック・ドゥミに代表されるフレンチ・ミュージカル映画黄金期へのオマージュであったかと。
今回のG2の演出では、各々の役どころにあった衣装、簡素な装置で、舞台劇としての役者同志の掛け合い・間を主とした正統派の密室劇としての再構成。
演技を存分に味わえて、効果的に時折挿入されるフリージャズっぽいスタイリッシュな音楽とともに、好印象でした。


物語は、1950年代のフランスの人里離れた屋敷が舞台。
クリスマスに久しぶりに集う家族と使用人、その一家の主が殺されているのを発見され、
雪に閉ざされた空間で、女たちは互いに疑い、思いやり、自分の立場を主張し、暴露され・・・
絡み合った糸と隠された過去と事実。
豪華女優陣の丁々発止の演技バトルが見もの。

映画では、カトリーヌ・ドヌ―ヴとファニー・アルダンという大輪の花のような2大女優の対決が
印象に残っているのですが、さて。
登場人物についての所感を書き出してみました^^
( )内は、映画でのCASTです。

■マミー : 加賀まりこ( ダニエル・ダリュー)
屋敷の女主人の母。リューマチで足が悪く車椅子に乗っている。
亡き夫の遺産である国債を枕に隠している守銭奴ですが、そう見えないのは加賀まりこだから。
(ダニエル・ダリューも懐の大きな女性で、ここは日仏共通)
大地真央と親子設定が自然。
この親にしてこの娘ありの華やかさ。ユーモアの味付けも上手い。

■ ギャビー : 大地真央( カトリーヌ・ドヌーヴ)
マミーの長女で、殺害されたマルセルの妻。シュゾンとカトリーヌの母。
ゴージャスなフランスマダム。夫の会社の会計士と浮気をしている。
美しくて、大芝居も役にあっていて素敵。このメンバーの中にあって更に堂々たる主役。

■シュゾン : マイコ (ヴィルジニー・ルドワイヤン)
ギャビーの長女。イギリス留学からクリスマス休暇で里帰りしたところ。大学生。
巻紙とAラインの紺のワンピースとボレロジャケットのアンサンブルが清楚で可愛らしい。
前半場を仕切るが、後半自らの秘密を明かしてからは形勢が不利に?

■ ピエレット : 浅野温子( ファニー・アルダン)
マルセルの妹。ストリップダンサー。
うーん、実は、映画のファニー・アルダンが実に良い女ぶりだったのでとても楽しみにしていたのですが・・・。
浅野さん、わざとらしい細かいソバージュヘアに赤いボンテージ風ワンピがあまりに似合っておらず・・・。
ナチュラルな眉もこの衣装・ヘアには合っていないような・・・。
トレンディドラマ女優の昔日の栄光を知っているだけにちょっと残念。
演技や態度は役にあってました。残念だったのはVISUAL.

■ シャネル: 荻野目慶子 (フィルミーヌ・リシャール)
古くから一家に仕えるメイド。映画では美女の黒人女性設定だったが、今回は小柄な荻野目慶子が
ちんまりと地味で平凡な女の役作りで。
彼女も、魔性の女として一世を風靡したイメージがあるので、ひととおり登場人物が出そろったところで、
あれ、荻野目慶子はどこに?と思い、消去法でシャネル役とわかったときには正直驚きました。
いやぁ・・・役者ですねぇ。
お肌はとてもきれいで(一列目での観劇でしたので、間近でガン見)、後半メイドの御仕着せを脱いだところは、
荻野目慶子、でした^^

■ ルイーズ ; 牧瀬里穂 (エマニュエル・ベアール)
新入りメイド。ポーカーフェイスのファムファタールタイプ。
牧瀬里穂はやっぱりキレイ。
黒白でスカートにパニエを入れた所謂コスプレ調のメイド服で、出から華やか。
最初はアンニュイに、だんだん堂々としてくる辺りも面白く、戸田恵子へのお色気指南場面は
2人の対照的な様子が可笑し味を引き出して。

■オーギュスティーヌ: 戸田恵子 (イザベル・ユペール)
マミーの次女で、ギャビーの妹。心臓が悪い。ひねくれ者で、色気がないが密かにロマンスに憧れている。
うるさくて嫌われ者だけど、かまってほしいトラブルメイカ―。
感じ悪いのにとにかく笑える演技巧者の面目役如。

■カトリーヌ: 南沢奈央 (リュディヴィーヌ・サニエ)
シュゾンの妹。推理小説が好きな17歳。
大詰めの長台詞の場面で一度噛んだのが惜しい。
とはいえ、これだけの大御所との共演でそれなりに伸びやかに若者ポジを演じるのは大変だったことでしょう。
大人扱いされない大人になりたい年頃の役。


映画の結末を上手い具合に忘れていて、きちんと引き込まれ、楽しめた2時間10分でした。
(休憩はプラス20分)
後半、展開を思い出して、あぁ、この人が犯人、というオチだったなぁ・・・・ガンバレ!
と密かに思いはしましたが^^;

この顔ぶれゆえか、ほぼ満員の客席に、演劇関係者、ミュージシャン、女優さんなどお見かけしました。
25日が千秋楽。
当日券もあるそうですので、ご興味のある方は是非
おススメです。